フィロデンドロンとは
サトイモ科フィロデンドロン属の植物のことです。
中南米の暖かい地域に生息する多年生草本で、種類が多く、その数はサトイモ科の中で2番目に多いといわれます。観賞用として多くの種類が栽培されている人気の観葉植物です。
学名
学名をPhilodendronといい、ギリシャ語の「Phileo(愛する)」と「dendron(木)」という単語に由来し、「木を愛する」という意味を持ちます。他の木の幹に添って育っていく性質を持つことからつけられました。
観葉植物として
フィロデンドロンには独特の存在感があり、人気の高い観葉植物です。ある程度の耐陰性があるので、室内に飾ることもできます。また、栽培も簡単なので、初心者の方にもおすすめですよ。
フィロデンドロンの生態
つる性と直立性
フィロデンドロンは、つる性と直立性の2種類に分けられます。
つる性は他の木の幹などを這い上がって育ちます。直立性は成長の過程で茎が太くなり、立つことができるようになる種類です。
生育に適した環境
フィロデンドロンは暑さにとても強く、生育に適している温度は10℃以上です。
寒さにはやや弱く、育てる際には温度が5℃以下にならないように気をつけましょう。湿度が高い環境を好みますが、ある程度の乾燥に耐えられます。
フィロデンドロンの花
フィロデンドロン・セロームという種類は、たった一日だけ花を咲かせます。他の品種では確認されておらず、とても珍しいんですよ。育て方によっては家庭でも見ることができるので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
フィロデンドロンの品種
フィロデンドロン・オキシカルジューム
つる性の代表的な種類で、和名であるヒメカズラとも呼ばれます。
成長が早く育てやすいので、観葉植物として広く育てられている品種です。通常の緑色のほか、明るいライム色のものや、黄色の斑点模様を持つものなど、葉の色のバリエーションに富んでいます。
フィロデンドロン・アンドレアヌム
ビロードカズラとも呼ばれるこの種類は、長く大ぶりな葉を持ちます。
ビロードとは、なめらかな手触りと光沢感が特徴の織物で、ベルベットともいいます。その名の通り、葉の光沢感が強く艶が美しい品種です。コロンビア原産で、日本には明治時代に入ってきたとされています。
フィロデンドロン・クッカバラ
葉の形が特徴的なフィロデンドロン・クッカバラは、ブラジル原産で、直立性の代表的な種類です。
クッカバラという名前は、オーストラリアに生息するワライカワセミという鳥の英名で、羽根を広げた姿と葉の形が似ていることからつけられました。比較的寒さに強く、また他の品種よりも葉が小ぶりなので、室内でも育てやすい品種です。
フィロデンドロン・セローム
独特な形の葉が特徴のフィロデンドロン・セロームは、ヒトデカズラという和名の直立性の品種で、他の品種よりも大きく育ちます。フィロデンドロンの中では花を咲かせる数少ない品種ですが、その開花期間はたったの1日です。
フィロデンドロン・ロジョコンゴ
新しい品種のフィロデンドロン・ロジョコンゴは、個性的で華やかな姿が特徴です。濃緑色の葉は厚みがあり、茎にはやや赤みがあります。
フィロデンドロンの花言葉
多くの種類があるフィロデンドロンには、その種類ごとに異なる花言葉があります。
プレゼントとして贈られることも多いフィロデンドロンの、それぞれの花言葉をご紹介します。
フィロデンドロン・オキシカルジュームの花言葉
フィロデンドロン・オキシカルジュームの花言葉は「華やかな明るさ」です。
丸みと光沢があって可愛らしいフィロデンドロン・オキシカルジュームらしい花言葉です。
フィロデンドロン・クッカバラの花言葉
フィロデンドロン・クッカバラには「壮大な美」と「壮大な心」という2つの花言葉があります。
大きく広がるように育ち、鮮やかな葉を生い茂らせる堂々とした姿にぴったりの花言葉ですね。
フィロデンドロン・セロームの花言葉
フィロデンドロン・セロームの花言葉として「愛の木」と「用心深い人」というものがあります。
「愛の木」という花言葉は、「木を愛する」という意味の学名からつけられたのでしょう。
フィロデンドロンは鉢植えがおすすめ!
フィロデンドロンは温度や日当たりによって移動させることが多くなるので、移動させやすい鉢植えをおすすめします。
生育がよい植物なので、株よりも1回りか2回りほど大きい鉢を選ぶとよいでしょう。つる性の品種を育てる場合は、大きめの支柱も用意しておきましょう。
フィロデンドロンの植え方
日当たりについて
フィロデンドロンには日当たりのよい場所が適していますが、直射日光に当たりすぎると葉焼けを起こしてしまいます。耐陰性があるので日陰でも育てることはできますが、日光が不足すると間延びしてしまったり、葉の形や色が悪くなってしまうこともあります。
春から秋までは明るめの日陰や、レースなどの薄手のカーテン越しで日を浴びることができる場所などが適しています。冬の時期は、窓際などにの日当たりがよい場所に置いてあげるとよいでしょう。
土質について
フィロデンドロンを植えるときは水はけのよい腐葉土、川砂、赤玉土などを使用します。そのほか、バーミキュライトやパーライトなども適しています。
植え替えの手間は増えてしまいますが、水苔で育てることもできます。水苔で育てる場合には、水苔にカビが生えてしまうことを防ぐために、1年に1回は植え替えしてあげましょう。
フィロデンドロンの育て方
インテリアとしても活躍してくれるフィロデンドロンの育て方をまとめました。華やかで力強いフィロデンドロンを育ててみませんか?
育て方〜水やりについて
土の表面が乾いたら、鉢の底から滲み出てくるほどたっぷりの水をあげます。
ただし、受け皿に水が溜まっていると、根腐れを起こしてしまう可能性があるので注意してください。室内で育てる場合は、葉の乾燥を防ぐために葉水(霧吹きなどを使って葉を湿らせること)を行いましょう。
育て方〜肥料のあげかた
生育期である5月から9月は、即効性の液体肥料を1〜2週間に1回、または遅効性の化成肥料を2ヶ月に1回ほどあげます。株の大きさを抑えたい場合は、即効性の液体肥料を1ヶ月に1回程度あげましょう。冬は生育が鈍くなる時期なので、肥料は必要ありません。
フィロデンドロンの時期ごとの育て方
時期ごとの育て方〜春と秋
育ちがよい春と秋は、明るめの日陰や薄手のカーテン越しなど、適度に光が当たる場所に置きます。土の表面が乾いたら、受け皿に水を溜めないことに注意しながら水をたっぷりとあげましょう。
時期ごとの育て方〜夏
夏の時期は土が乾燥するのが早くなるので、まだ土が少し湿っている状態でも水をあげます。
日中などの気温の高い時間帯に水やりをすると、土の中の温度が上がってしまい、根腐れなどを起こしやすくなってしまいます。夏期の水やりは夕方以降など気温が下がってきてから行うようにしましょう。
時期ごとの育て方〜冬
生育期が過ぎた冬は、水やりは少々控えめにします。
土の表面が乾いて3日から4日ほど経過したら水やりを行いましょう。また、冬の間は日がよく当たる暖かい場所に移動させます。
フィロデンドロンの剪定方法
こまめな剪定を!
生育のよいフィロデンドロンにとって、剪定はとても重要なお手入れです。
こまめに剪定することによって、草姿を整えるだけでなく、風通しがよくなることによって病害虫を予防することができます。つるが伸びすぎてしまったり、葉の数が増えてきたら剪定を行いましょう。
剪定の仕方
フィロデンドロンの剪定のやり方はとても簡単です。
伸びすぎてしまったつるを、清潔なハサミを使って適度に切り落とします。葉は下の方のものを残すようにして取り除きます。
剪定の際の注意点
フィロデンドロンにとって大切な剪定ですが、注意点があります。
剪定の際、つるなどの切り口から出てくる白い樹液に触れると、かゆみが出たり、かぶれてしまうことがあるので注意しましょう。また、切り口から感染する病気があるので、剪定に使用するハサミは清潔にするよう気をつけましょう。
切り戻し方
葉が落ちてしまったり、形が崩れてしまったりした場合には、株の根元から短く切り戻して仕立て直すことができます。切り戻しは生育のよい5月から6月に行うと、回復が早くなりますよ。また、このときに切り戻したつるや茎は、挿し木に使用することもできます。
フィロデンドロンの植え替えについて
植え替えの時期とタイミング
フィロデンドロンの植え替えは6月から8月の暖かい時期に行うことが多いですが、基本的に寒さが厳しい冬以外の時期なら問題ありません。2年に1回程度を目安に植え替えてあげましょう。
また、根が鉢の底から出てきてしまったときは、根詰まりを起こす前により大きめの鉢に植え替えます。植え替えの際に一緒に剪定もしてあげると、新しい芽の育ちがよくなりますよ。
植え替え方
1.新しい鉢と、水はけの良い土を用意しておきます。
2.株を優しくゆっくりと抜いて、根についている土を軽く落とします。
3.新しい鉢に移したら土を入れ、水をあげます。
フィロデンドロンの増やし方
フィロデンドロンの増やし方には、挿し木と水挿しという2つの方法があります。
どちらの増やし方も簡単で、根もしっかりと育ってくれますよ。
挿し木とは
植物の茎やつるなどの一部を切り取り、その茎やつるなどから発根させる増やし方です。種では増やしづらい植物の増やし方の1つでもあります。
挿し木の適期は、増やしたい植物の生育期に差し掛かる頃です。
この時期に挿し木を行うと、発根しやすいだけでなく、元の植物の回復も早くなりますよ。フィロデンドロンの場合は、気温と湿度が高い5月から8月に行いましょう。
増やし方〜つる性品種の挿し木
1.切り口が斜めになるように、つるを10cmから15cmほど切ります。
2.先端部の葉を2、3枚残して、他の葉は全て取り除きます。
3.挿し木用土に植えて、切り口が乾燥しないようにします。
4.十分に根が育ったら、水はけのよい用土を入れた鉢へ植え替えます。
増やし方〜直立性品種の挿し木
1.切り口が斜めになるように、茎を付け根の辺りから切り取ります。
2.挿し木用土に植えて、切り口が乾燥しないようにします。
3.十分に根が育ったら、水はけのよい用土を入れた鉢へ植え替えます。
フィロデンドロンの増やし方〜水挿し
水挿しとは、挿し木法の1つで、用土ではなく水につける増やし方です。用土を使用しないので、挿し木よりもお手軽にできますよ。そのままインテリアとして飾ることもできる水挿しでの増やし方をご紹介します。
1.挿し木の手順と同じようにつるや茎を切り取り、葉を取り除きます。
2.綺麗な水を入れたガラス容器などに挿します。
その後は、水が濁らないように3日に1回程度水を取り替え、そのまま飾ってもよいですし、根が育ったら鉢に植え替えてもしっかりと育ってくれますよ。
水挿しで発根させたフィロデンドロンを土に植え替えた場合は、植え替えて1週間ほどは、土が乾く前にやや多めに水をあげます。
注意点〜病気について
軟腐病
切り口から感染して、茎や葉を腐らせてしまう病気で、キャベツや白菜といった野菜などにも見られます。夏から秋にかけての高温多湿な時期に発生しやすく、また細菌性なので他の植物に伝染してしまうこともあります。
葉や茎に黒や黄色、茶色くなっている部分があったら、すぐにその部分を切り取り、病気が広がってしまうことを防ぎましょう。
すす病
すす病とはカビが原因で起こる病気で、野菜などにも見られます。葉でカビが繁殖して黒く小さな斑点ができ、進行すると葉だけでなく茎の方へと被害が広がっていってしまいます。
主にカイガラムシやハダニ、アブラムシなどの害虫に誘発されることが多いので、これらの害虫の発生を予防するためこまめな葉水や、薬剤の散布などを行いましょう。もし発症してしまった場合は、発症部位を取り除いたり、切り取ったりします。既に茎などにも広がってしまっている場合には、殺菌剤の散布を行います。
注意点〜害虫について
ナメクジ
ナメクジは湿度の高い時期に、若葉や新芽などの柔らかい部分に発生します。
葉を食べられてしまうので、市販されているナメクジ用の薬剤を使用しましょう。
カイガラムシ
葉や茎に付いて栄養を吸い取り、すす病などを誘発するカイガラムシは、成虫になると薬剤が効きづらくなってしまいます。予防のために幼虫が発生し始める5月から7月頃に、月に2〜3回ほどを目安に殺虫剤を散布しましょう。もし成虫が付いているのを見つけたら、ブラシなどで落とします。
ハダニ
ハダニは葉の裏に寄生する害虫で、栄養を吸い取ってしまいます。
ハダニは乾燥した環境を好み、水には弱いので、日頃から葉水を心がけ発生を予防しましょう。発生してしまったら市販の薬剤を使用します。
フィロデンドロンと風水
風水とは
目には見えないエネルギーである「気」の流れを利用して開運をもたらすという、中国発祥の環境学のことを風水といいます。よく「西の方角に黄色い物を置くと金運が上がる」や「青色の物は仕事運を上げてくれる」などというように、風水は物の色と、それを置く方角によって簡単に取り入れることができます。
風水における植物の利用
お部屋の中に植物が置いてあると、気分を明るくしてくれたり、また落ち着かせてもくれますよね。実はそれだけでなく、風水において、自然のものである植物をお部屋に置くことはとてもよいとされています。
花や葉の色、形、置く場所などによって、効果が違ってきます。また風水において植物は、基本的にどの方角に置いてもよいとされています。
フィロデンドロンの風水効果
植物がもたらしてくれる効果として
・気持ちを落ち着かせる
・自然の中にいるような癒しをもたらす
・目や脳の疲れを癒す
・人間関係を円滑にする
といったものがあります。
また、フィロデンドロンは自由な発想や行動力をもたらしてくれるといわれています。インテリアとしても見栄えのするフィロデンドロンを、ぜひ風水に活用してみてください。
最後に
エキゾチックな草姿が魅力的なフィロデンドロンをご紹介しました。
種類が数多く、また植え方から育て方、増やし方まで簡単なので、ぜひ育ててみてくださいね。