ヤマユリとは
ユリは古くから世界中で愛されてきた植物です。日本では季節になると野山にたくさんのユリが咲き、季節の風物詩とも言えますね。 そんなたくさんあるユリの仲間の中でも、ヤマユリは特に大きな花を咲かせ強い香りを放つため「ユリの女王」と呼ばれます。そんなヤマユリについて、詳しくご紹介いたします。
ヤマユリ/科名・学名
ヤマユリ / 科名
科:ユリ科 属:ユリ属 ヤマユリは名前の通りユリ科ユリ属の球根植物です。ヤマユリはユリ科の中でも花の大きさは最大級で、花径は20㎝ほどにもなります。
ヤマユリ / 学名
学名:Lilium auratum auratumとは「黄金色の」という意味で、ヤマユリは学名では「黄金色のユリ」という意味を持ちます。ヤマユリの特徴である花びらの黄色い筋状の模様を指しているようです。
ヤマユリ / 原産地・名前の由来
ヤマユリ / 原産地
原産地:日本・近畿地方以北(北陸地方を除く) ヤマユリは平地から山地などに自生しています。 日本には15種類ほどの原種ユリが自生していますが、そのうち7種類が日本にしかない固定種の原種ユリです。ヤマユリはその中でも大型の花を咲かせ、ヤマユリを交配した品種が多く生まれました。
ヤマユリ / 名前の由来
ヤマユリの名前の由来はその字の通り、山で咲くことからつけられました。ヤマユリの英名は「gold-banded lily」と言いますが、これは学名と同じく、ヤマユリの特徴である花びらの金色の帯からつけられています。
ヤマユリ / 別名
別名:カントウユリ(関東ユリ)・コウユリ(香ユリ)・スジユリ(筋ユリ)・リョウリユリ(料理ユリ)
地名由来の別名が多い
ヤマユリには地名のついた別名が多く、他にもカマクラユリやハコネユリ・ヨシノユリなどといった地名のついたものがあります。ヤマユリが日本の各地で見られ、親しまれていた様子が窺えますね。ヤマユリは特有の強い甘い香りを放つことからコウユリ、ニオイユリなどとも呼ばれたようです。スジユリはその模様から、リョウリユリとはヤマユリの鱗茎(ユリ根)を食べる習慣からつきました。
ヤマユリ / 開花時期・花言葉
ヤマユリ / 開花時期
開花時期:7〜8月 ヤマユリの開花時期は7〜8月。季節になるとあぜ道や高速道路の脇などあちこちでヤマユリの大きな花が見られます。ヤマユリの香りはとても強く、濃厚で甘い香りがします。
ヤマユリ / 花言葉
花言葉:純潔・荘厳・飾らぬ美・飾らない愛・高貴な品性 ヤマユリの原種とは思えないほどの華やかな姿にぴったりな花言葉が多いですね。強く美しく気高いヤマユリはいつまでたっても人々を魅了させてくれます。「純潔」は、聖母マリアにユリが捧げられた聖書の一節が花言葉に由来しています。ユリは世界においてもたくさんの重要な意味を込められたお花のひとつです。
ヤマユリ/ 歴史
ヤマユリの歴史 / 1.シーボルトが世界に紹介
ユリは「古事記」や「日本書紀」にも登場するほど親しまれていますが、ヤマユリも一説では縄文時代から食用として用いられていたと言います。 ヤマユリが園芸種として世界に広まったのは、江戸時代にシーボルトが日本固定種のヤマユリを自国に持って帰って栽培したのが初めと言われています。
ヤマユリの歴史 / 2.親品種として人気を博す
シーボルトの紹介やその後のウィーン博覧会などがきっかけでヤマユリなど日本固有種のユリは海外でも人気を博し、ユリの球根は大正時代までは主要な輸出品までになりました。ヤマユリはその中でも大きな花を咲かせることができるため、品種改良の親品種として注目を浴びたのです。それまで欧米のユリはヤマユリに比べて花径が小さかったのですが、ヤマユリをもとに交配を重ね、大きい真っ白な「カサブランカ」を生み出しました。
ヤマユリ / 特徴
ヤマユリの特徴 / 1.変異種が多い
ヤマユリは生息地などによって個体差が大きく出る品種でもあり、花の色が異なる品種には同じヤマユリでもそれぞれ呼び名がついているほどです。 黄色の帯状筋が紅色に変化している「紅筋」ヤマユリ、斑点が白色に変化し斑点自体があまり目立たない「白星」ヤマユリ、斑点の紅色が濃く大きい「口紅」ヤマユリなど、呼び方もなんだかロマンティック。いろんなヤマユリを見てみたいですね。
ヤマユリの特徴 / 2.美味しくて薬用にもなる
中国料理や日本料理で使われるユリ根。ヤマユリのユリ根も苦味が少なく、重用されてきました。ただ今日食用として栽培され出回っているのはコオニユリのユリ根で、ヤマユリのユリ根はあまり見られなくなっています。薬用としては滋養強壮・鎮咳・利尿などの効能があります。
ヤマユリの特徴 / 3.種まきから開花まで5年
ヤマユリの特徴は種まきから開花まで5年かかるというところ。 ヤマユリは秋に種を蒔いてから1年半の春にようやく1枚葉が出てきます。その葉は一枚葉のまま秋に枯れ、その翌春にもう一度芽吹き、また秋に枯れてしまいます。その翌春にようやく30㎝ほどの草丈になります。さらに1年ほど経ってようやくお花をつけます。
ヤマユリは地下遅発芽
こういった発芽を地下遅発芽といい、ヤマユリの他にもササユリ、オトメユリなどがこのような発芽をします。種を蒔いてから忘れた頃に出てきますね。 ちなみに、球根栽培の場合は球根を植えてから1年の間にお花を咲かせてくれます。
ヤマユリ / 基本情報
形態:球根・山野草 草丈:120〜200㎝ 耐寒性:普通 耐暑性:普通
ヤマユリ / 育て方
ヤマユリの一般的な育て方は、球根を植える方法です。 球根から植え付ける場合、ヤマユリの育て方はそんなに難しくありません。病気に気をつけ、適した時期に植え替えなどをしてあげれば毎年お花を咲かせてくれます。芳醇な香りで季節を知らせてくれるヤマユリを自宅で育ててみましょう。
ヤマユリの育て方 / 1.日当たりと置き場所
ヤマユリには午前中はよく日が当たり、午後は日陰になるような半日陰が適しています。また、夏は風通しが良いところがよく、冬は北風に晒されないような場所が良いでしょう。 ■庭植えの場合 落葉樹の下などの半日陰が良いでしょう。連鎖障害を起こしやすいため、ユリを育てたことのある場所は避けるか、土をしっかり入れ替えましょう。 ■鉢植えの場合 半日陰か、明るい日陰に置きます。
ヤマユリの育て方 / 2.水やり
ヤマユリの水やりは乾いたらあげる程度で十分です。 ■庭植えの場合 庭植えのヤマユリにはほとんど水をあげなくても大丈夫ですが、地中まで非常に乾いてしまっているようであればあげましょう。 ■鉢植えの場合 表面の土が乾いたらたっぷりと水をやりましょう。
ヤマユリの育て方 / 3.植え付け
ヤマユリの球根はお花屋さんやホームセンター、ネットなどでも購入できます。植え付けの季節になると出回ります。 ヤマユリの植え付け季節は2月から3月頃。 球根3個分の深さに植えます。鉢植えの場合は、深鉢8号以上で、鉢底の穴が多いものを選びましょう。
ヤマユリの育て方 / 4植え替え
ヤマユリは連作障害を起こしやすいため、植え替えの場合は新しい用土を使って土を入れ替えましょう。 庭植えの場合は3〜4年に一回植え替えます。 鉢植えの場合は、1年か2年ごとに植え替えましょう。そのとき土を入れ替えますが、鉢も植え替えの際にきれいに洗ってあげましょう。
ヤマユリの育て方 / 5.肥料
■植え付けの際 球根の植え付けの際、球根の5㎝ほど下に緩効性化成肥料を混ぜます。リン酸とカリウムが主成分のものが良いでしょう。 ■追肥 1回目は地表に芽が出た頃、2回目は梅雨が明けた時期に緩効性肥料を与えます。もしくは地表に芽が出た頃から週1回液体肥料を薄めて与えます。 ヤマユリには多肥は禁物です。球根ばかりに栄養がいって花を咲かせずに終わったり、突然枯れてしまったりしてしまう場合があります。肥料は控えめにしておきましょう。
ヤマユリの育て方 / 6.お手入れ
■支柱を立てる ヤマユリは成長し草丈が高くなってくると、花の重みで倒れてしまうことがあります。芽が出てきたら、200㎝ほどの支柱を立てましょう。球根の近くに立てすぎないように、株元から10㎝ほど離しましょう。 ■花がら摘み ヤマユリは一株にたくさんお花をつけるところが魅力ですが、開花の季節が終わり咲き終わった花をつけたままにしておくと種を作るために養分を使い、球根に養分がいかなくなってしまいます。種を採らない場合は終わった花から切り取っていきましょう。
ヤマユリの育て方 / 7.病気の予防
ヤマユリを上手に育てるコツは、なんといっても病気の予防です。ヤマユリに限らずユリ全般は、ウイルス病にかかりやすい植物です。一度感染してしまうと手の施しようがなくなってしまうので、予防を心がけましょう。 ヤマユリがかかりやすい主なウイルス病は次の4つです。 ・モザイク病 ・急性落葉病 ・萎黄病 ・腫葉病
ヤマユリの育て方 / 8.害虫対策
■アブラムシに注意 ほとんどのウイルスはアブラムシによって伝染します。アブラムシは春の季節になるとうじゃうじゃと出てきますが、ヤマユリも茎が伸び始める時期に発生しやすくなります。この時期に消毒剤などを散布しましょう。 アブラムシを見つけたらすぐ取り除きます。牛乳をかけるのも効果的といわれています。 ■ハサミを消毒する 病気のヤマユリを手入れしたハサミなどで他のヤマユリを触ってしまうと、そこから伝染していまう恐れがあります。ハサミはその都度消毒し、病気にかかってしまった株は寂しいですが早めに処分してしまいましょう。
ヤマユリ / 増やし方
ヤマユリの増やし方にはいくつかのあります。 ・種から蒔く増やし方 ・鱗片を植える増やし方 ・木子を植える増やし方 ・球根を割る増やし方 ヤマユリの増やし方は時間や手間がかかるものもありますが、その分挑戦してみたいと思う人は多いようです。環境に合う増やし方を試してみましょう。
ヤマユリの増やし方 / 1.種から蒔く増やし方
ヤマユリは花の季節が終わると、花の数だけ実をつけ、種をつけます。種から増やす方法は特徴の項でも触れた通り、5年ほどかかります。根気がいりますが、病気になりやすいヤマユリは種から植えると病気にかかってない株を作ることができるというのが利点です。 ヤマユリは種から芽が出るまで1年半かかり、開花までは5年かかりますが、そうやって咲いた花は愛おしいですね。
ヤマユリの増やし方 / 2.鱗片を植える増やし方
ヤマユリの球根は正式には「鱗茎」といいますが、そのかけらひとつひとつのことを「鱗片」と言います。ヤマユリは、球根を鱗片ごとにバラしても繁殖できるのです。 鱗片を植える増やし方を「鱗片挿し」と呼びます。ただしヤマユリは病気を持った球根からバラした鱗片にも病気が伝染していますので気をつけましょう。ヤマユリの鱗片挿しは開花までおよそ3年ほどかかります。
ヤマユリの増やし方 / 3.木子を植える増やし方
木子(きご)とは、茎の下の方にできる小さな球根のことです。土の中に埋もれていることもあります。ヤマユリはこの木子からも増やすことができるのです。 植え替えなどで球根を掘り上げる時期(10月中旬頃)に、木子を採ります。ヤマユリは木子を植える増やし方では2年ほどで開花します。
ヤマユリの増やし方 / 4.球根を割る増やし方
十分に育ったヤマユリの球根は、掘り上げると2つ以上芽が出ていることがあります。この球根を割って植える方法を分球と言います。 ヤマユリを分球で増やす場合はしっかり球根が育っていますので、その翌年には開花します。
まとめ
ヤマユリは球根から育てれば、そんなに難しい植物ではありません。ヤマユリの育て方のコツは、「病気を予防する」ことです。せっかく育てたヤマユリが病気になってしまわないよう、よく観察してあげましょう。 また、美しい愛を象徴する花言葉を持ち、その花言葉にふさわしい美しく魅力的な花をつけるヤマユリを贈り物などに選んでみるのも良いかもしれません。ユリの女王の称号を持つヤマユリは、日本の固定種です。そんなヤマユリが見られる日本の風景を大切にしたいですね。