キンモクセイの基礎知識!
普段は気にも留めない近所の庭木が、秋になるとオレンジ色の花をつけ、香りを周囲に降りまく… こんな経験のある人は多いと思います。 でも、キンモクセイを実際に育てたことのある人は意外に少ないのではないでしょうか? 今回は、あまり知られていないキンモクセイの基礎知識や、育て方のポイントについてまとめてみました。
キンモクセイはギンモクセイの変種
キンモクセイは、中国原産のモクセイ科モクセイ属の常緑広葉樹です。 昔から日本にあったように風景になじんでいますが、渡来したのは江戸時代といわれています。 しかし、日本の各地には樹齢が400年を超えるキンモクセイの老木もあるので、一般に親しまれるようになったのが江戸時代ということなのかもしれません。 日本ではポピュラーなキンモクセイですが、実はギンモクセイの変種といわれています。 ギンモクセイは、キンモクセイと樹形は似ていますが、キンモクセイよりも控えめな香りの白い花を咲かせます。
上の画像がギンモクセイです。 キンモクセイよりも清楚な感じがしますね。
キンモクセイはなぜ「芳香剤の匂い」といわれるの?
キンモクセイの香りを嗅ぐと「トイレの芳香剤」を連想する人も多いかもしれません。 特に高齢者にその傾向が強いといわれています。 それはなぜなのでしょうか? 日本のトイレが近代化される前は、家の外の離れた場所にトイレが配置されることが多く、悪臭を抑えるために香りの強いキンモクセイをトイレの近くに植えることも多かったんだそうです。 そのため、どうしてもキンモクセイ=トイレの消臭をイメージしてしまうんですね。 最近のトイレの消臭剤は、キンモクセイよりもラベンダーが主流になっているようです。
キンモクセイのさまざまな活用法
日本ではトイレの香りとして認識されてしまうこともあるキンモクセイですが、原産地の中国ではさまざまなものにキンモクセイの香りが採り入れられいます。 中華料理店でおなじみの「桂花陳酒」は、キンモクセイの花を白ワインに浸けこんだもの。 「桂花茶」は、お茶に乾燥したキンモクセイの花を混ぜたもの。 甘く煮詰めて「桂花醤」という香味料として利用されることもあるそうです。
【育て方①】キンモクセイは苗から育てられるの?
鉢植えにも庭木にもできる
キンモクセイは、小さな苗から育てることができます。 鉢植えにする時は、50cm~1m前後の大きさの苗を。 庭などに植えて大きく育てる場合には「根巻き」というある程度の大きさまで育った苗を根から掘り起こして麻布などで巻いたものを購入するのが簡単です。 1.5m以上の大きさに育った苗木は、鉢では上手く育たないので地植えにした方がよいでしょう。 苗が大きくなるほど価格が高くなり、1.2mで4000円台、1.5mを超えると1万円が購入の目安です。
いつごろ植える?
鉢や庭への植え付けには、新芽が出始め、成長スピードが早くなる前の3~4月頃の時期が最も適しています。 秋に植える場合は、9~10月頃までにして下さい。 キンモクセイは常緑樹なので、本格的に寒くなる前に根をしっかりと張らせることが大切になります。
【育て方②】キンモクセイの土や肥料は?
キンモクセイの好む土壌は?
キンモクセイは、やや肥沃な水はけのよい土壌を好みます。 庭に植える場合は、植えたい場所に根巻き苗がすっぽり入るぐらいの穴を掘り、よく耕してから腐葉土や有機肥料を混ぜ込んだ土を入れ、苗木を入れます。 植え付けが終わったら、根元に水を含ませ、土となじませてしっかりと固めます。 鉢に植える場合は、苗木よりもひとまわり以上大きな鉢を用意し、鉢底石を下に敷いた上に、赤玉土:腐葉土(有機肥料)=7:3ぐらいに混ぜ合わせた土を入れ、水をまいてキンモクセイをしっかりと鉢の中に固定させます。
肥料の与え方は?
キンモクセイの肥料は、おもに年に2~3回程度与えます。 2月~3月頃に「寒肥」として効き目の緩やかな有機肥料を施肥すると、春以降の生育がよくなります。 新芽が伸びる4~5月頃には、「追肥」としてリン酸やカリウム成分の多い肥料を。 花芽の分化を促進してくれます。 窒素成分の多い肥料を与えると、葉ばかりが茂って花芽が分化しにくくなるので気をつけて下さい。 また、開花前の8~9月に少量の「花肥」を与えることで、花つきがよくなります。 鉢植えの場合は肥料分が不足しやすいので、地植えよりもこまめに肥料を与えた方がよいでしょう。
【育て方③】キンモクセイの水やりは?
苗が根付くまでは、水切れに注意して、表面が乾いたら水を与えます。 しっかりと根付いてからは、地植えの場合は自然降水にまかせても構いませんが、鉢植えの場合は、基本的に土が乾いたら水をあげる、というサイクルで育てます。
【育て方⑤】キンモクセイを植える場所は?
キンモクセイは、日陰でも問題なく育つように見えますが、実は日光が大好きな植物です。 日照が十分にとれない住宅密集地などでも、最低午前中は日の当たる場所を確保して下さい。 日当たりがよいところに植えられたキンモクセイは、大きく育ち、花つきもよくなります。 キンモクセイは比較的成長の遅い樹木ですが、放っておくと四方八方に枝を伸ばし、うっそうとした樹形になってしまうので、時々は剪定が必要です。 剪定については、次のコラムで詳しく書いていきます。
【育て方⑥】キンモクセイの剪定は?
キンモクセイは、その年の春に出た新芽から夏に花芽が形成され、秋に開花する、花芽ができてから開花するまでの時期がもっとも短い樹木のうちの一つです。 そのため、剪定は、開花が終わった後から翌春の新芽が出る前までの時期に行います。 それ以外の時期は、伸びすぎた枝を少し刈り込む程度にして下さい。 まだ苗が大きく育っていない場合は、頻繁に剪定をする必要はありません。 「葉が混みすぎた箇所を切り、風通しを良くする」「樹形の乱れを補正する」というポイントを押さえて剪定してみて下さい。
【育て方⑦】花は何年目ぐらいから咲くの?
植え付けから2~3年が目安
キンモクセイの苗は、植え付けから1~2年は枝や葉を伸ばすことにエネルギーを使うので、花芽はあまり分化しません。 開花の目安は、植え付けから2~3年後といわれています。 すでに花芽のついている苗を購入して春に植え付けた場合は、その年の秋に開花することもあります。
キンモクセイは二度咲きすることもある
キンモクセイは年によって多少のずれはありますが、9月下旬~10月の間に花を咲かせます。 桜前線と逆に、北から南へと開花のピークがずれていきます。 開花していい香りを漂わせている時期は意外に短く、3日から1週間ぐらいです。 キンモクセイは基本的に一年に一度しか開花しませんが、気象条件等により一年に2回開花することがあります。 二度咲きのシステムについてはまだあまり解明されていませんが、花芽が分化するのが早かった枝とそうでない枝があり、開花のピークにばらつきが出るためではないかといわれています。
【育て方⑧】キンモクセイはふやせる?
日本のキンモクセイはすべて雄花
キンモクセイは、雌雄異株といって、雄花だけをつける株と雌花だけをつける株が分かれています。 そのため、雄株と雌株が両方ないと結実せず、種もできません。 日本には、輸入されてきた当初に香りが強く花つきのよい雄株が好まれ、その後は挿し木によってどんどん繁殖していったので、キンモクセイの雌株は日本にはないといわれています。
挿し木の手順は?
苗をわざわざ買うほどではないけど、キンモクセイを育ててみたいと思っている人は、キンモクセイを育てている知人から枝を分けてもらって、挿し木に挑戦してみましょう。 まずは、6~9月頃の時期に成熟した枝を鋭利な刃物で10㎝ほどに切り取ります。 1時間ほど水揚げをし、「メネデール」などの発芽促進剤を切り口に薄くまぶしてから、挿し木用の土を入れた鉢や箱に挿します。 十分に水やりをした後は、ビニール袋などで密封し、日陰に置きます。 発根まで時間がかかりますので、冬は玄関や軒下などなるべく暖かい場所に春まで置き、乾かさないように管理して下さい。
取り木という方法もある
キンモクセイは取り木という方法でふやすこともできます。 5~6月頃にキンモクセイの木の幹の一部をナイフで傷つけて、ぐるりと一周皮を剥きます。 皮を剥がした部分に水を含ませた水苔などを巻きつけ、ビニールなどで覆ってからひもで留めます。 しばらく経って根が出ているのが確認できたら、皮をむいた部分の途中で切り離し、水苔を取り除いてから植え付けます。 挿し木よりも取り木の方が成功率が高いといわれているので、興味のある方は試してみて下さい。
【育て方⑨】キンモクセイの花が咲かない!どうすれば?
特に手入れをしているように見えない近所のキンモクセイがたくさん花をつけているのに、我が家のキンモクセイが花を咲かせなかったら、がっかりしてしまいますよね。 キンモクセイが花を咲かせない理由には、いくつかの要因があります。 その主な要因について、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
強めの剪定
キンモクセイは、7月以降に花芽が分化して花を咲かせるので、夏に剪定するとせっかくの花芽を切り落としてしまうことになります。 そのため、7月以降の剪定は控えましょう。 また、寒さが本格的になる11月以降の大がかりな剪定も、キンモクセイを弱らせます。 秋以降の剪定は、枝をたくさん落とす剪定は避け、樹形を整える程度にしましょう。
日照不足
キンモクセイの花をたくさん咲かせたかったら、日当たりのよい場所を選んで植え付けましょう。 ほかの植物や物置などで日光が遮られないかも確認して下さい。 日照が不足すると、苗の新芽が落ちてしまい、結果的に花が咲かない、あるいは花の数が極端に少ないということがあります。 鉢植えの場合は鉢を移動することができるので、できればその時期に一番長く日の当たる場所で管理してあげて下さい。
水不足
キンモクセイの花芽が分化する7~8月の時期に水分が不足すると、つぼみができない場合があります。 夏場は乾燥しがちなので、朝と夕方の2回しっかり水を与えて下さい。 地植えの場合も、夏場は自然降水にまかせず、水やりをしてあげるとよいです。 花が咲いていないと水やりもついおざなりになってしまいがちですが、夏場の時期の水管理がスムーズな開花につながります。
害虫
7~8月は、植物の生育が盛んな時期であると同時に、害虫の被害が出やすい時期でもあります。 植物の柔らかい葉や新芽の汁は害虫の大好物です。 キンモクセイにもカイガラムシやイラガなどの害虫が発生し、生育不要につながることがあります。 これらは、春は幼虫ですが、そのまま放置すると夏以降は成虫になって卵を産み、さらに被害が広がります。 見つけ次第、農薬などで早めに対策をしておきましょう。
病気
キンモクセイがかかりやすい病気に、褐斑病、炭そ病、うどんこ病、先葉枯病があります。 どれもカビが原因の病気で、うどんこ病以外は梅雨時期の高温多湿下で被害が広がりやすくなります。 葉に褐色の斑点が見られたら褐斑病、黒や赤褐色の斑点なら炭そ病、白い粉状の斑点ならうどんこ病である可能性が高いです。 また、葉の先端が黄色くなって枯れ始めたら、先葉枯病の疑いがあります。 病気の葉を見つけたら、根元から切り取り、ほかの葉に伝染を広げないようにします。 また、それぞれの病気に対応した薬剤を使って、被害を最小限に食い止めるようにして下さい。
まとめ
丈夫でほったらかしでも毎年花が咲くように見えるキンモクセイ。 実は寒さにそれほど強くなく、日当たりや剪定に配慮が必要なデリケートな部分もあるんですね。 古い神社やお寺などでは、大木になったキンモクセイの花や香りが楽しめるスポットもあります。 秋の風物詩ともいえるキンモクセイを、ぜひあなたのご家庭でも育ててみて下さい。