スイミーは世界中の人に愛されている名作
1963年に誕生した名作絵本
スイミーは1963年にアメリカ・イタリアでイラストレーターとして活躍したレオ・レオニによってつくられた絵本です。作者のレオ・レオニを知らずともスイミーと聞けば、子供でも知っているぐらいです。日本だけでなく世界中で翻訳されるなど、国も世代も超えて今もなお多くの人に愛され続けているスイミーは名作なのです。
スイミーの発行元や値段は?
スイミーは好学社より販売されています。絵本なので、小さな子どもでも楽しめます。子育てにもおすすめの絵本です。
教科書にも載っているスイミー
40年以上も教科書に掲載
小学校の国語の授業でスイミーを読んだという人も多いのではないでしょうか。スイミーは1977年から2年生の国語の教科書(光村図書出版)に掲載されています。なんと40年以上も読み続けられているんですね。
スイミーの翻訳は谷川俊太郎
日本語版スイミーの翻訳は谷川俊太郎が手がけています。自身も詩人・絵本作家として活躍している谷川俊太郎による味わい深い翻訳に仕上がっています。 多くの人が一度は読んだことがあるであろうスイミー。でもどういった話か忘れてしまったという人も多いのではないでしょうか。スイミーのあらすじを紹介していきます。
名作絵本スイミーのあらすじ
スイミーのあらすじ1一匹だけ色が違う
では、スイミーはどのような話だったでしょうか。あらすじを簡単に振り返ります。 スイミーは海中で暮らす魚達の話です。スイミーは兄弟たちと一緒に暮らしています。しかしスイミーには他の魚達とは大きく違う点があります。仲間の魚達は全て赤い魚なのにスイミーだけが色が違います。スイミーだけが黒い魚です。
スイミーのあらすじ2兄弟の魚たちが食べられてしまう
スイミーは仲間たちと暮らしていましたが、一人ぼっちになってしまいます。仲間たちが自分たちより大きな魚に食べられてしまうのです。
スイミーのあらすじ3一人ぼっちのスイミーと新しい仲間との出会い
スイミーは一人ぼっちで海をさまよいます。そしてもう一度新しい仲間たちと出会います。しかし、新しい仲間たちは大きな魚に怯えて暮らしています。
スイミーのあらすじ4力を合わせて大きな魚を追い払う
スイミーと仲間たちは、力をあわせて大きな魚を追い払います。群れになって泳ぐことで、自分たちをより大きな魚だと思わせたのです。このとき、スイミーは他の仲間達は赤いのに自分だけ色が黒いという点を魚の目の部分になるという方法で活かします。
兄弟を失ったスイミーが、新しい仲間と出会い、大きな魚を力をあわせて追い払う。以上がスイミーの大まかなあらすじです。
名作絵本スイミーに込められたメッセージ・哲学
協力し合うことの意味・大切さを学ぶ
スイミーの物語では、大きな魚を追い払う場面から協力しあうことの意味・大切さを学びます。しかし、作者のレオ・レオニはもうひとつの隠されたメッセージをスイミーの物語に込めています。まさにレオ・レオニの人生哲学がこめられたメッセージです。
名作のメッセージを知るために作者の経歴
絵本作家レオ・レオニの半生と哲学
スイミーの作者レオ・レオニは1910年にオランダで生まれました。2度の世界大戦を経験する激動の時代です。そしてレオ・レオニの作品において、戦争は大きな意味を持ちます。レオ・レオニの作品に込められる哲学には時代背景が影響しています。
1939年、アメリカに亡命する
1939年、レオ・レオニはアメリカに亡命します。1939年はナチス・ドイツによるポーランド侵攻が行われた年です。まさに第二次世界大戦の真っ只中。このとき、レオ・レオニは29歳。彼はイタリアで暮らしていました。
レオ・レオニのアメリカ亡命はイアリア国内におけるムッソリーニのファシスト政権への危機感によるものだったようです。
アメリカで絵本作家として成功
アメリカ国籍も取得したレオ・レオニは戦後絵本作家としてデビューします。1959年、彼が49歳のときです。孫のためにつくった「あおくんときいろちゃん」がレオ・レオニのデビュー作です。この絵本も日本でも販売されています。ご興味ある方ぜひ手にとって見てください。
レオ・レオニ、再びイタリアへ
1962年、レオ・レオニは再びイタリアへ戻ります。アメリカで絵本作家としての地位を確立していた中での決断でした。アメリカ国籍も取得し、成功を収めて順風満帆であったであろう時期です。 なぜ彼は、アメリカからイタリアへ戻ったのでしょうか。そこにはどのような意味があったのでしょう。
スイミーと絵本作家レオ・レオニ
レオ・レオニがイタリアに戻った理由
レオ・レオニがアメリカに亡命した理由に彼がユダヤ人であったことがあるようです。第二次世界大戦におけるユダヤ人迫害はあまりにも有名です。スイミーの物語と同じように、彼は彼と同じユダヤ人という仲間を戦争において多く失いました。レオ・レオニの亡命には、スイミーが兄弟を失ったことと同様の喪失があったのかもしれません。
兄弟たちを失ったスイミーの孤独
スイミーは兄弟たちを失った喪失と孤独を乗り越えています。そしてこの孤独と喪失を乗り越えられたからこそ、新しい仲間たちと出会い、大きな魚を追い払うことができるのです。
スイミーの物語において、仲間たちと力をあわせて大きな魚を追い払う最後の場面、協力しあうことの意味・大切さに目に行きがちです。しかし、そこに至るまでの過程にこそレオ・レオニのメッセージがあります。
スイミーに隠されたメッセージ・哲学
スイミーのひとりぼっちの意味
兄弟を失い一人ぼっちになったスイミーが見た海の世界は決してつらいものばかりではありませんでした。むしろ、孤独の経験から勇気と知恵を得ています。孤独というとつらく聞こえますが、この経験によりスイミーは一度は兄弟を失った大きな魚から新しい仲間を守る勇気と知恵を身につけています。
一度孤独を経験し、それを乗り越えたからこそ、スイミーは大きな魚にも負けないようになるのです。
勇気と知恵を得たスイミー
一人で海をさまよった後のスイミーは大きな魚に怯えながら暮らしている新しい仲間たちを外へ連れ出しています。大きな魚によって兄弟を失った経験をしたにも関わらず、スイミーは怯えることはありません。 孤独を乗り越えたスイミーは他の魚たちを勇気づけられる強さも身につけています。
スイミーだけ色が違うことの意味
スイミーが見つけた自分の価値
スイミーは新しい仲間たちと力をあわせて大きな魚を追い払います。このときスイミーは、自分だけ色が違うという点を有効に使っています。スイミーは仲間たちに言います。「ぼくがめになろう」。
スイミーは自分が目の部分を担うことで、大きな魚に見せることに成功させます。 スイミーは孤独な経験を通じて、色が自分だけ違うということにも価値も見出しています
スイミーのもうひとつのメッセージ
スイミーは、孤独に海を泳いでいる中で大きな魚に立ち向かっていくための勇気と知恵を身につけました。仲間と協力する知恵、自分の特徴を活かす知恵、怯えることなく向かっていく勇気。これらは最初に兄弟たちを失ったときのスイミーにはなかったものです。
一度は兄弟を失い孤独になったスイミー。しかしスイミーは孤独の経験により自分の価値を見出しました。この経験からスイミーが得たものこそが、スイミーのもうひとつのメッセージです。
スイミーはレオ・レオニの哲学が込められている
レオ・レオニの人生とスイミー
アメリカに亡命し、戦後もう一度自分のルーツへと戻っていたレオ・レオニ。兄弟たちを失い孤独の後に仲間を見つけたスイミー。スイミーはレオ・レオニがイタリアに戻った後に著した作品です。
レオ・レオニはスイミーの物語に自身の人生を重ねていたのではないでしょうか。 スイミーという物語にはレオ・レオニの哲学が込められています。
スイミーは子育てにもおすすめの名作絵本
スイミーは子育てにもおすすめ
スイミーに込められたもうひとつのメッセージはいかがだったでしょうか。もちろん他にもさまざまな解釈ができるはずです。ぜひ子育ての絵本の一冊にスイミーを選んでください。メッセージに込められた意味について思いを馳せながら読んでみることをおすすめします。
子育て世代におすすめ! レオ・レオニの他の作品
レオ・レオニは他にも絵本を作っており、翻訳されたものが日本でも販売されています。デビュー作の「あおくんときいろちゃん」をはじめ、全22冊がまとめられた絵本セットもあります。
子育てに絵本を手に取ってみよう
このように絵本にもさまざまな哲学・メッセージがこめられています。スイミーの他にも子育てに絵本を読むことはおすすめです。