ダイオードの種類
ダイオードの種類はさまざまで、分類の仕方で用途もかわってきます。高周波ダイオード、一般用ダイオード、小信号ダイオード、大信号ダイオードなどがあります。
構成材料でみてみると、「ゲルマニウムダイオード」と「シリコンダイオード」という種類があります。私たちが一般的に扱うのは、PN型接合ダイオードという種類の「シリコンダイオード」になります。
PN型ダイオードの特性
ダイオードの主な用途は、「電気の流れを一方向にする」ことです。交流を直流にしたり、電気の逆流を防ぐ「整流」として使用したり、電圧を一定にする「定電圧」や、電流を一定にする「定電流」を目的として使用します。また、AMラジオ波から音声信号を取り出す「検波」にも使われたりします。
極性と記号
P型半導体側を「アノード」、N型半導体側を「カソード」といいます。アノードからカソードへ電気が流れるように接続することを「順方向バイアス」といいます。反対は「逆方向バイアス」といいます。
上図の右側にあたる順方向バイアスでは、ある電圧(Vf)を超えると電流が一気に増加します。この電圧を「順方向電圧」といいます。その値は「電圧降下」として計算されます。
また、逆方向バイアス時には、ほとんど電気が流れていないように見えますが、ごく微量の「リーク電圧」が流れています。さらに電圧を加えていくと、ある電圧(Vr)で電流が急激に流れ出します。この電圧を「降伏電圧」といいます。この範囲を超えるとダイオードが破壊します。
ショットキーバリアダイオード
金属と半導体とを接合させたダイオードになります。ショットキー接合の整流作用を利用しています。順方向の電圧降下が低く、逆回復時間が短いため、超高速スイッチングや高周波の整流に適しています。しかし、逆方向漏れ電流が大きく、耐電圧が低いという欠点があります。
極性と記号
記号はこのように書きます。極性(向き)はカソード側に帯(目印)があります。このダイオードはスイッチング特性が優れているので、トランジスタによる論理回路の高速化、スイッチング電源などの電源回路に使用されることが多いです。また、検波用などにも使用されています。
定電圧ダイオード
通常のダイオードは逆方向に電圧を加えてもほとんど電流は流れません。このダイオードは、逆方向バイアスで使用します。降伏電圧を超えると急激に電流が流れます。しかも、その領域を超えても破壊されずに一定の電圧が得られます。
定電圧を得るためや過電圧保護などに用います。ツェナーダイオードともよばれています。なお、順方向電圧では通常のダイオードと同等になります。
極性と記号
記号はこのように書きます。これもカソード側に目印となる帯があります。ある一定以上の電圧(降伏電圧やツェナー電圧といいます)になるとアバランシェ降伏といわれる現象が発生するのです。
欠点としては、ノイズの発生に注意が必要であったり、大きな電流を要する回路には向いていないことです。
定電流ダイオード
一般に定電流回路は、構成が複雑で設計する際にも計算が面倒です。この定電流ダイオードは加える電圧や負荷抵抗が変化しても、一定の電流を供給できます。定電流ダイオード1素子を回路に組み込むだけで、加える電圧が変化しても常に安定した電流を簡単に維持できます。
極性と記号
記号はこのように書きます。これもカソード側に帯があります。そして、極性(向き)を間違えるとこのダイオードの能力が発揮されません。決められた流れに対してこそ定電流を確保できます。欠点としては、熱の影響で出力電流にバラツキが生じてしまいます。
定電流ダイオードの特性1 電圧ー電流特性
定電流ダイオードの電圧ー電流特性は下図のようになります。グラフの平坦な部分がありますね。この平坦である電圧範囲で使用することで、定電流が確保されます。
・ピンチオフ電流(a点) 電圧を加えていき、定電流になる値です。e点の電圧以下であれば一定の電流を保持できます。 ・肩特性(c点、d点) ピンチオフ電流の80%にあたる電流値を肩電流といい、その時の値を肩電圧といいます。
ようするに、この値より大きな電圧を与えないと定電流が保持できません。 ・最高使用電圧(e点) 使用可能な最大電圧です。原則、この電圧以下で使用します。
定電流ダイオードの特性2 自己発熱
定電流ダイオードも使用中の発熱は避けられません。(電圧✕電流)分の自己発熱を生じます。そして、電圧が高くなると自己発熱が大きくなり、電流値が減少してきます。自己発熱温度はカソード側リード線の熱放散に影響されます。カソード側リード線の熱放散を大きくすると電流値減少が抑えられるようです。
定電流ダイオードの特性3 定格電力
定電流を得るためには定格電力以下で使用する必要があります。定電流ダイオードの消費電力は簡単に求められます。 消費電力 = ピンチオフ電流 × その時の電圧 定格電力は周囲温度に影響されます。
高温の恐れのある場所に使用する場合は、余裕を持たせてください。理想としては、定格電力の1/4~1/6の範囲内といわれています。
定電流ダイオードの特長
定電流ダイオードの主な特徴は以下になります。 ・定電流動作領域が広い ・動作抵抗が高い ・電源変動や負荷変動、リップル電圧の影響を受けない
・周波数特性が良い 使用電圧領域については、1V以下の低電圧から100V以上の高電圧までと広範囲に対応しています。また、単一で使用できるので実装スペースを小さくできます。周波数については、10MHzまでの高周波に使用できます。また、並列接続とすることで電流の拡大が可能となります。
定電流ダイオードの用途
上にあげた特徴を活かし、いろいろな用途に使用されています。 ・LED輝度安定用の定電流供給 ・LED蛍光灯、LED街路灯、LED電球 ・ツェナーダイオードへの定電流供給
・近接センサに代表される各種センサへの定電流供給 ・バッテリーの充放電回路 ・電解コンデンサの通電エージング装置 ・通信回線のインターフェース ・漏電遮断器 ・圧電アクチュエータへの電流供給 ・安定化電源回路
定電流ダイオードとLED
定電流ダイオードの用途は多岐にわたりますが、やはりLEDとの相性がよいです。LEDが受ける過電流電圧変動、周波数変動、周囲温度上昇等の外部環境から回路を保護でき、一定の明るさを維持できます。
LEDは発光するための電圧「順電圧」が高いので、同じ電圧を与えても電流が違ってきて、明るさにバラツキが生じます。定電流ダイオードの出番です。
LEDの極性
発光ダイオードのことをLEDといいます。ダイオードの仲間です。記号で表すと上のようになり、極性(向き)があります。電圧をかけるときはプラスからマイナス方向へ流れるようにします。方向を間違えると、点灯しないだけでなく、LEDや回路が破損します。
一般的に金属端子(足)の長さで極性を判断します。長いほうがアノード(+)、短いほうがカソード(ー)となります。
抵抗を接続する場合
抵抗を使用した回路はコストを低く抑えることができます。また、抵抗の種類によってLEDに流す電流値の細かい設定ができます。極性がないため、接続方向を気にすることなく回路を組み立てられます。
欠点としては、やはり抵抗値の計算が必要になります。さらに、電源電圧の変動や熱等の外的要因が、LEDの作動に影響します。
定電流ダイオードを接続する場合
定電流ダイオードを使ってLED回路を組み立てる場合は、抵抗のような計算をする必要とせず、流したい電流値から部品を選択するだです(多少の確認は必要ですが)。なにより、LEDに一定の明るさを与えることができます。
欠点としては、抵抗よりもコストがかかることと、極性があるので接続方向には注意が必要です。
定電流ダイオードの使い方 直列
定電流ダイオードとLEDを直列に接続した例です。多少の電圧変動があってもLEDに流れる電流は一定になるので、明るさが保たれます。ただし、電圧の変動範囲には条件があります。
肩特性電圧値 < LEDが光ったときの電圧 < 最高使用電圧 この範囲であれば、定電流回路となります。 直列接続では、加える電圧の拡大が可能となります。
定電流ダイオードの使い方 並列
直列接続以上のLEDを点灯させたくなった場合、並列接続で対応します。直列につないだLEDの回路を複数用意し、それぞれのプラスとマイナスをつなぐだけです。並列接続で使用すると、電流の拡大ができます。そのときの総電流はそれぞれの電流の和となります。
定電流ダイオードの使い方 応用
直列・並列接続を上手く組み合わせることで、いろいろな使い方ができるようになります。 定電流ダイオードを向かい合わせて直列につなぐと、定電流制限ができます。
他には、OPアンプの出力短絡保護や出力電流の制限をしたり、OUTPUT端子の設置事故に対する保護や、トランジスタの電圧利用率を向上させたり、さらには直流安定化電源としてに使われています。
定電流ダイオードを正しく使うために
いろいろな用途で使えそうな定電流ダイオードですが、やはり使い方を間違えると大変です。LEDが点灯しないだけならまだいいですが、回路が壊れてしまうのは避けたいですね。そこで誤った使い方をした例をいくつかあげて見ていきましょう。
LEDと並列に接続
これは回路中のLEDに、定電流ダイオードを並列に挿入配置したものです。この場合、LEDに流れる電流を制限できないので、LEDが壊れてしまいます。また、電流は制限できますが、電圧をすべて受けてしまいます。消費電力値が定電流ダイオードのそれを上回ったときは、LEDと同様に壊れてしまいます。
極性を逆に配線
やってしまいがちな使い方です。定電圧ダイオードには極性(向き)があります。上の方でも述べていますように、定電圧ダイオードは逆方向の電流は制御できません。LEDか定電流ダイオードのどちらか、または両方壊れます。
ただし、上の応用例でも述べていますが、一つ追加して2個の定電流ダイオードを向かい合わせにつなぐと定電流化できます。交流を電源とした場合に使用されるようです。
熱くなると出力電流が減少する
定電流ダイオードは熱の影響を受けます。その熱は出力電流を変動させてしまいます。外部の熱だけでなく、自己発熱についても注意が必要です。自己発熱は出力電流が多く、かかる電圧が高いほど激しくなります。
肩特性の高い定電流ダイオードは電流安定の点では不利です。回路に熱がこもらないような配置を考えてください。
まとめ
いかがでしたか。定電流ダイオードは、LED回路には不可欠な存在となってます。使い方を間違えなければ、直列でも並列でも使えます。いくつかの欠点はありますが、欠点というものではないでしょう。
最低限の知識は必要ですが、そんなに難しいものではありません。LED制作の敷居は低くなっています。どんどんチャレンジしてみてください。