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トムラウシ山に登ろう!登山方法と遭難しないためのポイントをご紹介!

日本の百名山にも指定された北海道のトムラウシ山。未だ大自然が残る美しい山で有名ですが、小屋も少なく、近年重大な遭難事故が起こるなど、登山にはしっかりとした備えが必要です。今回は、トムラウシ山の見どころ、温泉、日帰り登山のツアー、遭難事故などをご紹介します。
2020年8月27日
Catharine
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トムラウシ山に登ろう!

2009年の遭難事故によって、奇しくもその知名度を上げたトムラウシ山。登山をしたことがない方でも、トムラウシ山の名はニュースによって聞いたことがあるのではないでしょうか。2009年の遭難事故では登山ツアー客18人中8人が低体温症で死亡するなど、近年の登山事故としては最悪の遭難事故となってしまいました。

畏怖され親しまれる日本の名山

そんな事故もあって少し怖いイメージの定着してしまった山ですが、もともとは日本百名山にも選ばれるほど美しい山として、昔から人々に親しまれてきた山でもあります。今回は、そんなトムラウシ山の魅力や基本情報、そしてトムラウシ山について知っておいた方が良いことを全てご紹介します。

トムラウシ山の基本情報

北海道の大雪山系に属し、大雪山の中でもさらに人里離れた奥山として知られる、標高2141メートルの山。トムラウシの名はアイヌ語で「花の多いところ」を指すともいわれ、人の手つかずになっている大自然や、普通は見られないような貴重な高山植物や野生動物が見られると昔から多くの人々に親しまれてきました。

トムラウシ山は火山?

30万年前から10万年前に活動していた火山ですが、今は活動を停止しているようです。その名残で頂上付近には噴火口が見られ、また周辺には温泉スポットも多々あります。トムラウシ山の北面には溶岩が固まって誕生した「ロックガーデン」と呼ばれる一帯が存在します。そのため登山者だけでなく、石マニアや火山マニアの方にも人気がある山なんです。

トムラウシ登山の難易度は?

初心者には不向き。難易度高し

トムラウシ登山の難易度は、標高が高い山であること、夏でも気温が低く厳しい寒さが予想される北海道に位置していること、そして他の山と比べて山小屋が緊急用を除いて全く整備されていないことなどから、上級者向けの難易度の高い山であると言えます。そのため、初心者の方にはおすすめできず、別の山で経験を積んでから挑戦されることをおすすめします。

トムラウシ山周辺の天気・気候は?

多くの登山客を惹きつけるトムラウシ山ですが、厳しい気候や高山ならではの天気の移ろいやすさが心配ですよね。「北海道の2000m級の山は、本州の3000m級の山に匹敵する難易度である」と形容する人もいるほど。ここではトムラウシ山の天気・気候の特徴を見ていきましょう。

一年の平均気温はマイナス

夏場の最も天気が良く気温の高い8月でも最高気温が13度であるなど、一年を通して寒い天気であることが予想されます。冬場にはマイナス20度以下まで下がります。遭難事故の多くが、夏場に低体温症によって死亡事故まで起こっていることなど、トムラウシ山の天気は厳しいものであるといえます。

夏場でもアイゼンは持っていきましょう

このように、夏でも普通の山の冬場のような天気であることも多いトムラウシ山。7月あたりでは、冬に積もった雪が溶け切らずに雪渓を作り出している場所もあり、夏場の天気の良い日の登山でも、アイゼン(登山靴の底に装着する雪の上を歩く際の滑り止め)は一応持っていくようにしましょう。

2009年のトムラウシ山遭難事故

2009年に起こり、皮肉にもトムラウシ山を有名にしてしまった悲劇的な遭難事故。7月半ばの登山であったにも関わらず、8人が低体温症によって死亡したという近年まれにみる深刻な登山事故となってしまいました。この項では、2009年のトムラウシ山の遭難事故が起こった経緯などをご紹介します。

ガイドを含む登山者8人が死亡


3人のガイドのうち、ガイドリーダーを含めた2人は事件当日のコースは未経験で、50代から60代の登山者を連れての2泊三日のトムラウシ山縦走の予定だったそうです。中盤の天気は崩れ、雨に濡れた状態で立っていられないほどに風が激しく吹き付けたことから著しく体温が低下し、途中歩けなくなる人が続出しました。救助隊が向かった時には、ツアーは崩れ別々に救助されました。

トムラウシ山遭難事故の原因

様々な要因が重なった遭難事故ですが、ガイドの天気の判断ミスによる「気象事故」が主な原因です。また、国内の登山ツアーでは経済的プレッシャーなどから多少の無理をしても登山を決行しなくてはならないと旅行会社から圧力を掛けられるガイドも多く、トムラウシの場合もそうでした。また、登山経験の浅い人を参加させたり、通常旅行会社側が用意する非常食などを参加者の自己責任で用意させ、通告も行き届いていなかったことなどが挙げられます。

問題の元旅行代理店、その後

責任が問われた旅行代理店ですが、トムラウシ山の遭難事故の後も、2012年11月3日には中国の万里の長城付近の登山ツアーでは大雪による低体温症で日本人3人が死亡するなどの遭難事故を起こしました。この事件が決定的な理由となり、観光庁が重い処罰として旅行業登録取り消し処分が下す決定をしました。この処分により向こう5年間は旅行業の登録ができないようになり、今は名ばかりの法人が残っているそうです。

トムラウシ山の見どころ1.野生動物

自然の厳しいトムラウシ山ですが、それだけ手つかずの姿で残っている印でもあります。そのため、他の山では見られない貴重な野生動物なども頻繁に見ることができるんですよ。

氷河期から生息し続けるナキウサギ

ネズミとウサギによく似た可愛らしい小型動物のナキウサギは、国内では北海道のみに生息し、氷河期から生き残ってきた大変珍しい動物です。岩場に生息するナキウサギは、トムラウシ山のいたるところで鳴き声を聞くことができます。夏には運が良ければ、岩の上で日向ぼっこをしている姿を見ることができます。

天然記念物のエゾサンショウウオ

北海道の天然記念物にも指定されているエゾサンショウウオ。体長は11センチから18センチ程度で、虫などを食べる有尾類で、近年は土地開発やクマの捕食などによって数が減少傾向にあります。通常は4月ー5月あたりで産卵期を迎えますが、標高の高いトムラウシ山に生息するエゾサンショウウオは、7月に産卵し、成体になるまでなんと2年も要します。

トムラウシ山の見どころ2.珍しい高山植物

イワヒゲ

ツツジ科イワヒゲ属に分類される花で、葉っぱが鱗片状に密着して生えるのを「岩からヒゲが生えているようだ」と思われたのがきっかけでイワヒゲという名前になったそうです。花は1㎝程度の鐘型で、下に垂れています。日本では本州北部から北海道の寒い地域だけに生息し、風当たりの強い岩肌に生息する珍しい高山植物です。

エゾオヤマノエンドウ

小型の多年草で、4月から5月頃に紫色の花をつける高山植物です。葉の両面には綿毛が生え、特にエゾオヤマノエンドウは通常のオヤマノエンドウと比べ綿毛が多く生えることで白っぽく見えます。エゾオヤマノエンドウは北海道に分布し、砂れき地や風が強い草地などに生息します。こちらも大変珍しい高山植物です。

トムラウシ山の見どころ3.名所

ロックガーデン

トムラウシ山に向かって平地を歩いていくと、いきなり地面がゴツゴツした岩場に直面しますが、それはロックガーデンと呼ばれるトムラウシ山の名所です。トムラウシ山登頂のためにはこのロックガーデンを超えないといけませんが、見渡す限り岩場であることと、ガスが発生するため簡単に迷ってしまう難所でもあります。ガスが発生したら無理に通らないことが良いそうです。

日本庭園

日本庭園と呼ばれるこのトムラウシ山の平地は、一面高さの低い草木が生い茂り、チングルマやエゾノツガザクラなど珍しい高山植物が咲き乱れています。緑の合間から岩や澄んだ沼などがちらりと見える情景は圧巻です。草木に詳しくない登山者でもその美しい光景を楽しむことができる、トムラウシ山の1番の見どころでもあります。

北海道での登山に必要な装備とは


北海道ならでは。クマ除けアイテム

北海道での登山の場合、冬場は雪に覆われて厳しい気候になるため多くの方が夏に登山を試みるのではないかと思います。しかし、夏はクマが頻繁に出没することから、単独で登山する場合はクマ除けスプレーが欠かせません。または、北海道などではクマ除けのベルなども売っているので、登山前にチェックしてみることをおすすめします。

携帯浄水器はマストアイテム!

様々な野生動物の生息する北海道では、湧水や川の水を生で飲むことはできません。エキノコックスという寄生虫の卵が入っている可能性があるためです。そのため野水を飲めるようにするためには、煮沸消毒が絶対に必要なのですが、(エキノコックスは熱に弱く、煮沸すれば安心して飲めます)貴重なガスをできるだけセーブしておきたいもの。そのため、ガスを使わずに水を浄化できる携帯浄水器は絶対に必要です。

トムラウシ山登山の必要装備とは

GPS機能のある機器

トムラウシ山は天気の変化が激しく、霧のほかガスなども発生し視界が著しく悪くなります。5メートル先も見えなくなってしまうために、目印として付いているマークなども霞んでしまうことが想定されます。そのため、目に頼らないGPSやみちびき機能など、登山の際に方位を確かめられる機器がマストアイテムです。

防水加工されたパンツやシューズを

出典: https://www.goldwin.co.jp/tnf/ec/pro/disp/2/NP61440

トムラウシ山は足場の悪いことで知られ、水はけが悪く、雨が降った後は数日ほど登山道が水浸しになるそうです。2009年の遭難事故の生存者も、「足が濡れたことからの冷えが1番きつかった」と言っているほどなので、通常のレインウェア感覚でなく、撥水加工も万全になったパンツやブーツを使用することが大切です。

トムラウシ山の縦走に挑戦!

小屋は使えないことを想定して

通常の登山では活用する避難小屋ですが、他のツアー客などがいることから使えない場合も多いです。また、避難小屋などは雨漏りがひどいという情報もあり、天気の悪い日ですと小屋の中に干した服が乾かないことも。そのため、小屋が使用できないことをあらかじめ想定した装備が必須です。

最低1日は予備日を設けましょう

天気が不安定である高山である上に、厳しい気候で知られる北海道。天気の崩れが予想されるため、予備日をもって余裕のあるプランを作ることが必須です。また、大雪山の2000m級の山は、本州の3000m級の山に匹敵するとも言われるため、予備日も休息も十分持たせたプランを作ってください。

トムラウシ山の日帰りコースに挑戦!

他の多くの北海道の山々と同じく、トムラウシ山も登山用の小屋が整備されておらず、数日掛けての登山の場合、テントを張る山中泊がメインとなります。少し大変だと感じる方やトムラウシ山に慣れたい方は、日帰りコースに挑戦してはいかがでしょうか。ここでは、基本的なトムラウシ山の日帰りコース、そして日帰り登山の注意点を紹介します。

トムラウシ温泉登山口からスタート

トムラウシ温泉短縮登山口からスタートし、カムイ天井を通ってコマドリ沢へ。気候が不安定であることや、木が生い茂っているため日陰が多く、一度雨や雪が降ると数日は足元がどろどろしています。特に短縮登山口からカムイ天井まではどろどろとした急斜面が多く見通しも悪いことから足元の注意が必要です。


トムラウシ日帰り登山に掛かる時間

一般的な日帰り短縮コースで、健足な方でトムラウシ山の頂上まで登るのに片道6時間半かかるといわれています。これはあくまで目安であり、実際の天候の変化や小さなトラブルなどを想定すると、プラス1時間~2時間は見ておくべきです。その計算で考えますと、日帰り登山の場合、1日に早くても13時間、遅い場合15時間歩きっぱなしである可能性もあり、日帰りといってもヘビーな内容であることは間違いないでしょう。

いざという時を想定して小屋の位置を確認

日帰りを想定していても、小屋の位置は確認しておきましょう。北海道では日照時間が短く、早朝に出発したとしても登山から帰ってくる頃にはすっかり暗くなっていることもあります。トムラウシ山はただでさえ見通しが悪い地帯があり、道に迷いやすくなるだけでなく、クマなどの野生動物もでるため、夜むやみに歩き回ることはとても危険でしょう。そのため、限界を感じたならば小屋で一晩休むことができるように、小屋の位置と寝袋などの装備は持っていきましょう。

トムラウシ山登山後は温泉へGO!

トムラウシ登山を行った方の多くが訪れ、「登山は大変だったけど温泉は最高だった!」と言うトムラウシ温泉。東大雪荘という宿泊施設に併設されているため、温泉だけでなく宿泊することもできますし、温泉だけを満喫する日帰り温泉も人気。もちろん日帰り登山の帰りに寄ってトムラウシ温泉で疲れを癒すのにも最高なんです。

絶好のロケーションから温泉を堪能

トムラウシ温泉施設からはトムラウシ山を眼前に望むことができ、石狩岳連峰も望むことができるなど北海道の高山に囲まれた絶景を楽しみたい方々を魅了しています。夏は北海道の鬱蒼とした緑の木々を堪能し、雪の降る冬天気の日には、雪見風呂を堪能できます。トムラウシ温泉では天然温泉の成分を損なわないように、98度の温泉湯を冷水で薄めず、冷却することで健康の効果が高められています。

トムラウシ山の周辺情報

トムラウシ自然休養林と野営場

トムラウシ温泉からのアクセスも近く、北海道にしか生息しない貴重なエゾシカやエゾリス、エゾクロテンなどの野生動物も見られるキャンプ場です。大雪山をのぞむ絶好のロケーションであり、付近では釣りを楽しむこともできます。通年7月から9月ごろに野営場が設置され、炊事場とトイレがあるためキャンプしやすい環境です。

ヌプントムラウシ温泉

トムラウシ地域にある秘湯で、自然の奥深く入り組んだ場所に位置しており、立ち入りが禁止されていたためベテランの登山者や地元の狩猟家にしか知られていませんでした。温泉評論家の著書によってその存在が知られ、平成4年から一般へのアクセスが認められました。しかし度々の自然災害によって道路が崩れ、現在では通行止めになっています。

トムラウシ山に登ろう!まとめ

人気を集めるトムラウシ山ですが上級者向けであることは間違いなく、安易に「ツアーだから安心」と経験の浅い人が挑戦することは危険です。他の山と比べて奥地にあることからも、いざ遭難した際は救助に時間がかかるかもしれません。そんなリスクを理解したうえで、責任ある登山を行ってくださいね。