パンジーの特徴
パンジーは、スミレやサンシキスミレから分化したと言われていて、元は素朴な花でした。しかし、1800年代ごろから園芸用に交雑や交配が進められ、現代のとても華やかな姿になりました。
パンジーの特徴の1つは、品種が豊富にあることです。単色のパンジーだけでも、白、青、紫、赤、ピンク、オレンジ、黄色、黒など、あらゆる色のパンジーが存在しています。その上、寒さの厳しい季節でも、枯れない丈夫さを持ち合わせているので、パンジーはガーデニング初心者から上級者まで、たくさんの人に愛されている花なのです。
パンジーの栽培の難易度
パンジーの育て方は、とても簡単で、初心者でも栽培に失敗することはほとんどありません。特に手入れをせず、水やりだけしていても、それなりに花もつくし、株も育ちます。一方で、しっかり手をかけてあげれば、花数が増えたり、株が大きく育ったり、ちゃんと目に見える成果もあります。 冬は、ガーデニングをするには少し厳しい季節です。しかし、パンジーは寒さに耐えるたくましさもある上、少し手入れができなくてもしっかり開花してくれるので、寒い季節でも枯れることを心配せずに、気軽に栽培できる植物です。
パンジーの育て方①種まき
パンジーは種から育てることができます。たくさんの苗が必要な時や、珍しい品種をたくさん育てたいときは、種まきして育てた方が費用がかからないのでおすすめです。 種まきの時期は、8月から9月が適しています。花を早く楽しみたい場合は、8月半ばごろには種まきをするようにしましょう。また、秋の気温が低い予報が出ている年は、8月中に種まきをしないと、冬までに十分に育つことができないので、その辺りは臨機応変に対応してくださいね。
種まきは、花壇や鉢に直接するではなく、ポットやセルトレイを利用して行うようにしましょう。いずれも、ホームセンターなどで数百円で販売されています。 パンジーの種まきは、1か所に1粒ずつまく方法、数粒まいて発芽後に間引く方法、どちらでも大丈夫です。ただ、パンジーの種は1mmととても小さいので、種まきの際は慎重に作業を行うようにしましょう。
パンジーは発芽温度が20℃前後なので、種まき後は風通しの良い日陰で管理するようにしましょう。発芽するまでは、ジョウロやホースで水やりをすると、種が流れて行方不明になってしまうので、できれば、スプレーボトルや霧吹きで水やりをしてあげてください。 種まきから1週間くらいすると、発芽が始まります。発芽したら、少しずつ日向に移動させます。急に日向に置くと枯れてしまうので、明るい日陰や、日が当たる時間が限られているような物陰に置くなどして、少しずつ日光に慣らしていきましょう。
パンジーの育て方②土の準備
パンジーを植え付ける場所の土を準備しましょう。鉢やプランターを利用する場合は、ホームセンターなどで販売されている、花と野菜の土を利用するのがおすすめです。花壇などの場合は、水はけがよくなるように調整しましょう。おすすめなのは、「赤玉土7:腐葉土3」の割合で調整した土です。
パンジーの育て方③苗の植え方
土の準備ができたら、いよいよ植え付けです。
苗を用意する
種から育てている場合は、種まき後約2ヶ月で定植が可能になります。 苗を購入する場合は、早ければ9月ごろから苗が出回り始めるので、ホームセンターなどで苗を探してみてください。ただ、品種によって出回る時期は異なります。育ててみたい品種がある場合は、買いそびれないように問い合わせて予約しておくのもおすすめですよ。
元肥を入れる
パンジーの植え方で気を付けるのは、元肥を忘れずに土に混ぜ込むことです。元肥は、緩効性の肥料を使用します。 「花と野菜の土」を利用する際は、あらかじめ肥料が配合されているので、基本的には肥料を追加する必要はありません。しかし、パンジーにとって元肥はとても大切な栄養源なので、安価な土を利用する際は、念のため元肥を追加しておくのもおすすめです。
鉢への植え方
鉢植えにする場合は、直径12cmくらいの鉢に1本植えるのがおすすめです。パンジーは、横に広がっていくので、周囲に少し余裕があるくらいが丁度良いです。
プランターへの植え方
プランターに植える場合は、横幅60cmのプランターに、6本植えるのがおすすめです。密集させて植えると、風通しが悪くなって、害虫が付きやすくなったり、暖かい季節になると蒸れて枯れてしまうこともあるので、注意しましょう。
花壇への植え方
花壇などに地植えする場合は、苗と苗の間隔を20cm程度空けるようにしましょう。最初は少し寂しいかもしれませんが、すぐに土が見えなくなるくらいまで生長するので、安心してください。
パンジーの育て方④水やりのタイミング
水やりは、土の表面を観察して、乾いているようであれば、しっかり行うようにしましょう。パンジーを育てる時期は、どうしても寒い時期になるので、水やりをしても大丈夫なのか不安になる方もいるようですが、パンジーは寒さにとても強いので、たとえ雪が積もるような日に水やりをしても枯れることはありません。 ただ、できるだけ午前中、少し寒さが緩んだ時間帯に行うようにしましょう。午後に水やりをすると、夜間に土が凍ってしまうこともあります。土が凍っても、パンジーにはさほどダメージはありませんが、凍った土が元に戻るまでの間、しおれてしまうことがあるので、午後の水やりは避けた方が無難です。
パンジーの育て方⑤花がら摘みと切り戻し
パンジーの花をより長く、よりたくさん楽しむためには、花がら摘みと切り戻しの作業が欠かせません。
花がら摘みのやり方
パンジーの育て方の中で一番大切な作業が、花がら摘みです。花がら摘みとは、開花を終えた花を摘み取る作業で、花だけでなく、花がついている茎から摘み取ると、見た目が美しくなります。手で簡単に摘み取れるので、水やりの際などに、こまめに行うようにしましょう。 パンジーは開花後、子孫を残すために実をつけます。実の中には種がびっしり詰まっているので、実をつけると栄養が花ではなく、実に取られてしまい、その結果、開花ペースが落ちてしまいます。たくさん実ができると、株全体の元気がなくなるので、その点は注意しましょう。
切り戻しのやり方
パンジーは、花がら摘み以外にも、切り戻しをすることで開花ペースをアップさせることができます。 最初の切り戻しをする時期は、寒い時期です。茎をよく観察すると、葉の付け根に新芽が出ていることがあります。その新芽がついている部分を残すように切り戻しをすると、わき目が増えて、株のバランスがとてもよくなります。もしたくさんのパンジーを育てていて、1つ1つ新芽をチェックできない場合は、全体の3分の1程度ならざっくりと切り戻しても枯れる心配はありません。
次に切り戻しをする時期は、春です。暖かい季節になってると、蒸れて葉や茎の色が変色したり、枯れてしまうこともあります。春の切り戻しは、寒い時期の切り戻しと同様の方法で行っても良いのですが、脇芽が増えると、更に蒸れてしまうので、思い切って株の大きさが半分になるくらい、ざっくりと切り戻してしまって構いません。
パンジーの育て方⑥追肥
パンジーは、寒い季節を乗り越えてもらうために、まだ暖かさが残る季節から、こまめに追肥を行う必要があります。植え付けから3月頃までは、10日に1回程度の割合で、水やりの際に液体肥料を与えてあげると、開花が途切れることがなく、寒い季節の間も、ずっと花を楽しむことができます。液体肥料の代わりに、置き肥を使用することもできます。置き肥を使用する場合は、パッケージに書かれている用量で与えてあげてくださいね。
3月を過ぎ、暖かい季節になったら、肥料は与えなくても、しっかり生長してくれます。逆に、暖かい季節に肥料を与えると、葉や茎ばかり生長して、開花のペースが落ちてしまうこともあるので、肥料の与えすぎには注意しましょう。
パンジーが育ちやすい環境
パンジーは、寒さには耐えることができますが、日照不足には耐えることができません。日照不足になると、開花ペースが落ちたり、茎が細くなり間延びしてしまうこともあります。そのため、日がよく当たる場所に植えてあげるようにしましょう。
パンジーの開花時期
パンジーの開花時期は、10月ごろから翌年の5月頃までと、3つの季節をまたぎます。ただ、暖かい季節になると、少しずつ株のバランスが悪くなるので、見た目が悪くなったら、夏の花に植え替えてあげましょう。
パンジーの増やし方
種や苗で出回っているパンジーは、「F1種」と呼ばれる雑種第1代のものがほとんどです。なぜ、F1種が多く出回っているのかというと、パンジーは取れた種を植えても、同じ花が咲く保証がなく、更に親株より性質が劣る可能性が高いからです。そのため、通常栽培中に取れた種で種まきをすることはあまりありません。 ただ、個人で楽しむのであれば、種を採取して、育ててみるのも面白いかもしれません。種が完熟すると、実が割れて種がむき出しになりますが、こうなると、種がポロポロ落ちて採取しにくくなります。実が上向きになっていたら、種が熟した証拠なので、実が割れる前に採取するようにしましょう。
パンジーの栽培中に気をつけたい害虫
パンジーの育て方は簡単ですが、害虫がつくと枯れてしまうこともあるので、注意が必要です。
ヨトウムシ
ヨトウムシは、漢字では「夜盗虫」と書きます。その名の通り、夜の間に現れて、パンジーの葉や茎を食べてしまいます。朝、茎が根元から切れて落ちていることがありますが、それはヨトウムシがいる証です。ヨトウムシは、季節を問わず現れますが、日中土の中にいるので、被害があったら土を掘り起こして、見つけ次第捕殺するようにしましょう。
ナメクジ
ナメクジは、パンジーの花びらが大好きです。夜に活動が活発になるため、朝起きたら花びらが全て食べつくされてしまうこともあります。寒い時期にもナメクジは活動しているので、見つけ次第、捕殺するか、ナメクジ撃退用の薬剤を利用して退治します。
また、ナメクジはビールが好きなので、ビールを使ったトラップも有効です。夜の間、ビールを外に置いておくだけなのですが、朝には大量のナメクジが溺れて死んでいます。少しグロテスクな光景になりますが、効果は抜群なので、ぜひ、お試しください。
毛虫
パンジーには、毛虫がつくこともあります。毛虫は、見つけたら捕殺するか、粒状の薬剤や殺虫スプレーなどを使用して退治します。ただ、パンジーにつく毛虫の中には、美しい蝶になるものもいるので、もし余裕があれば、毛虫の種類や毒の有無を調べてみてください。蝶の幼虫であれば、巣立つまで見守ってあげるのも、ガーデニングの醍醐味ですよ。
パンジーの人気が高い品種
パンジーには、数百種類の品種が存在すると言われていますが、その中でも今人気が高い品種をまとめました。パンジーは、1つの品種をまとめて植える植え方もかわいいですが、様々な品種を一緒に植える植え方も、見応えがあり、おすすめです。
よく咲くスミレ
よく咲くスミレは、その名の通り花がよく咲きます。また、丈夫で育てやすいので、植え方や育て方に不安がある人でも、気軽にチャレンジできる品種です。
虹色スミレ
虹色スミレは、「花を愛する体験を通して、少女たちの美意識や完成、情操性を伸ばしたい」というコンセプトを元に誕生したパンジーです。そのため、花色にもとてもこだわっていて、かつ、子供でも育てやすい品種です。
ブラックプリンセス
ガーデニングの世界で、にわかに人気が高まっている「黒い花」ですが、パンジーにも黒い花があります。黒い花が咲くパンジーはいくつかありますが、中でもブラックプリンセスは、育てやすい上、花のサイズも大きいため人気があります。
ムーランフリル
ムーランフリルは、ぱっと目を引く華やかさがあります。ムーランフリルは、他の品種に比べて茎が強いため、切り花としても利用しやすいため、人気がある品種です。ただ、流通量が少ないため、入手したい場合はあらかじめ予約しておくことをおすすめします。
ドラキュラ
こちらは、強いフリルが印象的なパンジー、ドラキュラです。フリルが強いため、花がボールのような形状になっていて、面白いですよね。また、色味もシックで、とてもおしゃれです。こちらも流通量が少ないので、事前に予約しておくことをおすすめします。
ローブドゥアントワネット
フリルパンジーの中では、このローブドゥアントワネットの人気も高いです。実はローブドゥアントワネットとドラキュラは、同じ育苗家が作っていますので、相性もバッチリです。しかし、このローブドゥアントワネットも流通量が非常に少ないので、事前の予約をおすすめします。
パンジーとビオラの違い
パンジーとよく似た花に、ビオラという花があることをご存知ですか。ビオラに比べて、パンジーの方が知名度が高いことから、ビオラの事もパンジーと呼ぶ人がいるくらい、とてもよく似ています。実際、学術的には同じ分類で、敢えて区別するのは、ガーデニングに利用する場合のみのようです。そのため、開花時期や植え方、育て方が同じなので、パンジーとビオラを一緒に育てることも可能です。 パンジーとビオラの違いは、花の大きさです。パンジーの花の大きさは5cm以上ありますが、ビオラの花は大きくても4cm程度です。花の大きさ以外は、見た目も中身も大きな違いはありません。
パンジーの飾り方
パンジーは、植えるだけでなく、飾って楽しむこともできます。花がら摘みや切り戻しによって、切り取った花を利用することもできるので、ぜひお試しください。
パンジーは、花だけを花瓶に生けると、とてもかわいらしい雰囲気になります。一輪挿しでも構いませんし、たくさんまとめて飾ってもきれいです。花瓶に生ける場合は、切り戻しした茎を利用するのもおすすめです。
また、パンジーの花だけを水に浮かべて楽しむ方法もあります。切り戻した茎はもちろん、花がら摘みで摘んだ花も再度楽しむことができるのが嬉しいですよね。
パンジーの花を料理に添えて楽しむ方法もあります。パンジーの花は、特に農薬等使用していなければ、食べることもできるくらい安全です。サラダやケーキのワンポイントにもおすすめですよ。
パンジーで冬の庭をカラフルに
パンジーの植え方、育て方などをご紹介してきましたが、いかがでしたか。パンジーは育てられる時期も開花期間も長いので、じっくりゆっくり育て方を身につけることができ、ガーデニングの基礎を学ぶのにもピッタリな花です。花が少なくなる寒い季節でも、元気に庭をカラフルに彩ってくれるパンジーは本当に頼もしい存在です。ぜひ、育ててみてくださいね。