はじめに
車のサスペンション部品の1つであるアッパーマウント、実際どのような部品でどのような役割を果たしているのか、それを紹介します。アッパーマウントの硬軟時期や交換に必要な工具や交換方法、さらにピロアッパーマウントと呼ばれるアッパーマウントにも触れます。
アッパーマウントとは
サスペンション部品の一部
アッパーマウントはサスペンション部品の一部です。アッパーマウントの構造はシンプルです。材料に金属とゴムを使用し、ボルトが3本付けられた構造となっています。
アッパーマウントはサスペンションの最上部分にあります(そのため部品名がアッパーマウント)。車のボンネットを開けるとタイヤの真上あたりに3本ネジとナットで取り付けられているのがアッパーマウントです。
サスペンションを車体に固定する
そのため、アッパーマウントは車体に直接接する部品となります。乗り心地を決めるサスペンションをボディに固定する一部分がこのアッパーマウントとなります。
サスペンション全体を見ると、ブラケットはナックルに固定、さらにサスペンションの一部にタイロッドも取り付けます。この構造からわかるように、アッパーマウントが無ければサスペンション一式を車に取り付けられないのです。
筆者が伝えておきたいことは、もしサスペンションを交換する機会がある、サスペンションを車体構造勉強がてら一度外してみたい、という方がいらっしゃったら、しっかりボルトを締めこんでくださいということです。そこが緩むと重大事故に繋がります、気を付けてください。
アッパーマウントの役割
振動・衝撃を吸収する
アッパーマウントは路面から入力された振動や衝撃を吸収する効果を持っています。乗り心地工場にアッパーマウントは一役買っているのです。
路面から入力された衝撃・振動は初めにタイヤに伝わります。そこからサスペンションを通して車体に及びます。サスペンションと車体の間にアッパーマウントがある構造ですので、いかに重要な部品であるかわかります。
サスペンションの性能を引き出す
サスペンションの性能を引き出すこともアッパーマウントの役割になります。アッパーマウントに使われるブッシュの硬さ・軟らかさでサスペンションへの入力が決まります。
硬いブッシュを使えばサスペンション本来の性能を発揮させる効果があります。反対に柔らかいブッシュだと十分な効果を発揮できません。入力がブッシュをつぶせるところまで潰してからサスペンションに及ぶのです。
アッパーマウント交換の重要性
乗り心地に関わるパーツ
アッパーマウントは車の乗り心地に関わってきます。アッパーマウントが劣化すると直進安定性が悪化する、ブレーキング時におけるジャダーの発生、といった現象が発生するのです。
ちなみに、そのようなへたりが発生すると、異音が聞こえるようになります。運転しずらくなった、異音が聞こえるようになったと、と少しでも感じたら注意しましょう。
スポーツ走行のレベルを高める
スポーツ走行でサスペンションの性能を最大限に引き出すためにもアッパーマウントは重要部品の1つになります。乗り心地の良い純正のブッシュだと軟らかいためサスペンションに力が伝わりにくく、タイムアップにはあまり効果がありません。
サスペンション性能を出し切るために効果のあるアッパーマウントに交換する必要がでてきます。
アッパーマウントの交換時期
アッパーマウントから異音が出てきて気になるようになった、乗り心地が悪化した、と感じるようになったらアッパーマウント交換時期の目安としましょう。異音は最初は小さい音でも次第に大きい異音となります。異音に気になったら早めに整備工場に相談するようにしてください。
アッパーマウント交換に使う工具
異音が聞こえたりアッパーマウントのへたりを感じてきたのでDIYで交換したい、走行距離が伸びたら時期を見て交換したい、そのような方々のためにアッパーマウント交換に必要な工具を紹介します。
フロアジャッキ
フロアジャッキを使って整備車両を下から持ち上げ、ジャキスタンドをジャッキアップポイントに掛けられるようにします。フロアジャッキを掛ける場所はメンバーであることが多いですが、事前に確認しておきましょう。
ジャッキスタンド
ジャッキスタンドを車両に4つあるジャッキアップポイントに掛かるように配置します。ジャッキアップすれば車高調の取り付けからオイル系の交換、マフラー交換など大方の交換作業ができるようになります。
メガネレンチ・ソケットレンチ
アッパーマウントを車体に固定しているナットを緩める・締めるに必要なだけでなく、サスペンションブラケットのボルトの着脱にも必要になります。ABSホース取り外しにも使うので、必ず用意しましょう。ボルト固定の多い構造ということがよくわかります。
インパクトレンチ
インパクトレンチを使えばボルトをより効率的に緩める・締め付けることができます。サスペンションを車体から取り外す際に大活躍です。
構造的にボルトでブラケットなどを固定しているのでそれを手際よく緩める・締め付けるために使用します。タイヤ交換に使えば作業が楽になりますのでぜひ揃えてください。作業性を高めるのに高い効果があります。
スプリングコンプレッサー
アッパーマウントを取り外すと縮んでいるスプリングに力がかからなくなったことで飛び出します。この構造を理解していないと怪我をする可能性が高いです。
そこでスプリングコンプレッサーでスプリングを縮め、それからアッパーマウントを取り外します。トーションビームのスプリングを交換する時にも効果がありますので、機会が有ったら揃えても良いでしょう。
アッパーマウントの交換方法
アッパーマウントの交換に必要な工具を紹介したので、ここでは実際のアッパーマウント交換方法を紹介します。
交換手順1:ジャッキアップする
まずは整備車両をジャッキアップするところから始まります。ジャッキアップポイントを確認しましょう。
どこにフロアジャッキをかけて車両を持ち上げるか、ジャッキスタンドをどこにかけるかわかったら、フロアジャッキで車両を持ち上げ、ジャッキスタンドをかけます。この時、ジャッキスタンドの高さを全て同じにしてください。
ジャッキアップポイントにスタンドを置いたら、フロアジャッキをゆっくり下ろしていきます。
交換手順2:タイヤを外す
ジャッキアップできたら、次にタイヤを外します。インパクトレンチを持っている方はそのままホイールナットをインパクトレンチで外してください。インパクトレンチを持っていない方は、ジャッキアップする前に十字レンチなどを使ってホイールナットを緩めてください。緩めるだけです。ジャッキアップ完了後に完全に緩めてタイヤを外します。
交換手順3:サスペンションを車体から取り外す
タイヤを外し終えたら、サスペンションを車両から取り外します。冒頭で少し紹介したように、車両からサスペンションを外すにはアッパーマウントの取り付け部分(ボルト3-4本)とサスペンションブラケットとナックルの取り付けネジ2本、そしてサスペンション上のABSホース固定部ボルトとタイロッド固定部、これらを外せば取り外すことができます。
メガネレンチとインパクトレンチがあれば外せます。サイズは8-14のメガネレンチに17mmサイズインパクトレンチがあればよっぽど大丈夫です。最後に外すボルトはアッパーマウント上のナットにしましょう。
そうすればサスペンションがいきなり落ちてくる心配はありません。取り外しついでに、他の部品でへたり始めたところがないか、ドラシャのブーツが破れてないか、なども確認しておきましょう。
アッパーマウントを取り外す
取り外したサスペンションからアッパーマウントを外します。アッパーマウントを固定しているナットをインパクトドライバーで緩めて外してください。スプリングに事前にスプリングコンプレッサーを付けておきましょう。
新しいアッパーマウントを付けたら、これまで紹介した手順を再度行い車両に部品を再度取り付けます。無事ジャッキから車を下ろしたら、最後にホイールナットを規定トルクで締め付けてください。
ピロアッパーマウントとは
金属製マウントとベアリングでできたアッパーマウント
ピロアッパーマウントは金属製マウントとベアリングで構成されるアッパーマウントです。車高調式サスペンションに多く採用されています。ブッシュの代わりに使っているベアリングのことをスフェリカルベアリング(ピロボール)といいます。
調整機能が付いたタイプもある
ピロアッパーマウント自体に調整機能が付いたタイプもあります。車高調式サスペンションでピロアッパーマウントの調整機能が付いていれば、車高の変更に加えてキャンバー角やキャスター角の変更も可能です。乗り心地を良くも悪くもできます。
ピロアッパーマウントに交換するメリット
純正アッパーマウントから車高調兼ピロアッパーマウントに交換するメリットを紹介します。
アライメント調整をできる
調整式ピロアッパーマウントに交換すればアライメント調整の幅が広がります。車高調タイプによくついているこの調整機能を使うと、アッパーマウント上からのキャンバー角のセッティングが可能になります。
スポーツ走行車の車高調によく使われ、車高調整とキャンバー角を変化させてタイムアップを狙う人には便利な機能です。
サスペンションの性能をより引き出す
ピロアッパーマウントを使うことでサスペンションの性能をより引き出すことができます。既に紹介したように、純正アッパーマウントのブッシュは入力がかかるとへたります。そうなるとサスペンション本来の性能を発揮できません。
ピロアッパーマウントはへたりの心配があるブッシュを使わずにベアリングを使っています。そのため弾性を持つブッシュとは異なり、サスペンションに地面からの入力が伝わりやすくなります。路面の凹凸も感じやすくなります。
ピロアッパーマウントに交換するデメリット
ベアリングが劣化する
ピロアッパーマウントに交換するデメリットの1つはベアリングが劣化することです。ピロアッパーを使うにつれて、ベアリングにガタが出始めます。
ベアリングが劣化してガタが出始めれば、乗り心地も悪化し、せっかく取り付けた車高調もピロアッパーも本来の性能を発揮できなくなります。オーバーホールできるタイプならオフの時期に合わせてリフレッシュするのも良いです。
乗り心地が悪化する
ピロアッパーマウントに交換するデメリットのもう1つは、乗り心地が悪化することです。ここで言う乗り心地は運転手・同乗者が快適と感じるかどうかに着目した乗り心地という意味になります。
弾性で衝撃吸収の効果があるブッシュをベアリング(ピロ)に交換するわけですから、アッパーマウントへの入力がよりダイレクトに伝わります。ブッシュのへたりで衝撃を吸収していた分もサスペンションに伝わり、乗り心地は路面に合わせて悪化します。
まとめ
乗り心地やサスペンションの性能発揮に重要なのがアッパーマウントです。もし異音が出ていたり異音が大きくなった、走行距離が増えたから交換時期が気になる、など疑問点があったら行きつけの整備工場に相談しましょう。
ゴムのへたりを少なくしてスポーツ走行したいと方は強化品を購入すると良いです。
もちろん時期に合わせてDIYで交換するのもOKです、知識・経験も増え工賃節約できますので。目的に合ったアッパーマウントを使いましょう。