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アクアポニックスとは?「魚×野菜」で育つ仕組みと自作方法をご紹介!

養殖と農業が合体したアクアポニックス。水耕栽培とアクアリウムの組み合わせ、安全な野菜や果物が驚くほど収穫できる画期的なシステムです。おしゃれなデザイン性の高いキットも発売されていますし、自作も簡単。自作のアクアポニックスで大きな収穫を手に入れましょう!
2020年8月27日
漣子
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アクアポニックスシステムとは

一石二鳥のシステムで自作も可能

アクアポニックスとは一言で言うと、魚を育てながら、その水で野菜を栽培するシステムです。魚に餌を与えると、フンや尿が出ます。これが植物の育成に必要な養分となり、野菜が育つという仕組みです。農業と漁業の両方が一度にできる仕組みで、一石二鳥の、大変優れたシステムです。自作もできますし、インテリアとして楽しめるキットも販売されています。

アクアポニックスの歴史

アクアポニックスという言葉自体は新しくできたものですが、アクアポニックス自体は実は世界各地で太古から行われてきた農業です。南米のチチカカ湖という湖では、湖の沿岸の葦を湖面に積み上げて浮島を作り、その 上で畑作が行われています。畑の周りの湖では、淡水魚の漁業も行われています。これもアクアポニックスの一種で仕組みは同じです。

アクアポニックスと水耕栽培の違い

アクアポニックスは水耕栽培の一種

アクアポニックスによく似た栽培システムに、水耕栽培があります。基本的な仕組みはほとんど同じです。水耕栽培で養分として添加する液肥を、魚の飼育水に置き換えたものがアクアポニックスです。

システム上の水耕栽培との相違

水耕栽培は一つの水槽を使いますが、アクアポニックスシステムは魚を飼う水槽と、植物を育てる水槽の二つが必要になります。魚が植物の根を傷める恐れがあるし、魚自体も水面が露出しているほうが管理しやすいからです。アクアポニックスでは二つの水槽をポンプで循環させる仕組みが必要となります。

アクアポニックスは安全な農漁業

無農薬なアクアポニックス

アクアポニックスは魚の飼育と植物の育成がセットになるため、魚に影響が出るような農薬は使用できません。逆に魚が病気になっても、魚病薬は投入できません。つまりアクアポニックスで育てる野菜は無農薬となり、魚にも薬品を含まないものとなります。

化学肥料を使わないアクアポニックス

アクアポニックスでは野菜の養分はすべて魚の餌の食べ残し、フンや尿となります。普通の水耕栽培が化学肥料を使った液肥を投入して栽培する仕組みなのに対し、アクアポニックスでは原則、化学肥料は使いません。すべての養分の源は魚の餌となります。そういう点では 、動物の糞を利用した堆肥を使う有機農業と安全性は変わりません。

自作アクアポニックスで安全、新鮮な野菜を食卓に

有機無農薬の野菜を食べよう

アクアポニックスは自宅で手軽に有機無農薬の野菜を手に入れることができる、夢のようなシステムです。天候不順で野菜の価格が高騰しても平気。産地も栽培方法もわからない、安全性が保障されていない野菜を口にする不安もありません。

とれたて、もぎたてをその場で味わおう

もぎたてのトマトや摘みたてのほうれん草を食べることは、農園で収穫体験でもしなければ不可能です。しかしアクアポニックスシステムで野菜を栽培すれば、キッチンガーデンを持っているのと同じ。いつでも新鮮な野菜やハーブが手に入ります。

自作のアクアポニックスに必要なシステム

自作のアクアポニックスに必要なのは二つの水槽とポンプ

アクアポニックスの仕組みに必要な主な道具は、魚を飼う水槽と、植物を育てる水槽です。その二つを循環させるポンプと、発泡スチロールの板が一枚あれば十分です。自作も簡単です。


自作ならホームセンターですべての材料がそろう

自作するならばすべての材料が一つのホームセンターでそろいます。工作の技術もほとんどいらず、特殊な工具も必要ありません。 最も簡単な仕組みのアクアポニックスは、ペットボトルを使った方式。ペットボトルの肩の部分を切断して漏斗状の部分を切り離し、上下逆さまに差し込む仕組み。水を入れてメダカなどを放し、上部にウールマットを敷いてハーブや野菜の種を撒けば、立派なアクアポニックスのできあがりです。

インテリアとしてのアクアポニックス

インテリアとしても魅力的なアクアポニックス

現在、様々なメーカーがアクアポニックスシステムキットを開発し、販売しています。これらのキットはインテリアとしても十分に魅力的です。熱帯魚や金魚などが泳ぐ水槽の周辺でレタスが森のように茂り、イチゴが鈴なりにぶら下がるという、とても不思議なキット。家族の楽しみも増えますし、来客者も驚くでしょう。小型のものもあり、ちょっとしたインテリアとして部屋に彩りを与えてくれます。

インテリアとしてのアクアポニックスの仕組み

インテリアとしてのアクアポニックスはデザイン性を重視した設計で、スタイリッシュな家具とも調和するキットも多数あります。インテリアを扱う家具店や大型の園芸店のインテリアコーナーなどでさまざまなキットが売られています。水温や野菜の成長に必要な光を提供するLEDライトなど、 一括管理できる手間いらずのキットセットも、安価で発売されるようになりました。部屋のアクセントとして、オブジェとしても申し分ない存在感となります。自然と人が集まる、不思議なインテリアとなるはずです。

アクアポニックスは多収穫

困るくらい野菜が収穫できる

アクアポニックスは畑やプランターで土を塚って栽培する野菜と比べて、ずいぶんと成長が早く、収穫量も比較できないほど多くなります。同じ時期に種まきをしても、アクアポニックスの方が早く収穫できますし、ミニトマトなどは消費できないほど実ります。

成長速度の秘密は根

多収穫の理由は、根の成長にあります。ある程度栽培したアクアポニックスの根は、水槽を埋め尽くすほど成長し、マット状になっています。田畑で栽培した場合、根はこれほどまでに成長することはできません。いくら深く耕しても、土の粒子が根の成長の妨げとなり、水中で自由自在に伸びていくような成長は望めません。

アクアポニックスキットの設置

初心者も簡単にアクアポニックスができる

現在、アクアポニックのキットが各種発売されています。数千円から数万円まで、規模やデザインに応じて様々なキットがあり、通販で簡単に手に入ります。初心者だからといって小規模から始める必要は無く、仕組みは同じなのですからでも最初から好きなサイズで挑戦してみましょう。アクアポニックスは失敗することが非常に少ない栽培システムです。

まずは魚を飼う

キットを手に入れたら手順通り組み立て、まずは魚の飼育を始めます。常温でも飼育できる金魚などが、最初はおすすめです。カルキを抜いた水を張り、金魚を投入します。餌を与えつつ数日間飼育すると、ほどよく水が汚れてきます。この汚れこそが野菜の養分となります。

次ぎに種を撒く

一定の養分が水中を満たしたら、種を撒きます。多くのキットでは、種はウールマットなどの上に撒く形式となっており、湿っていればすぐに発芽します。発芽した後は急速に成長します。魚がいない水では、発芽はしますが成長は栄養不足により遅くなります。

アクアポニックスは光が重要

アクアポニックスは日当たりの良い場所で

成長し始めた芽は、直射日光を浴びながらグングン育ちます。窓際やベランダなど、なるべく日が当たる場所に設置 しましょう。一定の養分があっても、十分な日光がなければ植物は成長しません。逆に気温が低い冬でも、日光さえ十分に当たっていれば、順調に成長していきます。

LEDライトで光を


日光が不十分な環境でも心配はいりません。LEDライトで植物に必要な光線を当てれば、順調に成長していきます。LEDライトは消費電力も少なく、24時間点灯し続けることも可能。インテリアとして部屋に間接照明の柔らかな光をもたらします。野菜の成長速度も自在にコントロールできます。

アクアポニックスの自作/水槽と植床の選び方

「トロ船」を使うと簡単に自作できる

キットを使わず、アクアポニックスを自作するなら、「トロ船」や「プラ船」と呼ばれる畳一畳ほどの容器を利用するのが便利です。これらは本来、セメントなどを 混ぜる際に使われる容器で、頑丈。金魚のランチュウなどを飼う愛好家が飼育水槽として使うこともあります。インテリアとしては無骨すぎますが、実用性が高い容器です。魚の飼育用と、野菜の栽培用に、二つのトロ船を用意します。

発泡スチロールで栽培床を自作する

厚さ1センチほどの発泡スチロールを用意します。大きさはトロ船全体を覆えるサイズで、カッターナイフでトロ船にぴったり合うように切断します。これをトロ船に浮かせて、1センチ四方の穴を開けます。穴にウールマットを詰めて、植床とします。

アクアポニックスの自作/二つの水槽の連結

トロ船の連結も自作

植床としたトロ船と、魚を飼育するトロ船を連結します。最も簡単で確実な方法は、植物栽培用のトロ船を、魚を飼育するトロ船に重ねる方法です。 重ねる前に、上部のトロ船に穴を開けてパイプを通し、植床の水位が一定に保たれるように加工します。

水中ポンプで循環

魚の飼育水槽の水を水中ポンプでくみ上げ、植物育成用の水槽に注ぎます。オーバーフローした水は再び魚の水槽に戻ります。水中ポンプは観賞魚飼育用のものが頑強で使いやすく、価格も手ごろです。循環させる水の量は水道の蛇口を半開した程度よりも少ない量を、目安とします。室内で使うのであれば静音設計のものにすると水音も気になりません。 

濾過は基本的に不要

魚のフンや尿で汚れた水は植物の育成用水槽に流れ込み、編み目のように伸びた根の間を通ります。目には見えませんが、根には無数のバクテリアが付着しており、盛んに有機物を分解します。根は有機物が分解された成分を、肥料として吸収します。 このため、魚のための特別な濾過は必要ありません。

アクアポニックスは根菜類が苦手

アクアポニックスは根菜は苦手

アクアポニックスは小松菜や春菊などの葉野菜、トマトやナスなど実の成る種類の野菜の栽培で、特に実力を発揮します。しかし大根やゴボウ、芋類など、根が成長する種類の植物の栽培には、残念ながら適していません。

アクアポニックスは果物も育てられる

根菜が苦手なアクアポニックスですが、メロンやイチゴなどの果物も栽培できます。メロンなどは条件を整えれば、高価な市販品と変わらないほどのできばえが期待できます。アクアポニックスだからといって特別な管理をする必要はなく、畑などで栽培する時と同じ栽培方法を守れば、ほとんど失敗しません。

アクアポニックスで人気の野菜

おすすめの野菜の種類①ミニトマト

アクアポニックスで栽培をおすすめしたい野菜の代表は、ミニトマト。さまざまな種類があります。5月ごろに植えれば、晩秋まで、ずっと収穫できます。使い勝手の良いミニトマトですが、アクアポニックスでは収量が尋常ではないため、食べても食べても追いつかないほど。ドライトマトやトマトソースで保存するなど、工夫が必要になることもあります。

おすすめの野菜の種類②シュンギク

アクアポニックスは冬でも十分に野菜を育てます。特におすすめなのがシュンギク。種を撒けばあっという間に成長し、放っておくとジャングルのように茂ってしまいます。鍋物やみそ汁で消費しても追いつかないほど。春先まで楽しめます。 


おすすめの野菜の種類③小松菜

一年中収穫できるのが小松菜。収穫を繰り返しても不死鳥のように次々と新しい芽を出し、復活します。畑で栽培するよりもずっと成長速度が速いため、青物の価格が高騰したときなどには大変重宝します。

アクアポニックスで緑のカーテンも自作

緑のカーテンは意外と肥料食い

夏の強烈な日差しを防ぐために、ゴーヤやアサガオで緑のカーテンを作る人が増えました。しかし広い面積をカバーする場合はかなりの追肥を必要とするため、肥料不足で失敗する例が多く見られます。アクアポニックスならその心配は無用。蒸散で失われる水を補給しさえすれば、直射日光を浴びて恐ろしいほどの勢いで成長します。

自作アクアポニックスでおいしいカーテン

パッションフルーツやゴーヤなどは、甘い実やビタミンたっぷりの実をプレゼントしてくれる、おいしいカーテンです。一石二鳥のアクアポニックスで日陰を作るのですから、おいしいカーテンなら一石三鳥。夏が来る前に挑戦してみてはいかがですか。

アクアポニックスに適した魚の種類

種類①金魚がベスト

ベランダや庭先など、外気温の影響をもろに受けるところでは、アクアポニックスには金魚が適しているでしょう。金魚は0度前後に水温が下がっても生存することができるため、1年中、飼育できます。トロ舟一つ当たり小型で7~8匹が適正な数です。日本産のコイ科は種類を問わず適しています。

種類②日本産淡水魚

コイは大型になりすぎるためシステムが小型だと飼育が難しいですが、フナやタナゴ、モツゴなどのコイ科の魚は丈夫で飼育しやすくアクアポニックスに向いています。オイカワやカワムツ、ドジョウなども適しています。

種類③ウナギ、ナマズ

ウナギやナマズは肉食で大食なので、飼育水が汚れやすい魚です。それはそれだけ植物に養分をたっぷり供給できるということでもあります。食用としていただくにしても美味なので、アクアポニックスの組み合わせには理想的な魚と言えます。ウナギもナマズも各地で養殖がされていますが、餌の残りやフン、尿による水の汚れは悩みの種。アクアポニックスを組み合わせ水を浄化し、野菜も収穫できるシステムの構築の研究も進められています。トロ舟一つ当たり1~2匹が限度です。

種類④熱帯魚

海外ではアフリカ産のティラピアという種類の魚がアクアポニックスにベストな魚だとされています。国内でも「イズミダイ(泉鯛)」などとして養殖されたことがある、鯛によく似た身をした雑食性の魚で、重要な蛋白源となっています。観賞用の魚も十分にアクアポニックスで使えますが、いずれも冬にはヒーターによる加温が必要で、電気の消費量も多くなってしまいます。

アクアポニックスの未来

温暖化や自然災害など、あらゆるリスクが待ち受ける将来において、野菜と魚を確実に獲ることができるアクアポニックスは、過酷な自然環境の国々を始め、世界中で急速に広まっています。人口爆発による食料不足を補い、安全な有機無農薬野菜を供給できるという点で、人類を救う技術と行っても過言ではありません。