いんげん豆について
いんげん豆は17世紀に中国(当時の明)から僧侶の隠元が持ち込んだことからいんげん豆という名前がつきました。野菜としてのさやいんげんにはカロテンや食物繊維、鉄分、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれています。一方豆を食べるいんげん豆は低脂肪高タンパクの栄養に優れた作物として世界中で主食、あるいは主要なタンパク源として食されてきた人気のある食材です。
さやいんげんの栽培品種
つるありいんげんとつるなしいんげん
さやいんげんは、つるありの品種とつるなしの品種があります。栽培するのにつるなしの品種は支柱などが必要ないので比較的栽培が簡単で、初心者や、プランター栽培にはこちらの品種が人気です。つるありの品種は収穫期間が長く、食味に優れると言われてきましたが、最近は品種改良も進んでいて、栽培しやすいのでつるなしいんげんの人気が上がっています。上の写真はつるありいんげん、下の写真はつるなしいんげんです。
つるなしいんげんは草丈50cm前後になります。つるあり品種と比べて高い支柱も必要なくて栽培が容易なことがわかります。
平鞘と丸鞘のさやいんげん
鞘を食べるさやいんげん、モロッコいんげんにみられるように鞘が平たいタイプの物と、丸い鞘のいわゆる普通のさやいんげんがあります。最近は色の鮮やかなカラー野菜が人気ですが、さやいんげんも、紫の鞘のいんげんなど、珍しい品種がまだ少量ですが栽培されています。ただし、そちらは茹でると普通に緑色になります。
紫いんげんの花は濃いピンクの花が咲きます。
普通のさやいんげんの花は白です。
いんげん豆の栽培品種
いんげん豆には赤いんげん豆、斑入りのいんげん豆、白いんげん豆があります。赤いんげん豆は金時豆、斑入りいんげん豆は虎豆、うずら豆、白いんげん豆は手亡豆(てぼうまめ)と呼ばれています。白いんげん豆(手亡豆)は和菓子の白あんに使われます。海外でキドニービーンズと呼ばれているのは赤いんげん豆のことです。欧米でもいんげん豆は煮込み料理などの人気レシピで親しまれています。
赤いんげん豆(金時)
赤いんげん豆は日本では金時豆として甘く煮て食べられることが多いですが、キドニービーンズとしてチリコンカンや、トマトシチューやサラダなど、欧米でもタンバク源として人気レシピの多い豆です。
白いんげん豆(手亡)
白さが美しい白いんげん豆。和菓子に欠かせない存在です。手亡豆はいんげん豆のなかでもつるなし品種で、栽培が容易なことから安価に沢山入手出来るいんげん豆です。日本では和菓子の白あんの材料として使われることがほとんどでしたが、最近は洋風の煮込み料理などのレシピに使われるいんげん豆の代用として、この手亡豆が使われることも多くなってきました。
白インゲンまめを使った鹿の子。和菓子の定番です。
さやいんげんの下ごしらえ
さやいんげんを美味しく食べるために、筋取りの下ごしらえをしっかりしましょう。写真の鞘の合わせ目の所は、鞘が成熟するほど筋が硬くなり、茹で方がよくても、そのまま食べると口にあたります。最近は品種改良されていることもあり、やわらかく、新鮮な若い鞘は筋を取ろうとしても取れないくらいやわらかいこともありますが、筋取りは簡単なので、ここはしっかり下ごしらえをして料理しましょう。
鞘の端をポキッと折ります。筋が硬い場合は筋だけが切れずに残るので、それを鞘に沿ってすうっと引っ張ると筋が取れます。鞘の両側ともに筋があるので、両端をそれぞれ折って筋をとります。摂りにくいときは鞘の端に包丁の刃を宛てて筋をそぎ取りましょう。綺麗に折れてしまって筋がない場合は、十分に若くてやわらかい鞘なので、そのまま茹でたり、生のまま炒めて料理に使って大丈夫です。
いんげん豆の下ごしらえ:茹で方
乾燥豆の茹で方はどんな豆もほぼ共通しています。一度基本の茹で方をマスターしてしまえば、タンパク質や食物繊などの栄養を気軽に取れる、人気のレシピでいつでも気軽に料理が出来ます。簡単なのでぜひここで基本の茹で方をマスターして下さい。
いんげん豆の下ごしらえ:一晩水につけて戻す
いんげん豆はさっと水洗いして、埃や細かいゴミを取り除いた後、一晩、豆の量の3〜4倍のタップリの水につけて戻します。冬など気温が低いときは暖かい部屋に置くなどして、一昼夜おいて、しっかりいんげん豆に水を含ませます。やわらかく茹であげるために、戻す時間をしっかり逆算して準備して下さい。水を吸ったいんげん豆は倍くらいに膨らみます。
いんげん豆の下ごしらえ:漬け汁ごと茹でる
しっかり水を含んだいんげん豆をつけていた水ごと火にかけます。煮立ってきたら火を弱め、コトコトと弱火で煮ていきます。いんげん豆のあくが泡になって上がってくるのでお玉ですくい取ります。しばらくはどんどんアク出てくるので落ち着くまでこまめにアクをすくい取ります。水分が蒸発していんげん豆が外に出ると皮が固くなりますので、必ずいんげん豆がゆで汁に浸っているように煮汁が減ったら差し水をします。
40〜50分を目安に好みの柔らかさになるまで茹でます。季節や、温度、いんげん豆の浸水時間によってどのくらいでやわらかくなるかはかなり違ってきますので、ゆで加減は自分の舌で味見をして確かめましょう。
いんげん豆の茹で方:圧力鍋を使う
いんげん豆を早くやわらかく茹でたい、と言う方は圧力鍋を使う茹で方があります。人気の時短下ごしらえ方法、茹で方です。但し圧力鍋は途中でフタを開けられませんので、最初に十分あくをとってから圧力をかけて行きます。差し水もしないので煮汁の味が濃くなります。豆の煮汁が凝縮されて旨味が増しますので洋風の煮込み料理のレシピには向いています。繊細な和風の煮物などに使いたい場合は上記で紹介した茹で方で下ごしらえするのがお勧めです。それも踏まえてどの茹で方で下ごしらえをするか、その時のニーズに合わせていんげん豆の下ごしらえをして行きましょう。
いんげん豆の茹で方:重曹を使う
いんげん豆を茹でるときにゆで汁に少量の重曹を入れてゆでこぼす方法もあります。早くゆだりますが、ゆでこぼすことで豆の栄養素が流れ出すこと、重曹を入れすぎると豆にわずかでも重曹の味が残ることが欠点です。後で煮汁を利用したいときは重曹を使う茹で方ではなく、圧力鍋か、通常の茹で方で下ごしらえをするのがお勧めです。
下ごしらえしたいんげん豆の保存
水煮したいんげん豆はゆで汁ごと冷蔵庫で2〜3日保存出来ますが、まとめて沢山茹でて、いろんなレシピを少しずつ手軽に楽しむために、冷凍保存しておくのがお勧めです。冷凍保存の時は煮汁と豆を別々に冷凍用のジッパー付きの袋に入れて、中の空気をなるべく抜いて冷凍しましょう。これで2〜3ヶ月はいつでも栄養豊富ないんげん豆のレシピを簡単に楽しむことが出来ます。
いんげん豆の茹で汁も捨てずに使う
いんげん豆を下ゆでしたときの煮汁は、スープや煮物、お味噌汁のだし汁に使うことができます。豆の旨味とゆで汁に溶け出した水溶性の栄養素がたっぷり含まれています。捨てずに余すところなく利用しましょう。そのためにも、いんげん豆の下ごしらえのときに、重曹を入れて茹でるのはお勧めしません。
いんげん豆の保存:缶詰
一人暮らしや、家族の人数が少ない場合はいんげん豆の缶詰を利用しましょう。こんなに簡単に料理にすぐに使えて栄養豊富な食材、使わない手はありません。水煮缶を開けて、サラダにトッピングしてもいいですし、煮豆やいんげん豆のシチューもさっと出来ますね。いんげん豆の缶詰の値段は様々ですが、こちらの缶詰はかなりお安く、400g(固形分240g)158円から、手に入ります。
こちらは白いんげん豆の缶詰です。同じく400g(固形分240g)158円から。茹でるのが面倒な方も美味しい人気レシピをすぐに作れる時短メニューが実現出来ます。
いんげん豆の栄養について
いんげん豆は低カロリー高タンパクな健康食材です。豆類の中でも特に食物繊維が豊富です。乾燥豆は茹でることで豆のデンプンの一部が食物繊維に変化するので、乾燥時より食物繊維が増えます。一晩水煮漬けて茹でるだけ。簡単に豆類の持つ豊富なタンパク質や食物繊維などの栄養素を摂ることができます。
いんげん豆に含まれるサポニンや必須アミノ酸のリジンは脂肪の代謝を促し疲労回復によいとされています。その栄養面と低脂肪でさっぱりした食味とで、豚肉との食べ合わせの相性がよく、豚肉のビタミンB群の疲労回復効果とあいまって、身体の活力アップが期待出来ます豚肉を使った洋風の人気レシピもたくさんありますので、積極的に料理に取り入れたいところです。
①さやいんげんの簡単レシピ:さやいんげんのゴマ和え
定番中の定番のさやいんげんのゴマ和え。さやいんげんは筋取りの下ごしらえをしてさっと塩ゆでします。和えるごまだれはお好みで、すりごまや練りゴマに、砂糖、醤油、煮きり酒を1:1:1で合わせ、堅さを調節してゆであがったさやいんげんと和えます。ゴマの油分がさやいんげんに豊富な栄養素、カロテンの吸収を助けます。
②さやいんげんの簡単レシピ:さやいんげんと人参の肉巻き
お弁当の定番おかずレシピとしても人気の料理。肉でクルクル巻くのはちょっと手間かも知れませんが、焼き上がったあとに半分に切った切り口の彩りのよさは格別です。豚肉でも牛肉でも、OKです。薄切り肉を広げて軽く塩胡椒をふって、その上から片栗粉をふります。そこに下ゆでした人参といんげんをのせて端から蒔いて行きます。片栗粉が糊の役目をしてくれます。焼き終わりを下にしてフライパンで焼いていきます。焼き上がって少し温度が落ち着いたところで長さを半分に切って、切り口を上にして盛り付けます。
③さやいんげんの簡単レシピ:さやいんげんの門松
ちくわにキュウリを詰めるかわりにさやいんげんを詰めます。下ゆでしたさやいんげんをナナメに切るとあっという間に門松の出来上がりです。パーティメニューに重宝しますね。
いんげんはなるべく細いものを使うと綺麗にできます。無理やり差し込むと、ちくわが裂けてしまうので注意してください。
④さやいんげんの簡単レシピ:さやいんげんの蒸し煮
野菜は茹でるとゆで汁に栄養のかなりの部分が流出してしまいます。煮汁も頂くスープや煮込みはよいのですが、そうではない場合ゆで時間はなるべくさっと短めの方がいいです。それでもさやいんげんをやわらかく仕上げたいとき、オリーブオイルと塩胡椒、野菜からで水分だけで弱火でことこと蒸し煮にすると、野菜の旨味をぎゅっと閉じ込めた味わい深い一品ができあがります。フライパンでしっかりフタをするだけでも出来ますので、弱火でクツクツと塩胡椒、オリーブオイルのシンプルな味付けで野菜の旨味を引き出しましょう。シンプルだけどとても美味しい料理になります。
⑤いんげん豆の簡単レシピ:キドニービーンズサラダ
水煮したいんげん豆はそのままサラダにしても美味しいです。レタスなどのサラダのトッピングにしてもいいですし、いんげん豆そのものをドレッシングで和えても美味しいです。欧米のショッピングセンターなどのフードコードでよく見かける人気のレシピです。赤いんげん豆(金時:キドニービーンズ)は色も鮮やかで、彩りが欲しいときに重宝します。
⑥いんげん豆の簡単レシピ:白インゲン豆のトマトシチュー
シンプルな材料で作れる簡単トマト煮込みです。最低限必要なのは以下の材料です。 白インゲン豆水煮缶 400g 1個 トマト缶 1缶 タマネギ1個 ベーコン100g ローリエ、塩胡椒 オリーブオイル タマネギを粗めのみじん切りにして、オリーブオイルで炒めます。タマネギがしんなりしてきたらベーコンを加え炒めます。ベーコンに火が通ったら、白いんげん豆の水煮缶、トマト缶を鍋に入れてローリエを加えて塩胡椒で控えめに下味をつけて好みの濃度になるまで煮詰めます。最後にもう一度塩胡椒で味を整え出来上がりです。
この白いんげん豆のトマトシチューをさらにご馳走メニューにしたい時はセロリ、人参などの香味野菜を1cm角に切ったものを加えると香りがぐんとよくなります。豚肉も固まり肉を1cm角に切って、ベーコンと一緒に炒めて加えると、しっかりお肉が入ったトマトシチューになります。追加で加える野菜や肉が増えたら、トマト缶も一缶追加しましょう。
⑦いんげん豆の簡単レシピ:超簡単チリコンカルネ
タマネギ、挽肉、トマト缶、水煮インゲン豆、チリペッパーがあれば一から作っても簡単に作れるチリコンカルネですが、ここでは超即席、簡単に出来る時短料理のチリコンカルネを紹介します。市販のミートソースは挽肉がしっかり入っているタイプのものを選ぶと美味しく出来上がります。 市販のレトルトミートソース 2袋 トマトの水煮缶 1缶 キドニービーンズの水煮缶 1缶 鷹の爪 適量 市販のレトルトミートソースをフライパンで温めます。キドニービンズは煮汁ごと、トマトの水煮も加え、鷹の爪を細い輪切りにして加えます。ほどよく煮詰めて塩で味を整えます。沢山作って小分けに冷凍して保存しておいてもよいでしょう。
⑧いんげん豆の簡単レシピ:白いんげん豆と豚肉のスープ
いんげん豆も豚肉もコトコトやわらかくなるまで煮込むだけの、簡単スープです。 豚肉 300g 乾燥白インゲン豆 150g (下ゆでしてゆで汁ごと使います) タマネギ 1個 セロリ1本 ロリエ 2〜3枚 タマネギ、セロリをみじん切りにしてしんなりするまで、焦がさないように炒めます。一口大に切った豚肉を加えて炒めます。豚肉にほぼ火が通ったら、白インゲン豆を煮汁ごと加え、ローリエを加えて煮込んでいきます。材料がたっぷりスープに浸るよう、足りなければ水を加えます。豆が煮崩れるくらいまでコトコト弱火で煮込んで最後に塩胡椒で味を整えます。
色で二通りに楽しめるいんげん豆
同じスープや煮物でも白いんげん豆をつかうか、赤いんげん豆を使うかで、色味のバリエーションも楽しむことが出来ますね。彩りが欲しいときは赤いんげん豆、さっぱりと仕上げたいときは白インゲン豆で味付けも控えめにするなど、同じ料理でもそのバリエーションが楽しめます。低カロリー高タンパク、食物繊維も豊富ないんげん豆、下ごしらえしておけばいつでもさっと取り出して人気のレシピを楽しむことが出来ます。野菜としてのさやいんげんも茹でてそのままおひたしやゴマ和え、天ぷらに、トマトシチューにと、色々なレシピで楽しむことが出来ます。さやいんげん、いんげん豆、どちらも一年を通して手に入る食材です。是非色々楽しんで下さい。