タマスダレとは?
タマスダレは純白の花を咲かす南米原産の多年生の球根植物です。 学名はゼフィランサス・カンディ(Zephyranthes candida)で、ヒガンバナ科ゼフィランサス属(タマスダレ属)に属します。 原産地は南米のアルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイのラプラタ川流域、およびチリ、ペルーです。 ゼフィランサスの仲間では最よく普及している種で、とても丈夫なので日本の気候にもよく適応して、半野生化している場所もあります。
タマスダレの形態・生態について
タマスダレの花
タマスダレの花は直径4~5cmほどの純白の花で、花弁は6枚で雄しべは黄色くてよく目立ち、長さ20cmほど伸びた花茎の頂点に1つだけ上向きに咲かせます。 日が当たる頃に開きはじめ、夕方になると閉じて2~3日ほど咲き続けます。 花一輪一輪は3日程度しかもちませんが、一つの球根から何回か花茎が上がって咲くので長期間楽しむことができます。 純白の花は1つだけでも美しいのですが、群がって咲く様が美しいので大抵はまとめて植えられ鑑賞されてます。
タマスダレの種子
タマスダレの種子は、ほとんど付けない個体とよく付ける個体とが存在し、種まきでも増やせます。
花の咲く時期
タマスダレの花の咲く時期は5月下旬頃から10月頃にかけてですが、主に初夏と初秋によく咲きます。 また乾燥の続いた後に雨が降るとよく花を咲かせる性質があります。
タマスダレの葉
タマスダレの葉は細長く棒状で、長さは20~30cm、幅は4~5mmほどで濃緑色で土から直接出ています。 葉は寒冷地では枯れますが温暖地では葉をつけたままで越冬しますので一年中常緑です。
タマスダレの日本への渡来はいつ頃?
タマスダレが日本に来たのは明治初期
タマスダレの日本への渡来は古くて、ヨーロッパからインドを経て明治時代初期の1871年頃に渡来しました。 丈夫で美しい花なので現在では日本各地で育てられていて、性質も強いので半野生化した場所も多く見られます。 どこでもよく植えられてよく見かける花なので日本の風景にもよく馴染んでます。
タマスダレの名前について
「玉にスダレ」が名の由来
タマスダレの名の由来は、純白の花を「玉」(真珠などの丸い白い宝石)に、棒状の葉が集まっている様子を「簾」(すだれ)に見立てて名付けられたと言われてます。
タマスダレの他の名は?
タマスダレは「ゼフィランサス」や「レインリリー」と呼ばれることもありますが。これらはゼフィランサス属やハブランサス属の総称でもあり、タマスダレだけを差して呼ぶものではありません。これらの名称も最初はタマスダレに付けられたと思われています。 レインリリー(雨ユリ)とは、まとまった雨が降った後に一斉に花を咲かせることが多いことから名付けられました。
学名のゼフィランサスの意味
タマスダレの学名は「ゼフィランサス・カンディダ」ですが、その属名である「ゼフィランサス」は、ギシ神話の西風の神「ゼピュロス」と花の「アントス」との合成語で、なぜそのように名付けられたのかよく分かっていませんが、一説によると西側のアメリカ大陸からヨーロッパへ渡来したことから「西風が運んできた花」と言う意味で付けられたとの説があります。 「カンディダ」は「純白色」と言う意味です。
タマスダレの花言葉は?
数多くあるタマスダレの花言
タマスダレの花言葉はゼフィランサス属の総称の花言葉でもあり、「汚れなき愛」「純白の愛」「期待」「便りがある」などがあります。 「汚れなき愛」や「純白の愛」の花言葉はタマスダレの純白の花からと言われ、「期待」や「便りがある」の花言葉は、ゼフィランサスの語源である西風を意味する「ゼピュロス」に由来し、「風が便りを運ぶ」という意味で付けられたと言われてます。
タマスダレの毒性について
全草に毒があるタマスダレ
タマスダレはヒガンバナ科の植物なので植物全体に毒性があります。 鱗茎や葉にリコリンというアルカロイド成分が含まれていて、誤食すると嘔吐、痙攣などの症状をおこします。 リコリンは全草に含まれていますが、特に鱗茎に多く含まれてます。 タマスダレの葉はニラなどに、球根はラッキョウやノビルなどの球根植物に似ているので、タマスダレを栽培するときは誤食を防ぐためにも食用とする外形が似てる植物とは離れた場所で栽培しましょう。
ノビルの球根
ノビルの球根はタマスダレの球根に似ているので、以前に児童が食べて食中毒になった事例があります。
ラッキョウの球根
ラッキョウの球根もタマスダレの球根に似ているで同じ場所に植えないようにしましょう。
ニラの葉
ニラの葉もタマスダレの葉と間違える場合がありますので、近くには植えないようにしましょう。
タマスダレの育て方
育て方が容易なマスダレ
タマスダレの育て方はとても簡単です。 タマスダレはゼフィランサスの中でも最も丈夫で、半野生化してるくらい強健な種類なので、ほとんど手間もかからない育てやすい植物です。 寒さにも強く、一度適地に地植えすれば毎年花を咲かせてくれますので初心者向きの花と言えます。
タマスダレの植え付け・植え替え時期
タマスダレの植え付け・植え替え時期は、霜が降りなくなる3月下旬から4月頃が適期です。 植え付けるのがあまり遅すぎると花が咲くのが来年になる場合もあります。
タマスダレは毎年植え替えた方がいい?
タマスダレは植えっぱなしでもよく花を咲かせるので、毎年植え替える必要はありません。 球根は前年に出た根が活動している間に新しい根が出る性質がありますので、毎年球根を掘り上げると根を傷めて花が咲かないこともあります。 毎年植え替えるよりも逆に数年間植えたままの方が調子が良いようです。 しかし球根が過密になり過ぎると次第に花付きが悪くなりますので、4~5年に1回は植え替えて株間を広げたり分球して増やしてあげましょう。
植え付ける場所
タマスダレを植える場所は、日当たりがよくて排水、保水力がある土壌の場所が理想ですが、大変丈夫なので特に排水不良の場所でなければどこに植えてもよく育ちます。 しかし乾燥が続くような場所ですと花付きが悪くなりますので、適度な湿度のある場所に植えましょう。 日当たり良好な場所を好みますが、半日しか日が当たらない場所や半日陰の場所でもよく育ちます。 寒さにも強い耐寒性種なので冬に凍結する場所でも大丈夫です。
タマスダレの植え方
タマスダレの球根の植え方ですが、球根の上に3cmから5㎝くらいの深さに覆土して植え付けます。 1球ずつ離して植えるよりも、1か所に4、5球ずつまとめて植えたほうが花が咲いたときに見栄えがします。背丈が低くいので整然と植えれば花壇などの縁取りにも最適です。
肥料
タマスダレはあまり肥料を必要としない植物です。 植え付ける際に元肥として緩効性肥料や化成肥料、腐葉土や堆肥などを土に混ぜ込んでおきましょう。 追肥は生育期に1~2回ほど与えます。 タマスダレは肥料が少なくてもよく育ちますので、逆に肥料の与えすぎには注意しましょう。
水やり
タマスダレの地植えでの水やりは植え付けたときにたっぷりと与えますが、それ以降は土が湿ってれば特にやる必要はありません。 しかし極度の乾燥は嫌いますので、生育期に雨が降らなくて土壌がカラカラに乾燥してしまう場合などは、生育や花つきが悪くなりますので水を与えて下さい。 タマスダレは「レインリリー」と呼ばれるように、乾燥の続いた後に雨が降ると球根が潤って一斉に花を咲かせる性質がありますので、その性質を利用して花の咲く時期を調整する方法もあります。
タマスダレの鉢植え栽培
鉢栽培する場合の用土
タマスダレを鉢で栽培する場合も育て方は簡単です。 タマスダレを鉢植えで育てる場合の用土は、通気性と保水性のある土が適しますが、とても丈夫なので用土についてはそれほど神経質になる必要はありません。 一例として赤玉土小粒6、腐葉土3、軽石1などの配合用土がありますが、条件を満たしいる土であれば、あまり気を使わなくてもよく育ちます。
鉢栽培の植え方
鉢の大きさは5号鉢(直径15㎝)ですと5~7球くらい植えます。1球だけ植えるよりも多く植えた方が花が咲いた時に見栄えがします。 植え方は球根の上が隠れるくらいから3cmくらいの深さに覆土をして植えます。
鉢栽培での水やり・肥料
鉢栽培での水やりは植えたときにたっぷりと与えてその後は表面が乾いたらたっぷりと与えます。 乾燥が続いた後に水を与えると花をよく咲かせる性質があるので、水やりで花を咲かせるタイミングを調整してもよいでしょう。 鉢栽培の肥料はゆっくりと効く暖効性肥料を少量与えます。
鉢の置き場所
鉢の置き場所は日当たりのよい場所に置きますが、耐陰性もありますので半日しか日が当たない場所や半日陰の場所でもよく育ちます。冬は寒さに強いので軒下などの寒い場所に置いていても大丈夫です。
タマスダレの鉢植えの参考動画
他のゼフィランサスやハブランサスも植え方はほぼ同じですので参考にしてみて下さい。
タマスダレを種で増やす場合
タマスダレの種のまき方
タマスダレは種まきでも増やすことができます。 花が終わって種ができて鞘が茶色く変色して中の種が黒くなったら採取します。 採取した種は取りまきしますので、直ぐに鉢やプランターなどに種まきをします。 覆土は種が隠れるくらいに薄くかけます。 日当たりのよい場所に置き水切れに注意して発芽するのを待ちます。
タマスダレは種から花が咲くまでどのくらいかかる?
タマスダレを種で増やす場合は、花が咲くまでに数年もかかるので、球根で増やす方が格段に簡単で一般的です。 早く花が見たいのなら球根で増やす方がよいでしょう。 大量に増やしたい場合ば種まきで増やしてみるのもよいでしょう。
タマスダレの害虫・病気
害虫や病気に強いタマスダレ
タマスダレは全草に毒性があるため害虫にも強く、他の動物による食害もあまりありませんが、希にハマオモトヨトウと言う害虫が発生して食害される場合があります。 この害虫は蛾の幼虫で、黒に白い斑点斑紋がありヒガンバナ科の植物を好んで食べます。 この害虫が大量に発生した場合は農薬を散布して駆除したり、オルトラン粒剤などをまいて予防しましょう。 タマスダレの病気は特にありません。
その他のタマスダレの仲間
ゼフィランサス属の原種は35〜40種と言われてますが、その中でも比較的よく栽培されてる原種をご紹介します。
サフランモドキ (ゼフイランサス・グランディフロラ Zephyranthes grandiflora)
サフランモドキはタマスダレに次いでよく栽培されているゼフィランサスです。 花は薄ピンク色で、雄しべは黄色、直径は7~10cmの大輪花で、草丈が15~20cmほどで葉は扁平で新葉は花と同時に出ます。 日本では晩春から夏にかけて咲きます。 原産はジャマイカ、キューバ、メキシコ、グアテマラで日本には江戸時代弘化2年(1845年)に渡来しました。 旧名であるカリナタ(Z.carinata)の名前で流通する場合が多いです。丈夫なので暖地では半野生化している場所もあります。
ゼフイランサス・キトリナ (Zephyranthes citrina)
和名はキバナサフランモドキです。黄色い花でタマスダレよりも花がやや小さくて7月から9月に花を咲かせます。 原産地は南米のガイアナ、トリニダードです。 半耐寒性でやや寒さに弱い種類です。ちなみに「キバナノタマスダレ」と呼ばれてる植物は、ヒガンバナ科ステルンベルギア属の全く別の植物です。
ゼフィランサス・ロゼア (Zephyranthes rosea)
和名はコサフランモドキ 花は径5㎝ほどで、サフランモドキよりもやや濃いピンク色で雄しべは黄色です。 葉はニラに似て草丈15cm程度の小型の原種で、原産はグアテマラや西インド諸島です。 寒さにはやや弱いです。
ゼフィランサス・ドゥラモンディー( Zephyranthes drummondii )
白色の大輪花を咲かせる原種です。 アメリカ合衆国(テキサス州、ニューメキシコ州)及びメキシコが原産です。
まとめ
純白の美しい花を咲かせるタマスダレ。 群れて咲く姿はまた格別です。古く日本に渡来し、日本の気候にも順応してよく植えられているのでとても馴染みのある花です。 しかも丈夫なので誰にでも簡単に育てられます。 そんなタマスダレをもう一度見直して育ててみませんか? きっと新たなタマスダレの魅力を再発見することでしょう。
風の神ゼピュロスの画像