エキパイとは??
誰もが気になっていたあのパイプ・・・
バイクをじっくりと眺めていると、エンジンから伸びた一本ないしは複数本の長いパイプが目につくのではないかと思います。車種によっては複雑な取り回しがなされてあったり、中には高い温度にさらされ焼け色で虹色に輝いているものもあります。
バイクに詳しくない人だったら「マフラー」と呼称するであろうそのパイプは、エキゾーストパイプというパーツで、通称「エキパイ」という用語で呼ばれ、バイクを気持ちよく走らせるために必要な重要な機構なのです。
「マフラー」という用語は間違い??
一般的なバイク用語で「マフラー」という用語で呼んでしまう人も多いのではないかと思います。ですがマフラーと呼ばれる部分は、実はそのエキパイの伸びた先についている筒形あるいは箱形のパーツのことを言うのです。
別名「サイレンサー」とよばれ、排気音を消音する役割があります。エキパイとは実はエンジンのパワー特性を決める重要な役割を担っており、エキパイとはその役割が全く違うパーツなのです。
エキパイの役割
さてこのエキパイと呼ばれるパーツは何の目的でついているモノなのか、それをこちらでまとめてみたいと思います。
エンジンの出力特性はエキパイが決める!
エキパイの役割は一つではないのですが、まずその一つにエンジンの排気をパイプを伸ばした先に導くといった働きがあります。もう一つが、エンジンの出力特性をエキパイでコントロールするといった役割もあります。
一般的にエンジンというものは大気中の空気をガソリンと混ぜて吸い込み、それをエンジンの中で爆発させてその爆発の力を回転モーメントに変換し車体を前に動かすといったものです。
吸気から排気が良いものほど高出力・高回転
もちろん吸った空気は外に捨てなければならずその捨てる空気の通り道がエキゾーストシステムと言う用語で呼ばれるものですが、その吸気→排気がスムーズにいけばいくほど高出力、高回転型のスピードの出るエンジンになります。
単なる排気ガスの通り道ではない!
吸気→排気の流れがスムーズにいくのであれば、よく回りよく走るエンジンになるのであれば、エキパイなんてなくてもいいのではと考える人もいるのではないでしょうか??
実はそうではなく、ガソリンを燃やして爆発させる温度が高温のシリンダー内の中に比べて、外の走行風に冷やされて低温な温度のエキパイは、このシリンダーの中で燃やされた空気を冷やす働きもあるのです。
吸気と排気をさらにスムーズに
空気は温度が下がると体積が収縮しますので、燃やされて温度が高温になったことにより膨張したシリンダーの中の空気に対し吸い込む力が働きます。結果、吸って吐いての行程をよりスムーズに行うことができます。
エキパイの進化
バイクの進化を見ていくと、それにつれてエキパイもいろいろと形を変えてきていることがわかります。
集合管の誕生
バイクが多気筒化が流行であった1970年代、かつてのバイクは一気筒に一本のエキパイ、サイレンサーが常識でした。その中かの有名なバイクチューナー「POP吉村」は、バイクを軽量化を狙ってその4本のエキパイを一つにまとめた集合管を作りました。
実はこの集合管にはエンジンのパワーを引きあげる特殊な仕組みが備わっており、レースの世界において他の追随を許さない速さを発揮しました。以降、メーカーも純正で集合管を装着したバイクがみられるようになりました。
最近の主流は4-2-1集合管
そしてからというものの最近の主流は4-2-1集合管というものに置き換わりつつあるようです。4-2-1集合管と言いますと、4本のエキパイをまず2本にまとめてから最後に一本にまとめるというもの。
こちらの方が、先ほど紹介した4本を一気に一本にまとめる4-1集合管よりもスムーズな高回転までの吹け上がりをするようで、今では純正でこのレイアウトのエキパイをするバイクも多いようです。
膨張室とは??
最近の主に単気筒バイクのエキパイには何やら小さい箱のようなものがついているモノがあります。こちらは「膨張室」といって、排気脈動の効果によって排圧を生み、低速での力強さを確保するといったものです。
これをつけることによって抜けのよくなったマフラーをつけたことによる低中速のトルクの減少を補います。といったら少し分かり辛いかもしれませんが、要するに低速域でよりエンジンのパワーが出せるということですね。
エキパイとエキマニの違い
「エキゾーストマニホールド」という用語があります。エキパイと同じくエンジンの排気を助ける機構のことなのですが、実はエキパイとこちらは似て非なるものなのです。「エキゾーストマニホールド」とはどのようなものなのでしょうか??
そもそも「マニホールド」とは??
マニホールド、という用語にはどのような意味があるのでしょうか??英語で「manifold」と書かれるこちらは、「多岐の」や「複合の」といった意味があるようです。
エキゾーストマニホールドとは排気システムで言うと、「多岐にわたって分離していた排気路が一つにまとまるもの」を指しているようです。エキゾーストパイプとエキゾーストマニホールドはどのように使い分けられているのでしょうか??
排気路はなにもパイプだけではない!
エキゾーストパイプとはバイク用語でよく使われたりしますが、エキゾーストマニホールドはあまりバイク用語では使われることがありません。というものの、マニホールドと呼ばれるそれは「パイプで作られていない排気路」に対して使われたり、パイプであっても車の排気路に対して使われることが多いようです。
車のエンジンの排気路は鋳鉄で作られたりしているものもあり、確かにそのようなものにパイプと呼ぶのは少し違う気もしますね。
エキパイのルール
ここでは、一般的なエキパイの法則についてまとめてみました。基本的にはどこかを伸ばせばどこかが悪くなるというのがエキパイのルールであるようです。
長さのルール
エキパイの長さは、エンジンのパフォーマンスに大きく影響を及ぼします。基本的には長いと抜けが悪くなるので高回転の吹け上がりは鈍くなりますが低回転からトルクフルな特性に、短いと抜けがよくなる方向に行くので高回転の吹けはよくなりますが逆に低回転は力が出にくい特性になります。
ですがエンジンのパワーの特性とのバランスもありますので、速さを求めたバイクがすべてエキパイが短いわけではないようです。
太さのルール
エキパイとは排気の通る通り道でありますので、その通り道が太ければ高回転での吹け上がりがよくなり逆に低回転でのトルクは弱くなる傾向があります。逆にその道が細ければ低回転でのトルクが力強くなり、逆に高回転域では吹け上がりが悪くスピードが伸びにくくなります。
たとえるなら排気を吸い出すストロー
たとえるならエキパイとはエンジンから排気を吸い出すストローと考えたら分かりやすく、回転数=吸い出す力と置き換えた場合力強く吸い出せるのであれば細いストローより太いストローの方がよりたくさんの飲み物を吸え、吸う力が弱いのであればストローが細い方が一生懸命頑張って力強く太いストローを吸うよりも効率的です。
エキパイの作り方
機械曲げでの作り方
機械曲げとは、その名の通りベンダーと呼ばれるパイプを曲げる機械によって作る方法です。機械で作る分製品の精度、大量生産性に優れており、バイクの純正で装着されているエキパイはほとんどがこの工法で作られたものです。また、その分一本一本を手作業で曲げる手曲げで作られたエキパイよりもコストパフォーマンスに優れています。
手曲げでの作り方
手曲げとは読んで字のごとく手作業でもってエキパイを曲げるやり方なのですが、熟練したものでないとその制作は難しく、かつ一本として同じ製品はないという手曲げエキパイとはその特別感が魅力のエキパイです。
その方法は、エキパイの中に砂をつめて栓をし、バーナーでもってエキパイをあぶって温度を高めその曲り加減を見ながら曲げていくといったものです。機械曲げとはちがう柔らかい曲がり方をするのが特徴です。
エビ管としての作り方
エビ管とはパイプを切る角度を変えながら切って溶接でもってつないでいくことによって曲り加減を作っていくことによって作られるエキパイです。見ての通り溶接跡が残りながら曲がっていくそれがエビのしっぽを思わせます。
手曲げほどの工作難度ではないですが、溶接跡のきれいなエビ管は上の二つとはまた違う美しさがあり、こちらを好む人も多い様です。
エキパイの素材いろいろ
スチールエキパイ
スチールで作られたエキパイは、主に純正のエキパイに採用されることが多いです。素材は加工しやすく比較的安価なため、大量生産にはうってつけの材質と言えるでしょう。ただ錆びに弱く、表面をメッキ加工か何かで処理する必要があるのと、材質自体に重量があるため、バイクにとって重量物になってしまう点がデメリットです。
ステンレスエキパイ
ステンレスエキパイの長所は、腐食に強くさびにくいところと、素材が軽量でコストパフォーマンスもスチールより少し高いだけとバランスが取れているところです。ただ、ステンレスエキパイは高い温度にさらされると黒っぽい焼け色にさらされてしまいます。材質は固めで、加工性に関してはスチールの方に分があるようです。
チタンエキパイ
チタンはその硬さと比重の軽さが特徴な素材です。その材料で作られたエキパイは、堅い材質ゆえに非常に薄く作ることが出来、その分重さを軽くすることが出来ます。
あと、チタンマフラーは高い温度にさらされると虹色に輝く独特な焼け色が発生します。見た目のインパクトもあってライダーたちの憧れのマフラーとなっています。ただ、材質が高価なうえ加工も難しく価格はほかに比べてかなり高価になってしまいます。
チャンバーとは??
2ストロークエンジンのエキパイ!
今まで紹介してきたエキパイは、いわゆる4ストロークエンジンのエキパイについてのものでした。
2ストロークエンジンと呼ばれるエンジンは、4ストのエンジンとはまた違う構造のエンジンで、そのエンジンについているエキパイも4ストのそれに比べてかなり特異なものとなっています。写真のように何やら異様に出口が細く、逆にかなり太く盛り上がっている箇所もあります。
その働きとは??
一見してみるとなぜにここまで膨らませる必要があるんだろうと思います。ただその形は2ストロークエンジンの構造上理にかなっているのです。2ストエンジンは燃焼室にバルブを持ちません。
なので燃焼室に入った混合気も一部はそのまま燃えることなく出て行ってしまうのですが、直前に排気した気体がチャンバーの軽を絞っている部分で一部跳ね返ってくることによって、燃えることなく出ていこうとする混合気を燃焼室に押し戻してくれるのです。
エキパイで魅せる!!
エキパイはその見た目からバイク自体をドレスアップしてくれる効果もあります。エキパイの美しいバイクを何台か紹介しましょう。
CB400four
通称「ヨンフォア」と言われるこのバイクは、エキパイの並びがほかの4気筒バイクとは違います。車体右側から見たときにエキパイの並びが一本づつずれるように配置されており、クロームメッキを施され魅力あるかがやきを放っています。そこに美しさを感じるライダーも多いことでしょう。
BENELLI 750 sei
benelliとは、イタリアのバイクメーカーです。かつてバイクの多気筒化が進んでた時代に、日本のメーカーより早く6気筒バイクを出しました。そのエキパイは6気筒のバイクらしく迫力のあるものであり、さらに集合管を採用していない唯一の6気筒市販車なので、マフラーも6本とさらに迫力を醸し出しています。
Britten V1000
Britten v1000とは、ニュージーランドで誕生したVツインエンジン搭載のレーサーです。その独特な設計とデザインから今なおライダーから高い評価を得ているバイクです。
そのバイクのエキパイは、一気筒あたり二本のエキパイが複雑な曲がり方をしながらエンジン横を通っています。色も水色に塗装されて、車体の色とうまくマッチしています。
エキパイまとめ
いかがでしたでしょうか。バイクとはさまざまなパーツから成っています。それぞれのパーツに役割があり、このエキゾーストパイプもバイクにはなくてはならないものなのです。見たままだと普通のパイプに見えたりもするでしょう。
ただこのパーツにもこれほどまでの深い世界があり、メーカーの試行錯誤の末があってそのバイクに適切な長さ、太さのエキパイが設定され、ああしてバイクは元気に走ることができるわけですね。
今度からバイクを見かけたらそのエキパイをじっくり観察してみてはいかがでしょうか??