グリセードとは
雪山登山にはスピーディに、かつスムーズに下山するテクニックがいくつかあります。 その中にグリセードという雪の斜面を滑るやり方があります。 グリセードは滑走する楽しみがあると共に、自分の体で滑るスピードを制御する難しさもあります。雪山登山で残雪期に効果的に下山できるグリセードについて、やり方、道具、テクニックなどをご紹介していきます。
傾斜を滑り降りるテクニック
グリセードとは雪山登山でスキーやカンジキなどを使わずにツボ足で雪面を滑り降りる技術のことです。 雪面につけるのは登山靴のかかとの部分だけ。グリセードは雪をかき分けながら滑り降りるテクニックとなりますので、つま先は持ち上げ雪を退けるようにします。雪の質によってこのつま先の角度をうまく調節できるようになればグリセードをマスターしたといえるでしょう。 角度は30度以上の場所で行うことをグリセードと呼ぶので、うまく減速してやらないと転倒して危険です。
ツボ足とは
「ツボ足」はスキーやカンジキを履かないことにより、雪に足が埋まってしまう状態をいいます。足跡が壺のようだということから「ツボ足」という名前が付きました。
グリセードのやり方・道具
グリセードのやり方
グリセードは中腰の姿勢で行います。 両足のかかとに力を入れ、ピッケルも用いて3点で自分の体を支えてスピード制御しながら雪面の傾斜を滑り降ります。 グリセードにはピッケルを使わない方法もありますが、最初に練習するときはピッケルを加えて3点で体を支えるようにした方がやりやすいでしょう。
道具
グリセードに使う道具は登山靴とピッケルというのが一般的です。 アイゼンはつけません。靴のかかとだけでグリセードを行う人もいますが、よほどの技術者でなければピッケルなど制御をかけられる道具無しのグリセードは、いざというときに危険です。 グリセードを練習するときは必ずピッケルなど道具を使った制御方法も練習しましょう。
技術
グリセードに一番必要な技術はいかに滑落スピードを制御できるかという技術です。靴のかかとやピッケルなどを用いてうまく速度を調整してやることが大切です。 その他、傾斜が緩く抵抗に負けて滑りにくい時にはテレマーク姿勢というポーズで行います。テレマーク姿勢については後述を参考にしてください。
グリセード向きな雪質
グリセードのやり方は、サラサラした雪ではなくある程度硬さのある雪のほうが向いています。残雪の頃の湿気を含んだザラメ雪などがグリセードに向いている雪質といえます。 しかし、いくら固めな雪質が良いといっても雪が凍っているような所で行うのはスピードの制御が出来ず危険です。転倒したときに体を強く打つ危険性もあります。雪が凍っている時にはグリセードを行わないようにしましょう。
グリセードの注意点
滑落の危険
グリセードも失敗すると滑落の危険があります。 かかとやピッケルで制御できないときのために、滑落停止の方法も同時に練習するようにしましょう。滑落した先に岩や巨木などがあり体を打ち付けると大事故につながる危険性があります。 また、いきなり実践をするのではなくコブや岩、障害物がないような安全な傾斜であらかじめグリセードの練習をしてから行うようにします。
安全な場所で訓練しよう
グリセードの練習は必ず安全な場所で行うようにします。 雪にそこそこ硬さがあり、なおかつ凍っていないことがグリセードの練習に向いている雪質です。 つま先を上げて滑らないようにして、かかとで方向とスピードをコントロールします。初心者はその場所にこだわるだけでなく、グリセードが出来る人に教えてもらいながら行うと良いでしょう。
テレマーク姿勢の活用
グリセードの練習を行うときに傾斜のゆるい雪面の場合は、姿勢は足を揃えて滑るよりもテレマーク姿勢を取るやり方をします。 テレマーク姿勢とはスキージャンプの選手がやるように足を揃えずに並行にずらした足のポジションのことです。できるだけ足を大きく開き、後ろの足は膝を折った姿勢にでおこないます。
グリセードとシリセード
グリセードは難易度の高い傾斜の滑り方です。 かかとで滑らずに、お尻で滑り降りる方法をグリセードに対して「シリセード(尻セード)」という俗称で呼びます。 こちらはただお尻で滑り降りるだけなので、滑る場所さえ安全なところを選べば初心者でも少しの練習で行うことができるでしょう。スピードの調整はグリセードと同じくピッケルな足のかかとで行います。雪がウェアの中に入り冷たいので、寒い時期にはシリセードよりもグリセードを用いた方が良いです。
まとめ
グリセードは雪山登山をする人が「スキーよりも楽しい」という意見もある、斜面を降りるテクニックです。特別な道具を必要とせず自分のテクニックだけで雪面を制御して滑り降りる楽しみがあります。 しかし、初心者がいきなり行うのは危険も伴うので最初は熟練者にやり方を指導してもらいながら、安全な場所で練習を積んでから実践に移すことをおすすめします。グリセードの技術をマスターして雪山登山をもっと楽しんでみてはいかがでしょうか。