タコブネの正体とその姿
その正体は大まかにくくると「タコ」の仲間です。図鑑によるとアオイガイ科に属するタコの一種、とあります。知っていたら「学者級」といわれるほど非常に認知度が低くレアな生物です。 「タコブネ」の名前の由来は「貝殻から顔を出した姿が船に乗っているタコのよう」ということから名づけられました。その実際の「タコブネ」の姿は下記画像になります。
タコブネの正体とは
貝殻の中に頭を入れているタコですね。オウムガイやアンモナイトにも似ています。この殻はタコブネのメスが自分自身で作り上げ、同様に殻を生成する仲間としては、アオイガイやチヂミタコブネがいます。 英名では「 Paper nautilus (ペーパー・ノーチラス)」(紙のように薄い殻を持つオウムガイ)と呼ばれています。
タコブネの生態
・タコブネの大きさ
タコブネは雌(メス)と雄(オス)で大きく姿が異なります。 メスの方が大きく、成長したら7センチ~8センチの体長になります。殻がついているのはメスだけです。メスは自信の第一腕から分泌する物質で卵を守るために貝殻を自分で作ります。 逆にオスは殻を持ちません。また、オスの大きさはメスに対して20分の1程度までしか成長しません。つまり1センチにも満たない大きさです。
・タコブネの交配
タコブネのオス、メスは少し変わった交尾をして子孫を残します。 タコブネのオスは8本足のほかに精子袋を格納する交尾用の「ペニス足」を持っています。交尾の際には生殖器であるペニス足をメスのしかるべき場所に挿入して、足を切断します。メスは切断したペニス足を身体の中に残して受精、産卵を行います。この切断については「切断されてしまう」、なのかオス自らが「切断する」なのかは判明しておりません。前者だとすると少々怖いですね。
・タコブネのオスが泳いでいるのは発見されていない?
自然状態で泳いでいるタコブネのオスはまだ発見されていません。1センチにも満たない身体で、身を守る殻もないのでそれだけ生きていくのが難しいと言う事なのかもしれません。 広い海でタコブネのオスとメスが出会うこと自体がそもそも難しそうですね。出会うことがなければ交配そのものが行われないはずです。その事も希少な種になっている原因の一つなのかもしれません。 メスは殻を作りますが、その殻は自分の身を守る為だけではありません。貝殻の中に卵を産みます。殻の中で産卵することで外敵から子供たちを守っているのです。このようにして広い海のなかで出会え、交配を得て生まれた希少なタコブネの子孫が育っていくのだと思います。
・タコブネの生息地域
タコブネは海洋生物であり、太平洋や日本海の表層部に生息しています。 比較的浅い場所に生息しているため、ダイビングなどで発見されることもあります。青森県の陸奥湾ではカイダコ(貝蛸)やフネダコ(舟蛸)などと言う名前でも知られています。
・食用としてのタコブネ
味は通常の蛸と変わらず、食用として食べることもできます。 しかし希少性が高く漁獲量が少なかったり、そもそも体長が小さい事から食べられる身が少なかったりして食用として食べられている地域はあまりありません。
過去の飼育記録
ダイビングや置き網などで発見されることがあるタコブネですが、自然の中で生きている姿を見ることは非常にまれで困難です。生のタコブネを見れた事例として、過去数回水族館で飼育された実績を紹介します。
・2017年8月 アクアワールド茨城県大洗水族館での展示
茨城県沖で定位置網を引き上げる際に、海に浮かんでいる白っぽい物体を発見しました。どのようなものかと思ったが動いているため、近づいてみたところ貝殻にタコのような足がついてウネウネ動いていました。優しく手ですくい上げて、持ち帰って調べたところ、非常に希少な「タコブネ」であることがわかりました。地元の漁師達も初めてみるタコブネにとても驚き、感動したそうです。 捕獲されたタコブネは地元の大洗水族館にて2017年8月21日から公開され、2017年10月末まで飼育されている姿が展示されておりました。
・2016年9月 三重県 鳥羽水族館での展示
殻の大きさが5センチほどになるメスのタコブネを展示していました。 過去のブログで飼育記録を見ることができます。 鳥羽水族館のブログはこちら
2016年9月27日から10月3日まで展示されていました。この水族館では過去にもタコブネを飼育されていましたが、いずれも1週間程度しか生きられないようです。また飼育されていたときの様子が動画でも見ることができます。鳥羽水族館で飼育されていたときのタコブネの動画はこちらになります。
一生懸命動いていて、非常に可愛らしいですね。砂が飛んでいるのは呼吸をしている勢いなのでしょうか。いずれにしろとても可愛らしい様子を見ることができます。
・2015年10月 新江ノ島水族館での展示
こちらの水族館でも地元の漁師さんから提供されてその生態が展示されておりました。水族館の飼育員でも飼育するどころか、目にするのも初めてと言っていたほどです。 2015年の10月3日から10月10日までの7日間の展示期間でした。新江ノ島水族館で飼育されていたときのタコブネの様子はこちらになります。
とても元気に動いていますね。 やはり呼吸を元に勢いよく動いているように見えます。5センチくらいの大きさのようですが、とても立派に見えますね。
タコブネが飼育出来る期間は短く、これまで国内での飼育記録は一般的に1.2週間程度です。長く飼育を続けていくのは非常に難しい為、公開される期間はあまり長くありません。2017年の8月に茨城のアクアワールド大洗水族館で展示されていた期間は非常に長期間に渡って飼育されていたと言えます。もし、今後も各地の水族館でタコブネが公開された場合は早めに見に行く事をおすすめします。
タコブネの貝殻
タコブネの貝殻は卵を産卵し孵化するまで守っていく場所ですが、その厚さは非常に薄く手で握ると簡単に砕けてしまいます。 それゆえ、上述した「PaperNautilus」「紙の様な貝殻を持ったオウムガイ」と言われています。逆にその薄さゆえに透き通るように美しく価値が出ている側面もあります。メスのタコブネがどの位の時間をかけて殻を作り上げるのかは不明ですが、あまり時間をかけずに作っているのかもしれません。
・貝殻の価格
メスのタコブネが持つ貝殻はその希少性と透き通るような美しさから高値で販売されています。傷が付いたものや小さいものなどは500円程度ですが、形がよく大きなものでは10,000円以上で販売されることもあります。 貝殻のコレクター間ではとても重宝されており、インターネットのオークションなどで販売されています。
・貝殻は拾うことができる
生態を見るのは非常に難しいタコブネですが、海が荒れた翌日にはタコブネの貝殻を海岸で拾う事も出来ます。海岸にタコブネが打ち上げられたりして砂浜で見つけることが出来ています。
まとめ
●タコブネは蛸の仲間 ●メスは貝殻を自分で生成する ●オスの大きさはメスの20分の1程度で殻を持たない ●非常に希少性の高い生物で、生きている姿を見ることは困難 ●まれに水族館で公開されることがある ●水族館で公開されても過去平均で1~2週間程度しか生きられない ●タコブネの貝殻は非常に高値で販売される
いかがでしたか。 非常に希少性が高く、レアな生物【タコブネ】。お子さんが知らなかったら紹介してみてはどうでしょうか?興味を持ってくれるかもしれません。それでは、最後まで読んで頂きありがとうございました。