ハリセンボン/分類
フグ目ハリセンボン科
ハリセンボンはフグ目ハリセンボン科に分類されている魚の総称で、特に学名を「Diodon holocanthus」という種類のことを指すようです。 ハリセンボン科の魚は世界中に7属、約20種の存在が確認されています。日本では3属7種類が確認されています。
ハリセンボン/外国名
Freckled porcupinefish
外国名の「Freckled porcupinefish」のそれぞれの単語の意味は、「Freckled」は「そばかすがある」、「porcupine」は「ヤマアラシ」という意味になります。 「そばかすのあるヤマアラシのような魚」と言う意味になりますね。そばかすは恐らく体の黒いスポットのことを指しているのでしょう。
ハリセンボン/学名
Diodontidae
学名の「Diodontidae」は、「二つの歯」という意味があります。 これは、ハリセンボンの口の中に上下1つずつ、合計2つの歯があることに由来します。
ハリセンボン/由来(漢字)
針千本
名前の由来ですが、体の棘をそのまま針に見立てていたようです。 昔は数が多いと細かな数字ではなく「1000」という単位で表現していたことから、「体に針が多い=針千本」ということでこの漢字表記になったのでしょう。 余談ですが、ハリセンボンの体にある棘は、実際には多くても400本ほどといわれています。
ハリセンボンは富山県や和歌山県では「ハリフグ」、福井県では「スズメフグ」、新潟県では「ハリオ」、山口県では「イガフグ」、愛媛県や高知県では「バラフグ」などと呼ばれています。
ハリセンボン/生息地域・分布
浅場の岩礁域やサンゴ礁域
ハリセンボンは世界中の熱帯~温帯の海域に生息しています。 日本では青森県から九州南岸、その中でも西日本から南西諸島でよく見られます。 浅い岩礁域やサンゴ礁域に生息し、サンゴや岩礁の隙間を住処にしているようです。
ハリセンボン/生態・生育環境
ハリセンボンの食性、特徴、生育環境をチェック!
ハリセンボンの生態や食性、特徴、生育環境の3つをご紹介します。 独特の釣り方法で釣る魚なので、ハリセンボン釣りに挑戦してみたい人はチェックしておいてください。
1/3.ハリセンボンの食性
割と小型のハリセンボンですが、食性は肉食性です。 カニやエビ、貝といった甲殻類や、タコ、イカなどの軟体動物を食べることが多いようです。 体の大きな個体は、自分よりも小さな魚を食べることもあります。 ペットとして飼育されることもありますが、人工餌になれることがほとんどないため、乾燥エビやカニ・アサリを与える人が多いようです。
2/3.ハリセンボンの特徴
ハリセンボンは、フグの仲間独特の丸みのある体をしています。 体の色は淡褐色や褐色、お腹側が白っぽい色をしており、体に黒点がありますが、ひれには黒点がありません。 口の中には上下一つずつ小さな歯があります。 危険を察知すると体を膨らませ、ウロコが変化した棘を立て威嚇してきます。
3/3.ハリセンボンの生育環境
ハリセンボンは海水魚ですが、汽水域に現れることもあります。 沿岸の岩礁域やサンゴ礁、また船溜まりのような場所にいることが多いです。 産卵は南西諸島や台湾の周辺で行われ、稚魚は対馬海流や黒潮に乗って日本に来ます。 稚魚は集団で行動しており、日本海などで冬場に打ち上げられることが良くあります。
ハリセンボン/特徴・形態
大きさは最大40センチ
ハリセンボンは、体長が大きなものでも40センチほどで、500~600gが一般敵な重さです。 ひれが大きいのですが、ゆっくりとした泳ぎ方なので、ハリセンボンが必死になって逃げなければ見つけるのは容易です。 割と水面に浮いていることも多く、岩陰にある巣で眠っていることもあります。
怒ると鳴く?
ハリセンボンが鳴く、ということに驚く人もいるかもしれませんが、ハリセンボンは釣りあげられた時に上下の歯をこすり合わせて鳴くことがあります。 YouTubeに実際に鳴いている動画がありましたので、ご覧下さい。
ハリセンボン/釣り情報
ハリセンボンは一定数の群れを作って、防波堤の周辺やサンゴ礁・岩礁の表層を回遊しています。 そのため、通所の釣り方とは異なり「ミャク釣り」という釣り方をします。 釣り初心者や、普段あまり釣りをしない人はこの「ミャク釣り」を知らない人が多いのではないでしょうか。 「ミャク釣り」について解説しましょう。
ミャク釣りとは?
「ミャク釣り」とは、短竿(1.8メートル前後)を使って、魚を目で確認しながら釣る「サイトフィッシング」です。 ハリセンボンを見つけたら、オキアミやイソメといった餌をハリセンボンの前に落とし、食いついた瞬間に針を掛けるのが基本です。 針を仕掛けるのが難しいと感じたら、餌や針、ハリスを小さめにすると釣りやすいようです。
ハリセンボン/味・選び方
ハリセンボンの選び方
ハリセンボンはお腹の部分の身が少ない魚で、すでに皮をはいだ状態で販売されていることが多く、スーパーでパック売りされていることもあるようです。 選び方の目安としては粘液がさらさらしていて透明、色合いがはっきりしているもの、目が濁っていないものを選ぶようにしましょう。
ハリセンボン/栄養・寄生虫
フグノエは人体に影響なし!
ハリセンボンにはタイに寄生することで知られるウオノエの仲間、「フグノエ」という寄生虫が口の中やエラに潜んでいることがあります。 フグノエは人体には影響のない寄生虫です。
内臓の寄生虫が心配なら加熱調理を!
フグにはアニサキスが付かないと一部では言われているようですが、可能性がないわけではありません。イカリムシなども寄生することが考えられます。 どちらも内臓に寄生する寄生虫で、宿主が死ぬと身に向かいますが、加熱・冷凍でも処理でき、目視可能です。 鮮度を優先するためにも、内臓はすぐに処理しましょう。
フグに似た味と食感
ハリセンボンはフグのような味わいがありますが、身の弾力は控えめ。 肝はそこそこ濃厚な味をしています。 台湾では棘を抜いた皮も食用として用いられています。
ハリセンボン/料理・調理方法
ハリセンボンには毒がない!
ハリセンボンはフグの仲間ですが、皮や身に毒を持っていないフグです。 そのため、調理師免許がなくとも調理して食べることができます。 一般的に肝には毒があるといわれていますが、沖縄の家庭料理「アバサー汁」では、肝も使います。
ハリセンボンのさばき方は?
ハリセンボンをさばく時は、棘が刺さる可能性が高いので、厚手の手袋をしたり、ペンチで身をつまんで作業することをお勧めします。 さばき方は、まず口の周りから皮に切れ目を入れて、皮をはぎます。 ハリセンボンをさばいた動画があったので、調理時の参考にしてください。
唐揚げや鍋がおすすめ!
ハリセンボンは身が少ないため、刺身ではなく唐揚げや鍋料理・味噌汁がおすすめです。 肝はとても良い出汁が出るので、鍋やみそ汁に入れるのをお忘れなく!
沖縄の家庭料理「アバサー汁」レシピ
沖縄の家庭料理「アバサー汁」の作り方です。 とっても簡単なのでぜひチャレンジしてみてください!
【材 料】 ハリセンボン(1尾)500g 水500ml ミソ 大さじ1.5 醤油小さじ1 生姜(すりおろし) 少量 ねぎ(小口切り)少量
【作り方】 1 【下処理】① まず各ヒレをハサミで切り離す。 2 【下処理】② 口まわりの皮を切り、腹側からキッチンバサミで頭から尾に向けて皮を切る。 内臓を抜き去り、肝だけ別にする。 3 皮と身を切り離しながら身を取り出す。 頭と尾の周辺の離れにくいところは包丁で切り離す。 4 ここまでで身は皮を剥がされた頭から尾まで一体の状態。 ここから頭と肉を切り分け、頭はさらに2つか4つ程度に割る。 5 血をよく洗い流す。 6 キモはこまかくたたいて、醤油、ミソ、お好みでおろした生姜を混ぜ込む。 7 鍋に⑥の頭・肉を全ていれフタをして強火で煮る。
YouTubeで、ハリセンボンをさばくところからアバサー汁ができあがるまでの動画がありましたので、調理時の参考にしてください。
手間がかかるけど美味「ハリセンボンの皮の湯引き」
台湾でのハリセンボンの食べ方の一つ、「ハリセンボンの皮の湯引き」です。 皮から棘を抜く作業がかなり手間で時間がかかりますが、意外と美味しいんですよ!
【コツ・ポイント】 ハリセンボンのハリはスパイクのような形になっていて表から抜くと抜けません。裏から抜きましょう。
【材 料】 ハリセンボン(小ぶり)1尾 大根3cm 唐辛子 1/2本
【作り方】 1 ハリセンボンの皮をはぐ(お店に頼むとよいかと思います) 2 数十秒(皮が縮まり丸くなるまで)茹で、冷水で締める 3 裏側から骨抜きで1本1本ハリを抜く。根気がいりますががんばって! 4 全てハリが抜けたら食べやすい大きさに切る 5 大根に唐辛子を刺しておろし、もみじおろしを作って添えてできあがり
ハリセンボン/その他
魔除けに使われることもある!
海岸沿いの地域では、「八日吹き」という言葉があります。 これは正月の8に置換は海が荒れるといわれており、海岸に打ち上げられたハリセンボンを拾って、魔除けにするために門口につるす風習がある地域があります。 鳥取県では節分に打ち上げられるといわれており、12月8日に打ち上げられるといわれている地域もあります。
自分でフグ提灯作成に挑戦しよう!
よく居酒屋で飾られていたり、沖縄などのお土産屋さんで販売されているフグ提灯ですが、自宅で作ることができます。 ハリセンボンの場合は棘があるので大変だと思いますが、自分で制作してみたいという人はぜひチャレンジしてみてください! フグ提灯の作り方動画がありましたので、ご紹介します。
こちらは一般の人がフグ提灯作りにチャレンジした動画です。 かなり悪銭苦闘しながら作っていますが、かなり面白いです。