はじめに
ワイドトレッドスペーサーという自動車の部品がどのような部品なのか、使用用途は特徴、そして取り付け方などを紹介します。乗り心地は良くなるのか、自己の心配はないのか、取り付けの限界などあるのか、などのメリットデメリットも併せてお伝えします。
ワイドトレッドスペーサーとは
トレッドを広げる部品
ワイドトレッドスペーサーは自動車のトレッドを広げるために使われる部品です。ワイドトレッドスペーサーの形状は、ドーナツのような円形で真ん中にハブにはめ込むための穴があります。そしてハブボルトをはめてナットで固定するための穴が4-5つ付けられていて、それらの間にタイヤをはめるためのボルトが用意されています。
ホイール全体が外側にオフセットする
ワイドトレッドスペーサーを取り付けるとワイドトレッサ―の厚さだけホイールの取り付け面が外側に移動します。取り付け面が外側に移動するのでホイールを自動車に取り付けした際、見た目だけでなく乗り心地が変わったりなど、良い効果と悪い効果両方を経験することとなります。(詳しくは後述)
ワイドトレッドスペーサーの特徴
多種類(色)なワイドトレッドスペーサー
様々なメーカーが製造しているこのワイドトレッドスペーサーですが、同じワイドトレッドスペーサーでも色が違うなど、メーカーそれぞれのこだわりがでています。最も、デザインも大事ですが最も大事なことは正常に機能するかどうかです、しかしホイールを取り付けた状態でもワイドトレッドスペーサーが見えますので、満足度を高めてくれます。
製品によって厚さが異なる
ワイドトレッドスペーサーによって厚さが異なります。ワイドトレッドスペーサーの厚さは製品パッケージやネット販売なら商品説明に記載されているはずなので、それを確認しましょう。ワイドトレッドスペーサーを取り付けてオフセットをどれくらいアウトにさせたいか、あるいは今取り付けているものより薄いものを付けてインセットさせたいのか、それらによります。
ホイール交換無しでマイナス側にオフセットできる
ホイールをオフセット値が少ないものに交換することなくマイナス側にホイールを取り付けられる点もワイドトレッドスペーサーの特徴です。ホイールを購入するとなったら高い出費となるだけでなくある程度広い保管スペースも必要になるというデメリットが発生します。その面、ワイドトレッドスペーサーを取り付ければ費用は安く収まり、スペースも取りません。費用対効果の高い部品として機能してくれます。
ワイドトレッドスペーサーの使用用途
ツライチにするため
フェンダーとホイール(タイヤ)をツライチにするためにワイドトレッドスペーサーを使用します。ツライチとは、フェンダー部分に対してホイールの面がはみ出すことも引っ込むこともなく平行な状態のことです。効果は見た目がカッコいい、これにつきます。つまりはオーナーの美的感覚の問題です。ドレスアップパーツの1種とも言えます。
ホイールを取り付けるため
ホイールを取り付けるためにワイドトレッドスペーサーを取り付けることもあります。純正の足回り部品やホイールを付けている間は問題ありませんが、社外の部品に交換したりするとホイールとサスペンションが接触するなどして取り付けられないことがあります。その対策としてワイドトレッドスペーサーが使われます。
サーキットでのタイムアップのため
サーキットでのタイムアップを目的に取り付ける使用用途もあります。自動車全体の性能を高めることを目的とした使い方です。トレッドが広くなればLSDの効果も高くなってタイムアップにつながる、ロールセンターを調整できる、といった効果が期待されます。
ホイールスペーサーとは
ワイドトレッドスペーサーの紹介をしてきましたが、ここでホイールスペーサーの紹介も併せて行います。ホイールスペーサーはワイドトレッドスペーサーと同様、ホイールをアウト側に広げてトレッドを広げるために使われる部品です。数ミリ、最大5mmくらいの調整を行うならホイールスペーサーを選択しましょう。
ホイールスペーサーの厚さによっては取り付けられているハブボルトの長さが足らず、ホイールが走行中に外れてしまう可能性が高くなるというデメリットが生じます。そのデメリット対策としてロングハブボルトに交換することがありますが、ブレーキを分解しないといけないので手間がかかります。
ワイドトレッドスペーサーとホイールスペーサーの違い
ワイドトレッドスペーサーとホイールスペーサー、使用用途は同じですが相違点がありますのでそれらを紹介します。
ボルトの有無
ワイドトレッドスペーサーにはボルトが付いていますが、ホイールスペーサーにはボルトはついていません。ワイドトレッドスペーサーをハブボルトで固定し、ワイドトレッドスペーサーのボルトにホイールを組み込むためにボルトが付けられています。ワイドトレッドにするためにスペーサーが厚くなってハブボルトが届かなくなるというのがその理由です。反対にホイールスペーサーはハブボルトにはめて、その上からホイールを取り付けます。
厚さが違う
ワイドトレッドスペーサーとホイールスペーサーは厚さが異なります。基本的に、ホイールスペーサーは5mmまでが純正ハブボルトで取り付けられる最大の厚さとなっているのです。それでもホイールスペーサーのサイズは1mm、3mm、5mm、8mm、10mm、のものがあります。8mmや10mmスペーサーを使用する場合はロングハブボルトを取り付ける必要があります。
スペーサーのサイズに合わせて使い分けを
厚さ10mm以上となるのがワイドトレッドスペーサーです。ホイールスペーサーの限界以上、トレッドを広げるのに役に立つのがワイドトレッドスペーサーです。スペーサーの限界を超えると事故にもつながるので、スペーサーのサイズに合わせて使い分けましょう。
ワイドトレッドスペーサーのメリット
ツライチにできる
ワイドトレッドスペーサーのメリットその1はツライチにできることです。ツライチにできる、これはドレスアップ的な効果を持ったメリットになります。もし作業する自動車にオーバーフェンダーが付いていたら、ワイドトレッドスペーサーを使えばよりトレッドを広くすることが可能となりますので、迫力のあるツライチが完成します。
トレッドを広くできる
ツライチにする・しないに関わらず、ワイドトレッドスペーサーを使えばトレッドを広げることができます。取り付ける自動車やホイールによって広げられる限界は違う(車検の関係上)ので、自分の自動車の限界にあった範囲でトレッドを広くすることをお勧めします。
乗り心地が良くなる
ワイドトレッドスペーサーを取り付けると乗り心地が良くなります。どうして乗り心地が向上するかと言いますと、スペーサーをはめたことで力点であるタイヤと支点のブッシュとの距離が長くなり、以前より少ない力で作用点であるサスペンションを動かせるようになるのです。
乗り心地重視ならオフセットが少ないものを
それによってサスペンションが少ない力でストロークするようになり、乗り心地が良くなります。これが、乗り心地が良くなる理由です。力点であるタイヤの位置で乗り心地が良くなると考えると、オフセットが少ないホイールを取り付ければ多少は乗り心地が良くなるというロジックになります。
ワイドトレッドスペーサーのデメリット
乗り心地が良くなる効果やトレッドを広くできる効果、そしてツライチにできてしまうという効果を持っているワイドトレッドスペーサーですが、反対にデメリットもあります。ここではそのデメリットがどのようなものかを紹介します。デメリットをしっかり把握しておきましょう。
ステアリング操作性が悪化する
ワイドトレッドスペーサーを取り付けるとステアリング操作が悪化するデメリットがあります。わだちなどを走るとステアリングが路面に取られやすくなってしまうのです。そうなれば事故の可能性も必然的に高くなります。ドライバーのスキルによって限界値は異なりますが、ステアリングを地面に取られやすくなると事故につながる可能性が生まれるため注意が必要です。
バネ下加重が増加する
バネ下荷重が増えてしまうというデメリットもあります。バネ下荷重、つまり車両に取り付けられているサスペンションのスプリングから下の部分(部品)の重量のことを挿します。このバネ下荷重が増加するとサスペンションの動きに影響してしまうのです。同じ重量の変化でもスプリングより上の部分で増加した重量が与えるサスペンションへの影響の10倍はあると言われています。サスペンションの性能劣化はその車の限界値を下げ、限界値が下がった状態では普段よりも事故の確率が高くなります。
メンテナンス箇所が増える
メンテナンス箇所が増えるデメリットもあります。ホイールの締め付けを確認する習慣だけでなく、スペーサーを取り付け部分のナットの締め付けもチェックしなければなりません。締め付けが十分でないと、走行中にスペーサーがもげたり、ボルトが折れます。締め付け不足は重大事故に繋がりますので、注意してください。
ワイドトレッドスペーサーの選び方
増やしたいトレッドの長さで選ぶ
作業する車両のトレッドをどれくらい長くしたいのか確認してワイドトレッドスペーサーを選びましょう。ツライチで限界まで長くしたいのか、10mmでよいのか、ツライチを辞めて短くしたいのか(その場合はスペーサーを外すだけですが)、目的用途に合わせた厚さのものを選んでください。
ハブボルトの本数やPCDで選ぶ
ハブボルトの本数やボルトのPCDを参考にワイドトレッドスペーサーを選びましょう。車両によってハブボルトの本数やPCDがことなります(因みにデミオDE5FSはハブボルト4本でPCDは100)。ですので、それら2点を確認したうえでワイドトレッドスペーサーを購入するなら購入しましょう。
ワイドトレッドスペーサー取り付けに必要な工具
ワイドトレッドスペーサーの取り付けに必要な工具を紹介します。必要な工具は、フロアジャッキ、ジャッキスタンド、レンチ、トルクレンチ、になります。フロアジャッキとジャッキスタンドは整備車両をジャッキアップしてホイールを外すために使用します。レンチはホイールやワイドトレッドスペーサーを締め付けるナットの着脱のために、そしてトルクレンチはそれらを既定のトルクで締め付けるために使用します。
工具を揃えている、今後揃えて自分で作業したいという方でなければ、整備工場にやってもらうようにしましょう、事故に繋がりかねますので。
ワイドトレッドスペーサーの取り付け方法
車両をジャッキアップする
まず車両をジャッキアップします。インパクトレンチを持ってない方はジャッキアップする前に締め付けられているホイールナットを少し緩めてください。締め付けたままジャッキアップすると十字レンチでホイールナットを外そうとするとホイールが回ってナットを緩めることができません。ジャッキスタンドの高さはある程度高くして作業性を高めるようにしましょう。フロアジャッキでジャッキアップする箇所は車両のメンバーが通っているところや、けん引フックが付いている車ならけん引フックをジャッキアップしても良いです。事故を避けるためにも適切な個所をジャッキアップしてください。
タイヤを外す
ジャッキアップ後、ホイール(タイヤ)を外します。締め付けから少し解放されたホイールナットを完全に外したらホイールを外しましょう。外したタイヤを車両の下に置いておけば、車両が落ちてきた時でも潰されずに済みます。
ワイドトレッドスペーサーをハブに取り付ける
事故無くホイールを外すところまでたどり着いたら、ワイドトレッドスペーサーをハブに取り付けます。ハブに付いている錆や汚れが付いていたら、落としてください。ずれたまま取り付けないように気を付けながら、ワイドトレッドスペーサーをハブボルトにはめて、ナットを締め付けます。この時、規定トルクで締め付けましょう。
ワイドトレッドスペーサーにホイールをはめる
ワイドトレッドスペーサーをハブに適切に取り付けたら、ワイドトレッドスペーサーにホイールをはめましょう。ホイールをスペーサーボルトにはめて、ナットを十字レンチで締め付けてください。この段階でホイールはまだ仮止め状態になります。
ジャッキから車を下ろしてホイールを規定トルクで締める
ホイールを仮止めまでしたら、ジャッキスタンドから車両を下ろします、ゆっくり車両を下ろして事故が無いようにしましょう。また、下ろす前には事故防止のため、「下ろします」と大きい声で一言添えてください。車両が下りたら、ホイールナットを規定トルクでホイールナットを締めてください。これで交換作業は終了です。
ワイドトレッドスペーサー取り付け時の注意点
正確に取り付ける
ワイドトレッドスペーサーを取り付けるとき、ハブにしっかり付いていることを確認しましょう。ハブリングがついているものならハブベアリングがハブセンターに取り付けられているのを確認できます。
ハブボルトがスペーサーからはみ出したら削り落とす
ハブボルトがワイドトレッドスペーサーからはみ出してしまうときがあります。それはワイドトレッドスペーサーのサイズ次第です。ホイールにハブボルトはみ出し対策の逃げが部分があったら問題ありませんが、そうでなかったら出ている部分をグラインダーで削り落とす、スペーサーを諦める、他のホイールを使うなど、対策を考えましょう。
ワイドトレッドスペーサーは車検に通るのか
ワイドトレッドスペーサーを取り付けた車両が車検に通るのか通らないのかは検査官によるところとなります。フェンダーからタイヤがはみ出していると車検は通りませんが、ワイドトレッドスペーサーを取り付けてフェンダーの内側にタイヤが収まっていたら問題無い、と判断できます。一方で、取り外するように支持をする検査官もいます。そうなるとスペーサーを付けて車検を受けるのはデメリットですので、無難に外して車検を通しましょう。
ワイドトレッドスペーサーの製造メーカー
ワイドトレッドスペーサーを製造しているメーカーは多くあります。デジキャンやキョーエイ(KYO-EI)、株式会社佐藤精機製作所などなど、国内メーカーも豊富です。価格帯や品質、デザインなどを自分の価値観に照らし合わせて、納得のいくものを購入しましょう。ただ、ある程度の品質を備えたものを購入するようにしてください。
まとめ
愛車の見た目や乗り心地、セッティングに効果を持つワイドトレッドスペーサーですが、使い方を誤ったり間違った整備やメンテナンス不足が重なると、製品が限界を超えて壊れ、重大事故に繋がる可能性があります。ホイールスペーサーの限界を超えた長さ分のトレッドを増やしたいときに活用するようにしましょう。自動車の危険性を再認識したうえで、DIY作業を行うなどして事故防止・適切な整備を心がけてください。