イトヒキアジってどんな魚?
ウマヒキ、カガミ、ヒラカマジ、イトヒキなど、イトヒキアジは日本中でいろいろな名前で呼ばれていますが、正式名称を「イトヒキアジ」と言います。これは命名者が居る訳でなく、神奈川県三浦市の漁師の呼び方がそのまま正式名称になったものです。 幼魚から成魚になる過程で短くなって行くヒレですが、幼魚の時には体長の3倍以上もあります。主に幼魚が獲れていた地域ならではの命名ですね。
イトヒキアジの生息地域
近縁種は3種類
生息地域は一言でいうと「世界中の暖かい海」となりますが、日本近海の場合(例外はありますが)日本海側が佐渡島、太平洋側が茨城県沖が生息北限と言われています。 近縁種はイトヒキアジを含めて3種類しかおらず、画像の「ウマヅラアジ」がインド洋から太平洋の暖流域に生息しています。 成魚は少しデコが張り出していることが確認できますね。
アフリカン・スレッド・フィッシュ
もう一つの近縁種がモロッコ~アンゴラの大西洋東岸と地中海の南部に生息する「アフリカン・スレッド・フィッシュ」です。特徴はウマヅラアジよりさらに出っ張った額です。 近縁種3種の中で一番小さく、成魚で60㎝前後、最大で1mほどの大きさになります。イトヒキアジの最大が1.5m、ウマヅラアジの最大が1.65mほどです。 この3種の生息地域でほぼ「世界中の暖かい海」を網羅しているわけです。
イトヒキアジの生態
幼魚(幼体)の生態
イトヒキアジは幼魚の間は温帯域の浅い海面を生息圏としており、体型はほぼ「四角形」。 大きな特徴はイトヒキアジの命名の元となった長い「背びれ」と「腹びれ」ですが、小さければ小さいほどヒレは長く体色は銀色に近くなります。タチウオなどの発色と同じ色素を持っています。
中間魚の生態
幼魚から成魚になる過程で生息域は60mほどまで深くなります。 体型は「四角」から「菱型」になり、ヒレも体長と同じくらいに短くなってきます。 身体の特徴としては側面に6条の「くの字」の模様が出、目の上のアイシャドーの様な模様がくっきりとしてきます。関東地方でよく釣られるのはこの大きさの物が多いようです。
成魚の生態
成魚の生態としては、生息範囲を南の深い海に移し、おおむね深度100mほどの海域で生活します。 この頃になると糸状の長かった背びれと腹びれは短くなり、鎌状のヒレとなります。同種のギンガメアジやロウニンアジなどと同じような体型になり、生態もほぼ同じになります。時折浅瀬までエサを求めて上がってきて、南海のスポーツフィッシングのターゲットになることもあります。
イトヒキアジの旬
幼魚は秋
イトヒキアジの幼魚(中間魚)の旬は「秋」と言われていますが、これはこの時期に良く獲れるからであろうと推察されます。 事実市場に卸されるイトヒキアジのほとんどが10月頃の定置網の物です。 ただし漁師の分類としては「未利用魚」に数えられており、あまり獲れすぎると厄介者扱いされます。
成魚は春から夏
こちらも獲れる時期が旬とされている感があります。 春から夏にかけてベイト(小魚)を追って浅場に回遊してきたイトヒキアジの成魚は、西日本では釣りの対象魚となります。 2キロを超える物を「食べごろサイズ」と呼ぶことが多いようです。
イトヒキアジの美味しい食べ方1
まずは「刺身」
まずはお刺身にしてみましょう。 三枚におろした身をおおぶりの薄切りにしてワサビ醤油でいただきます。少し水っぽいですが、ほのかな甘みが口に残ります。小さいものを生でいただくのなら皮目に炙りを入れたり、酢締めにすれば爽やかな美味さが引き立ちます。 2キロを超すと脂乗りも良くなり、水っぽさも薄れます。そうなると「絶品」になります。
イトヒキアジの美味しい食べ方2
やっぱり「塩焼き」
関東地方でよく揚がるサイズのものは塩焼きを試してみて下さい。 水分が多いからか固くならずとても美味しくいただけます。刺身に比べて甘み、旨味がアップしますのでおすすめの料理方法です。
イトヒキアジの美味しい食べ方3
テッパンの「唐揚げ」
水分の多い魚を食べる場合、唐揚げは旨味アップの最高の方法です。 イトヒキアジもご多聞に漏れず唐揚げが美味いのですが、油との相性が良いのでしょう、天ぷらやフライでも絶品です。 ちなみにアジの仲間ですが、身の分類は「白身」だそうです。白身魚のフライって美味しいですもんね。
イトヒキアジの美味しい食べ方4
変化球の「カルパッチョ」
特徴のあまりない身を扱う場合、料理する側が特徴をつけてやると飛躍的に美味くなる事があります。 味自体が淡白なだけであって不味いわけでもクサいわけでもないイトヒキアジの生食には「カルパッチョ」がよく合います。 薄く塩を振って水分を抜いたら軽く拭き取ってオリーブオイルと塩レモン、少量の醤油で味付けしてやればこれまた「絶品」料理になります。
イトヒキアジの美味しい食べ方5
ちょっと豪華に「アンチョビバター」
クセの無い上品な甘みを持ったイトヒキアジは濃い味付けと熱を入れることで旨味が引き立ちます。 その両方を同時にやってしまう料理が「アンチョビバター」です。 魚に魚を合わせるのはどうかと思われるかもしれませんが、これがイイ。 イトヒキアジを焼いたフライパンにバター20g、アンチョビ小さじ2、ミルク大さじ1を入れて一煮立ちさせればソースのできあがりです。美味しいですよ。
イトヒキアジの美味しい食べ方6
手間の分おいしい「燻製」
燻製ってどんな食材を使っても美味い料理でしょう、と言わないで下さい。 水分の多いイトヒキアジを「絶品」に変えるのにはとても良い料理法なんです。 5枚におろしたイトヒキアジの身に塩を振って陰干しをします。半日ほど水分を抜いたら燻製にしますが、できれば水分量で燻製の仕方を変えてみて下さい。
燻製の仕方
燻製には大まかに「冷燻」「温燻」「熱燻」の三種類がありますが、魚の場合大概が冷燻です。 時間を掛けてじっくりと燻す冷燻は水分の少ない身に合います。半生には温燻、生には熱燻を試してみましょう。 個人的な感想で申し訳ありませんが、個人的には「5分ほどの熱燻」がおすすめです。イトヒキアジの特徴である淡い甘みを残しつつ旨味が最大限に引き出せますよ。
イトヒキアジの美味しい食べ方7
一押しの「煮付け」
イトヒキアジの食べ比べをしてもらった場合、かなりの確率で上位入賞するのが「煮付け」です。これはハッキリ言って不味く作れません。 箸を入れた時の反発してくる弾力と口に入れた時の食感、噛み潰した時の旨味の広がり。どれをとっても一級品です。今まで紹介してきた「熱を入れる」「味を濃く付ける」に「慣れ親しんだ醤油味」の要素が加わる訳ですから不味い訳がありませんね。
簡単な煮汁レシピ
鍋に砂糖、醤油、みりん、酒をすべて同量で合わせ、全部の量と同量の水を入れれば煮汁のできあがりです。 例えば砂糖大さじ3、醤油大さじ3、みりん大さじ3、酒大さじ3に水200㏄という具合です。ちなみにこれだと魚300gから500g分の煮汁になります。料理って簡単が一番ですから覚えておくと便利ですよ。
イトヒキアジの入手方法
時々魚屋さんに並びます
旬と言われている頃にはお魚屋さんの店頭に並ぶことがあります。地域差もあるかも知れませんが、とにかく安いんです。 特徴である6条のくの字が残っているくらいの大きさの物なら値段は1匹100円ほどで店頭に並ぶこともあります。 見付けたらまず買って下さい。損は無いと思いますよ!
自分で釣る
成魚の生態の項で紹介した通り、春から夏にかけて浅場に小魚を求めて回遊して来ます。船からはもちろん、サーフからのジグやルアーでのグッドターゲットになりますから、ぜひご自分で釣り上げて味を堪能してみて下さい。 ただし、超大型の物は「シガテラ毒」の報告もあります。海域周辺の地元の漁師さんや先輩、釣り具屋さんなどから情報を得てから口にして下さい。
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イトヒキアジを積極的に食べてみましょう!
今回イトヒキアジの美味しい食べ方やその生態などのご紹介をさせていただきましたが、まだまだその魅力は尽きません。 買うなり釣るなり、まずは手に入れてその魅力に迫ってみて下さい。新しい発見が待っていますよ。