ウラシマソウ(浦島草)とは
ウラシマソウとは、サトイモ科テンナンショウ属に分類される多年草で、ウツボカズラにも似た、特徴的な姿をしている山野草です。
葉の下に、肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる、穂のような花をつけますが、花は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる苞(ほう)に包まれています。仏炎苞は、黒褐色のものが多いですが、他にも赤褐色や緑白色のもの、無地のものやストライプ柄のものなど、いくつかの変異があります。
肉穂花序(にくすいかじょ)の先端が、釣り糸上に長く伸びますが、その姿が浦島太郎が持っていた釣り竿の糸と似ていることから、ウラシマソウという名前がついたという説もあります。学名は「Arisaema urashima(テンナンショウ属のウラシマ)」で、こちらにもきちんと「ウラシマ」という表記が含まれているのが、おもしろいですよね。
ウラシマソウ(浦島草)は性転換する
ウラシマソウは、性転換する植物としても知られています。力のない株は雄花となり、力のある株は雌花になるため、生育の状態によって、毎年、雄花をつけるか雌花をつけるか、変わってくるのです。また、力があるような、ないような・・・何とも言えない株の場合、1つの株に雄花と雌花が一緒に咲くこともあるそうです。
ウラシマソウ(浦島草)は絶滅危惧種
絶滅危惧種については、各都道府県ごとに指定される上、数年おきに見直されます。そのため、保護が進めば絶滅危惧種ではなくなることもありますが、2018年現在、ウラシマソウは、山口県、高知県、愛媛県ではそれぞれ絶滅危惧種I種に指定されています。また、長野県では絶滅危惧種Ⅱ類、埼玉県、山梨県、京都府、鳥取県、岐阜県では準絶滅危惧種に指定されており、貴重な植物であることがわかります。
ウラシマソウ(浦島草)の実の毒性
ウラシマソウの実
ウラシマソウは、秋ごろに真っ赤な実をつけます。トウモロコシの縮小版のような見た目で、とても美しいですが、実は、ウラシマソウの実には毒が含まれているのです。
毒の正体はサポニン
ウラシマソウの実をはじめ、球茎や新芽など、すべての部位に「サポニン」と呼ばれる毒が含まれています。ウラシマソウが属するテンナンショウ属に植物には、このサポニンという毒が含まれていて、食べてしまうと、激しい嘔吐や腹痛に襲われてしまいます。
サポニンの毒性
サポニンの毒性には、界面活性作用があるため、血液に入ると赤血球を破壊することもあります。サポニンは、ウラシマソウのほか、オリーブやブドウ、ツバキ、キキョウ、朝鮮人参などにも含まれています。また、サポニンは、毒性がある一方で、漢方薬などにも利用されることがあります。ただ、素人がむやみに手を出すと取り返しのつかないことになりかねません。ウラシマソウに触れてしまったら、しっかりと手を洗い、異常を感じたら、医師に相談するようにしましょう。
ウラシマソウ(浦島草)が育ちやすい環境
ウラシマソウは、本州、四国を中心に自生している山野草ですが、北海道や九州の一部でも自生が確認されています。耐陰性が強く、湿った場所を好むため、林の中などで自生していますが、日照不足になると、雄性個体ばかりになるなどし、子孫を残せなくなってしまいがちです。そのため、ある程度明るい場所では、雌雄のバランスも良くなり、繁殖していることが多く、群生をみかけることもできます。
ウラシマソウ(浦島草)の開花期
ウラシマソウは、4~5月の間に花が咲きます。鉢植えの場合、開花前は、明るめの日陰に、開花後は風通しの良い半日陰に移動させ、土を乾燥気味に保つと、より長く花を楽しむことができますよ。
ウラシマソウ(浦島草)の花言葉
ウラシマソウの花言葉は、「不在の友を想う」「注意を怠るな」「懐古」「回想」などがあります。いずれも、ウラシマソウの名前の由来である「浦島太郎」の話からつけられた花言葉と言われています。浦島太郎のように、浮かれてしまいがちな友達に送るのには、ぴったりかもしれませんね。
ウラシマソウ(浦島草)の育て方
育て方1.育てる場所を決める
ウラシマソウは、山野草なので、強い日差しにより、葉が枯れてしまうことがあります。そのため、木陰と同じような、明るい日陰や、屋内などで育てるのがおすすめです。また、凍結は苦手なので、冬はビニールハウスの中など、ある程度の温度があり、かつ、暗い場所に移動させましょう。
育て方2.土づくり
ウラシマソウの土は、乾燥しすぎても、湿りすぎても生長に悪影響が出るので、赤玉土をベースにして鹿沼土を4割程度混ぜるくらいがちょうどよい湿度を保てるのでおすすめです。また、鉢植えの場合は、素焼きの鉢や、小さめの鉢は、土が乾燥しやすいので避けましょう。
育て方3.水やりの頻度
ウラシマソウの水やりは、毎日たっぷりと行いましょう。水やりを、株の真上から行うと、水の重みで茎が折れてしまうので、できるだけ、根元に水をあげるのがポイントです。冬の間も、乾燥のし過ぎは株を弱らせてしまうので、土の表面が少し乾いたら、水をやるようにしてくださいね。
育て方4.肥料のやり方
ウラシマソウは、肥料が大好きな植物です。植え付けや植え替え時には、元肥をしっかり入れ、葉が枯れるまでの間も、置き肥や液肥で追肥をして肥料をきらさないようにしましょう。追肥の頻度は、使用する肥料に書かれている頻度で問題はありません。
ウラシマソウ(浦島草)の増やし方
球根で増やす
ウラシマソウは、球根の周りに、新しい球根を付けます。その、新しい球根を植え付けると、翌年以降芽が出ます。新しい球根は、自然と外れるので、無理に外さないようにしましょう。翌年芽が出るものもあれば、数年後に芽が出るものもあります。気長に待ってあげてくださいね。
種で増やす
12月ごろに実が赤くなると、茎が倒れ始めます。茎が完全に倒れたら、自然に実が落ちてしまう前に、実を採取しましょう。実を洗うと、中から白い種が出てくるので、この種を蒔きます。種を蒔くと、2年後に発芽します。この際、実には上にも書いたように、毒性があるので、取り扱いには十分注意してくださいね。
ウラシマソウ(浦島草)の種類
ナンゴクウラシマソウ
ナンゴクウラシマソウは、その名の通り、南国(紀伊半島以南)に自生するウラシマソウの種類です。付属体基部(クリーム色の部分)は太く、細かいしわがあり、泡状に見えるという特徴があります。
ヒメウラシマソウ
ヒメウラシマソウは、その名の通りヒメ=小型のウラシマソウの種類です。本州南部と九州地方に自生しており、ウラシマソウより寿命が長いです。仏炎苞(ぶつえんほう)は、白と赤褐色のストライプ柄で、両端がカールしているという特徴があり、ウラシマソウの種類の中で、最も見た目に華がある品種です。
マムシグサ
マムシグサは、北海道から九州まで、日本全土に自生しているウラシマソウの種類です。マムシグサという名前は、茎のまだら模様がマムシに似ていることから付けられたと言われています。球根により増やすのが困難であるため、株を増やしたい場合は、種で増やしましょう。
ユキモチソウ
ユキモチソウは、四国を中心に自生している、ウラシマソウの種類です。肉穂花序(にくすいかじょ)の先端が、雪のように白く、餅のように丸いことから、ユキモチソウと名付けられています。まるでマシュマロのようにも見えますが、ユキモチソウにも毒があるので、誤って口に入れないように注意してくださいね。
ムサシアブミ
ムサシアブミは、中部地方以南に自生している、ウラシマソウの大型種です。仏炎苞(ぶつえんほう)は、ボクシングのグローブのような形をしており、とてもモダンな雰囲気ですよね。葉が、手のひらより2まわりほど大きく、あまり花は目立ちません。姿勢を低くすると見つけやすいので、もしムサシアブミの自生地に行くことがあったら、低い位置を探してみてくださいね。
ウラシマソウ(浦島草)を育ててみよう
ウラシマソウは、マイナーな山野草ではありますが、園芸品種も多く出回っているため、比較的手に入れやすい植物でもあります。山野草らしい落ち着いた印象なのに、何とも言えない妖艶な雰囲気を持ち、まさに、唯一無二の存在ですよね。日差しの管理さえ気を付ければ、枯れることなく育つので、興味を持たれた方は、ぜひウラシマソウを育ててみてくださいね。
出典:item.rakuten.co.jp