メジナ/分類
スズキ目メジナ科メジナ属
メジナは、スズキ目という魚類の中で最大のグループの一つ、メジナ科の魚で、メジナ科はメジナ属とGraus属(海外のみ)で構成されます。 メジナ属は世界で15種が確認されており、日本国内ではメジナ、クロメジナ、オキナメジナの3種類が知られています。
メジナ/外国名
メジナは複数の英語名を持ちます。
Common nibbler
nibblerは「噛むもの」の意味です。
Girella
Girellaは、メジナ属魚類全般を表します。学名の属名にもなっています。
Largescale blackfish
「Largescale」は「大きい鱗」、「blackfish」は「黒い魚」の意味になります。
Rudderfish
「Rudderfish」は、「船について行く魚」という意味です。
メジナ/学名
Girella punctata
属名の「Girella」はラテン語で「円」を表す「gyros」と、縮小辞の「-ella」をつなげたもので、「まるい」を表します。 種小名の「punctata」はやはりラテン語で、「斑点のある」という意味の「punctatus」の女性形です。 ちなみに、オキナメジナの学名は「Girella mezina」で、種小名に「mezina」(メジナ)がつきます。
メジナ/名前の由来
メジナは目が吻部(口、鼻周辺)に近いところに位置しており、このことから、「目が近い魚」→「目近魚(めぢかな)」がなまって「メジナ」になったとされます。また、漢字の当て字で「目仁奈」、「眼仁奈」と表すこともあります。 他に、20㎝以下の小さいサイズを「コッパ」「コッパグロ」と呼ぶこともあります。
メジナの地方名と由来
メジナは関西方面で「グレ」、九州では「クロ」と呼んでいます。 「グレ」は、磯の岩がごつごつしたところを「瓦礫場(ガレバ)」と呼び、そこで釣れるから「ガレ」→「グレ」になったといわれています。 また、「クロ」はそのまま体色に由来します。 この他に、まぎらわしいことに「クロダイ」と呼ぶこともあります。もちろん「チヌ」と呼ばれるクロダイとは別です。
メジナ/生態・生育環境
分布~メジナは南方系
メジナは、太平洋側では房総半島~鹿児島県、日本海側では新潟県以南です。 また、クロメジナとオキナメジナも、太平洋側ではメジナと同じ海域に分布しますが、日本海側は九州以南と、やや南寄りの傾向があります。 ちなみに、南方系といっても、沖縄には分布しておらず、最も南でもオキナメジナの奄美大島までが南限と言われています。しかし、沖縄を飛ばして、3種類とも海外では台湾やその付近の中国沿岸も分布域に入っています。 沖縄を飛ばした分布をする魚はメジナ以外にも知られており、琉球列島の西側を通る黒潮の流れが、分布の拡大を阻んだのではないかと言われています。
メジナの生活域~岩場を好む
メジナは沿岸の岩礁域で生活をします。このため、磯や、堤防のテトラポッドなどが組み合わさったところで見られます。
メジナは雑食性
メジナ釣りでは、通常の餌としてオキアミを使用します。しかし、メジナは海藻を食べるということも、昔から知られています。 研究によれば、メジナは普段は海藻を中心に食べており、エビやカニなどは、むしろ補助的な餌といわれています。 このことを示すように、メジナは自分の体長の倍近くのの長い腸を持ちます。草を食べる馬や牛と同じように、魚も藻食性のものは腸が長くなります。オキナメジナでは、腸の長さは体長の5倍くらいになり、メジナ以上に藻食の傾向があるようです。
しかし、生まれて間もないころは主にプランクトンを食べ、成長に合わせて海藻についているワレカラなどの小さな生き物、海藻と、食べるものの優先順位を変えていくようです。 また、季節によってもやはり動物質の餌を多く食べることもあるようです。
メジナの成長~卵から始まる長い旅
メジナの卵は「分離浮性卵」と呼ばれる卵です。これは、簡単には「1個ずつバラバラで、水に浮く卵」ということです。 生み出された卵は海流に乗って分散します。そして生まれてからも最初は海中でプランクトンのように流れに乗った生活をします。 少し成長して幼魚期になると、流れ藻について生活します。このように、成長に合わせて新しい生活域を探し、やがて適当な岩礁地帯で群れを作って定住します。
メジナ/特徴・形態
最初の「メジナ/分類」でも述べましたが、国内のメジナ属魚類は3種類います。ここで、簡単に3種類の特徴についてお話します。
メジナ
・鱗の基部が黒い(黒点がある) ・鰓蓋(さいがいと呼び、「えらぶた」のことです)のふちが黒くない、下半分に鱗がない ・尾びれの先端はほぼまっすぐで、湾入しない
クロメジナ
・鱗の基部に黒点がない ・鰓蓋のふちが黒い、下半分に鱗がない ・尾びれの先端は、やや内側に湾入する クロメジナは、「オナガ」、「尾長グロ」とも呼ばれ、釣れた時の引きの強さなどから、メジナよりも好まれることがあります。
オキナメジナ
・鰓蓋のふちが黒くない、全体に鱗がある。 ・上唇が厚く、口が全体的に下向き ・体に薄黄色の帯がある。 ※若い個体ほどはっきりしています。また、陸にあげるとすぐに消えてしまいます。
メジナ/釣り情報
年中釣れるも、旬は冬
メジナは条件や釣り方、大きさなどにこだわらなければ、堤防や磯などで1年を通して釣ることができます。しかし、一番おいしい旬の時期は、冬になります。この時期のメジナは、特に「寒グロ」とも呼ばれ、釣り関係の新聞や雑誌記事などでも大きく取り上げられます。
メジナは、夏は主にゴカイや甲殻類などの動物質の餌を食べますが、冬は海藻を主に食べます。このため、身に臭みがなく、おいしさも増すため、冬が旬になります。 また、メジナの産卵期は晩冬から初夏であるため、冬のうちに栄養を取っておく必要があります。このため、しっかりした身をつけていることも関係しています。
メジナ釣りの定番・フカセ釣り
メジナを釣りで、まず真っ先に上がるのが「フカセ釣り」でしょう。 フカセ釣りは「ウキ釣り」の一つで、重りをつけない、もしくは軽めの重りを用います。これは、潮の流れに乗せて、餌ができるだけ自然にポイントに届くようにするためです。
ここで、フカセ釣りに必要な道具についてお話します。
竿は、磯竿の3.6~5mサイズを使います。釣り場や狙うサイズなどで合わせていくとよいでしょう。
リールはスピニングを、道糸は3~4号くらいが目安です。また、ハリスはあまり道糸と差をつけず、1~2号くらいになります。
ウキは、この他にシモリ用の玉ウキを使うこともできます。
おもりは、あまり大きいものは使えません。大きいおもりは沈むのが早いために狙った深さに早く餌を届けられますが、その分沈みが不自然になります。 できるだけ小型のカミツブシかガン玉を1~2個、間をあけてハリスにつけます。
針はグレ針の他、チヌ針やコイ釣りなどで使う伊勢尼などでも大丈夫です。
寄せ餌
メジナは群れで生活しているので、寄せ餌が大きく釣果を左右します。 基本的には、「市販の配合エサ」と「オキアミ」を海水で混ぜたものが多く使われます。人によっては、そこからさらに押し麦やパン粉、カキ殻などを混ぜて、海中での広がりや沈み、濁りなどを調整します。
マルキュー 活性起爆材・グレ
活性を高めるための集魚剤もあります。寄せ餌に混ぜて使用します。
配合エサは釣具店に行けばいろんな種類がありますので、経験を積みながら選んでいけばよいでしょう。また、オキアミは大小の冷凍ブロックが売ってありますので、それを解凍して配合餌と混ぜます。
寄せ餌を扱う場合は、やはりバッカンは用意したいところです。バケツなどで代用もできますが、製品によって折りたためたり、柄杓やロッドホルダーを取り付けられたりするので、1個あると便利です。
ダイワ(Daiwa) プロバイザー スーパーバッカン FH36 EVO.7 WHBK(ホワイトブラック) 04703025
付け餌
付け餌は寄せ餌と同じくオキアミが多く使われます。寄せ餌用のオキアミからそのまま付け餌に使用したり、付け餌用にパックのオキアミを購入しても構いません。
餌とり対策~いかにポイントに餌を届けるか
寄せ餌を使う以上、どうしても避けられないのが「餌とり対策」です。付け餌がメジナのタナに届くまでに、スズメダイや小アジなどに取られることも少なくありません。そこで、その対策について少しお話したいと思います。 ①寄せ餌をずらして打つ…メジナのポイントからわざとずらして少量の寄せ餌を打ちます。そこに餌取りが集まっている間に、ポイントに仕掛けを入れます。 ②付け餌を工夫する…オキアミを針につけてから、さらにそれを寄せ餌の団子で包みます。団子は、寄せ餌に小麦粉を混ぜて作ります。小麦粉で粘りと重みが出るため、オキアミだけよりも早くポイントに届けることができます。
サビキ釣り
堤防でのアジ狙いで行われるサビキ釣りですが、これでメジナを釣ることもできます。仕掛けはそのままで、底近くにタナを合わせて釣ります。 磯のメジナよりは小さくなりますが、活性が上がっているときはどんどん釣れることがあるので、小さいお子さんへの入門にも向いています。
※あまり小さいサイズは釣れても逃がしてあげてくださいね。
OWNER(オーナー) アミエビ実寸サビキ ハゲ皮 3-0.4-0.8
クロメジナの舟釣り
メジナの仲間のクロメジナ(オナガメジナ)は、メジナより沖合で生活しているため、沖の磯からの他に、船で釣ることもあります。 この場合、寄せ餌カゴを使った片テンビン仕掛けを海中のポイントに沈める方法で釣ります。
メジナ/味・選び方
メジナは冬に旬を迎えるため、スーパーなどで購入する場合も冬がいいでしょう。釣った場合は、早めに血抜きをして身をしめておきましょう。 白身でたんぱくな味なので、さまざまな料理に向いています。
選ぶ際は、以下の点に注意してください。 ・体色が黒くてつやがある ・鰓が綺麗な赤色
メジナ/栄養・寄生虫
メジナの寄生虫
他の多くの魚と同じく、メジナにも寄生虫がつきます。 メジナの腸管には「吸虫」と呼ばれる寄生虫が確認されています。 この他、鰓の中や体表などに「等脚類」と呼ばれる寄生虫が見られることがあります。等脚類は、水族館で人気のオオグソクムシや、タイの口の中に寄生する「タイノエ」などがいます。 これらの寄生虫は、もし見かけてもそのまま取り除けば問題ありません。
アカムツの口の中に寄生するタイノエ
メジナの栄養
メジナは魚なので、当然たんぱく質に富んでいます。また、他に目立つ栄養素として、ビタミンB2、ビタミンB12、ビタミンDが豊富に含まれています。ミネラルでは、リン、カリウムが多く含まれています。
メジナ/料理・調理方法
メジナは刺身から煮つけ、焼きもの、吸い物など、料理の方法も様々です。
生食~刺身・カルパッチョなど
冬場の臭みのない時期は、刺身などがお勧めです。 鱗、内臓、頭を落としてよく洗ったあと、身を3枚におろし、皮をはぎ取って均等に切り分けます。
切り分けたメジナの身を、さらに「ヅケ」にしてもおいしく食べられます。 容器に醤油とみりんを1:1に入れて混ぜたものにメジナの身を入れ、しばらく冷蔵庫で寝かせます。食べるときは、ご飯の上にわさびと一緒に乗せて海鮮丼やちらし寿司にもできます。
オリーブオイルと野菜を混ぜたカルパッチョなどもおすすめです。
焼く・煮る
火を通した料理では、白身のさっぱりした味わいを楽しめます。
塩胡椒をした身を、バターを引いたフライパンで焼くバター焼きや、ショウガと醤油などでじっくりと煮込んだ煮つけなどお勧めです。
また、寒い冬などは、釣りたての寒グロを鍋にしながらその日の余韻に浸るのも楽しいでしょうね。
メジナ/その他 ①オキアミがメジナを変えた!?
今でこそ刺身などでもおいしく食べられるメジナですが、実は昔はそうでもなかったといわれています。それは、メジナの磯臭さのためといわれており、味噌漬けなどにすることが多かったようです。 しかし、1970年代ごろにオキアミが釣り餌として全国に広まり、一年を通して海にオキアミがまかれるようになりました。 その結果、オキアミの脂がメジナの身に蓄積し、あまり磯臭くなくなったという説があります。
メジナ/その他 ②メジナを観察しよう
潮だまりで観察
夏に海水浴などで磯遊びをすることも多いと思います。その時には、ぜひタイドプール(潮だまり)をのぞいてみましょう。 その年に生まれたメジナの幼魚が見つかるかもしれません。 大きなタイドプールならば、中に入ってシュノーケリングをしながら観察してみましょう。群れで忙しく泳いだり、岩をつついて餌を食べる様子などが観察できると思います。 網ですくって、小さな水槽でも観察してみましょう。目の大きさや体の色など、成魚との違いを比べてみるとおもしろいですよ。 ※観察が終わったら、逃がしてあげてくださいね。
流れ藻を観察
同じように、漁港などで大きな流れ藻を見つけたら、目の細かい網ですくってみましょう。 やはりその年に生まれたメジナがいるかもしれません。 また、メジナだけでなく、他にもワレカラなどのたくさんの生き物が流れ藻についているのが見れると思います。これらの生き物がメジナを育てているのです。
メジナ/最後に…マナーと安全に気を付けて
磯の人気者、メジナはこれからも私たちを楽しませてくれる魚であり続けると思います。 しかし、そのためにこそ、私たちも気を付けていかなければいけないことがあります。 一つは、マナーを守ること、もう一つは安全に気を付けることです。 本当に基本的なことですが、海や釣り場にごみを捨てたり、寄せ餌を放置したりして環境を汚さないようにしましょう。 また、メジナの住む磯は岩だらけで滑りやすいところです。少しの油断で滑って海に落ちたり、大けがをすることもあります。装備やその日の天候などにも十分に気を付けて、これからもメジナ釣りを楽しんでください。
主にホンダワラ科の海藻で構成され、春などに多く見られます。メジナの他、多くの魚の幼魚や生き物が生活しています。 流れ藻は、幼魚が捕食者から身を守るシェルターの他、餌になる小さな生き物を提供します。