パッションフルーツの育て方をご紹介
南国の果実を収穫しよう!
トロピカルなパッションフルーツ。育て方をご存じですか? 名前こそ知っている方は多くても、関東周辺にお住まいだと、あまり馴染みのない植物なのではないでしょうか。パッションフルーツとは、トケイソウ科トケイソウ属の果実で、ブラジルやパラグアイを原産地とします。
南国のイメージが強い植物ですが、日本でも育てることができるんですよ。あなたもパッションフルーツの育て方をマスターして、トロピカルな味を楽しみませんか? 果実のみならず、花も楽しめる植物ですよ! 育て方をご紹介します!
パッションフルーツは寒い地域でも育てられる?
栽培方法次第では可能
日本でパッションフルーツがもっとも育てられているのは、鹿児島県です。続いて沖縄、あと数パーセントの生産量を東京の小笠原や熊本が占めている状態です。
このデータからも分るように、パッションフルーツを育てるのに向いているのは、温暖な気候の地域。耐寒温度は10~5℃ほどまでだと言われているので、寒い地域の栽培は正直難しい物があります。しかし、工夫次第ではパッションフルーツを寒い地域で育てるのも不可能ではありません。
冬越し方法にひと工夫を
関東や東北の冷え込む冬を耐え抜いてもらうには、冬越しの方法に工夫をこらす必要があります。外に放置したままだと無残に枯れてしまうので、屋内に取めるよう、鉢植えにしておくことをおすすめします。
夏は露地栽培を行い、冬の前に鉢へと植え替える方法でも可です。そのためには10月前に植え替えを終わらせましょう。これより遅い季節になると生育が鈍るので、根付きも悪くなります。
上手な冬越しは、品種選びから
寒さに強い品種を選ぼう
冬越しできるかどうか心配な地域(冬10℃以下になる地域)では、寒さに強い品種を選んで植えることも重要です。パッションフルーツには3つの品種系統があります。果実の色が紫色のものと、黄色のもの、この2種類を交雑したものです。この中で寒さに強いのは、紫色をした果実の系統。
日本の沖縄や鹿児島で育てられているのも、多くはこの紫色の品種系統です。日本の中でとりわけ温かい地域でも、紫色の品種が育てられていることから分かるように、冬越しに失敗しないためには紫色の品種系統を選ぶべきでしょう。
紫のパッションフルーツも、霜には弱い
比較的耐寒性がある紫系統の品種も、霜に当たると葉が枯れてしまいます。九州以南を除いた冬に10℃以下になる地域では、紫色の品種も、屋外の冬越しは難しいでしょう。冬は屋内で管理する必要があります。
温暖な地域での冬越し
日当たりのよい場所で栽培
冬でも10℃以下にならないあたたかい地域では、南向きの日当たりがよい場所で冬越しさせます。北風には注意し、長めにつるを残して(1.5メートルほど)冬越しさせましょう。乾燥させすぎないようにします。
温室があれば安心
温室のような、加温設備があれば冬越しさせやすいです。とはいえ、家庭菜園で楽しむ程度だと、加温設備にお金をかけるのは難しいですよね。やはり寒さに強い品種選びと、自然下で作れるあたたかい環境での冬越しが理想です。
育て方1.苗選び
パッションフルーツの栽培時期は5月~10月ごろ
まずはホームセンターや園芸店で、パッションフツールの苗を購入してきましょう。苗が出回る時期は春~夏。できるだけ早いうちに苗を買い求めたほうが、収穫時期までに大きく育てやすいです。遅い時期に買うのであれば、大きく育った苗を選ぶのがポイント。いずれにせよ、収穫時期に間に合うようにしましょう。
苗選びのコツ
苗を選ぶときは株元を見てください。この部分がしっかりと太ければ、良い苗です。ちなみに、販売されている苗は温室で育てられたものたちなので、すぐ直射日光に当てると葉っぱが焼けてしまうことも。徐々に慣してから植え付けたほうが良いでしょう。
育て方2.苗をポットから植え替える
栽培スタートの時期
植え付けは、あたたかくなった4月に行います。霜の心配がなくなってからにしましょう。まだ寒い時期に植え付けてしまうと、苗が痛みます。
地植え(露地栽培)の場合
日当たりと水はけのよい場所を選びます。水はけがあまりよくないと感じる場合、株元の土を高めに持って植えると良いでしょう。まず穴を深めに掘り、(縦横50センチ程度)、掘り上げた土に有機質を混ぜ込みます。腐葉土を用いると良いでしょう。
水はけをよくするために、赤玉土も2全体の割程度用います。さらに元肥をまぜ、ポリポットから植え替えてください。植え替えが終わったら、支柱立てをします。苗と支柱をビニールテープやひもで結びつけ、倒れないように固定しましょう。
プランター栽培の場合
ひとつのプランターに対して、ひと株を基本とします。水はけをよくするために鉢底石を一番下に入れましょう。鉢底が完全に隠れるくらいまで入れたら、その上から腐葉土を若干混ぜたプランター用の土(一般的な培養土)を入れます。あとは露地栽培と同様に、苗の植え付けと支柱立てを行ってください。
鉢栽培の場合
大きめの鉢を選ぶのがポイント。プランター栽培と同様に、ひとつの鉢に対してひと株だけを植えるようにしましょう。よく根を張る植物なので、直径が30cm以上ある鉢を使います。土の入れ方や手順は、プランター栽培と同じです。
プランター栽培・鉢栽培の注意点
鉢やプランターは、底に水はけ用の穴が空いているものを使ってください。もしくは、底上げネット(網状のもの)がついているものを使います。穴もなく、底上げネットもついていない容器を使うと、水はけが悪くなって根腐れを起こすリスクが高まります。
パッションフルーツ専用の培養土も
パッションフルーツを育てるための専用土「パッションフルーツの培養土」の販売もあります。土の配合を自分で行うのが難しい場合や、園芸用の培養土では不安な場合は、これを使ってみるのもおすすめです。何より、そのまま使えるのでお手軽で便利。
育て方3.種まき
パッションフルーツは種まきからでも育つ
種まきからでも育てることができます。ただし、種まきからスタートさせると、市販の苗と同じ大きさまで育てるのには時間がかかるのがデメリット。収穫できるようになるまでに根気が必要ですが、パッションフルーツの種が手に入ったらチャレンジしてみるのも良いでしょう。
種まきの時期
種まきの時期は苗の植え付けと同じころで、4~5月のあたたかいシーズンが望ましいです。
種の採取
パッションフルーツの種は果実の中にいくつも入っています。黒っぽく、サイズは大きめ。ぶよぶよしたゼリー状のものに包まれているので、種まきの前によく洗い流しておきます。
種まきの手順
①種まき用の培養土にまき、軽く土をかぶせます。 ②発芽するまで、水を切らさないように水やりします。土の表面が白っぽく乾燥するまえに水を与えましょう。 パッションフルーツは、発芽までにやや時間がかかります。ゆっくり待ちましょう。
育て方4.パッションフルーツの肥料
最初に与える肥料
植え付けのとき、最初に与えておく肥料のことを「元肥(もとごえ)」と言います。パッションフルーツを育てる時の元肥には、油かすがおすすめです。ただし、与えすぎると葉ばかりが茂って花つきが悪くなり、果実もあまり実らない可能性があるので注意してください。
肥料の時期
植え付け後は、春~秋の株がよく成長する時期に肥料を与えましょう。この後から与える肥料のことを「追肥(ついひ)」と言います。パッションフルーツの株の近くに固形肥料を置いておけばOKです。土の中に根が広がっており、そこから肥料分は吸い取られるので、幹の縁ぎりぎりではなく、心持ち離すくらいの場所に置きます。
育て方5.水やり
種まき~発芽まで
土を乾かさないように水やりします。
6月以降
20℃を超えると生育が旺盛になり、土も乾きやすくなってきます。頻繁な水やりを心がけましょう。基本的には毎日行います。1日2回でも良いでしょう。1度の水やりで、鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと与えます。
冬の水やり
水を控えることで、寒さへの耐性も上がります。数週間に1度の水やりで大丈夫です。
育て方6.誘引と摘心
パッションフルーツの誘引
パッションフルーツはつるを這わせる植物なので、つるを巻きつけたい場所に誘いこむ作業「誘引」を行う必要があります。フェンスや支柱に這わせるのが定番で、日よけにもなるグリーンカーテンを作るのも人気です。誘引は、支柱やネットなどの巻きつける場所を用意し、そこにつるを固定していけばOKです。
摘心とは
摘心とは、つるの先端部分をはさみでカットしていく作業のこと。少しかわいそうに感じられるかもしれませんが、摘心を行うことで、わき芽がふえ、結果的にたくさんのつるを茂らせることができます。パッションフルーツのグリーンカーテンを作りたいなら、摘心は欠かせない作業です!
摘心のコツ
2回の摘心を行いましょう。1回目の摘心で出てくるつるを「子ヅル」、2回目の摘心で出てくるつるを「孫ヅル」と呼びます。この摘心で出てきた新しいつるに花や実がつくので、強めの剪定は控えたほうが賢明です。
育て方7.剪定
剪定とは
剪定とは、いらない枝を切り落とす作業のこと。剪定を行い、必要な枝を残すことで、ひとつひとつの果実を太らせる効果が期待できます。不要な枝を切り落とした分の栄養が、残した枝の果実に行くからです。
摘心後の剪定は避ける
ひとつ前の項目でもご紹介した通り、パッションフルーツは新しい芽に果実をつけます。なので、強めの剪定を果実のできるシーズン前(摘心後)に行うのは控えましょう。
収穫後に剪定する
つるが茂りすぎてしまったときや、剪定を強めに行いたいときは、収穫後が1番おすすめのタイミングです。剪定ばさみを使い、切りたい場所をカットしていきます。伸びすぎてしまった部分や、枝同士が混み合っている部分を優先的に剪定しましょう。
育て方8.挿し木
挿し木とは
挿し木とは、パッションフルーツを増やす方法のひとつです。枝を切り取って土に挿し、切り口から発根させます。
挿し木の時期
挿し木はあたたかい時期に行います。挿し木に使う枝(挿し穂といいます)は、すでに育てているパッションフルーツから取ってきましょう。
他の植物だと、剪定で切り落とした枝を挿し木に利用することもあるのですが、パッションフルーツはあたたかい時期の剪定をしてしまうと、果実の量が減るおそれがあります。なので、挿し木と剪定は別々の時期に行うべきでしょう。
挿し木の方法
節の付いた茎をカットして、葉を半分に切り落としたら、コップに数時間浸けて吸水させましょう。あとは、挿し木用の土に挿し、根が出るのを待ちます。土が乾燥すると挿し木は失敗しやすいので、頻繁に水を与えましょう。直射日光に当てず、半日陰で管理すれば、土が乾きにくくなります。
育て方9.病害虫
パッションフルーツは、病害虫が少ない!
虫がつきにくいパッションフルーツ。でも、風通しが悪いと病害虫が発生することもあります。特にカイガラムシは増えやすく、困った存在です。病害虫を発生させないためには、弱ってしまった枝を頻繁に取り除き、風通しの良いスッキリとした状態に株を保つことが大切。
育て方10.収穫
収穫の時期
うまく果実がついたら、いよいよ収穫。パッションフルーツの収穫シーズンは夏です。
収穫後の楽しみかた
酸味が強すぎたなら、たっぷり砂糖を加えたパッションフルーツのジャムに加工してみましょう。たくさん収穫できたときの長期保存にも役立ちます。瓶はあらかじめ沸騰したお湯にかけて、殺菌しましょう。
また、ジャムを入れたら、きちんと密閉しておくことも保管のためには欠かせません。ミキサーやフードプロセッサーを持っている場合、ジュースにしても楽しめます。
育て方11.植え替え
何年間も同じ鉢で栽培するのはNG
大きくなるにつれて、根も生長していくパッションフルーツ。ずっと同じ鉢で育てていると「根詰まり」と呼ばれる現象を起こします。2年に1度くらいのペースで植え替えてあげましょう。屋外で地植えしている場合も、冬の間は屋内に取り込めるよう、鉢植えに植え替えてあげると良いでしょう。
植え替えの方法
植え替えのときは、土ごと新しいものに入れ替えます。まずは植え替えたい株を土から抜きます。悪くなっている根があったら取り除いておいてください。その後、鉢底石と新しい土を敷いた、ひとまわり大きな鉢へ植え替えましょう。
育て方12.果実がつかないとき
パッションフルーツの人工授粉
果実のつきが悪いと感じるなら、人の手で受粉を行ってみましょう。いわゆる人工授粉です。パッションフルーツの花から花粉を採取するときは、筆や刷毛を使うとやりやすいです。
肥料を与える
果実のつきやすくなる肥料を与えてみるのもおすすめです。葉の茂りをよくする肥料ばかりを与えていると、果実がつきにくくなることもあります。成分には注意してください。
パッションフルーツの品種
寒さに強い品種を選ぼう!
品種選びのコツは、やはり「寒さに強い品種を選ぶこと」! パッションフルーツを日本で育てるうえでの大敵は、冬の寒さですから、ここを乗り越えるためにはまず念頭に置きたいポイントです。
紫系統の品種は栽培しやすい
パッションフルーツの品種は、大きく分けて3系統。果実の色が紫色のものと、黄色のもの、この2種類を交雑したものです。寒さに強いパッションフルーツが欲しいなら、紫色の品種がおすすめ! もっとも寒さに強いと言われています。
パッションフルーツの育て方まとめ!
ちょっと珍しい果実を栽培して、食卓に並べよう
いかがでしたか? 寒くなる地域だと特に、スーパーではなかなかお目にかかれないパッションフルーツ。でも、自分で育てれば、毎年フレッシュな果実を収穫できちゃいます。
冬越しさせたり、種まきから育てたりするのにはちょっぴりコツがいりますが、1度植えれば毎年苗が大きくなっていきますよ! ぜひパッションフルーツの栽培にチャレンジしてみてくださいね。