「VMAX1200」とは?
ヤマハの放った世界戦略車
「VMAX1200」とは、1985年にヤマハが開発したバイクです。とはいっても、当時の日本のバイク事情は750cc以上の販売が国内ではできなかったため開発当初から海外をマーケットにしたバイクでした。とはいっても海外から逆輸入された個体も数あったそうですが・・・
開発コンセプトは「怒涛の加速」
「VMAX1200」は、「怒涛の加速」をコンセプトに生まれました。市販車状態でゼロヨンのタイムが10秒台に入っていたとも言われるそのスペックにはやはり目を見張るものがあったようで、瞬く間にその加速力で世界中のスピード狂たちの目を虜にしました。
スタイルは「ドラッグレーサー」
「VMAX1200」のデザインは、その力強いデザインのエンジンと「ロー、ロング」なそのスタイルが特に際立ちます。VMAX1200はアメリカをメインの市場にしたバイクであったがため、当時のアメリカで流行っていた「ドラッグレース」と呼ばれるモータースポーツをイメージしたバイクとなりました。本場のハーレーにも負けないそのマッスルなスタイルとスペックの「VMAX1200」は、和製アメリカンの維持を見せつけたバイクとなりました。
「VMAX1200」のスペック紹介
VMAX1200の車体スペック
まず、車体の全長、全高、全幅が2300mm×1160mm×795mmと、かなり大柄な車体であることが特徴です。さらにその大柄な車体の重量が、263kgとこちらもかなりの重量であることが分かります。(因みに、大型バイクの平均的な重量はおおよそ210kg位です。)シート高に関しては765mmと、こちらはロー、ロングな車体構成も相まって比較的低い数値と言えます。
VMAX1200のエンジンスペック
VMAXのエンジンは、元々はヤマハの「ベンチャーロイヤル」というバイクに搭載された水冷4ストロークV型4気筒の1198ccのエンジンです。最高出力は145馬力、最高トルクは12.0kg/6000rpmと、当時の市販車最高馬力です。重量265kgの車体を動かす心臓は、やはり巨大なものでないといけないようですね。
VMAX1200のスペックその他
前後のタイヤサイズは110/90-18,150/90-15と、当時のバイクらしい大型バイクにしてはかなり細めのタイヤを履いています。タンク容量は14Lで、燃費はリッター14km程との事なので、ぎりぎり航続距離が200km届くほどでしょう。燃費の割には、あまりタンク容量が多くないようです。さらに、後述する「Vブースト」を使うと、さらに燃費が悪化するようです。
「VMAX1200」独自のVブースト機構とは?
VMAX1200の代名詞ともいえる「Vブースト」システム
このシステムは、VMAX1200独自のシステムで、ある一定の回転数を超えるとブーストがきき始め、さらなる力強い加速を車体に与える機構です。vmaxのエンジンは、もともと先述の「ベンチャーロイヤル」に搭載されていた頃は90馬力のエンジンでした。ですが、エンジンの細かなチューニングやこのブーストシステムによって世界最強の馬力になってしまいました・・・。いったい、どのような機構なのでしょうか??
「Vブースト」システムのしくみ
vmaxのキャブレターには、写真のように前後シリンダーをつなぐように通路が設けられており、その通路にはコンピューターで制御されたバルブが蓋をしています。そのバルブはエンジンが一定の回転数を超えると開き始め、一気筒あたりに二つのキャブレターがガスを送るようになります。すると、より多量のガスを送り込まれたエンジンは、さらなるパワーを引き出せるというわけですね。
Vブーストは燃費を削りパワーを引き出す脆刃の刃??
やはりより多量のガスをエンジンに送り込むとなると、その分燃費を悪化させてしまうようです。vmaxのカスタムパーツに常に「Vブースト」を効かせるというパーツがあるようですが、それをすると燃費はリッター7、8キロまでに落ちてしまいます。猛烈に燃費を悪化させるという脆刃の刃とも言えるVブーストシステム・・・容易に多用できるものではなさそうですね。
「VMAX1200」インプレ:取り回し、ポジション編
取り回しはやはり重い・・・??
やはり重量が265kgとかなりのヘビー級バイクなので、取り回しには苦労をするそうです。倒してしまった時などは、重心の低いバイクとはいえかなりの力技になってしまいます。もともとごつい体つきの欧米人向けに作られたバイクなので、日本人が扱うには少し持て余し気味になってしまうのでしょう。
外国人向けの大柄なポジション
座ったポジションは、こちらもやはり大柄な欧米人向けに作られているからか、日本人が座ると少し無理のあるポジションになってしまうようです。ハンドルが、小柄な日本人には中途半端に遠いアップハンドルのため、ツーリングなどでの疲労を抑えるために社外のハンドルにカスタムし、自らに最適なポジションに持っていくといいでしょう。
「VMAX1200」インプレ:直線、高速性能編
低速トルクにも富むそのエンジン
VMAX1200は重量のあるバイクですが、エンジン自体は元がツアラーに搭載されたエンジンなだけあって低回転数からでもしっかり力が出て車体を走らせてくれるエンジン特製になってます。街乗りやツーリングでもシビアな回転数管理は必要ではなく、とても扱いやすいエンジンと言えるでしょう。
高回転域は暴力的な加速!
低速域は扱いやすいVMAX1200ですが、ひとたび高回転域まで回すとVブーストがきき始め、燃費を犠牲にこのバイクを怒涛の加速力で前へ引っ張ります。ほかの並列4気筒のバイクよりも「荒々しい加速」と表現されることが多い様です。低速ではばらつきのあるエキゾースト音も、高回転域ではブォォォォンという4気筒的な音に変わり、この音もライダーを目の鱗にするvmaxの魅力の一つと言えるでしょう。
どっしりとした重量から来る安定感
ドラッグレーサーを意識した車体構成なので、やはり直進安定性はいいようです。エンジンは怒涛の加速中でも、車体の重量はバイクのフロントアップを抑え、安定した加速を生み出します。ツーリングでは高速走行も多くなるとは思いますが、その安定感はツーリングでの快適性を大きく高めます。ただ、VMAX1200はその着座姿勢から、走行時に風圧を受けやすいので、カスタムパーツでスクリーンを装着して、ツーリングを楽しむオーナーも多い様です。
「VMAX1200」インプレ:コーナリング編
VMAX1200はコーナリングは苦手??
VMAX1200のコーナリングは、「意外と曲がる!!」という声と、「重くて曲がらない!」という声とに分かれるようです。車体構成はアメリカンよりなので、あまりコーナリングを意識して作られてはいないのでしょうが、その見た目と重量の割には意外と素直なコーナリングをするようです。ただ、絶対的なコーナリング性能はあまり高くないので、スポーツよりな走行は向いていないでしょう。
バンク角が浅い!
VMAX1200は、タイヤの選択肢が少ないバイクです。さらにvmax世に出た当時は今ほどバイクのタイヤが太くなかった時代なので、タイヤのグリップ力をあてにするようなライディングはできないでしょう。最大バンク角の浅く少し深く傾けただけですぐ車体を地面に擦ってしまいます。以上のようにVMAX1200はスポーツ走行にはあまり適しているとは言えません。もっぱらメインフィールドはツーリングなどの長距離走行になるでしょう。
「VMAX1200」インプレ:ブレーキング編
はっきり言って効きません!
VMAX1200のブレーキは、93年式を境に大規模な変更を受けているようです。その性能は発売当初の昔の環境でさえ「聞かない」などの声があったそうですね。何せvmaxのキャリパーは2pod。今の時代は400ccのバイクでさえ4podは一般的ですからね。なので下にも紹介していますがオーナーによるブレンボキャリパーに換装などは一般的なカスタムだそうです。
安全運転で無理なく走りましょう。
コーナリング、ブレーキングのインプレを見ていただいたら分かるように、vmaxはツーリング向けなバイクであってスポーツ走行などにはまるで向いていません。ブレーキを強化するか、ライダーの心のブレーキでもって安全運転に努めましょう。
「VMAX1200」のカスタムは足回りから?
OHLINS リアサスペンション
まずは定番のサスペンションチューンです。中でもオーリンズは老舗メーカーで日本でもアフターサービスが充実しています。vmaxは古いバイクですので純正リアサスの場合古くなって本来のパフォーマンスが落ちているものが多く、高い買い物になりますが快適な巡航には欠かせないパーツと言えるでしょう。その他、ナイトロン、プログレッシブ、YSS、クァンタムなどのメーカーがvmax用のリアサスをリリースしています。
Bremboキャリパー、アクティブ キャリパーサポート
vmaxの純正ブレーキは、今の中型バイクかそれ以下のレベルのサイズのブレーキがついています。旧型のバイクの面影を残すこのブレーキは、さっさと新しい時代のブレーキに換装した方がよいでしょう。おススメは、ブレーキメーカーとしてはこちらも老舗のブレンボです。キャリパー本体だけでなく、できたらブレーキマスターシリンダーごとごっそり交換した方が効果が高いです。キャリパーサポートはアクティブなどのメーカーがVMAX1200用をラインナップしています。
GALE SPEED アルミ鍛造ホイール
ホイールは数あるバイクのカスタムパーツでもひときわ費用がかさむパーツと言えるでしょう。ただ対費用効果はしっかりとあり、VMAX1200の場合でもホイールの軽量化によるジャイロ効果の減少でコーナリングが爽快になったりと、動きの重いVMAXにはうれしい効果が期待できるでしょう。あと、ホイールのサイズが変わることで純正ホイールでは履くことが出来なかったサイズのタイヤなどが履けるようになり、選択肢が大いに増えるというメリットもあります。
「VMAX1200」のその他、足回り以外のおすすめパーツ
ツーリングに必須??メーターバイザー、スクリーン
ツーリングによく出かけるvmaxのライダーには、このアイテムが高確率でついています。ツーリングといいますと、運転開始直後は心地よかった体にあたる走行風も、時間がたつにつれライダーの体力を徐々に削っていきます。このような長距離走行では、ライダーの体力をいかに削らないようにドライビングするかがかなり重要な要素です!ロングツーリングを控えている方で、まだバイザーがついていないオーナー様は、このアイテムをつけてのクルージングをお勧めします。
サブフレームで剛性をアップ
vmax用のサブフレームはオーバー、アクティブ等がラインナップしているようです。vmaxの弱点と言われているフレーム剛性の弱さを補ってくれます。効果の体感は個人差があるようですが、高速走行中の安定感が増したりなどするそうです。さらに、見た目を引き立てるドレスアップパーツとしても人気のアイテムです。
「VMAX1200」のカスタム上級編
VMAXのカスタムでもちょっと異次元のレベルのものを集めてみました。いったいどのくらい費用が掛かっているんでしょうか??
メッキ調の外装が映える攻撃的なカスタム
まず真っ先に目立つのが、エアダクト、タンクからホイールなどのパーツがメッキのような輝きを放っているところでしょう。メタリックな外装は純正のVMAXよりも更なる重量感を感じます。足回りももちろんフルチューンされ、倒立フォークや極太のリアタイヤなど純正パーツは全く残されてません。エンジン横に設置されたワインボトルのようなタンクは、なにが入っているのでしょうか??
スポーティなVMAX?
こちらは、バイクのジャンルが変わってしまうほどのカスタムが施されています。特に目立つのは車体後ろ側の作りで、テールカウルからスイングアームまで、ほかのバイクのパーツを流用したであろうものに変わっています。小ぶりなヘッドライトや低めのアップハン、スポーティな足回りから察するに、ヨーロッパ発祥の「ストリートファイター」というジャンルのバイクをイメージしたものと見えます。
トライク化VMAXカスタム
更なる快適な旅バイクへ!
トライクとは、前一輪、後ろ二輪の三輪バイクのことを言います。アメリカではハーレーダビッドソンをトライクにカスタムすることが多く、日本のアメリカンであるvmaxも例に漏れずトライクにカスタムされたりします。車体がさらに重量級なったり、それに伴って燃費も悪くなったりしたりするのが難点ですが、もともと備わっているエンジンパワーもあり、トライクにすることでより快適なドライブ、ツーリングを楽しめるでしょう。
気になるその改造費用は??
気になりますその改造費用を調べてみましたところ、なんとおよそ150万円!!やはりこれほどの大規模な改造ともなりますとその費用も桁が違います・・・。ちなみに初めからトライクに改造されているものであればもう少し安価に手に入りそうなので、気になる方はこちらのほうをあたったほうがいいかもしれません。
次世代のVMAX「VMAX1700」とは??
全てが完全新設計!生まれ変わったvmax
旧型VMAXが生産を終了した翌年2008年、ヤマハは、間髪入れず次世代のVMAXを市場に送り出しました。車体の名称もVMAX1200から大文字アルファベットのVMAX1700となり、排気量も旧型より大幅に上がり1700ccとなりました。その開発はヤマハが自社の「至宝」と呼ぶだけあって、かなりの力の入れようと見て取れます。そのため、価格でさえも231万円とビックリプライスになってしまいました。
先代を上回るスペックへ進化したVMAX1700
排気量、価格だけが旧型vmaxを超えたものではく、車体サイズも2300mm×1160mm×795mmから2395mm×820mm×1190mmとさらに巨大になり、それに伴って車体重量も265kgから311kgとさらなる重量級バイクとなりました。その車体を走らせるエンジンは200馬力となり、vブーストシステムこそこのモデルでは廃止されてしまいましたが、その代わり「全域vブースト」とも呼べる加速力をそのエンジンより絞り出します。
VMAX1700 そのほかの進化
そのほかインジェクションになった恩恵かもしれないですが、なんと燃費も良くなっているようです。燃費が14km/Lだった旧型に対し、新型の燃費は16km/Lと、確実にいい数値になっています。これはツーリングなどでも心強いですね。さらに、旧型に比べてタイヤ幅が150から200と格段に太くなったので、コーナリング時や高速での安定性は旧型の比ではないようです。
「VMAX1700」のインプレ
さらなる高みへと進化したVMAX1700のインプレをまとめてみました。ヤマハの技術の集大成であるこのバイクは、仙台よりどれほどのパワーアップを遂げたのでしょうか??
ハイスペックなエンジンとそれを調教する車体
まず直線走行でのインプレをまとめますと、エンジンのスペックは旧型の数値をさらに凌駕してます。ひとたびアクセルをあおれば旧型の比ではない尋常ではない加速をしてくれるそうです。しかもそのエンジンを支えるダイヤモンドフレームは、その桁外れのパワーでもライダーに安心感を与えることのできる剛性感を手に入れてます。
コーナリングの安定感は旧型以上!
コーナリングのインプレは、先ほど紹介したワイドタイヤと剛性のあるダイヤモンドフレームの恩恵もあり、旧型とは比較にならないほど安定感のある素直なコーナリング性能になっているようです。スタイルの関係上バンク角はそれほど深くは寝かせられないのですが、その素直なコーナリングやより強力になったブレーキのおかげで、ワインディングロードでは意外な速さを見せてくれるでしょう。
ヤマハ「VMAX1200」新型、旧型VMAXそれぞれの楽しみ方
ライダーの感性を刺激する乗り物、それがvmax
vmaxという乗り物には、「人生を豊かにするものであれ」というヤマハの願いが込められています。このことはヤマハの公式ホームページのvmaxの紹介の項目に綴られていますか、このページを読むといかにヤマハがvmaxというバイクに思い入れがあるかが心に伝わってきます。vmaxというバイクは人の内側に訴えかけるスペックでは表せない不思議な性能があるようです。筆者もこのページには心を動かされてしまいました・・・
新型、旧型それぞれの楽しみかた
新型と旧型は同じ方向を目指して作られたバイクではありますが、明確に違うことはズバリ、スペック、価格です。VMAX1200の方はロングセラ―なだけあって中古車のタマ数も多く、比較的敷居の低いバイクですが、それに比べて新型は記事執筆の2022年現在は生産が終了したとはいえ、新型のVMAX1700の中古車市場はいまだに高値安定となってます。VMAXというバイクと長く付き合いたい人は、新型のVMAXの方がたとえびっくりプライスでも刺激や所有感など満たされるものが多いかもしれません。
旧型も魅力はたくさん!
スペックも価格も新型に及ばない旧型vmaxでも、旧型にしかない魅力はもちろんあります。インプレにも記したとおりの旧型ゆえの欠点をカスタムで育てて行ったり、よりライダーと等身大になれるのはむしろ完成されてしまった新型よりも旧型の方ではないでしょうか??それに昔ながらの機械的な味も、旧型にしか出せないものがあります。単なる旧VMAXというポジションで終わらないのがこのVMAX1200というバイクです!
VMAX1200インプレまとめ
進化しても受け継がれているモノ
旧型のVMAXも新型のVMAXも、怒涛の加速感、トルク感をテーマに設計がなされている様です。人の感性に響く加速感とはどうすれば出せるのかというところまで入念に吟味されたようで、ヤマハの試行錯誤が感じられます。さらに、その唯一無二のデザインから醸し出される所有感を満たすため、樹脂パーツを極力省いたり職人によるパーツのバフ掛けを施したりと、その「VMAX」というブランドを先代からいかにヤマハが大事にしているかが分かりますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか??ヤマハのフラッグシップモデル「VMAX1200」は、文字でのインプレッションでは表現できないライダーの感性で魅力を感じるバイクなのかもしれません。その魅力に引き込まれれば、この上ないバイクライフの友となりえるバイクと言えるでしょう。