ヤグルマギクについて
花びらが特徴的なヤグルマギクは、育てやすいことからガーデニングでよく使われるキクです。それに美しいお花は、切り花やドライフラーとしても活用されています。園芸や観賞用として人気が出たのは品種改良の結果です。それまでは麦畑で見かける雑草にすぎませんでした。現在の品種は多くあって、草丈や花色は様々です。きっと誰もが、好みのヤグルマギクを見つけることができますよ。
基本情報
キク科のヤグルマギク属になります。草丈は20cm〜100cmほどまで成長します。本来は多年草とされますが、花後には枯れてしまうことから実際の扱いは一年草です。ヨーロッパが原産地で、地中海沿岸の地域に自生していて、ドイツ、エストニア、マルタの国花でもあります。日本にやってきた時期は明治時代です。
名前の由来:学名
学名は「Centaurea cyanus」です。「Centaurea(ケンタウレア)(セントレーア)」は、ギリシア神話に登場する、上半身が人間で下半身が馬の姿をしたケンタウロスのことです。ケンタウロスの賢者であるケイローンが負傷した際、ヤグルマギクを使って回復したという伝説が由来になっています。「cyanus(キアヌズ)」は藍色といった意味があり、ヤグルマギクの花色からきているんですね。
名前の由来:和名、英名
和名の「矢車菊(ヤグルマギク)」は、矢車に似ていることから名付けられました。矢車は鯉のぼりの竿先などに付いている風車のことですね。英名の「Corn flower(コーンフラワー)」については、トウモロコシ畑や麦畑で雑草として生えていたことが由来です。「Bachelor`s button(バチェルァーズボタン)」に関しては、男性が独身をアピールする際に、ヤグルマギクをえり元へ飾っていたことが由来になります。
混同しやすいヤグルマソウ
このキクの別名は他にもあってヤグルマソウとも呼ばれます。ただし、別物であるユキノシタ科のヤグルマソウも存在するため、間違えられやすいです。ヤグルマギクは花びらが矢車に似ていて、ユキノシタ科のヤグルマソウの場合は葉っぱの形が矢車に似ているんですよ。色々とややこしいですよね。混同しないためにも、ヤグルマギクとだけ呼んだ方が良さそうです。
ヤグルマギクの特徴
このキクの一番の特徴は、すでに何度か言っている通り矢車に似た花びらの形と、放射状に広がった花姿にあります。園芸品種には八重咲きが多いのも特徴のひとつです。花色は鮮やかな青色がポピュラーですよね。他にも紫、赤、ピンク、白などの花色がそろっています。各色の中でも濃かったり淡かったりと、様々な品種があるんですよ。開花時期は一般的には4月〜5月ですが、植え付けの時期によって異なります。
花言葉
このキクも花言葉を持っています。どれも素敵な花言葉です。「繊細」「優美」という花言葉は、特徴的な細長い花びらと青い花色からつけられました。「教育」の花言葉については、プロシア王妃が王子を教育する際に、ヤグルマギクを摘んでいたことが由来になっています。他の花言葉として「信頼」があります。このキクを育てたり鑑賞する際には、これらの花言葉を思い出してみてくださいね。
ドライフラワー
このキクの花は、乾燥しても鮮やかな花色を保つという特徴があります。そのことからよくドライフラワーにされるんですよ。簡単に作れちゃいます。ドライフラワー用の乾燥剤をタッパーの半分ほどまで入れます。そこへ好きな長さでカットした花付きの茎を置き、乾燥剤をすべて入れてください。タッパーを完全密封して数日待てば、ヤグルマギクのドライフラワーが完成します。
ヤグルマギクの効能
ヤグルマギクは別名のコーンフラワーとして、ハーブティーのブレンド用ハーブなどに使われています。ほとんど味や香りはないのですが、体に良い効能があるんですよ。ハーブティーとして飲む以外にも、この効能を活用した生活用品は多く存在します。シャンプー、化粧品、洗口液など、知らないうちにヤグルマギクの効能を取り入れていたかもしれませんね。
効能について
このキクは、主にアントシアンやフラボノイドなどを含んでいます。有名な効能はいくつかありますよ。ブルーベリーと同じような眼精疲労の回復。消化促進によって便秘の改善につながる。薄毛対策になる。炎症に有効なことから口内炎を予防したり、気管支炎に効き目がある。消臭効果のおかげで口臭ケアができる。など、といわれています。他にもアンチエイジングへの効能も期待されています。
ヤグルマギクが適した環境
原種が雑草だっただけあって、たくましく成長してくれます。暑さと寒さともに強い草花です。ただし過湿には弱いため、風通しが良くて湿気を逃せる場所で育てましょう。それと日陰は苦手で日当たりの良さも必要になります。品種によって草丈に違いがあります。背丈が伸びるものは風によって倒されてしまうことがあるので、支柱を立ててください。やや寒いぐらいの方が強く育ちます。
ヤグルマギクの種まき
このキクは種から増やすことができます。一年草としての扱いになりますが、種を採取して種まきすることで毎年同じ育て方で楽しめます。花後に葉っぱと茎が枯れてからが種の採取時期です。種をまく時期まで、茶封筒などに保管しておきます。青い花色がこのキクの特徴になったわけは、他の花色よりも強くてよく増えるためです。増やしたい他の花色があるなら、その花は離しておかないといけません。
種まき方法
発芽するための気温は18度前後なので、地域によって種をまく時期は異なります。ただ、秋に種まきして春に開花し、梅雨付近で枯れるのが一般的な流れです。種まきの方法は、まず育苗(いくびょう)ポットへ赤玉土小粒を入れてください。種を3粒ほどバラバラにまきます。そのまま種の上に土をかぶせないのがポイント。水切れに気をつける育て方で、葉っぱが6枚ぐらいになったら状態の良い株を植え付けます。
ヤグルマギクの植え付け
ヤグルマギクの苗は1年中、主に秋〜春ごろ売られています。状態をよく確認し、問題のないものを購入するようにしてください。病気や傷んでいないということはもちろん、大きくしっかりしている苗がいいですよ。または自分で、種まきによる育て方によって成長させた苗を植え付けていきます。
用土
過湿に弱いので水はけの良い土にしないといけません。鉢植えなら赤玉土小粒6割、腐葉土(ふようど)3割、川砂かパーライト1割の土を作ります。赤玉土小粒7割と腐葉土3割でもOK。草花用やハーブ用の培養土(ばいようど)でも大丈夫ですよ。この培養土に川砂を加えてもいいですね。地植えの場合は、掘り起こした土へ腐葉土と堆肥(たいひ)、川砂を混ぜて使います。
植え付け
このキクの苗を鉢植えにする場合は、苗に対してひとまわり大きな鉢へ植え付けます。地植えなら株の間隔に気をつける必要があります。30cm程度は空けるようにしてください。このキクの根っこは地下へ直進していく直根性(ちょっこんせい)です。直根性の根っこは、ちょっとでも痛むと大きな痛手になって枯れてしまいます。なのでこのキクを植え付ける時には、根っこを触らないようにしましょう。
ヤグルマギクの管理
ヤグルマギクを植え付けた後は、正しい育て方をして育てていきます。このキクを置く環境に問題がなければ、水やりと適切な肥料を与えるぐらいの基本的な育て方だけで元気に育ってくれますよ。それとこのキクは一年草として育て、花後には枯れるため、植え替えをする必要がありません。
水やり
過湿が苦手と説明してきました。環境に気をつけるだけでなく、水やりも注意しましょう。鉢植えの場合は、土の表面をさわってみて乾いているのを確認してから、ふんだんに水やりします。地植えは水やりしなくても大丈夫です。水やりが多くて、つねに土が湿っている状態だと根っこがくさって枯れてしまいます。水やりは控えめにして、ちょっとだけ乾燥させてるぐらいがちょうどいいです。
肥料
このキクは肥料をあまり必要としません。自分で土を作った場合、植え付ける時にゆっくりと効き目があらわれる緩効性化成肥料(かんこうせいかせいひりょう)をほどこすだけで十分です。その後は肥料を与えなくても大丈夫。鉢植えで心配なら、月1で置き肥か、月2で液体肥料を与えましょう。売られている培養土を使っている場合は、すでに肥料が含まれているので、それ以上は与えないようにします。
間引き
このキクが成長してきて、茎や葉っぱがゴチャゴチャしてきたなら、間引きをおこなって風の通りを良くしてあげます。また、肥料の与えすぎなどで弱い茎が長く伸びてくると、見た目が悪い上に風で倒れることになってしまいます。草丈が20cmを超さない時に、茎の先の芽を摘み取る摘心(てきしん)をしてください。横へ成長していくので倒れることを防げます。
ヤグルマギクが被害にあう病害虫
このキクも病気にかかったり害虫が発生して、被害を受けることがあります。そうならないような育て方をしたいところ。でも発生してしまった時のために、病害虫の特徴などを知っておきましょう。風通しが悪いとカビが原因の「うどんこ病」を発症します。白いカビによる粉をまぶしたような症状で、しだいに枯れてしまいます。害虫は、アブラムシやヨトウムシが発生しますので、見つけたら駆除してください。
ヤグルマギクの品種
このキクは多くの品種が作られていて、その園芸品種のほとんどは八重咲きになります。雑草として扱われていた原種は一重咲きです。高い草丈で茎が丈夫な切り花に適した品種、低い草丈で花がいっぱい咲くガーデニングに適した品種と、園芸品種は大きくふたつに分けられます。それぞれに適した使い方をしないといけない、という決まりはありません。自分の好きな目的で育てればOKです。
ヤグルマギクのまとめ
ヤグルマギクの詳細や育て方について解説してきました。矢車に似た花びらを放射状に広げるキク。花色は青色のイメージが強いのですが、様々な色の品種があります。それに草丈も品種によって違うから、ガーデニング、切り花、ドライフラワーと色んな用途に合わせて使えますよ。このキクの別名であるコーンフラワーのハーブティーを飲んで、効能を体感してみてください。