バラムツの分類
スズキ目、サバ亜科、クロタチカマス科、バラムツ属
バラムツはクロタチカマス科に属するバラムツ属の魚で、クロタチカマス科は、水深200m~1000mに生息する中深層に生息する魚のグループです。近縁種にはアブラソコムツ等がいて、バラムツ属は日本ではバラムツだけです。食用で有名なムツはムツ科、ムツ属の魚です。本種と似た容姿で中深層の魚ですが、分類的には遠縁種です。
バラムツの外国名
Castor oilfish, Black escolar
英名で「Castor oilfish」キャスターオイルフィッシュといい、キャスターオイルとは下剤を意味し、「食べると下痢をする魚」という意味です。「Black escolar」ブラック、エスカラーで「エスカラー」はアブラソコムツの英名で、黒いアブラソコムツです。
バラムツの学名
Ruvettus pretiosus
学名は「Ruvettus pretiosus」で意味は非常に大きな深海のゴマサバです。
バラムツの名前の由来
薔薇鯥 漢字、和名
漢字では「薔薇鯥」バラムツで体を覆うトゲがバラのトゲの様に尖り固いウロコを纏うのが名前の由来です。ムツの名前の由来はむつっこいという脂っこい、味が濃いといった表現がなまった事が由来で、一応バラムツも当てはまっています。
バラムツの分布
太平洋沿岸に広く分布
日本では本州以南の太平洋岸に広く分布し、大陸棚の低層、中層に生息する暖海性の深海魚です。分布は深海魚なのではっきりと解らないですが、世界中に広く分布し、確認があるといいます。沖縄では「インガンダルマ」と呼ばれ漁獲も報告されています。
バラムツの生息域
中深層の深海
バラムツは深さ200m~800mに生息する中深層と呼ばれる海域で生息しています。夜間には100m位の海域に浮上し、魚やイカや甲殻類を捕食します。釣りで狙うのも夜間で、100m以下の海域に魚の切り身や頭などのエサを付けて釣行します。
バラムツの形態
バラムツの大きさ
バラムツは釣魚の中ではかなり大きな部類で、なおかつ簡単に釣れる種類として一部の釣り人や漁師の間では人気の魚です。大きさは最大の物では3m×50kgの物がマグロのはえなわで捕獲されています。釣りで狙えるサイズでも1.5m以上の大物が狙え、この位の大きさなら苦労も無く釣る事が出来るというから驚きです。静岡県の沼津市の漁港から20分位の沖合で釣れるというのでさらに驚きです。
バラムツの生態
バラムツの習性
バラムツは昼の明るい時間は水深500m~800mの中深層に潜み、日が落ちると群生し水深100m~200m付近の海域で小魚やイカの群れを捕食活動し、日が昇ると深海に降りていく習性を持っています。また同じ海域、同じ食性の魚が近縁種のアブラソコムツで、バラムツと同じ条件で釣り上げられています。
バラムツの食性
完全な肉食性で夜間に水深100m位の海域に浮上し、小魚、頭足類、浮遊性の甲殻類などを群れで探し回り捕食します。
バラムツの産卵
産卵は晩秋から春に沿岸域で行われ、分離浮遊卵を産み付けます。孵化した稚魚は、表層域で浮遊生活にて動物性プランクトンを捕食しながら成長します。体長5㎝を超えるとイワシなどの仔魚を捉え、20㎝位までは沿岸で群生して捕食活動を繰り返し、20㎝を超えると深海に降りていきます。
バラムツの生息環境
バラムツの生息域
20㎝までの幼魚は港湾や河口で群生しています。成魚は水深200m~800mの起伏の富んだ海域の低層で生息し、海底付近ではエビやイカ類を捉え、日没後は昼行性の小魚の群れを狙い、100m付近の海域まで昇り、時には表層付近まで捕食活動します。
バラムツの釣り情報
バラムツ釣りの概要
バラムツは水深100~300m付近の深海の釣りです。当然沖合での釣りで、ターゲットのバラムツは1.5m×20kgのアベレージの魚ですので、タックルやラインもそれなりの物を用意します。バラムツはジギングで狙います。下記より詳細にご紹介します。
バラムツ釣りの醍醐味
バラムツ釣りの醍醐味は沖釣りの大物狙いにしては近いポイントや、ヒラマサ以上のファイト、大トロより美味しいとされる刺身など色々ありますが、一番の魅力は「超大型の魚を狙えて、もれなく釣れる」という事で無いでしょうか。15kgの魚を狙って釣る。想像しても獲物として中々いない位です。ハタやマグロや超大型のヒラマサ等です。この種の釣りは「簡単です」など口が裂けても言えませんが、バラムツでは事情が違い、実際に漁関係者にも聞いた事がありますが、確かに言ってました「簡単です」と!「超大物魚と格闘」に一番近い魚なのは間違いありません。
バラムツ釣りのポイント
バラムツのポイントは沖合の起伏のある海域のの底層を狙います。バラムツ、アブラソコムツを専門に狙う船が、静岡県の駿河湾に東西に各所にあります。駿河湾は深海の海で、沼津市では出船してから20分位の場所がポイントとなっています。その他、静岡市清水区、焼津市、西伊豆地区で近海でのポイントがあり、盛んに釣行しています。
バラムツ釣りのシーズン
バラムツは深海の魚なので周年狙えそうですが、シーズンがあり、5月~12月の海水温が上るころから落ちる頃までの時期で、ベストシーズンは秋から晩秋で、11月~12月は大物を狙う時期となっています。
バラムツの釣りのタックル
バラムツはジギングで狙います。ロッドはディープジギング用ロッドの6ft前後を使用します。リールはソルト用スピニングリールの6000番でPEラインの5号を400m巻いておきます。
バラムツの釣りの仕掛け
仕掛けは道糸にリーダーを接続し、ジグをセットしアシストフックを使用します。リーダーはナイロンリーダー80lbを使用し、ジグは100g~400gのメタルジグを各種用意し、タナによって使い分けます。乗合船ではサンマの切り身をメタルジグにセットすると釣果があるという事で多用します。それを良しとしないアングラーは、ワームをセットしジギングに挑みます。
バラムツの釣り方
ジギングは50m~200m付近に落とし込み、ジグをスロージャークや高速ジャークで活性に合わせ操り、ステイやフォール時にヒットを狙います。深海のジギングですので100m以内のタナでは100g前後のジグを使用します。 船長の指示したタナまで落とし込み、10m位ジャークし、ステイ、フォールを繰り返します。ステイ、フォール時にドカンとアタリがありますので、一息入れて大きく合わせます。 やり取りは10分から長い時は30分続きますので、覚悟して釣りあげましょう。また、テクニック云々より相当タフなゲームで体力が要りますので、注意し釣行しましょう。
バラムツの釣りの動画
バラムツを釣って捌いて食べてみた!
静岡県沼津市の冬季のジギング釣行です。グラビアアイドルの様な女の子が100mのジギングで1投目から釣っています。2匹目などはフォール時の着底と同時にヒットしています。相当魚影が濃いのか、活性が高いのか解りませんが、とにかく10kgオーバーのキングサーモンクラスのバラムツを簡単に釣り上げています。そして帰宅後に捌いて食べています。面白い動画です!
駿河湾ナイトバラムツゲーム 166cm / 推定35kgゲット
静岡県富士市沖の夏の釣行です。半袖短パン、ビーチサンダルで気軽にバラムツ釣行しています。6名で20本、堂々たる釣果ですが軽装で超大物を仕留めているのも驚きです!
バラムツ ジギング 代々丸 和歌山県
和歌山県の晩秋のバラムツのジギング動画です。釣りあげた本人も驚く大型のバラムツです。20kgオーバーのバラムツが2本揚がっています。近海で、こんな釣果の魚は他にありませんよね!
静岡沼津へ深海魚釣り(バラムツ)、釣りガールのバトルジギング
こちらも静岡県沼津市沖のバラムツのジギングの動画です。ナレーションで「お手軽大物フィッシング・誰にでも釣れる」と流しています。動画の女子は初チャレンジでゲットしています。初心者の女子にどんどん釣られる、バラムツとは?と考えさせられます。
バラムツの味:interrobang:
絶品の魚ですが
味の前にまず、バラムツは人体では消化出来ないタイプの脂肪分(ワックス)を筋肉内に大量に含有していますので、法令上では毒魚扱いになっていて、漁協その他流通販売は禁止されています。しかし韓国やデンマークその他の国では食用とされています。そしてその味は「全身大トロ」と表現され、口の中でとろけ、大トロが好きな人には非常に美味で、釣り人の間では自己責任で持って帰って食されます。食べながら「お腹を壊しても良いよ!」と言ってしまう程美味しく、実際の腹痛を起こす人が多いと噂されます。
バラムツを食べると
大変な事になります。
バラムツの脂質は全体の28%と超脂分が多く、その中の90%がワックスエステルという脂質で人体に吸収されません。どうなるのかというと、排便と一緒でおしりから抜けて出ます。恐ろしい事に便意とは関係無く出てしまうという点で、早い人は食事を終える前に出てしまう事もあり、遅い人でも翌日には必ず出ます。ですので外出にはおむつが必要となってしまいます。(大袈裟ではありません!)
最悪は「人生台無し」に
一番怖いのが、朝普通に排便し大丈夫と安心して通勤し、バラムツの事を忘れ、商談や接待をしている最中に漏れ出てしまう事です。【便意とは関係無く多量放出する】ので非常に危険です。客先に「昨夜、バラムツを食べたので、すみませんね。」と言っても通じる訳は無く、下手すると会社をクビになってしまう事になりかねません! ですので、食べるとしても本当に少量にする事をお勧めします。ちなみに多量摂取すると1週間はお漏らしに悩まされ、仕事になりません。
バラムツの料理
自己責任でお願いします。
取引が禁止される程の多量のワックスエステル含有の魚なので、食べる事はお勧めしませんが、情報としてご紹介します。
バラムツの刺身
血合いが少なく身は非常に柔らかいです。マグロの大トロの様に口の中でとろけ、甘みと酸味があり、マグロの脂が好きな人には絶品と感じます。
バラムツの煮付け
煮ても脂が身に留まり、ふわふわで柔らかい身から脂がほとばしり、脂っこい料理が好きな人には、たまらない煮付けです。上述の動画(バラムツを釣って捌いて食べてみた!)ではお腹を壊しても良い!と言って完食してしまってます!
バラムツのソテー
煮ても、焼いても、干しても脂は身に留まり、美味しいのですが危険を本当に伴います。危険を理解した上で、味見程度にする事をお勧めします。
バラムツの事情
海外では
韓国では「シロマグロ」として食用として流通していましたが、2007年に食中毒患者が続出した事などで、食料医薬品安全処が流通禁止の行政予告をを行ったものの、「過度な規制」として2010年に撤回し、現在までに意見が分かれている所ですが、流通し、食べられています。中国ではタラやサケの販売にバラムツを流用偽装し食中毒や下痢の問題が起こりました。東南アジアでは「オイルフィッシュ」や、やはり「シロマグロ」として流通しています。
専門学校で試食
名古屋市の「名古屋コミュニケーションアート専門学校」で2014年にバラムツの身を茹でて生徒に食べさせ、名古屋市食品衛生課から行政指導を受けました。この騒ぎは専門学校内の30代の非常勤講師が「バラムツの身に脂が多いいことを伝えたかった」という趣旨で、60名の生徒に講義の最中に任意で食べさせ50人が食べました。幸い食中毒などは起きませんでしたが、危険性があり、食品衛生法に抵触しているので、新聞沙汰騒ぎとなりました。
バラムツを食べるには
何処かで食べれるのか
販売禁止の魚ですので流石に正面を切って食べれる店は無い、と思いながら調べていたらありました。沖縄です。沖縄ではバラムツは「インガンダルマ」と呼ばれ同種ですが、名前が違うので堂々と出しています。沖縄の大東島では人気の魚で、やはり多く食べると危ないとの、同様の症状を充分理解していて、4切れまで!という事の様です。那覇にある喜作という、大東島の料理が食べられる評判のお店です。その他は釣り船で自己責任で持って帰って食べています。各所で釣って食べている様が、ブログに掲載されていますね。
バラムツの仲間で食べられる魚
バラムツと共に食べれない(販売規制)魚は近縁種のアブラソコムツです。こちらは非常にバラムツに似た魚ですが、優るとも劣らない、というかさら上を行く脂と身のざらつき感で、人気がかなりバラムツより落ちます。 似たような美味しい食味で流通しているのが「アブラボウズ」です。脂の成分がワックスエステルでは無いという事で行政から許可が出ていますが、刺身で60gまでとの制限が行政指導されています。食べ過ぎると下痢や食中毒になるとの事で、同じじゃないの?と首をひねってしまします。
バラムツの乗合船
乗合船の時間、料金、距離など
静岡県沼津市から出船している、バラムツ狙いの乗合船情報を記載します。時間は16:00~22:00位(その後の深夜便もあり)料金は乗合で1名9000円、貸し切り仕立てで5名で55000円ルアーの貸し竿は2000円です。ポイントまでの到着時間は最短で20分からです。(2017/12/2現在)
バラムツのゲームフィッシング
スポーツフィッシングでの確立は
バラムツの食に向かない事情は、今回の記事でお解りになって戴けたかと存じます。大きな魚なので1匹釣れば30人前の刺身が取れます。この身は多く食べれないので、1匹釣ると食べるのに100名位必要となるでしょうか? 一方、釣りのターゲットとしては人気が高いのですが、現状ではメタルジグに鯖の頭を取り付けて釣る等の、「釣れれば何でもあり」の様なゲームとなっています。簡単に釣れる事で、ゲーム性が低くなっている様にも見えます。バラムツも大きな物をのみを狙って競う等の、ゲーム性を高める必要性を感じます。