テントウムシダマシとは
テントウムシダマシは、「ダマシ」という名前が付いているものの、テントウムシ科に属する昆虫です。テントウムシ科の昆虫は、日本国内に200種前後いると言われていますが、そのうちの8種が「テントウムシダマシ」と呼ばれており、害虫として扱われています。
テントウムシは、アブラムシを捕食する肉食性の昆虫で、体内に毒(アルカロイド)を蓄え、天敵からも身を守ることができますが、テントウムシダマシは草食性の上、そのような毒も持ち合わせていません。そのため、テントウムシに体を似せることで、天敵から身を守っているのです。
テントウムシダマシの生態
テントウムシダマシは、テントウムシ同様、体長は7mm程度の昆虫です。4月頃から発生し、寒くなってくると物陰に集団で移動し、ひっそりと越冬します。寿命はテントウムシと同様に、2~3年と言われています。関東地方より南に生息しているテントウムシダマシは、年に2~3回、関東地方より北に生息しているテントウムシダマシは、年に1~2回産卵する上、メスは1度に数十個の卵を産みます。そのため、環境が整っていると、ものすごいスピートで個体数を増やします。
テントウムシダマシとテントウムシの見分け方
テントウムシダマシは害虫ですが、テントウムシは、アブラムシなどの害虫を食べてくれるため、益虫です。テントウムシダマシを益虫と思って放置しておくと、あっという間に畑は荒れてしまいますし、テントウムシを害虫と思って駆除してしまうと、アブラムシによる被害が発生してしまう可能性もあります。テントウムシとテントウムシダマシの違いを覚え、見分け方を把握しておきましょう。
テントウムシダマシの外見的特徴
テントウムシダマシの、テントウムシと異なる点は次の3つです。 ・斑点がぼんやりしていて、テントウムシよりも多い ・全体的に艶がない ・産毛のようなものが全体を覆っている
テントウムシの外見的特徴
テントウムシがテントウムシダマシと違う点は次の3つです。 ・全体的につやがある ・頭部が黒い ・斑点がはっきりしている
外見以外の見分け方
テントウムシは肉食系なので、アブラムシが大量発生している場所などによくいます。一方でテントウムシダマシは葉の裏にいることが多いです。また、葉に食べられたような跡がある場合は、そこにいる昆虫は、テントウムシダマシである確率が高いです。
テントウムシダマシの主な種類
テントウムシダマシと呼ばれるテントウムシ科の昆虫は、日本に約8種類いると言われています。明らかに見た目が違う種類もいますが、テントウムシの新種と勘違いしてしまいそうなほど似ている種類もいます。ここでは、日本の畑で比較的よく見かけるテントウムシダマシを、5つご紹介します。
ニジュウヤホシテントウ
ニジュウヤホシテントウは、西日本に多く発生するテントウムシダマシです。その名の通り、28個の斑点があります。
オオニジュウヤホシテントウ
オオニジュウヤホシテントウは、東日本に多く発生するテントウムシダマシです。他のテントウムシダマシの種類より、1mm~2mm程度大きいという特徴があります。
ルイヨウマダラテントウ
ルイヨウマダラテントウは、関東近郊で発生するテントウムシダマシで、他のテントウムシダマシに比べ、オレンジ色が鮮やかです。
インゲンテントウ
インゲンテントウは。その名の通りインゲンマメなどのマメ科の植物に発生するテントウムシダマシです。中南米出身の外来種で、日本でも少しずつ個体が増えていっています。
トホシテントウ
トホシテントウは北海道を除く地域に生息し、その名の通り10個の大きな斑点があります。特にウリ科の作物に集まります。
テントウムシダマシが好む植物
テントウムシダマシは、4月から10月頃、温かい季節に発生するため、夏野菜を中心に食害が広がります。特に、ナスビ、トマト、キュウリ、ピーマン、ウリのような作物には大量発生することがあるので、注意が必要です。 テントウムシダマシは成虫も幼虫も、葉や果実をさざ波状(網目状)に食べるという特徴があり、食欲が旺盛なため、あっという間に被害が広がってしまいます。
テントウムシダマシの被害とは
テントウムシダマシが葉を食べつくすと、植物は光合成ができなくなり、果実等の収穫量が激減してしまいます。また、果実は見た目が非常に悪くなり、表皮が硬くなるなどし、熟す前に枯れてしまうこともあります。
テントウムシダマシの駆除方法
テントウムシダマシの駆除方法は、テントウムシダマシの状態に合わせて変わってきます。1匹見つけた場合は、他にもいる可能性が高いので、駆除をする際は時間をかけて、徹底的に行うようにしましょう。
卵の駆除方法
テントウムシダマシは、作物の葉の裏に黄色い卵を密集させて生みます。見つけたら卵をすり潰したり、葉ごと取り除いてしまいましょう。取り除いた葉を放置しておくと、孵化してしまうので、必ず処分するようにしてくださいね。
幼虫の駆除方法
テントウムシダマシは、孵化してから幼虫までの間、ほとんど団体で行動します。そのため、1枚の葉だけ集中的に食べられることもあり、発見しやすく、個別で移動を始めるまでの間、駆除しやすい状態が続きます。ただ、小さい幼虫は見つけにくいので、幼虫による食害を見つけたら、葉ごと取り除いてしまうのがおすすめです。その際は、幼虫が落下して生き残ってしまうことも考えられるので、地上に落ちたものがいないかどうか、しっかり確認しながら駆除するようにしましょう。
成虫の駆除方法
テントウムシダマシは、成虫になると団体で行動しなくなります。ただ、幸いとても目立つ色・柄をしているため、1匹1匹捕殺することで駆除ができます。ただ、飛んで移動するため、1回ですべてを駆除することは難しいので、水やりの際などに、こまめに存在をチェックするようにしましょう。作物から離れたテントウムシダマシは、一般的な殺虫剤などでも駆除することもできます。
テントウムシダマシに効果がある農薬
テントウムシダマシが大量発生するなどした際は、農薬を使用するのもおすすめです。農薬は、正しい使い方をすれば、野菜の収穫等に薬剤による悪影響はないので、ラベルをしっかり読んでから使用するようにしましょう。主に、アクタラ、アディオンベジタメート、コテツ、スミオチン、ダイアジノン、モスピランような農薬が、テントウムシダマシの駆除に適しています。 被害が拡大してから農薬を使用すると、どうしても使用量が増えてしまうので、ある程度の被害が確認されたら、予防の意味も込めて、早めに使用するようにしましょう。
テントウムシダマシの予防方法
テントウムシダマシに天敵がいれば、放っておいても個体数が減る可能性がありますが、毒を体内に持つテントウムシに似ているため、残念ながら天敵はいません。そのため、駆除と同時に、テントウムシダマシの飛来を予防することが大切になります。
ジャガイモを近くに植えない
テントウムシダマシは、春にジャガイモの葉に卵を産む傾向があります。そのため、ジャガイモをナス科、ウリ科の作物の近くに植えないようにしましょう。
デントコーンを植える
デントコーンとは、飼料用トウモロコシで、非常に背が高くなることで知られています。デントコーンを家庭菜園の周囲に植えることで、テントウムシダマシが作物に到達することを防ぐことができます。
寒冷紗や防虫ネットをかける
作物の背が低い場合は、寒冷紗や防虫ネットを利用してトンネル栽培することで、テントウムシダマシの飛来を予防することができます。
テントウムシダマシが1匹いたら要注意
テントウムシダマシは、成虫になると団体で行動しないようになりますが、1匹見つけると、ほとんどの場合、他にも飛来してきているテントウムシダマシがいます。そうすると、産卵し、どんどん増殖してしまうので、1匹見つけたら、他にもいないか探してみてくださいね。テントウムシダマシの成虫は、葉に貼り付く力が弱いので、作物を揺らすと、ポロポロと落ちてきます。常に「他にもいるかも?」と疑って、被害が広がる前に対処するようにしましょう。