MARTI 500M
ジグに生命を吹き込むワンピッチ
派手に進化してきたルアー
湖に落としたスプーンを鱒が追いかけたのをヒントに欧州で誕生したと言われるルアー。その後も劇的に進化し続け、カラーリングだけではなく、リップが作り出す様々な泳ぎ方などのアクション、ラトルなどによる音などの派手な演出を身につけてきました。
ジグは「金属の延べ棒」
その一方で、単なる金属の延べ棒にフックがついただけのジグも生き残ってきました。もちろんジグも、泡を生み出したり音を発生させたりする穴が開けられたり、様々な反射材などを使った光の演出を施したりして、ゲームフィッシュへのアピール度が増してきました。ただ「金属の延べ棒にフック」というスタイルは基本的に変わりません。ミノータイプのルアーのように、ベイトフィッシュにそっくりに動くことは叶いません。
ショアからは飛距離が釣果を左右する
ショアではジグで飛距離を
それでもジグが生き残ってきた最大の理由は、ジグが持つ飛距離です。ショア(岸)からの釣りでは、ポイントまでルアーを飛ばすことが最大の目標。リップなどの風の抵抗となるものがないことと、ジグ自身が持つ重さが、ミノータイプにはない飛距離を生み出し、ショアからのロングキャストを可能としているからです。防波堤や砂浜、磯といったショアからのキャストで、ポイントへのアプローチに距離的な制限がある場合や、強い向かい風などに阻まれた場合に、弾丸のように飛んでいくジグは大いに実力を発揮するため、重宝されているのです。
ワンピッチジャークで演出
リップなどが無く、自らベイトフィッシュに似た演出をする力をほとんど持たないジグには、ロッドアクションで生命を吹き込まなくてはなりません。その基本となる釣技が、ワンピッチジャークです。
青物は小魚の群れを追う
ワンピッチジャークで小魚のパターンをつくる
ルアーのアクションのやり方は対象魚によって異なります。ブラックバスのように、底生のザリガニやヨシノボリのような動きの鈍い生物を餌としている魚種とは違い、ショアジギングで対象とする「青物」と言われる魚種は、回遊する動きの速いベイトフィッシュを追いながら回遊しています。このベイトフィッシュは、キビナゴ、カタクチイワシ、イカナゴ、マイワシ、マアジ、イナ(ボラの幼魚)、小サバなど、プランクトンを追って群れで移動する魚たちです。ショアに寄ったこの小さな魚たちが捕食される瞬間の行動パターンを、しゃくりなどのロッドアクションでジグに吹き込んであげます。
青物の速度は自動車並み
青物と呼ばれる魚には、主にブリ、カンパチ、ヒラマサ、サバ、カツオ、ハガツオなどがあります。いずれも紡錘形の体系で、泳ぐ速度は自動車並みとなります。青物はベイトフィッシュの下から高速で一気に魚群に突っ込んで群れを崩し、逃げ惑う群れからはぐれて混乱している一匹に目を付けて捕食します。
ワンピッチジャークが釣果を左右する
ゆっくりだと餌に見えない
ジギングで、リーリングの速度が早くて魚が追いつかない、ということはまずありません。大型のリールで必死に巻き取っても、青物の速度よりも早く泳がせることは困難、不可能です。ジギングでは、メバルやハタのような待ち伏せ型の「根魚」や、湖沼などでブラックバスを狙うときのように、ゆっくりと誘うようにリーリングをし、しゃくり を繰り返すようなロッドアクションを加えるやり方では、青魚にはルアーをベイトフィッシュとして認識してもらうことはできません。
ベイトはワンピッチでジグザグに逃げる
群れと同じようにジグにアクションを加えることはできませんが、群れからはぐれて混乱するベイトフィッシュを演出することは可能です。ベイトフィッシュは活路を探して右往左往し、上下左右にジグザグに逃げ回ります。決して直線では逃げません。直線で逃げると、遊泳速度が50~100キロと速い青物から、とうてい逃げ切れないからです。
ジャークで緩急を演出する
鋭く、ジグザグに逃げ回るベイトフィッシュをジグに演じさせるやり方は、高速のリーリングに加え、ロッドをしゃくり、ジグを急激に泳がせる「ジャーク」が必要となります。ジグはだだ引きの単なるリーリングでは、多少身を震わせながら泳ぐだけとなり、青物の目にとまるような派手なアクションはしません。ロッドを強くあおってジャークすれば、ジグは激しく身を震わせ、いったん思わぬ方向に急速に進み、再びラインの方向に泳ぎ始めます。
ジャークとリーリングのリズム
ワンピッチジャークで変化を
ジャークのやり方にはいくつかあります。大物を取り込む際の「ポンピング」というやり方と、基本的に似ています。ジャークと巻き取りを交互に繰り返す動きですが、ジギングではリーリングを止めません。ロッドを9時の位置から12時の位置までしゃくり 、ジャークした場合、45度の角度の分だけジグは進みます。リーリングの速度に竿の穂先が移動する1~2メートルが加わり、ベイトフィッシュの全速力の遊泳を演出することができます。
右往左往させる
余ったラインを巻き取りながらロッドを9時の位置に戻すとき、ラインのテンションが一瞬だけ下がります。このときにジグは傾いてバランスを崩すのですが、再びリーリングとしゃくり によるジャークが加えれば、傾きの方向に向かって激しく泳ぎ始めます。このやり方を繰り返せば、慣性の高い大型魚が直進する進路から、方向転換を繰り返して逃げようとする、ベイトフィッシュの泳ぎ方を演出できます。
傾くとき反射する
ジグザグに動くジグは、傾いてバランスを崩すとき、太陽の光を受けて反射し、強烈に青物に存在をアピールしてします。水中のルアーを下から見た場合、ルアーは太陽の影となってほとんどが黒にしか見えませんが、バランスを崩す際には鏡のように反射し、様々な方向にキラッと光線を送ります。
青物はスレていない
1回のリーリングに1度ロッドをしゃくり 、というワンピッチジャークは、ジギングの基本です。ブラックバスのように釣り人に様々なルアーを四六時中見せつけられている魚はスレきってしまい、アクションを工夫しなくては食いついてきませんが、回遊魚の青物は無垢そのもの。ショアに寄ってきたとはいえ、釣り人に遭遇したことなどはありません。群れに遭遇しても、ワンピッチジャークさえマスターしておけば、興奮したブリやカンパチはすぐに飛びついてきます。
1ジャーク+1回転=ワンピッチ
ワンピッチはリズミカルに
ジャークのやり方はリールのハンドルの回転に合わせてリズミカルに行います。最初から大きなジャークをしようとすると失敗しますので、ロッドのグリップを手前に引きつけると同時に、リールのハンドルを押し出すようなタイミングで巻き取りができるように練習しましょう。最初はゆっくりでかまいません。
ジャカジャカ巻きもアピール度大
ぎこちないタイミングで巻いた場合でも、竿先が揺れてリーリングし続けさえすればジャカジャカ巻きの状態になり、ジグは不規則に動きます。ジャカジャカは竿を意識的にしゃくり 、ジャークを発生させる方法ではなく、あえて竿をリーリングの動きに合わせて暴れさせることにより、ジグにアクションを加える釣法。無理な力が入ったジャカジャカは釣り人を疲れさせますが、慣れればロッドをしゃくる必要がない分長続きします。ワンピッチジャーキングでは、手首や肘、肩、腹筋などの上半身に加え、膝も力を抜いて少し曲げ、体全体で調子をとります。リズムがうまく合わなければ余分な力が入ってしまい、すぐに疲れてしまいます。 連続してうまくタイミングが合うようになれば、徐々にしゃくり を大きくし、ジャークする距離を長くするなどの変化を加えていき、オーバーなアクションも加えられるように練習してみましょう。
ジャークに耐えうるタフなタックルを
アタリは向こう合わせ
青物のような高速で泳ぐ大型魚は、ベイトフィッシュが方向転換をする際に首を振り、突っ込むようにして捕食します。ラインのテンションが下がってバランスが崩れた瞬間に、大型魚はバイトしてきます。ワンピッチジャークは常に竿をあおり続けるため、バイトした次の瞬間には自動的にフッキングすることが多いですが、針がかりが浅いことも多いです。竿先に当たりを感じたらすぐに大きく竿をあおり、がっちり針を食い込ませましょう。
ロッドは硬め
タックルは頑丈で軽い物を選びます。ジャカジャカ巻きと違い、ワンピッチは重いジグをしゃくって強くあおるため、ロッドには十分な耐久性が必要です。柔なロッドでは、しゃくり を繰り返すとグリップの根元から折れてしまう恐れもあります。またあまり調子の柔いロッドだと、せっかくしゃくってジャークしてもロッドがしなるばかりで、全くジグに力が伝わりません。グングンあおっても、水中でジグはゆらゆらするだけで、逃げ惑うようなシャープな動きをしません。
摩擦に耐える強度を
リールシートは頑丈に
リールは軽いものがおすすめですが、可能な限り大型にしたほうが、巻きの際に疲れずに済みます。激しくロッドを動かすので、リールシートのトラブルも多くなります。しっかし固定できる、タフな物を選びましょう。
ライン、ガイドは摩擦強いものを
MARTI 500M
青物はメーター級がヒットすることもありますので、ラインも十分な巻きと強度が必要です。ガイドはジャークのたびに強い摩擦力がかかりますので、場合によっては熱に強い物に付け替える必要があります。ベイトフィッシュの群れにアタックしている青物は一種の狂乱状態となっていますので、多くの釣りと違って、仕掛けを目立たせないように工夫して生じる効果はほとんど実感できません。
広く深く探る
棚を探す
ワンピッチジャーク、ジャカジャカに限らず、ジギングで重要なのは棚の深さですが、水温や時間帯で異なります。海鳥が飛んでいたり、小魚の群れが水面を逃げ惑うしぶきが上がっているようなわかりやすい状況であれば良いですが、そうで無ければジグを沈め、棚を探さなければなりません。
ライントラブルに注意
遠投したジグを沈める際に注意すべきことは、ラインのテンションを下げすぎないことです。ラインが緩むとフックがラインに絡まってしまいます。ラインに一定のテンションをかけてカウントダウンし、狙った棚にジグを沈めましょう。 目標の棚まで沈めたら、まずはオーバーにジャークしてラインをピンと張り、あとはワンピッチジャークやジャカジャカを繰り返すだけです。
基本パターンを変化させて
フォールでバイトも
ジャカジャカ巻きやワンピッチジャークの場合、ジグが動きを止めて沈む「フォール」の際にバイトしてくる魚もいます。青物ではありませんが。サバ亜科でもあるタチウオなどは、ひらひらとフォールするジグに食いついてくることも多いです。もし群れに当たったら、ワンピッチジャークのテンポを少しダウンさせ、バイトのタイミングを作ってあげましょう。
ドラグは適度に
ヒットした場合に、きっちりドラグを締めていると、ばれてしまうことがあります。多くの場合はドラグを適度に緩め、ラインのテンションが過剰にならないよう調整しています。青物を対象としたジギングでもドラグの調整が必要となりますが、ジャークの際に糸が出てしまわないように、釣り始めてから調整する方が良いでしょう。