彼岸花(曼珠沙華)ってどんな花?
地球温暖化のニュースが騒がれていても我関せず、毎年、秋のお彼岸の時期を待っていたかのように一斉に咲き誇る彼岸花。その凛とした姿に立ち止まり、日常の忙しい時間を忘れ、亡くなった故人を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
彼岸花の原産国や開花時期、品種など、基本情報をお伝えします。
彼岸花(曼珠沙華)はどこから来たの?
彼岸花(曼珠沙華/ヒガンバナ)は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属に分類される多年草です。日本全土でみられますが、自生ではなく中国から持ち運ばれ、人為的に植えられたと考えられています。
人里で生育し、墓地や田畑の周辺によくみられますが、まれに奥深い山中にみかけることも。それは昔、そこに集落があった可能性を示唆しています。
彼岸花(曼珠沙華)の開花時期
彼岸花は、9月のお彼岸の時期を待っていたかのように開花します。開花期間も数日と短く、お彼岸の時期の終わるころには花も枯れてしまいます。花が咲く時には葉がなく、一本の茎がすっと伸びた先に大輪を咲かせる彼岸花。
葉は花が枯れた後に伸び始め、葉は冬から春にかけて栄養素を休みなく球根に送り続け、来年の秋にまた開花させる準備をしているのです。
彼岸花(曼珠沙華)の花名の由来
彼岸花という名前はどこから来たのでしょうか?花の名前の由来は2つあるといわれています。ひとつはその名の通り、秋のお彼岸の時期に一斉に咲くことから。もうひとつは、彼岸花の球根には毒があり、これを食した後には「彼岸(あの世)」しかない、という意味からきています。
彼岸花(曼珠沙華)の品種
彼岸花は品集改良を重ね、その品種は30種類以上にものぼります。彼岸花といえば赤のイメージが強いですが、実は、赤のほかにも黄色と白い品種があることをご存知でしたか?代表的な2つの品種のそれぞれの特徴を説明していきます。
黄色の彼岸花(曼珠沙華)ショウキズイセン
黄色の品種は「ショウキズイセン」、別名「ショウキラン」です。四国から沖縄にかけての日本南部に多く見られ、開花時期は赤い彼岸花より少し遅く、10月上旬から中旬にかけて咲きます。1本の茎に黄色の花を5~10個つけます。
白い彼岸花(曼珠沙華)シロバナマンジュシャゲ
ヒガンバナとショウキズイセンの自然交雑種と考えられています。日本全土に咲きますが、九州などの日本南部に見られ、花茎の先に数個の花を咲かせます。花の色は白く、赤い彼岸花に比べると花のカーブがゆるく、また違った優しい雰囲気を持つ花です。
シロバナマンジュシャゲは交配力が弱いとされ、とても珍しい花だといわれています。
彼岸花(曼珠沙華)の花言葉
彼岸花は、色によって主に3品種があることを先述しましたが、花言葉も色によってそれぞれ違います。墓地によく植えられていることもあって、不吉、怖いなどのマイナスなイメージが先行してしまう彼岸花ですが、その花言葉には、意外な意味が隠されていることをご存知でしたでしょうか?
赤い彼岸花の花言葉
◆情熱 ◆想うはあなたひとり ◆あきらめ ◆再会 ◆悲しい思い出 ◆また会う日を楽しみに 「情熱」「想うはあなたひとり」の花言葉は、彼岸花の天にむかって真っ赤に咲き誇るその姿から、天国にいる愛しい人への強い想いが想像できます。
「あきらめ」は、日本語ではギブアップの負のイメージが強いのですが、仏教用語では、「真実」「悟り」という意味。自分の心と向き合い、真実をみつめ「明らかにする」という、残された人の心を癒す素晴らしい言葉なのです。
黄色い彼岸花の花言葉
◆陽気 ◆元気な心 ◆深い思いやりの心 ◆追想 彼岸花には実は、「陽気」「元気な心」というポジティブな花言葉もあることをご存知でしたか?愛しい人の死をしっかりと受けとめ、その悲しみを背負いながらも前を向いて歩いて行こう、という固い決意を感じさせる花言葉です。
白い彼岸花の花言葉
◆想うはあなたひとり ◆またあう日を楽しみに 「想うはあなたひとり」は、赤い彼岸花にも共通する花言葉ですが、その一途な個人に対する純粋な想いは、白い彼岸花にぴったりです。
今は離ればなれになってしまったけれど、いつかまた必ずどこかで会えると信じることによって、強く再生していくイメージが湧きます。花は見ているだけではなく、その花が持つ花言葉を知ることで、もっと心の深いところから癒されるのかもしれません。
良いことが起きる前兆!別名「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」
不吉なイメージを持つ彼岸花
別名が多いことで知られている彼岸花。日本全国で群生しているため、地方でつけられた方言を含めると1000以上もの別名を持ちます。
墓地でよく咲くことから「死人花(しにびとばな)」「地獄花(じごくばな)」、さらには「幽霊花(ゆうれいばな)などと呼ばれることもあります。
しかし、その反面、めでたい前兆と言われている「曼殊沙華(マンジュシャゲ)」という別名を持つことでも有名です。
彼岸花には地方によってさまざまな呼び名があります。墓地で見かけることが多いからか、怖いイメージの異名が多いです。 ◆死人花(しにびとば) ◆幽霊花(ゆうれいばな) ◆地獄花(じごくばな) また彼岸花の球根には毒があります。
毒性に由来した別名も紹介しましょう。 ◆毒花(どくばな) ◆痺れ花(しびればな) 毒を口にすると痺れが起こることや、子供が誤って食べないように、わかりやすい別名をつけたのかもしれません。
めでたい曼珠沙華(マンジュシャゲ)
彼岸花のことをあえて、曼殊沙華(マンジュシャゲ)という人がいるほど有名な別名です。曼殊沙華(マンジュシャゲ)とは、仏典に由来し、サンスクリット語で「天界の花」という意味を持つ花です。おめでたいことが起こる前に、天から花がひらひらとふってくる「良いことの前兆」だと語り継がれています。また、仏教では曼殊沙華(マンジュシャゲ)は白く柔らかい花とされ、それを見たものの悪業を払うとも信じられています。
おもしろい別名や迷信
赤い彼岸花の姿から「火」にまつわる別名もあります。 ◆狐の松明(きつねのたいまつ) ◆狐花(きつねばな) 彼岸花の姿から炎を連想させ、彼岸花を持って帰ると家が火事になるという迷信もあります。
◆捨て子花(すてごばな) ◆はっかけばばあ 彼岸花は、花が咲いている時には葉がありません。
親(葉)がいない子供(花)という由来からこの別名がつけられました。はっかけばばあは、彼岸花の毒を食べると歯が抜けるという迷信から来ているのかもしれません。
先人の知恵が詰まった彼岸花(曼珠沙華)
すべての部分に毒がある彼岸花
花、葉っぱ、球根、茎、すべての部分にリコリンやガランタミンという毒があります。特に強い毒が含まれているのが、玉ねぎのような形をした球根の部分です。
誤って口にしても、少量の場合はほとんど問題がありませんが、多量に摂取すると、嘔吐、吐き気、けいれん、痺れ、下痢など、重篤な場合は中枢神経の麻痺を引き起こします。
毒性を利用した忌避剤として
墓地でよく見かけるのは、この彼岸花の持つ毒性をうまく利用したためです。まだ土葬だった時代に、モグラやネズミに遺体を荒らされないために、彼岸花が人為的に植えられました。
毒性を利用した忌避剤としての役目。これこそ理にかなった使い方であり、先人の知恵になるほどと思わずにはいられません。彼岸花は、その場所にしっかりと根を張り、毎年咲き続け、故人を静かにそっと見守ってくれる存在なのです。
昔は救荒作物だった彼岸花
彼岸花の球根は、豊富なでんぷんが含まれており、しっかりと毒抜きをすればジャガイモに匹敵する貴重な救荒作物でした。リコリンは水に溶ける性質を持ち、長い時間水に浸しておけば解毒できる可能性があるので、戦時下や食糧難の時代には救飢植物として重宝されたこともあります。
西洋で人気の彼岸花(曼珠沙華)は?
日本の里山にすっかり溶け込んでいる彼岸花ですが、海外では同じヒガンバナ科の「ダイヤモンドリリー」が人気を集めています。ダイヤモンドリリーの原産地はアフリカで、日に当たるとキラキラとダイヤモンドのように輝くことからその名前がつけられました。
ダイヤモンドの原産国で有名なアフリカならではの由来です。日本で咲く赤い彼岸花との違いは、まずひとつに毒がないこと。それから、開花時期間が1ヵ月ほどで長く鑑賞を楽しめるというところです。
まとめ
今までの不吉なイメージとは裏腹な、彼岸花(曼殊沙華)の持つ意外な一面を記事にしました。少しは怖いイメージが払拭できましたか?今年の秋のお彼岸は、今までとは違った視点で彼岸花を眺めることができるのではないでしょうか。