世界最古のバイクレース
バイク好き・バイク乗りが憧れるレースがあります。それはグレートブリテン島とアイルランド島に囲まれたアイリッシュの海に浮かぶ小さな島マン島で1907年から行われている世界最古のバイクレース、マン島TTレース(The Isle of Man Tourist Trophy Race)です。
マン島TTレースの歴史
100年以上の歴史を持つ世界最古のバイクレースマン島TTレースの歴史をざっくりとご紹介します。 マン島TTレースは1907年5月28日に記念すべき第一回が開催されました。この時は約15マイルの公道をバイクで10周行い、速さを競う内容でした。1908年にはジャックマーシャルが乗ったトライアンフが優勝しています。1911年より1周約60キロのマウンテンコースが採用され、その年に優勝したのはインディアンモトサイクルでした。この年から既にマン島TTには死亡事故が発生していました。そしてヘルメット着用義務が発生した1914年、この年優勝したのはAJSですが、残念ながら死亡事故が発生してしまいました。
1923年にはサイドカーレースがスタートし、初優勝はダグラスRAです。不穏な第一次世界対戦前に中断しましたが、1920年に再開しております。そして1930年、日本人である多田健蔵がジュニアクラスに出場し、初出場で完走、見事15位になり、この時42歳であった彼はレプリカ賞を獲得しております。第二次世界大戦が近づく1939年この辺からドイツ勢が目覚ましい活躍を遂げていきます
そして第二次世界大戦が終わり、復興を目指す日本に嬉しいニュースが飛び込んできます。1959年日本のホンダが初めて125 CCクラスに参戦し完走、そして谷口直樹が「ホンダRC 142」で、なんと6位入賞。さらに1年後の1961年にはホンダが初優勝を果たします。以降日本のバイクメーカーであるスズキやヤマハも次々と参戦していきます。そして1963年「スズキRM63」に乗った伊藤三男選手が日本人として初優勝しました。現在では環境にも配慮し、「CO2排出量ゼロ」を目指し、電動バイクのカテゴリもあります。
マン島TTレースのコースは公道
目の前を300キロ近い速さで走り抜ける、バイクの迫力はたまりません。マン島TTレースではバイクは公道を走るため、間近で迫力ある熱いレースを観戦できる魅力があります。そして死亡事故の多いレースでもあります。日本からでも現地で観戦できるツアーがたくさん販売されています。マン島TTレースは毎年予選を含め5月最終週~2週間ほど行われます。本戦では人気のスーパーバイク、スーパースポーツからスーパーストック、ライトウェイトそしてシニアクラス、最近はアニメにもなっているほど人気を集めています。サイドカーに電動バイクの「TT Zero」の7種目がすべて間近ので行われます。
マン島TTレースは世界一危険なバイクレース
マン島TTレースでは過去に250人以上がコースアウトやバイクの転倒などで死亡事故を起こしていると言う危険なレースです。2015年開催のマン島TTレースではフランス人ライダーのフランクペトリコーラ選手が予選走行中に死亡事故を起こし、また2016年開催のマン島TTレースでは、1日に2度の死亡事故を含む、なんと4回の死亡事故が発生しました。幸いにも2017年には悲惨な死亡事故は発生していませんが、過去には日本人レーサーも死亡事故で若い命を落としています。1966年に藤井敏雄選手がコース脇の塀に衝突する死亡事故、2006年には前田淳選手が練習走行中に後続車に追突される死亡事故、そして2013年には松下ヨシナリ選手が予選走行中に死亡事故で亡くなっています。
マウンテンコースの最後の区間の下りの直線を駆け下りた、最も急な右コーナーのある事故の多いスポット。スピードが乗り切ったところでの急カーブ、こちらも事故・死亡事故が多いスポットとして有名です。
マン島TTバイクレースの魅力
ちょっとコースの外に視線をずらすと、そこには緑の田園風景と青い海が美しく、昔ながらの町並みが残る観光地としても最高のロケーションである、のどかなマン島。時速300キロ近いスピードで目の前の公道コースを走りぬける迫力。100年以上も続くマン島TTレースの魅力をたっぷりとご紹介します。
マン島TTレースを楽しむ前に
マン島はレースを楽しむだけでなく、マン島自体がたくさんの観光コンテンツを持っています。せっかく来たのでレースとともにマン島の魅力も味わい尽くしたいですよね。ここではレースの前や合間にちょっと足を伸ばしてマン島の歴史や風光明媚なおすすめ観光スポットをご紹介します。
マン島TTのパワースポット!?
こちらはマン島TTレースを楽しむ観客はもちろん選手たちの間でも有名なフェアリー・ブリッヂです。「橋を渡るときは、妖精の住む小屋に向かってお願い事をしながら挨拶をすること。挨拶をしないと妖精さんにいたずらをされてしまいますよ。」と言う、古くからの迷信が伝わるいわゆるパワースポットです。とは言え、これが結構当たると評判で、実際マン島TTレース選手たちもここをバイクで通る時は挨拶をするそうです。命を賭けたレースですから当然と言えば当然かもしれません。あなたもマン島TTレースを観戦する際は願掛けに行くと楽しいかもしれませんよ。
マン島TTをもっと深く知りたい!
19世紀後半から現代までのオートバイが120台以上、展示されているバイク好きにはたまらない博物館です。また歴代のマン島TTレースの記念品や写真・看板・ポスターなども多数展示されています。本田宗一郎の写真も展示されています。マン島TTレースを深く知るためにはぜひこのモーターサイクルミュージアムへ訪れください。 OPEN:5月10日~10月3日 午前10時から午後5時まで
マン島の歴史を楽しむ
マン島には古くからの遺跡や名所など数多くあります。この画像は1854年に建設された世界最大の木製の水車です。石炭を使って水を組み上げる水車を動かしていました。ここへは可愛らしい路面電車のマックマンクスエレクトリックレールウェイで行けます。実はマン島には鉄道ファンが涙を流して喜びそうなクラッシック列車が今でも現役で動いています。実はレースと機関車トーマスの島で有名なのです。
古いんだけど新しい可愛くオシャレな路面電車が、マン島には未だ現役で走っているのです。機関車も古く、路面電車も古い。だけれども魅力的。インスタ映えする列車は女性やお子さんでも楽しめるマン島の魅力の1つです。かつては石炭を運んでいた列車や電車が今では観光の名所となっています。機関車トーマスの島と言われる所以です。
大自然の風景に溶け込んでいるセントパトリック島にあるピール城。マリーナを見下ろす位置にあり島の雄大な景色と合わせて楽しめる絶好の観光スポットです。美しい風景に心が洗われるようですね。 ここからはいよいよ、マン島TTレースの見所、おすすめをご紹介します。
マン島TTレースは日本のEVバイクチームの活躍が目覚しい!
おすすめは2014年から2017年までの間、4連覇し圧倒的な強さを誇る「チーム無限」が出場するカテゴリ「TT Zero」!参戦4年目の2015年には無限のEVバイクが1-2フィニッシュを飾ると言う快挙を成し遂げました。2016年には1-2フィニッシュとはいかないものの優勝!2017年にはまたまた無限のEVバイクが1-2フィニッシュ!2018年の正式参加発表はまだないですが、おそらく世界最速のEVバイク「神電」が2018年もやってくれるでしょう!マン島TT公道コースをトップで走る姿を一度は間近で見てみたいですね!
2017年チーム「無限」のTTZeroのダイジェスト動画です。バイクの爆音はないですが、公道コースを走るドライバーの目線がスピード感溢れ、迫力あるムービーです。
マン島TTサイドカーレースはバイクと人と三位一体!
バイクのレースと言うと1人乗りのスポーツタイプのバイクを思い浮かべますが、マン島TTでは2人乗り用のサイドカーのカテゴリも見所が満載です。サイドカーにはマシンのアクセルワークやブレーキングを担当するドライバー、体重移動で最適なマシンバランスをコントロールするパッセンジャーの2名1チームでアンバランスな三輪バイクマシン、レーシングサイドカーを操ります。見所はコースがカーブに差し掛かった時に魅せる、パッセンジャーが全身を使って体重を移動しマシンのコントロールをでしているところです。最近ではアニメ「つうかあ」でもドライバーとパッセンジャーの息の合ったコンビネーションが話題となりました。ドライバー・パッセンジャー・サイドカーの三位一体の躍動感あふれるマン島TTレースを存分にお楽しみ下さい。
古き良きクラッシクバイクの祭典!クラッシクTT
そしてクラッシックバイクが走るマン島クラッシックTTも、昔し懐かし古き良き時代のバイクが走るとても興味深いバイクレースです。今ではなかなかお目にかかれないレースバイクが公道コースを走るという姿を見れるということもあり、世界中のバイクマニアが集まります。単気筒エンジンのノートン、トライアンフ、マチレスなどや3気筒のエムブイアグスタ、V型のドゥカティなどはもちろん日本車のクラッシックバイクも参戦しますホンダのCB 500FourやカワサキW1等々バイク好きにはたまらないイベントレースと言っていいでしょう。近年は80年代~90年代に一世を風靡したヤマハのYZR500やスズキのRG500γ、ホンダのVF750Rなどのバイクも登場しているようです。
マン島TT通称「マッドサンデー」
実はマン島TT レースで最も事故、死亡事故が多いのではないかと言われるのが、この通称マッドサンデーです。これは来場した一般人に対して島全体が解放されしかもバイク専用一方通行と言うほぼサーキット、レースとかわりません。確かにマン島TTに憧れて来島しているのですが、バイクに乗っているライダーは一般人。しかもレースを見た直後です。レースに影響されスピードを出しすぎ、事故・死亡事故が多発するためマッドサンデーと呼ばれるようになりました。
マン島TT ライトウェイト
ライトウェイトクラスは650 CC以下の2気筒エンジンバイク限定のクラスです。軽快な走りとカーブでのハングオンのシーンを撮影したいならこのクラスが最適です。また、このクラスは強いチームが乱立するまさに戦国時代の様相を呈しています。2017年ライトウェイトクラスで優勝したのはイタリアのパトン。パトンは大手メーカーと異なり、純粋なモータースポーツへの愛で1960年代から参戦を続けています。零細ながらGTクラスのマシンをマン島TTレースに送り込み、念願の初優勝した事はモータースポーツ界にとって衝撃的でした。2018年はどうなるどうでしょうか?期待が高まります!
マン島TTスーパースポーツクラス
マン島TTスーパースポーツクラスは同じく650 CC以下ですが規制がないため様々なスーパーバイクが登場します!平均時速が210キロ超える、ド迫力のこのレース。2017年にはマン島TTレースの最速タイム記録保持者であるスズキのマイケルダンロップ選手が優勝しました。2018年マン島TTレースの優勝者は誰になるでしょうか?
マン島TTレースの合間も楽しめる
マン島TTレースはレース自体も、もちろん楽しいのですが、レース開催中は島全体がエンターテイメントであふれています。レース以外にもたくさんのショーや出店なども楽しく、まさにお祭り騒ぎです。こちらはお笑いスタントバイクチームの「パープルヘルメット」。全員ボロボロのコートに紫色のヘルメットをかぶり、面白おかしいショーを開催しています。全員バイクの腕前は超一流なのですが、寝ている人ジャンプと見せかけて轢いてしまったり(もちろんコートの中にプロテクションを装着しています)と、見ている人を飽きさせません。
マン島TTレース シニアクラス
マン島TTレースのシニアクラスはいわば無差別級。サイドカー以外はほぼ出場可能のこのレースはマン島TTレースのオオトリを務めます。出場資格はスーパーバイククラスの中でもさらに予選通過者のみ出場が許されるマン島TTレースの中でも最高峰のレース!観客のボルテージもマックスになるレースと言えるでしょう。2017年はここでもスズキのマイケルダンロップ選手が優勝しました。最速のダンロップ選手を制する選手は誰なのか!?期待が高まりますね。
最後に
世界最古のレースであるマン島TTレースの持つ魅力とは世界中のバイク好きが集まる世界最古のバイク祭りと言えるのではないでしょうか。100年以上経った今でも愛される理由は、マン島時代が持つ風光明媚で自然豊かな景観と、島全体がバイク文化を愛しているからだと思います。日本からもツアーがたくさんありますので、機会があればぜひ一度遊びに行ってみて下さいね。
マン島TTの事故の絶えない名所?となっている「バラフブリッジ」です。いわゆるジャンプスポットです。200キロ以上でのスピードで走るバイクだと当然、着地した際にハンドルを取られバイクが制御不能となります。しかもすぐ隣は石垣のブランドコーナーとなっているため、死亡事故が絶えないスポットとなっています。