長く使うモノだから、しっかり修理したい!
造形補修剤 プラリペアキット PL-16 透明
ドアノブ、化粧のコンパクト、スマートフォンのケース、バイクのカウル。プラスチック製品は壊れやすいものですが、接着剤では修理できない場合でも、プラリペアならしっかり修理できてしまうものが多くあります。今回は造形補修材の中ではメジャーな、武藤商事の「プラリペア」を例にご紹介します。
造形補修材「プラリペア」とは?
プラリペアを簡単に説明すると、プラスチックに化学的に接着して硬化する餅状のプラスチックを作る材料です。そのお餅は合成樹脂パウダー(粉)と専用リキッド(液)を混ぜることで作られます。固まるときの化学変化を重合硬化と言いますが、このときプラリペアの成分が接着対象のプラスチックをまきこんで化学的に接着します。
造形補修材と普通の接着剤の違い
接着剤は液体やペースト状で薄く延びて固まるので接着面同士をすき間無くつなぎます。一方、造形補修材は餅状になるので、それ自体が収まるスペースが必要ですがプラスチックのヒビ割れや欠け、欠けて無くなった部分の補填再生が簡単に出来ます。接着剤に比べて大幅に接着面積を増やせることがポイントです。
こんなときはプラリペア!
塩ビパイプの補修、アクセサリーの制作、木部やプラスチック製品のネジ山再生など、小物だけではなく、自動車部品の板金、FRPボートの修理などにも使えることから、強度が必要なものも得意分野と言えるでしょう。
修理出来るもの、出来ないもの
プラスチックは非常に多くの種類があり、材質によっては接着出来ないものもあります。
接着出来るプラスチック
ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)、ポリスチレン(PS)、塩化ビニール樹脂(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ASA樹脂、AES樹脂。以上は接着できます。 不飽和ポリエステル樹脂(MF)、ポリウレタン(PU)、エポキシ樹脂(EP)については化学的な成分の関係で、一部接着できないものもあります。
接着出来ないプラスチック
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂(PTFE)、ナイロン(PA)、エンプラ系樹脂等は接着出来ません。
その他の素材
プラスチック以外では、FRP、バルサ材、アルミ、石材、コンクリートに接着できます。異素材を接着するといった使い方も出来ることに要注目です。
まずは目立たないところでチェック!
素材表記されているものであれば区別出来ますが、素材がわからない場合も多いですよね。まずは、汚れても問題の無い場所に液をつけてチェックしましょう!プラスチックは少し溶ければ接着出来るサインです。
プラリペアのバリエーション
プラリペア P-550 黒
プラリペアの製品は合成樹脂パウダー(粉)と専用リキッド(液)、スポイトやニードルの付属品から成ります。
カラーバリエーション
粉は、白、黒、透明、赤、青、黄色の6種類あります。
黒色の注意点
電気が通る部分に使用されているプラスチックを補修する際には、黒色意外の粉を使用しましょう!プラスチック自体には電気を通さない性質(電気絶縁性)がありますが、黒色の粉だけは着色料として電気を通す成分(カーボン)を使用している為、他色の粉に比べて絶縁材料として不向きです。
粉や液のバラ売りもあり
最初は粉と液、付属品が揃ったキット商品を手に入れるのがオススメです。粉は各色5g,30g,100g,250g,1kg、液は10ml,50ml,100ml,300ml,1kgと個別に購入することも可能です。足りなくなったら買い足す、といった使い方が出来ます。
プラリペアでどれくらいの物が作れるのか
粉が5g、液が10gの基本キットを使った場合、単3電池1本分くらいの体積(約7立方センチ)になります。
プラリペアはどこで買える?
大手ホームセンターやカー用品店に取扱いがあります。Amazonやモノタロウの通販、武藤商事のメーカー直販「プラリペアネットショップ」で購入することができます。
プラリペアする前に、まず準備!
ここからは、実際にプラリペアで修理する様子をご紹介します。DIY全般に言えることですが、しっかり作業環境と道具を整えておくことが、手早く失敗せずに作業を進めるポイントです。
作業環境を整える
プラリペアで修理する前に、机や床がよごれても大丈夫なようにしておきましょう。片付けのお掃除がラクに済ませられるようにします。また作業中はプラリペアの成分の関係で化学的な臭いが発生します。換気の良い場所を作業場所に選びましょう。
道具を準備する
プラリペアの粉、液、キットの付属品、手を保護する為の軍手やゴム手袋、掃除道具、マスキングテープ、ライター、用途にあわせて紙ヤスリやリューターを準備すると良いでしょう。
下地づくりは大切
プラリペアは粉と液を混合してできたお餅のような状態で、接着したい場所にのせて接着硬化させます。餅状のプラリペアがしっかり接着できるような居場所を作ってあげることが完成後の強度を左右します。接着面がザラザラしている方が食いつきよく接着も強固にできます。
接着面の強度を上げる方法
ヒビ割れのような接着面積を確保出来ない場合は、割れ線をなぞるようにヤスリやリューターで削り取り、プラリペアを充填出来るスペースを作ります。接着面積を増やしてやることがポイントなので、ヒビ割れの表面にガラスクロスを張り込みプラリペアで接着することも強度アップに有効です。
プラリペアを盛っていこう!
餅状のプラリペアを作る場合、接着させたい箇所の大きさによって2種類の方法を使い分けます。
方法1:基本のニードル法
接着面が狭い場所や、スポットの場合に適した方法です。
①道具の準備
液剤をキットの容器に入れてニードルをしっかり差し込みます。粉は小分けのカップにたっぷり入れます。
②餅づくり
ニードルの先端を粉の入った小分けカップの直上に持っていき、液の入った容器を軽く押さえてニードル先端に必要な大きさの滴玉を作ります。
滴玉を粉の上に接地させたら餅状のプラリペアの玉が出来上がるので、ニードルの先端を玉に刺して素早く補修箇所に持っていきます。このとき、容器から液剤を出さないように注意すること。
③接着ポイントに到着
補修箇所に到着したら接着ポイントになる部分にプラリペアを落としていきます。容器を少し押さえて液剤をだすとお餅がドロリと落下します。 落下したプラリペアを接着ポイントに馴染ませるように針先を使って伸ばし整えます。このとき、液をたっぷり目に使うと上手く接着できます。
方法2:ふりかけ法
広範囲に接着するケース、部品の補填再生や造形をするケースで粉も液も多く使う場合に適した方法です。
①道具の準備
液剤をキットの容器に入れてニードルをしっかり差し込みます。粉は先細のケースやスポイトに採っておきます。
②餅状プラリペアを現場で量産
接着ポイントになる部分に直接粉を振りかけて、その上から液を粉にかけてプラリペアを餅状に仕上げていきます。
③形状を整えます
針先を使ってプラリペアを伸ばし整えます。ニードル法と同様に、液剤をたっぷり目に使用すると上手く接着出来ます。
プラリペア中に困ったときは
プラリペアの基本的な盛り方がわかったところで、実際に作業をしてみると遭遇しやすい問題の対処法です。液剤の取扱いを上手にすることがポイントです。
ニードルが詰まってしまった
うっかり液剤を使用したままで放置したり長時間使用しているとニードルの穴が詰まってしまうことがあります。こんなときは、ニードルを容器から外してニードルの穴付近をライター等の火で熱してやると溶けてくれます。あまり熱しすぎるとニードルの根元のプラスチックが変形してしまうので、様子を見ながら進めましょう。
液のポタポタがコントロール不能
冬や涼しい場所で作業していると、勝手にどんどん液が出てくる現象に見舞われることがあります。これは、液容器を持つ手の温度が容器中の空気を暖めて膨張させてしまうことで、液剤が押し出されてしまうことが原因です。液剤を満タンにして使うことで空気層が無くなりポタポタが起きにくくなります。
餅が上手く作れません
原因は2つ考えられます。1つは上記の液のポタポタ。2つ目は、小分けカップに入れる粉の量が少なすぎて液が容器の底まで到達してしまっているパターン。小分けカップに入れる粉はいつもたっぷり目にしておくことがポイントです。
ひと工夫でより使い易く
ニードルの曲げ具合をカスタムすると細かい作業がやりやすくなります。ピンセットでもストレートとツル首のタイプを使い分けるのと同じですね。開口部より少し上で軽く曲げて、穴を上向きにすることで液ダレを防げます。
慌てずに待つべし
プラリペアの接着作業が一段落すれば、重合硬化が完了するまでに時間が必要です。25℃の室温で約5分で硬化完了しますが、硬化不十分な状態で動かしてしまうと今までの作業が水の泡になりかねません。焦らずしっかり硬化させましょう!
待っている時間に後片付け
使用後に残ったプラリペアは片付けてしまいましょう。液剤を放置しておくと徐々に固まってきて使えなくなってしまいます。ニードル容器の液はニードルを外してキャップを確実に取付けて冷暗所保管。パウダーも同様に蓋を確実に取付けて保管しましょう。
きれいに仕上げよう!
硬化が完了したプラリペアは接着したプラスチックと解け合って強固に接着しています。上から他のプラスチックと同様にペイントすることも可能です。表面の形状を整えることで見た目だけではなく、応力を分散することにも繋がり、結果的に修理した部分が長持ちします。せっかくなのでキレイに仕上げましょう!
こんなことも出来る、プラリペアの真骨頂!
プラリペアにはより強度を高めたり、簡単キレイに造形するサポート商品のラインアップがあります。
型取りくん
ポリエチレン樹脂で出来た型取り材です。お湯やドライヤーで温めると柔らかくなり原型に押し付けて型を採ります。プラリペアとは接着しない素材で出来ており、何度も再利用できるので使い勝手抜群です。
プラリシート
FRPなどに使用されるガラスクロスにプラリペアの粉を仕込んだ製品です。プラスチックのヒビ割れの上に被せて接着するとガラスクロスの分だけ強度が高くなります。
プラリペアで拡がるDIYの可能性
今回はプラリペアを使用してプラスチックを補修する方法と強度についてご紹介しました。単に接着するだけではなく、造形まで出来るプラリペアを使用すれば、より簡単に高機能なプラスチック部品を作ることが出来ます。
忠実にオリジナルを再現するもよし、あなた好みにカスタムするもよし、プラリペアの存在はDIYの限界を大きく拡げてくれるでしょう。
左が補修前、右が造型補修後