チョウチョウウオの生態
飼育の前にチョウチョウウオの生態を知っておくことにしましょう。生態を熟知しておけば、飼うのにも楽になるものです。
チョウチョウウオとは?
チョウチョウウオはスズキの仲間で、英語でもバタフライフィッシュといいます。縦に非常に薄く、丸もしくはハート形の体が蝶を連想させるのでしょう。白い頭は小さく、突出した口、目元に黒の縦ラインが入っています。体色は黄色で、ひれの縁にも黒のライン。チョウチョウウオといえばこの「並チョウ」と呼ばれる種が基本です。大きさは15~20cmになります。
チョウチョウウオはどこにでもいる
温暖な海を好むチョウチョウウオですが、意外なことに種類によっては津軽海峡辺りでも見られることがあります。並チョウは関東以南では磯辺でも普通に見られます。飼育でも人気で、800円くらいから購入できるようです。ソテーや煮つけで食べられることもあるそうですが、調理しにくく、臭味のある個体もあるのだとか。白身で味は悪くないとのこと。
ダイバーに人気。釣りでは外道
サンゴ礁が似合うチョウチョウウオはダイバーには好かれる魚です。群れでいることが多い魚ですから、南洋の海中ではよく目立ち、ダイビングスポットの華といったところでしょうか。一方、釣り人には外道と扱われることが多いようです。生態が雑食で食いつきが良いので、いらないのに釣れてしまう魚といった存在です。
チョウチョウウオの種類
並チョウ以外にもチョウチョウウオの種類は120を超えるといわれています。ここでは一般的に飼育される種をいくつか紹介します。
トゲチョウチョウウオ
口がツンと伸びたトゲチョウチョウウオは、パンダのような黒線の入った目元、黒筋の走る白いボディーに背びれから尾びれにかかった黄色が特徴です。18cm~20cmになります。背びれの後ろにはトゲがあり、これが名前の由来となっています。観賞魚として売られており、飼育は容易。値段は一匹1000円くらいでしょう。
フウライチョウチョウウオ
初心者にも飼いやすいフウライチョウチョウウオは大きさが20cm。黒、白、黄色のカラーリングが絶妙な種類です。似た種類でニセフウライチョウチョウウオというのもいますが、こちらは大きさが30cmくらいにも成長してしまいます。間違わないようにしたいですね。どちらも価格は1000~2000円になります。
ハシナガチョウチョウウオ
ハシナガチョウチョウウオは側面のくっきりとした黄色のストライプと、背びれの黒丸模様が特徴の種類です。「チェルモ」という愛称で呼ばれ、とても人気があります。飼育はやや難しく、餌付けもしにくいでしょう。値段は2000円程度だと思います。体長は15cmほど。
フエヤッコダイ
チョウチョウウオの一種であるフエヤッコダイは、気性が穏やかで、混泳させやすい種です。餌付けもしやすく、特に飼いやすいでしょう。笛を吹いているような長い口という見た目も愛嬌があり、なんとも楽し気な種類です。18cmくらいに成長し、値段は2000円といったところです。
まだまだいるチョウチョウウオ
その他にも飼育されるチョウチョウウオはいます。黄色と黒の模様が鮮明なアケボノチョウチョウウオ(18cm、1500円)。ドット模様の爽やかなゴマチョウチョウウオ(13cm、1500円)。値段が2万円ほどもする高級品種ゴールデンバタフライフィッシュ(20~30cm)などなど……。それぞれ模様や形、飼育の難易度も変わってきますから、自分に合った、お気に入りを選ぶと良いでしょう。
チョウチョウウオの飼育
ここではチョウチョウウオ飼育の注意点をいくつか挙げてみました。飼育しやすい・しにくいに関わらず生態などはあまり変わりませんので、参考にしてください。
水槽は大きいものを
20cmサイズのチョウチョウウオを飼うには90cm以上の水槽が必要です。60cmでもどうにかなるとは思いますが、生態的に水深の深い水槽が理想で、高さ45cmはほしいので90cmサイズ以上が理想です。まずは大きな水槽が置けるスペースが確保できるか検討しましょう。大型水槽は扱いも大変ですから、メンテナンスなどもしやすいように工夫しなければいけないでしょう。
水温は一定にしよう!
チョウチョウウオ飼育の適温は24℃です。チョウチョウウオはわりと幅広い温度に適応するのですが、あまり水温に上下があるのも体調を崩す原因となるので、ヒーターで一定に保つようにしましょう。環境変化をできるだけ変えないほうが、餌の食いつきもよく安心できるでしょう。
個体数多いのはNG
チョウチョウウオは見た目と違って気性が激しく、縄張り意識も強いのです。過密に飼うことは絶対にしないでください。目安としては水槽幅30cmにチョウチョウウオ一匹のイメージです。90cm水槽なら3匹、120cm水槽なら4匹といったところでしょう。あくまで目安ですが、ケンカさせないゆとりが大切なのです。
白点病には気をつけたい
チョウチョウウオ飼育の難しいのは、病気にかかりやすいというところです。特に気をつけたいのは白点病で、水質が悪化してチョウチョウウオがストレスを感じると、発症の可能性が高まります。予防としてはろ過機できれいな状態を保つ、水替えを増やすことを心掛けます。病気になったら薬の投入をすることです。
チョウチョウウオの餌と餌付け
チョウチョウウオは餌にも気を遣います。上手く餌付けをしないとなりません。
人工餌への慣らし方
人工餌は水質汚染の心配が低く、経済的にも楽になり、チョウチョウウオ飼育にも用いたいものです。チョウチョウウオを人工餌に餌付けするには、根気よくいろいろな種類を試すことでしょう。個体によって好みが違うようで、探りながら与えてゆく作業です。餌付けが上手くいかなければ、生餌にするしかなくなります。
生餌はアサリ。エビ類もOK
チョウチョウウオの生餌にはアサリのむき身がよく使われます。ヒモの部分は食べないので、あらかじめ取っておくと、水が汚れにくくなります。食べ残しもすぐに取り出すほうがいいでしょう。エビ類も食いのいい餌です。それらの生餌を食べるようになったら、一緒に人工餌も与えてみて、徐々に餌付けしてゆくことに挑戦しましょう。
面倒なら餌付け済み個体
店では餌付けされたチョウチョウウオを売っていることがあります。餌付け済みですから、すぐに人工餌を食べてくれます。自分で試行錯誤しながら餌付けするのも楽しいものではありますが、初心者なら餌付け済みの個体を飼うのが無難ですね。
チョウチョウウオの混泳は?
水槽にいろんな種類の熱帯魚が泳いでいるのは美しいものです。チョウチョウウオはどんな魚と混泳できるのでしょうか?
チョウチョウウオは混泳に向かない?
チョウチョウウオと混泳させられそうな種類は、ヤッコ、ベラ、タイ類などです。特にヤッコなどは好相性なのだそうです。ただ残念ながら、チョウチョウウオは混泳に向いた魚とはいえません。気性が荒いうえに、なんでも尖った口で突っつく生態ですので、小さい魚は攻撃されてしまうのです。小さい種類の隠れ場、逃げ場を作ってあげると、混泳させられることもあります。
同族同士はケンカになる
同じチョウチョウウオ、別種類のチョウチョウウオとの混泳はお勧めできません。どうも似た相手が気に入らないらしく、ほとんど喧嘩になって、最悪どちらかが死ぬ場合もあるのです。複数飼育はそれぞれの縄張りが持てる大きな水槽で、互いが気にならない余裕を持たせないとなりません。
サンゴと一緒に育てられない?
サンゴを育てるならチョウチョウウオは絶対にタブーです。チョウチョウウオとサンゴ、アクアリウム的には似合いで観賞のバランスもいいのですが、サンゴはチョウチョウウオの餌になり、食べられてしまうことが多いのです。飼育の上級者でも難しいそうですから、サンゴはあきらめたほうがよさそうです。
チョウチョウウオのまとめ
チョウチョウウオは魅力たっぷり
チョウチョウウオは種類も多く、比較的飼育しやすいものも少なくありません。上手に飼えば10年くらいも楽しめる長寿の熱帯魚でもあります。もともと丈夫な魚で、あんなヒラヒラなのに性格が強気なのもギャップがあって面白いですね。淡水魚よりも育てるのは大変ですが、その分愛着も湧くというものでしょう。