椿の開花季節
ツバキ科ツバキ属(カメリア属)の常緑中高木の植物。日本や中国を原産とする冬を代表する花の一つである椿は、18世紀頃ヨーロッパに渡ると、品種改良が盛んに行われ、現在では2500とも3000ともいわれる品種が流通しています。
椿の一般的な開花時期は、12月~4月ごろと言われていますが、品種によって遅いものから早いものまで、ばらつきがあります。代表的な椿の品種の開花時期をご紹介します。
椿と山茶花(サザンカ)の開花季節の違い
椿と山茶花は非常に酷似した近縁種の種類。山茶花には別名「姫椿」という名前がつくほど、椿と見分けるのが難しい花です。
基本的には椿と山茶花はツバキ科ツバキ属の同種類に属する植物ですが、椿の学名が「Camellia Japonica・カメリアジャポニカ」に対して、「Camellia sasanqua・カメリアサザンカ」と区別されています。椿と山茶花の特徴と開花時期の違いについて触れてみましょう
椿
開花時期:基本的に12月~4月の冬から春にかけて開花するのが特徴です。 葉の違い:椿の葉は比較的厚く、濃い緑色をして非常に艶があります。 香り:椿にはほとんど香りがありません。
赤やピンクの濃い花の色が鳥や虫を招くため、香りを持つ必要がなかったという説があります。 散り方:散り方には顕著な相違があることが特徴。椿の花は花の頭ごと落ちます。
山茶花
開花時期:山茶花の開花時期は秋から冬にかかる10月から始まり、2月頃まで開花が続きます。童謡「たきび」に出てくる秋のシーンに山茶花が歌われていることでも季節が想像できますね。
葉の違い:椿の葉に比べて一回り小さく、濃い緑の葉の周りには小さなギザギザがあるのが特徴。 香り:椿には香りはありませんが、山茶花は香りが良い花で良く知られる植物で、雄しべから発するアロマはかなり濃厚で、ピンクの山茶花はジャスミンに似た芳香があります。
散り方:椿の花が一回で花ごと落ちるのに比べて、山茶花は花びらが一枚づつ散ります。
藪椿(ヤブツバキ)の開花季節
ヤブツバキの開花時期は2月~4月。日本に原産する椿はほとんどがこのヤブツバキを基本種として、品種改良が行われました。日本最古の観賞用の植物としても記録があり、江戸時代は茶花として広く普及しました。春の訪れを告げるメジロやヒヨドリが椿の花粉を体中につけて、花から花へと遊ぶ様子は当時の歌人の歌心を駆り立てたことでしょう。
ヤブツバキの品種
ヤブツバキの基本種類は赤と白の花をつけることが特徴ですが、ヨーロッパに渡って品種改良が進んだことから、多種多様の品種がヤブツバキから生まれています。代表的なヤブツバキの種類をご紹介します。
玉霞・たまがすみ この種類は白か淡いピンクを基調として、紅色の絞りのような模様が入ることが特徴で、花は完全に開ききることなく、丸くひろがり、12月から4月という長い開花時期を持つ愛らしい種類。
村下・むらげ この種類は、原種のヤブツバキの特徴を受け継いだ島根県の奥出雲で発見された品種。この種の特徴は葯が退化して、花粉が出来ない白いしべに変化してしまっている事。
濃紅色の小さな花を咲かせ、ワビスケツバキに似ているが、ヤブツバキの枝変わりで成長した品種の為、識別するためにムラゲという名前がつけられています。開花時期は1月~3月。
侘助椿(ワビスケツバキ)の開花季節
ワビスケツバキの開花時期は12月~4月と一般的椿の見ごろ季節。関東地方では太郎冠者(たろうかじゃ)と呼ばれているこの椿の特徴は、花がヤブツバキのように抱かえるように咲くのに対して、花びらを広げてラッパ状に咲く事。
室町時代に中国から持ち込まれた西南山茶(ピタール椿)という品種と、日本古来のヤブツバキが交配してできた品種とみられています。
侘助椿は茶花の代表。千利休が愛してやまなかったこの椿に、自身の下僕の「侘助」の名前をつけて可愛がったという事が名前の由来。 侘助椿の一番の特徴は、葯が退化をして花粉を作らないことです。理由は不明ですが、この種類を侘助椿とよんでいます。
侘助椿の品種
湊晨侘助 (そうしんわびすけ) この種類は、侘助の中でも最高傑作と言われる品種で、透明感のある美しいピンクに、白覆輪(しろぶくりん)と呼ばれるきれいな白の縁取りが現れることが特徴。
下総侘助(しもふさわびすけ)と玉の浦(たまのうら)という品種の交配種で、実は長崎の五島列島で偶然発見されたヤブツバキの異変種だったと推測され、当時赤やピンクの単色しかなかった椿に、このような珍しい変種が生まれて、園芸愛好家たちがこぞって押し寄せ、根や株をとってしまったため、発見当時の原木は残っていません。開花時期は12月~4月。
太郎冠者(たろうかじゃ) 1月~4月に花を咲かせるどちらかというと遅く咲く遅咲きのタイプ。花色は紫かかったピンク色で、種をまくと、白芯の個体が生まれることが多いために、「胡蝶侘助」「数寄屋」の母木となった可能性が非常に高い品種。
寒椿(カンツバキ)の開花季節
寒椿の開花時期は10月ごろから開花が始まり、11月、12月に見ごろを迎えます。寒椿は実は「寒い時期に花を咲かせる椿」としての総称のように使われていますが、園芸の識別上はサザンカの事を指します。
中国原産の寒椿は「Camellia hiemalis Nakai」という学名で呼ばれる他、カンツバキ群という交配品種類の事を「Camellia sasanqua Kantsubaki」と呼びます。カンツバキやカンツバキ群と呼ばれる品種は、もともと椿と山茶花が交配された混合種で、ヤブツバキなどの原種には見られない、八重咲や千重咲きの花をつけることが特徴です。
開花の見ごろが早い時期であることと、花びらが一枚づつ散る特徴はサザンカの特性を継承。サザンカの花びらは5枚~10枚で、非常に柔らかくもろいのに対して、カンツバキ群の花びらは14枚以上で、非常に丈夫に咲きますので、椿の花びらのようにしっかりとした支えがあるのが特徴です。
寒椿の品種
勘次郎(かんじろう) 勘次郎の開花時期は11月~2月頃。幹が上に向かって伸びることから、立寒椿という別名があります。八重咲の濃いピンクの花を咲かせる品種。
獅子頭(ししがしら) 寒椿の園芸品種の代表で、寒椿を獅子頭と呼ぶことがあるくらい代表的な品種です。幹が覆われてしまうほどたくさんの枝を茂らせて成長する為、生垣によく用いられる品種。寒椿は基本的に低木が多い中、この品種は背が高くなるため、手入れをこまめにする必要があります。
雪椿(ユキツバキ)の開花季節
ユキツバキはヤブツバキの変種と推測されていて、開花時期はヤブツバキと比較すると非常に遅い4月~6月です。本州の東北地方から北陸地方にかけて分府する日本固有の原種。開花シーズンが遅いのは、日本海側の気候に合わせて、ヤブツバキよりも長い休眠期間があることが理由と考えられています。
1~3メートルの低木で、枝が地上を這うように伸びるのが特徴です。花は濃い朱色をして、ラッパ状に開花し、おしべの花糸は短く鮮やかな黄色。葉がヤブツバキの様な楕円をするものの、うすくて縁に少しギザギザがあることが特徴。
雪椿の品種
ハナカンザシ 新潟県の上越市原産。大きな八重花を3月ごろの遅い最盛期を迎えるのが特徴。
鳥海(ちょうかい) 小ぶりの白い花を咲かせる品種。一輪先の椀咲が特徴です。椿のなかでは遅い開花の3月~4月が見ごろ。
夏椿(ナツツバキ)の開花季節
夏椿はツバキ科ナツツバキ属に所属する落葉樹。開花時期も一般の椿と比べると非常に遅い6月~7月で、庭木や公園樹としてガーデニングにも非常に人気が高い植物です。
夏椿は別名沙羅の木(しゃらのき)と言われ、この名前の由来は釈迦が涅槃に入った際に植えられていた沙羅双樹の木が夏椿と酷似することから、派生しています。 また樹皮がつるつるとしていることから、石川県あたりで「サルスベリ」などとニックネームがついているほど。
夏椿は白い椿に似た花を椿より遅い時期に咲かせ、咲いた花はその日のうちに落ちてしまいます。葉は非常に薄く黄緑色で、表面に深いしわがあり良く茂る為、日陰をつくり庭用の観賞用としてもピッタリ。枝は長く真っすぐ伸び、すべての枝に白い5枚花弁の花が咲くことから、フラワーアレンジメントとしても人気があります。
椿の季節に訪れたい椿まつり
椿の花は日本の古来から長い間、人々の間で楽しまれてきた日本原産の植物。江戸時代に椿を庭木にする習慣が広まってからは、茶花として有名になっただけでなく、庶民にも親しまれる日本の庭に欠かせない地位を築いたことは間違いありません。春を告げる椿の開花を祝って、全国で開花時期にお祭りが開かれる椿の名所があります。
伊豆大島椿まつり
五島椿まつり
足摺椿まつり
萩・椿まつり
椿のベネフィット
椿には花の美しさを楽しむ鑑賞用としての活用だけでなく、様々な使い方で私たちの生活にたくさんのベネフィットをもたらしてくれるいろんな効能が含有されている植物です。
椿の花
椿の花を採取して、陰干しをして乾燥させます。生薬で山茶(さんちゃ・中国語でサンチャは椿そのものを指します)と呼ばれ、滋養強壮・健胃・整腸に効果があります。アントシアニンやユゲノールを含有して、弱った胃の改善を促します。
椿の葉
椿の葉にはタンニン・クロロフィルを含み、切り傷や擦り傷にすりつぶして塗布します。お茶にすることで、ポリフェノールを吸収でき、ノンカフェインのお茶は、妊婦・子供でも安心してお勧めできます。
椿の種
椿の上質な油は種から採取します。ヤブツバキの種からとれる椿油はオリーブオイル・ホオバオイルと並んで、世界の3大オイルと言われるほど上質のオイル。85%以上がオレイン酸で形成されているため、抗酸化作用と保湿に非常に優れています。椿オイルは多くは化粧品やシャンプー・コンディショナーなどの美容ケア商品に使われています。
まとめ
椿は冬に咲く赤い花という印象が強いのですが、開花の季節が早いものから遅いものまでかなりの品種があることに大変驚きます。花のバリエーションも一輪咲きから八重咲の種類まで、バラエティに富んだ品種が流通しているため、家庭でも簡単に栽培が出来ますね。
早咲きから遅咲きまで取り揃えると、なんと半年も花が楽しめる品種が揃っているんです。椿は花・葉・種と惜しみなく健康に良い効能がたくさん含有された植物ですので、自宅で栽培して自家製のお茶で、庭の椿を眺めれば心も体も健康になれそうですね。