ニッポンの新しい小屋暮らし
タイニーハウスとは?
直訳すると「小さな家」という意味でスモールハウスとも呼ばれています。タイニーハウスはアメリカ発のムーブメントで、最小限のモノとスペースでシンプルに暮らすライフスタイルや、住宅ローンに縛られない生き方が日本でも注目されています。
タイニーハウスのはじまり
豊かな暮らしとは?
ムーブメントが広がりを見せたのは、アメリカでおきたリーマン・ショックやハリケーンカトリーナなどの大規模な自然災害で多くの人が住居を失ったことが背景にあると言われています。住宅ローン返済のために生活の大半を費やす暮らしを見直す動きは当然の流れかもしれません。
タイニーハウスのパイオニアと共に、小さな暮らしの魅力を動画で紹介しています。ムービーに登場するような山小屋タイプをはじめ多様なスタイルがあります。
固定型タイニーハウス
ログハウス/ツリーハウス
ログハウスは丸太を使ったいわゆる山小屋、ツリーハウスは生きている樹木の上に設置した家屋のことです。どちらも秘密基地や隠れ家的な雰囲気が魅力。
日本でも樹木や環境にあわせたオーダーメイドのツリーハウス制作が依頼できます。ツリーハウスのプロと一緒に世界でひとつだけの空間を作り上げてみませんか?
こちらは、アーチ状の骨組みに屋根材として使用する鋼板を取り付けたドーム型キャビンです。他にもタイニーハウスならではのユニークな住居があり、廃材や使われていないタンクの再利用法としても注目されています。
コンテナハウス
船や列車で貨物の輸送に使われるコンテナを住居にしたもの。日本では震災時の仮設住宅に使用されています。こちらは2台のコンテナを離して設置し、壁を取り払うことで占有面積を広くとった固定型コンテナハウス。
コンテナは4トントラックやシャーシ(牽引台)に積んで運搬します。タイヤ付きシャーシに積んだまま設置する移動型のコンテナハウスもあります。
移動型タイニーハウス
トレーラー
トレーラーとは車で牽引できる荷台のこと。荷台となる台座部分のタイヤ付きフレームをシャーシといいます。トレーラーハウスは基礎がなくシャーシを土台にした家、つまり牽引可能な家を指します。
トレーラーハウス(和製英語)とは、キャンピングトレーラーの体裁を取りながら、特定の場所に定住する目的で設置されるもののことである。電気や水道、下水道などを車両内で完結させず、公営企業のサービスを直に受け入れるものも多く、「タイヤがついたプレハブ住宅」と考えても良い豪華なものもある。
一見オシャレなログハウスですが、よく見るとタイヤ付きシャーシにのっています。設置する地域や自治体にもよりますが、設置検査基準を満たせば車両扱いとなり固定資産税がかからないのが特徴です。
バン
荷台の広いカーゴタイプのバンを生活スペースに改造して、旅や移動を重視したスタイルです。
窓が広いと車内の圧迫感も気になりません。自宅では味わえない眺望ですよね。日本では、10人乗りハイエースなどの大きいバンやワゴンをベースにした「バンコン」タイプが人気。バンコンは次に紹介するキャンピングカーとほぼ同じ装備です。
キャンピングカー
その名の通りベッドやミニキッチンを併設した車内で寝泊まりできるキャンプ用の車。シャワーやポータブルトイレを備えたタイプもあります。
バス
こちらはスクールバスの改装例。車内の座席を取り除いてバスハウスに改造されました。もちろん走行可能です。
車内の広さは200平方フィート(約18.5m²)なので10畳より少し広いくらいです。少しレトロなカフェダイナー風の内装がおしゃれ。
家を載せて移動するトラックで、車体と住居スペースが連結しているのが特徴。ジプシーワゴンのように旅をして暮らす人をハウストラッカーと呼び、彼らがタイニーハウスムーブメントの前身と言われています。
組み立て式タイニーハウス
自分で小屋を組み立てるキットも販売されています。
タイニーハウスキット
のこぎりを使わないため初心者の方でも組立が可能です。大雪に強い設計が特徴、わかりやすい説明書とDVD付きで、有料の組み立てサポートもあります。 キット価格は3帖程度の広さで¥260,000から。販売:北都物産株式会社
憧れのツリーハウスにも組み立て式がありました。プレカットされた状態で届く建材を図面に従って組み立てます。プロの職人さんに足場を組んでもらうオプション(有料)もあり。価格は¥300,000から。販売:株式会社 片桐建設
さらに海外では、3Dプリンタなどを使用したデジタルによるものづくりでDIYをより身近なものにする、DIYの新たなムーブメントが起きています。
「Wikiblock」が提供するのは店舗や家具を出力して組み立てるオープンソースのツールキット。この新たな試みの可能性やWikiblockを実際に組み立てた様子が「ハロー!RENOVATION」(日本語)で紹介されています。
タイニーハウスに住むメリットとデメリット
メリット
住居のタイプは様々ですが、タイニーハウスで暮らす共通のメリットとして ①家を購入する際の初期費用及び維持費が抑えられる ②光熱費の節約 ③モノ・場所を維持するストレスから解放される ④家を自由にカスタマイズできる などの点があげられます。
デメリット
反対に、デメリットとしては①モノを増やせない ②プライバシーが確保しづらい ③住民票の取得やインフラ整備についてあらかじめ確認する必要があること などです。
また、ハウスを移動させる場合は輸送許可や牽引免許が必要ですが、業者に依頼することも可能です。既にタイニーハウス生活を始めている方の多くが、デメリットにあげたような問題を解決しながら自分らしい暮らしを実践しています。まさにDIYライフですね。
間取りと価格の目安
間取りのポイント
モノは必要最低限に減らし、それらを使うスペースを想定した間取りを考えます。ただ小さな家に住むのではなく、身の丈にあった暮らし方を考えることがタイニーハウスの最初のステップと言えます。
小屋サイズは1坪くらいから販売されていますが、3坪(約6帖=10m²)をひとつの目安にしておくとよいです。また、10m²以下の建物は自治体に申し出る「確認申請」が不要になる場合が多く、その際の費用を軽減できます。
コンテナやトレイラーハウスに多い縦長の間取りは中央に動線を確保したレイアウトが基本。ベッドなどの大型家具をロフトに配置したり、折りたたみ式を使うと省スペになります。
価格の目安
初期費用が抑えられるタイニーハウスならマイホームも夢ではありません。日本で販売されているタイニーハウスの価格・間取りをピックアップしてみました。(2021年の情報です)
YADOKARIスモールハウス「INSPIRATION」は、シャワー、トイレ、キッチンなどを備えた箱型の住居です。明るい室内とデザイン性の高さが特徴。価格はミニマルプラン(約14㎡ ウッドデッキなし)で¥300,000から。
木材の内外装でカスタマイズしやすく、好きなところに机や棚を作り付けることができます。さらに、外寸で高さ約5.1mの「ノッポ」はロフトの取り付けも可能。同じ床面積で高さ約2.6mの「チビタ」もあります。ノッポの価格は9.99㎡(約6帖)で¥2,400,000から。
丸腰不動産の「マイクロハウス」は、空間を自由にカスタマイズできるシンプルな住居。6畳ほどのスペースに開放的な広がりを持たせたデザインが特徴です。間取りや壁のデザインも相談可能。 価格は¥ 1,280,000から。
マルアサ工房の「CUBE(キューブ)」は、小さな箱型のログハウスです。国産の杉や桧を組み合わせたナチュラルな風合いが特徴。シンプルな小屋は自宅の離れやイベントブースなどにも適しています。 価格は4.99㎡(約3帖)で¥5,99,000から。
タイニーハウス活用例
多様な使い方ができるタイニーハウスですが、実際にどのようなシーンで使われているのでしょうか?
田舎暮らし
3.11の震災をきっかけにインフラに頼らない生活への関心が高まっています。こちらは長野の山裾にある宿泊施設「山村テラス」の室内。ライフラインが一切なく、湧水と沢の水を引き飲料水はタンクに貯めた水道水を利用。
電力はソーラーパネルとバッテリーでまかなう完全オフグリッド仕様の住居です。緑豊かな丘に建つ心地よいロケーションで、自然と調和した暮らしを満喫できます。
移動重視の暮らし
日本で旅をしながら暮らすことは現実に可能なのでしょうか?YouTubeの人気チャンネルに、移動式ハウスで仕事をしながら日本を旅する2人の女性が紹介されました。
省スペースでの生活、可動式ハウスで気になる積載量のための工夫、駐車場問題などにも触れています。インタビュアーは「Living Big In A Tiny House」主催者のブライスさん。(日本語字幕付き)
スモールビジネスやイベントスペースに活用
宿泊施設として
Airbnbなどの普及により宿泊施設として運営するタイニーハウスが増えています。こちらは長野の白馬村で実際に泊まれる可愛いロッジ。1階はリビングとキッチンスペース、2階はアーチ状の天井がロマンチックな寝室が、バスタブや洗濯機などの設備も充実の快適なタイニーハウスです。
海辺や大自然の中で、ホテルのように快適に過ごせるグジュアリーなキャンプスタイルをグランピングと言い、旅のトレンドになっています。タイニーハウスならコストを抑えたグランピングビジネスが可能です。
タイニーハウスを見に行こう!
興味がわいたら試してみるのが一番、モデルルームのオープンイベントやワークショップなら気軽に参加できますね。宿泊施設を利用して実際の暮らしを体験するのもおすすめです。まずはイベント情報をチェック!
今回は日本のタイニーハウスを中心にご紹介しました。小さな家を持つことで、生活のコストを抑えるだけでなく、これまでの生活や働き方にシフトが起こります。既に国内で実践されている方も多く、今後の可能性に注目です。
タイニーハウスを検討されている方は、ぜひこちらの「小さな住まい」の豊かさを知る11の実例集もご覧になってみてください!
ニッポンの新しい小屋暮らし
タイニーハウスが注目されたきっかけは、ジェイ・シェーファー著「THE SMALL HOUSE BOOK」の発刊と言われています。
当時美術教師だったシェーファーさんは、「モノやスペースに気を配るのは面倒」という理由から自作の小屋を建て、そこでの生活や暮らしについての考え方を本にしました。
大きな家を持つことが豊かだとされていた、これまでの価値観にとらわれない暮らしが大きな反響を呼びます。