ボルダリング初心者が上達しないのは理由がある
ボルダリング・クライミングを始めた方のほとんどは、しばらくすると壁にぶち当たります。簡単な課題なコースは初心者でも何とかなることが多いのですが、徐々に難しい課題に挑戦する中で、技術や知識なしではクリアできなくなってくるのです。以下で、ボルダリング・クライミング初心者が中々上達しない理由を説明します。
ボルダリング初心者は腕の力だけで登って足を使えていない
ボルダリングは小さいホールドを手で掴んで壁を登るというイメージをもっていませんか?ボルダリング・クライミング初心者は技術がないため、腕の力にものを言わせて強引に登ろうとします。特に比較的筋力のある男性にこのような傾向が強いです。
足の筋力は腕よりも遥かに強い
実は人間の筋肉の大部分は下半身にあります。普段は意識することは中々ないですが、成人では50kg以上の自重を支え、重力に逆らうかたちで二足歩行をするために足の筋力は腕よりもずっと強いのです。
ボルダリング・クライミングでは足を最大限に使う
ボルダリングやクライミングでは、もちろん腕も使わなければ登れませんが、相対的に弱い腕を使いすぎて疲れてしまわないように、筋力のある足を効果的に使って登らなければならないのです。
ボルダリング初心者は効率の良い登り方を理解していない
ボルダリングに必要なのは登るための筋力だと思っていませんか?確かにボルダリングに必要な筋肉を鍛えるトレーニングは重要ですが、筋トレ以上に筋力を無駄に使わないための効率の良い登り方のコツを身に着けることが重要です。
ボルダリング初心者が覚えるべきは正しい基本姿勢とムーブのテクニック
ボルダリングやクライミングにおいて大事なのは、「いかに力を使わずに楽に登るか」ということです。そのためには壁の上で体を安定させるための基本姿勢と、スムーズに次のホールドに移るためのムーブのテクニックをまず覚えましょう。
効率よく登るためにはオブザベーションも大事
オブザベーションとは、登る前にどのように課題をクリアしていくか頭の中でシミュレーションをすることです。もちろん、登る過程で想定通りにいかないこともありますので、登りながら次にどのホールドに移るのか、常に2手先、3手先を見据えて頭の中でコースを組み立てることが重要です。
ボルダリング初心者は必要なトレーニングをしていない
ボルダリングを始めてから中々上達しない人は、日々漫然とジムに行って練習していませんか?もちろん継続していれば少しずつ登れるようになりますが、登り方にはコツがあります。そのコツをつかむためには経験も大事ですが、しっかりと知識をつけて仕組みを理解した上で必要なトレーニングをすることが上達への近道です。
筋トレよりも必要なトレーニングがある
ボルダリングは力が必要なイメージが強いため、トレーニングというと初心者はどうしても筋トレに走りがちです。ここからは筋トレ以外にもボルダリング上達のために必要なトレーニングについて紹介していきます。登り方のコツを練習すれば、筋力がなくても楽に登ることができるようになります。
ボルダリング初心者がやるべきトレーニング:1
基本姿勢
ボルダリングで最も重要になるのが基本の姿勢です。ボルダリングのムーブもこの基本姿勢をベースとして考えられています。この基本となる姿勢は、腕を伸ばして、膝を曲げ、おへそ(体全体)がなるべく壁に近くなるように意識しましょう。
「三点支持」を意識すると安定する
人間には四肢がありますが、ボルダリングでは、このうち三肢で支えて残りの一本の手か足を使って次のホールドに移動していきます。この時、壁についている三肢がきれいなバランスの良い三角形になるように意識すると安定します。
基本姿勢は最も力を使わない楽な姿勢
背中(体幹)や下半身に比べて腕は筋力が弱く疲れやすい部位です。腕を伸ばした状態で維持することで、腕の筋肉の負担をなるべく軽くし、壁に体を添わせ下方にかかる重さを減らすことで、最大限力を使わないように工夫するのが基本姿勢です。まずはこれをマスターしてから次のトレーニングに進みましょう。
ボルダリング初心者がやるべきトレーニング:2
ホールドの持ち方
ボルダリングのホールドは課題の難易度によって大きくてくぼみがある掴みやすいものから、小さくて突起のない掴みにくいものまで、さまざまな形があります。それぞれ持ち方のコツが変わってくるので、日ごろからトレーニングしておきましょう。
ガバ
上向きに深さのあるくぼみが開いたホールドのくぼみに指を入れ、手のひら全体で包み込むように掴む持ち方です。難易度が低く、しっかりと手のひらで掴むことができるので、指の保持力もそれほど必要がありません。
カチ持ち
クリンプとも呼ばれます。第2関節を曲げて、親指を支えに人差し指、中指、薬指を主に使って掴みます。強い力をかけやすいですが、その分指を痛めやすいため、特に初心者は力任せにカチ持ちで体を持ち上げようとして故障しないように注意が必要です。
アンダー
下向きに開いたくぼみに指を入れてホールドをつかむ持ち方です。ガバの逆バージョンです。後ろに体重をかけると安定します。
オープン
第1関節を曲げた状態で、人差し指、中指、薬指の指先をホールドにひっかける持ち方です。指先の摩擦力でぶら下がるイメージで、腕には負担がかからない持ち方ですが、指の保持力のトレーニングが必要になります。
ボルダリング初心者がやるべきトレーニング:4
足の置き方
スタンスに足を置くときは基本的につま先を使います。つま先ではなく足の裏全体を置くことをベタ足と言いますが、ベタ足だと負担の少ない基本姿勢を取りづらく、次のムーブにもスムーズにいけません。ボルダリング初心者はベタ足になりがちなので注意しましょう。
ボルダリングでつま先を使う理由
スタンスの中には足をそのまま乗せられないほど小さいものもあります。その場合はつま先だけで支える必要があるのです。また、ムーブの過程で体の向きを変えたり、スタンスに置いている足を左右入れ替えたりする場面が出てきますが、そのときにベタ足だとスムーズな動きができません。最初は難しいかもしれませんが、簡単な課題でもつま先を使えるように練習しましょう。
自分の足にピッタリ合った靴を選びましょう
つま先にしっかり力を入れてホールドに足を置くには、靴のサイズがピッタリ合っていることが非常に重要です。普通の靴のサイズ選びとは違い、クライミングシューズはつま先に遊びを持たせずジャストフィットするものを選びましょう。
ボルダリングの足の置き方3つのテクニック
ボルダリングの足の置き方には大きく3つのテクニックがあります。まずは足の内側を壁に向ける基本のインサイドエッジ。次に足の外側を壁に向けるアウトサイドエッジ。そしてスタンスにソールを押し当てるように置くスメアリングです。それぞれムーブによって使い分けられるように練習しておきましょう。
ボルダリング初心者がやるべきトレーニング:5
基本のムーブ
ムーブにはいくつもの種類がありますが、ここではボルダリング初心者がトレーニングすべき基本のムーブを紹介します。まずはこれを練習してコツをつかんでください。
正対
正対はその名の通り、壁に対して体をまっすぐ正面に向ける登り方です。ボルダリングの基本となる登り方で、足の置き方は内側を壁に向けるインサイドエッジです。このとき、腕はのばした状態で、なるべく腰(体全体)が壁に近くなるように意識すると安定して楽に登ることができます。
ダイアゴナル
ダイアゴナルは対角線という意味です。まず、掴んだホールドの真下に対角線となる足(右手で掴んだなら左足)をアウトサイドエッジで置きます。そして、掴みたいホールドの対角線上に足を置き、腰を壁に近づけるように体をねじりながら腕を伸ばしてホールドを取りにいくムーブです。非常に汎用の高いムーブですので、コツをつかむまで何度も練習してみましょう。
ドロップニー(キョン)
ドロップニー、またはキョンと呼ばれる基本のムーブです。取りたいホールドをつかむ手と同じ側の足(右手の場合は右足)のつま先をスタンスに置く際に、膝を内側にひねりながら体を壁に近づけ、腕を伸ばしてホールドを取りにいきます。やりすぎると膝を痛めやすいですが、マスターすると便利なムーブです。
ボルダリング初心者がやるべきトレーニング:6
体幹を鍛える
登り方のテクニックも大事ですが、筋トレももちろん効果的です。ボルダリングに最も効果的なのが体幹の筋トレ。体幹とは手足を除いた胴体部分を指します。筋量の少ない腕の負担を減らすために、下半身と同じくらい体幹を上手く使って支えることが重要です。日々負荷がかかっている足と違い、体幹は意識して鍛える必要があります。
体幹の筋トレにはプランクがおすすめ
プランクは体幹を鍛えるためのオーソドックスな筋トレです。うつ伏せから両肘とつま先を立てて腰を浮かした状態でキープをします。このときに腰が地面に落ちて背中が反らないようにするのがポイントです。プランクは体幹だけでなく、下腹部の筋肉を鍛えることができるボルダリングにおすすめのトレーニングです。
ボルダリング初心者がやるべきトレーニング:7
指の保持力を鍛える
ボルダリングはホールドを掴んで登っていくスポーツですが、このときに必要なのは実は握力ではありません。ボルダリングに必要なのは、握る力よりも指先を同じ状態で維持して長くぶら下がるための保持力なのです。
保持力のトレーニングにおすすめなのはフィンガーボード
フィンガーボードはホールドのように指をひっかける凹凸のついたボルダリングやクライミング用のトレーニング器具です。壁などに打ち付けて設置し、くぼみに指をかけて懸垂をすればボルダリングに必要な指の保持力向上に最適なトレーニングを行うことができます。
賃貸などでフィンガーボードを壁に打ち付けるのが難しかったり、移動先でトレーニングをしたかったりする場合は、このような持ち運び可能な吊り下げるタイプのトレーニング器具もあります。
ボルダリングのトレーニングにはレストも重要
ボルダリングは全身の筋肉を使う非常にハードなスポーツです。ジムでムーブの練習をしたり、自宅で筋トレをしたりと休まずにトレーニングを続けていると、疲労がたまることでパフォーマンスが落ちてケガもしやすくなります。トレーニングの効果を最大化するためにも、レスト(休息)はしっかりととる必要があるのです。
3日~4日に1度はレスト日にしましょう
負荷をかけることで傷ついた筋繊維が修復する過程で以前よりも太く丈夫になることを超回復と言います。トレーニングを効果的に行いながら、感覚が鈍くならないようにバランスをとるために、3日~4日に1度の頻度でレスト日をとりましょう。レスト日にも軽めのジョギングなどをする「アクティブレスト」も効果的なのでおすすめです。
正しいトレーニングで初心者を脱却しましょう
いかがでしたか?ボルダリング初心者が上達するためには、筋トレはもちろんですが、基礎となる登り方のコツを身に着ける練習やトレーニングが大切だということがおわかり頂けたかと思います。この記事を参考にトレーニングに励んで、脱ボルダリング初心者を目指してください。