はじめに
芦屋といえばマダムのイメージですよね。山の手には富裕層の邸宅がある街。そんな芦屋には意外にも、六甲山系のハイキング、トレッキングコースの一端を担う芦屋ロックガーデンがあります。ハイカーには周知の事実ですが登山やハイキングに無関係な人は阪神間在住でもロックガーデンの存在さえ知りません。
古くからある登山フィールド
ロックガーデンは実は古くからあるロッククライミングという、岩場での山登りのフィールド(ゲレンデ)なんですが、街中から近いので、初心者や子どもでも非常に気軽に体験できる場所になっています。この記事では芦屋ロックガーデンについて詳しくご紹介します。 ※画像はロックガーデン、ピラーロック
芦屋ロックガーデンとは
芦屋ロックガーデンは芦屋市三条町と神戸市東灘区本山町森の市境に跨る六甲山系に特徴的な花崗岩の岩肌が多く露出した一帯。大正時代後期(1924年ぐらい)あたりからロッククライミングの自然フィールド(ゲレンデ)で、日本のロッククライミング発祥の地と言われています。
藤木九三氏が命名
日本のロッククライミングのパイオニアとされる藤木九三氏が「ロックガーデン」と命名し、芦屋ロックガーデンの入り口である高座の滝には同氏のレリーフが埋め込まれています。ちなみに芦屋ロックガーデンは施設や公園ではありませんので電話番号や駐車場、入場料等はありません。広いエリアではありませんが、山ですので事前に登山ルートが載っている地図を準備しましょう。
ロッククライミングについて
ロッククライミングはロック(rock)は岩、クライミング(climbing)は登ることで、岩登りと訳すことが出来ます。ロッククライミングには大別してアルパインクライミングとフリークライミングの2種類があるとされています。アルパインクライミングは山登りをする中での岩場登りで、フリークライミングは純粋に岩場を登ることを目的としています。最近はやりのボルダリングはこのフリークライミングの一種で、シューズとチョーク(滑り止め)だけで岩を登る競技です。 ※画像は芦屋ロックガーデンではありません
芦屋ロックガーデンと藤木九三氏
藤木九三(1887~1970)は京都府福知山市出身の新聞記者で登山愛好家でした。1919年に朝日新聞神戸支局となり、兵庫県西宮市に居を構え、以後、頻繁に六甲山に登り、現在の芦屋ロックガーデンにロックガーデンという名前を付けました。そのため、芦屋ロックガーデンの登り口である高座の滝の左側に同氏のレリーフが埋め込まれています。現地に行かれた際は是非確認してください。藤木氏は近代登山技術を日本に広め、初めてのロッククライミングのための会RCCを結成し、活動したロッククライミングのパイオニアとされています。
芦屋という街について
六麓荘、奥池に代表される高級住宅街
兵庫県芦屋市は山の手が高級住宅街として全国的に有名ですね。余談ですが、阪神間の人間なら一度は芦屋、西宮の山の手高級住宅街ツアーをした人も多いと思います。芦屋市は不自然なくらい東西に短く、南北に長い形をしており、北端の奥池町は六甲山頂に接しています。ですので、芦屋市の山の手側は高級住宅街としての顔と六甲山登山、ハイキングへの主要な登り口の一つとしての顔を持っています。もう、ハイキングに来たのか住宅見学に来たのかわからなくなります。
六甲山系への東側登山口
芦屋ロックガーデンへのアクセスは後程ご紹介しますが、8本ほどある芦屋からの六甲山への登山、ハイキングコースは阪急芦屋川駅に起点が集中している中で、1コースだけ芦屋市の一番東側にある六麓荘登山口から奥池に至るコースがありますが、このコースは最寄りの駅が西宮市の苦楽園口駅になっており、登山、ハイキングコースでありながら苦楽園、六麓荘、奥池という高級住宅街を巡るコースにもなっています。
アプローチコースもたくさん
芦屋、西宮、宝塚は六甲山系への東からのアプローチコースがたくさんあります。地図を見てもらえばわかりますが、一旦芦屋の山麓を抜けて出る奥池町は山の田舎町ではありませんので、車やバスで舗装された道路でアプローチできます。 ※必ず市販の登山ルート地図をご用意ください
芦屋ロックガーデンへの行き方
桜の名所芦屋川を川上へ
芦屋ロックガーデンは最寄駅の阪急芦屋川駅から約1キロ強、徒歩20分ほどの距離にあります。駅の真下を芦屋川が流れていますので、右岸沿い(つまり西岸)に道路を川上に向かって歩きます。4月は桜がきれいですよ。300mほど行くと芦屋川(右)と高座川(左)に分岐します。分岐点の橋に「高座の滝、ロックガーデン」と書いてある標識がありますので矢印の通りに右側、芦屋川の西岸を川上に向かいます。また100mほど行きますと、道が分かれますが、また標識がありますのでその通り左の道を進んで行くと、また標識があり左折する道がありますので左折して住宅街に入ります。
芦屋らしい住宅街を抜ける
しばらく立派な住宅を左右に見ながらを歩くと左側が「会下山遺跡」、右側が「城山、高座の滝」という標識がありますので右の方に行きます。後はこの道を真っすぐ山の方へ向かうと左側に高座川を見ながら「ロックガーデン」と書いてある滝の茶屋に着きます。邸宅に目を奪われすぎると標識を見落とすと迷うかもしれませんよ。またロックガーデンへの行き方はこの道だけではありませんし、阪急岡本駅からの登山、ハイキングコースからでもアプローチできます。
芦屋ロックガーデンのコース攻略
中央稜(尾根)コース
高座の滝から先が芦屋ロックガーデンなんですが、標識の風吹岩の方角を目指して中央稜(尾根)を通るルートが初心者にはおすすめです。 中央稜コース:高座の滝を登った後の分岐を右で中央稜へ、風吹岩手前の鉄塔の南側がピラーロックになります。小学校の遠足、ハイキングコースでもあるので子ども連れ、初心者はこちらへ。風吹岩に登ると眺望もとてもよいですよ!
芦屋地獄谷コース
芦屋地獄谷コース:ロッククライミングの醍醐味が味わえる中級者以上の方にお勧め。高座の滝の石段を登った分岐を左へ沢沿いを進み小便滝からAケン⇒Bケン跡⇒ピラーロック⇒風吹岩に至りますがコースなきコースです、経験者には人気コースですが初心者だけならやめておきましょう。大人の同伴者が経験者なら小学校高学年ぐらいなら大丈夫でしょう。地図があってもあまり役に立ちません。
高座谷コース
高座谷コース:高座の滝から中央稜に向かう石段を上がり歩いていくと右側に「落石注意」の看板があり右手の高座川の沢沿いに進みます。やがて2段の大きな堰堤(峰の池)の左脇を通ると左右に分岐するので左に行くとだるま岩を経由してその先の複数分岐を左で魚屋道、下って風吹岩へ。堰堤の分岐を右に行くとキャッスルウォール、荒地山方面ですがこちらも小さな子ども連れ、初心者だけの場合おすすめできません。 ※山と高原地図49 六甲・摩耶、須磨アルプス(昭文社)が見やすくておすすめです、ロックガーデンのコース地図も載っています
芦屋ロックガーデンからのハイキングスコース
芦屋ロックガーデンから足を延ばす
もうロックガーデンで十分という方もさらに上を目指す方もとりあえず風吹岩を目指しましょう。芦屋川駅から風吹岩まで1時間前後です。初心者でもここまでは十分来れます。到達したらいくつかのコースの選択肢があります。
もう十分という方は
ここから芦屋川駅に戻るか、風吹岩⇒金鳥山(約30分)⇒保久良神社(約20分)⇒阪急岡本駅(約20分)を目指してもよいでしょう、1時間程度です。
さらに上を目指すなら
風吹岩⇒雨ヶ峠(約1時間)⇒東お多福山(約20分)⇒東お多福山登山口(約30分)から芦屋川沿いに芦屋川駅に向かうコース(登山口バス停あり)、または東お多福山登山口⇒奥池(約30分)⇒ごろごろ岳(約30分)⇒苦楽園口駅(約1時間30分)を目指してもよいでしょう。体力が有り余っている方は六甲山頂、そして有馬温泉を目指しましょう!
芦屋ロックガーデンから六甲山頂への行き方
芦屋ロックガーデンから六甲山頂までの行き方ですが、風吹岩に到着したら、王道コースとして雨ヶ峠⇒本庄橋跡⇒七曲⇒六甲山頂(一軒茶屋)から最高峰地点を目指しましょう。初心者にもおすすめのコースです。雨ヶ峠⇒東お多福山⇒蛇谷北山⇒石宝殿⇒六甲山最高峰のコースを取る行き方もあります。風吹岩から雨ヶ峠まで約1時間、雨ヶ峠から六甲山頂(一軒茶屋)まで約1時間ほどですが、七曲はなかなかの登りで難所です。六甲山頂から最高峰地点までは舗装された緩い登りで15~20分程度です。東お多福山から石宝殿経由のコースは最高峰地点までこれも1時間程度になります。
芦屋ロックガーデンから有馬温泉へ行こう!
六甲山頂から有馬温泉への行き方
六甲山頂(一軒茶屋)から有馬温泉へは下り道で1時間前後でたどり着きます。せっかくここまで来たら行きたいですよね。ここまで来たら初心者でも大丈夫です。もうひと踏ん張りで疲れを癒す温泉ですよ。有馬温泉への行き方は、最高峰地点から一軒茶屋に戻り、魚屋道を標識に従って下っていきます。魚屋道の終わりには「鳥地獄」と書いてある石碑があり、舗装された道に出ます。そこはもう有馬温泉です!中心部への行き方は地図やスマホで確認してください、10~15分ほどです。
帰りは楽したい方に
下界の芦屋川から有馬温泉まで4~5時間、お疲れさまでした。体力を使い果たした、温泉に浸かったら力が抜けてしまった方、思わず時間が遅くなってしまった方は有馬温泉からバスで下界へ、または六甲有馬ロープウェイで山頂まで戻り、山頂から1キロ超西へ歩くと(しっかりと地図で確認)六甲ケーブルの六甲山上駅があり、六甲山下駅まで降ります。そしてバスで阪急六甲駅まで行けます。有馬温泉からのバスは梅田行きなど予約制のものもありますが、三宮、西宮、宝塚行きなどのバスが出ていますので、事前に乗り場や時刻表を確かめてくださいね。
まとめ
なかなかハイキング、登山のコースを文章で説明するのは難しいのですが、芦屋ロックガーデンの概要は伝わりましたでしょうか。文中、初心者や子どもも楽しめる、というのはたくさんの初心者の方や子ども連れの家族が訪れている実績があるからですが、自然相手ですので、滑落や落石、転ぶ、虫刺され、イノシシなど危険の可能性は誰にでもあります。
服装など準備はしっかりと
ましてやロックガーデンから登山・ハイキングコースに出るとなるとそれなりの服装、靴や準備(飲食物)、地図などが必要になります。あまりにも気軽すぎると楽しいはずのハイキングが台無しになりますし、周りのハイカーに迷惑を掛けますのでご注意を。