栽培前の基礎知識1・なすってどんな野菜?
なすの特徴
なすは、冬の寒い時期を苦手とするので、日本では一年草の野菜です。ただし、本来は多年草であり、原産国インドなど一年中暖かい地域では、樹木のように大きく育ちます。日本には奈良時代に伝えられ、一般に食べられるようになったのは、もう少しあとの江戸時代だそうです。草丈は1メートル強。葉っぱは大きめの楕円形で、茎に互い違いに生えます。6月~10月ごろ、紫色の可愛い花を咲かせます。なすは、畑でもプランターなどでも育てられるので、家庭菜園にも大変人気があります。
なすの花言葉
なすの花言葉は、3つ。「真実」「つつましい幸福」「希望」「優美」です。どれも大変前向きでポジティブな言葉ですね。なすは、花が咲いたら必ず実がなる、という結実性の良い野菜です。こうした性質から由来してつけられた花言葉です。また優美という花言葉は、ナスの紫色の花模様からつけられました。古くより、紫は、高貴な色の象徴とされてきたことから由来しています。
名前の由来
原産国から中国を介して伝来してきた「なす」。初夏の時期に実を結ぶことから、当時の人々の間で、「夏味(なつみ)」「夏の実」と呼ばれました。この名前がなまり、現在の「茄子(なす)」となりました。ちなみに、関東では「なす」と呼ばれ、関西以西や北海道では「なすび」と呼ばれています。
栽培前の基礎知識2・なすの栄養価
なすには、カリウムが多く含まれています。カリウムは、私たち人間にとってとても大切なミネラル分です。体内の余計な塩分を体外へ排出してくれます。その作用のおかげで、高血圧やむくみの改善に効果が期待されると言われています。むくみや高血圧を改善してくれる効果が期待できます。また、美しい紫色の皮には、アントシアンが多く含まれています。近年、研究により、「ナスニン」と呼ばれる成分が含まれていることがわかりました。ナスニンは、抗酸化作用に優れていて、体内の活性酸素の発生を抑止してくれる物質です。生活習慣病やガンの予防も期待される嬉しい成分です。料理の際は、しっかり皮も使うと良いですね。
栽培前の基礎知識3・なすの基本データ
科名・属名
ナス科ナス属
学名
Solanum melongena
和名
茄子(なす)
英名
Egg plant
原産国
インド
栽培前の基礎知識4・豆知識
ことわざ「茄子の花と親の意見は千に一つの仇はない」
なすは花が咲けば必ず実をつける結実性の良い植物。その姿を模して「親が、わが子を思って、忠告することは必ず役に立つことだから、親の意見をよく聞こう」という教えです。
ことわざ「秋茄子は嫁に食わすな」
なすには「秋茄子は嫁に食わすな 」という有名なことわざがあります。このことわざの成り行きには諸説あります。1つめは、秋に摂れるなすは美味しいので、嫁に食べさせるのはもったいない、というちょっと意地悪な意味合いです。またほかには、なすは水分が多いので、子宝を宿す女性にあまり食べさせてはいけない、という思いやりからくる意味合いです。ほかにも、なすの実は食べるときには中に種はなく、子宝ができなくなるという縁起をかついだというものもあり、どちらかというと、嫁への気遣いからなることわざのようです。
なすの育て方1・栽培期間
なすは、栽培期間の比較的長い作物です。2~3月に種まきをしたあと、早い地域では、6月後半から収穫の時期を迎えます。そのあと、10月の秋の時期まで、ロングスパンで収穫を楽しむことができます。摘芯や切り戻しなどの剪定や追肥といった、成長の時期に合わせた管理をしながら、ぜひ、長期間のなすの実りを楽しみましょう。
なすの育て方2・おすすめの栽培品種
なすには、大変多くの種類があり、日本だけでも180種類以上あると言われています。地方の伝統野菜になっている日本古来のものから、最近では、ヨーロッパやアジア各地の珍しい品種も出回っています。色は、よく見る紫色の長いタイプではなく、緑や白、まだら模様のものもあります。形も、卵型やまんまるのもの、ものすごくなが細いものなど多岐にわたります。せっかく育てるのなら、珍しい品種にトライして、その美しさを料理に取り入れるのも楽しいものです。
なすの育て方3・栽培環境
もともと、インドを生まれ故郷とする、なす。高温多湿を好むので、日本の夏の時期にも合っていて、育てやすい野菜です。なすは水分が多い野菜で、お百姓さんの間では「なすは水で作る」という言葉があるほど。水やりをこまめにして、なすの好きな環境づくりを目指しましょう。鉢植えやプランター栽培では、水を切らすと枯れてしまうこともあるので注意しましょう。
なすの育て方4・土づくりと肥料
土づくり
なすは、畑で栽培するほか、プランターや鉢植えでも育てることができます。プランターや鉢で育てる場合には、赤玉土に3割くらいの腐葉土とバーミキュライトを混ぜ込んだものを使います。市販の野菜用培養土を利用しても良いでしょう。鉢植えやプランター、畑どちらで育てる場合も、苦土石灰を施して1週間くらい寝かせます。
肥料
なすは、肥料を好む野菜です。しっかりと肥料を施すことで、長い間、収穫を楽しむことができます。まず、植えつけの際、元肥としての肥料を施します。そして、1番花のつぼみがついたら、そこから定期的に肥料を与えます。2週間に1度、株元に肥料を与え続けることが、なすの実をロングスパンで収穫するコツです。なすは、肥料が不足してくると、そのめしべがおしべより短くなり、色が白っぽくなっていきます。肥料を与える目安にするとよいでしょう。
なすの育て方5・畝たて(畑で栽培する場合)
なすを育てるのに必要な、畝の幅は60~80センチ、高さ10~15センチです。なすは高温を好みますので、苗を植えつける前に、黒マルチを設置するとよいでしょう。マルチには60センチ間隔で、苗を植えつけるための穴をあけておきます。追肥する場合も、この穴から与えます。なお、マルチ以外にも、苗の株元に藁(わら)や枯れ草を敷くのもおすすめです。
なすの育て方6・種まきと植えつけ
種まき
なすの種まきに適した時期は、2~3月。種まきしてから比較的ゆっくり成長しますので、春4~5月を目指して、充実した苗に育てましょう。小さい育苗ポットに1粒ずつ種をまき、そっと土をかぶせて軽く手で押さえます。霧吹きなどを使って水やりをします。なすの種は小さく、水やりによって種が流れてしまわないように注意しましょう。直射日光を避け、土が乾かないように水やりを続けます。数週間経つと、芽が出てきますので、霜に当てないように管理しましょう。本葉が2~3枚の頃に、ひとまわり大きい育苗ポットに植え替えます。根を傷めないように注意深くおこないましょう。そして、本葉が6~7枚になったら、苗の完成です。畑やプランターなど好きな場所に植えつけましょう。
苗を購入
なすは、種まきから苗ができるまでの成長がゆっくりで、繊細な管理が必要です。そのため、種まきから育てるのが難しい場合、苗を購入するとよいでしょう。また、冬の時期の長い地方などでも、種まきから育てるのが難しいため、苗を購入するのが一般的なようです。最近では、ホームセンターなどでも、なすの苗がたくさん出回ります。植えつけの時期になると、大変多くの品種のなすの苗が販売されるので、楽しいものです。
植えつけ
なすの植えつけの適期は、4~5月。この植えつけの適期を逆算して、苗づくりをしましょう。なすは、1メートル以上に育つ植物。株間をしっかりとることが、植えつけのポイントです。鉢植えの場合は、直径30センチくらいの鉢に一株植えつけます。プランターの場合は、長さ60センチのものに2株植えつけます。畑に植えつける場合は、株間を60センチくらいあけましょう。
なすの育て方7・水やりと支柱立て
水やり
なすは、非常に乾燥に弱い植物です。こまめに管理して、土の表面が乾燥していたら、しっかり水を与えます。夏の間は、日差しの強い昼間に水をやると、株が蒸れて枯れてしまうことがあります。早朝や夕方などの気温が低めの時間に、水やりをするとよいでしょう。
支柱立て
なすは、草丈が1メートル以上に生育する植物です。支柱を立てて、風などで倒れるのを防ぎましょう。だいたい草丈が50センチになった頃、株の1つ1つに支柱を設置します。1~1.5メートルくらいの支柱を、根を傷つけないように地面に差し込みます。そして、なすの茎と支柱を麻ひもなどで結びます。8の字を描くように結び、あまりきつくならないように注意しましょう。
なすの育て方8・摘芯と切り戻し
摘芯
なすをたくさん収穫するポイントとなるのが、摘芯です。摘芯と聞くとちょっと難しいイメージですが、実はそうでもありません。摘芯のコツをつかんで、ぜひなすの多収を目指しましょう。なすは、2本仕立てもしくは3本仕立てにするのが一般的とされています。主枝1本と、側枝1~2本を中心に育て、不要な枝を取り除く育て方です。プロの農家では、上手に仕立てて管理することで、1本のなすから、なんと180もの実を収穫するのだとか。なすは、葉が生い茂り、一見樹形を見極めにくいのですが、落ち着いてゆっくり観察して摘芯しましょう。摘芯すると、風通しも良くなり、その後の生育にもプラスとなります。摘芯の手順をご説明いたします。まず、主枝を決め、そこから発生する脇芽を側枝とします。側枝に花芽とその上に2~3枚の葉が確認されたら、その上で切り取ります。側枝の花が結実したら、収穫します。と同時に、その実の下で、枝も切り取ります。そこから新しい脇芽があらわれるので、成長を待ちます。脇芽に実がついたら、収穫し、さきほどと同じように切り取ります。この作業を繰り返します。
切り戻し
なすは、だいたい7月下旬になると、少し株のパワーが衰えてきます。その頃に切り戻しをおこなうと、株がリフレッシュして元気を取り戻します。この夏場の切り戻しにより、秋の収穫が可能となります。切り戻しは、思い切りよくおこなうのがポイントです。主枝と側枝の長さを、だいたい半分くらいに切り戻します。これは目安なので、ちょっと元気がないものは、3分の1くらいにしたり、逆に生育のよいものは、もう少し短く切り戻してもよいでしょう。切り戻しのあとは、しっかり追肥して、次の収穫を待ちましょう。切り戻ししてから、約1カ月すると、また実がなりはじめます。
なすの育て方9・病害虫
病気
なすの病気として、灰色かび病やうどんこ病、褐色腐敗病があります。いずれも風通しと日当たりの良さで防ぐことができます。発生を確認したら、病部を取り除く、薬剤を散布するなどの対応をしましょう。
害虫
なすには、ヨトウガ、ハスモンヨトウといった害虫が発生することがあります。見つけ次第、薬剤を散布して駆除しましょう。
なすの育て方10・収穫と保存
収穫
なすは、花が咲いたあと、だいたい15~25日くらいで、実が結実します。一番はじめの実は、5センチくらいの小さい間に収穫してしまいます。その後は、品種に応じた大きさで収穫しましょう。はじめの実を摘み取ってしまう理由は、収穫量を増やすため。こうすることで、株に栄養分を温存し、次からの実のつきをよくします。なすは、あまり実を大きくしすぎると、中で種が熟して、食感が損なわれます。適度な大きさで収穫しましょう。
保存
収穫したなすは、冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。高い温度での保存は傷む原因です。逆に5度以下の低すぎる温度もなすの保存に向きません。なすの実がしわしわと縮んでしまいます。なお、冷蔵庫でなすを保存する際、1個ずつラップにくるんでおくと、中の水分が保持され、長持ちしますよ。
美味しいなすを、ロングスパンで楽しもう
大変多くの品種で、目にも美しいなす。水なすなどは生で食べることができますし、そのほか、煮ても揚げても美味しいなす。育て方も比較的簡単で、ロングスパン収穫を楽しむことができるので、家庭菜園にも最適の野菜です。摂れたてのなすは、あくも少なく、とても美味しいです。なすを上手に育てるコツは、こまめな水やりと定期的な追肥です。家庭菜園の主力選手、なす栽培にチャレンジしてみませんか。
極早生品種のなすです。奇形などが少なく、結実した実の秀品率が高いのが嬉しいポイント。草勢旺盛・スタミナ旺盛です。追肥しながら秋まで楽しむことができます。煮炊きや漬物に向く、緻密な肉質です。