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名峰「トムラウシ山」とは?登山者を魅了するその理由と基本情報まとめ

登山をされない方でも、北海道の大雪山は聞いたことがありますね。北海道のど真ん中にドーンと広がる大雪山連峰、トムラウシ山はその中央にあり四方を2,000m級の高峰で囲まれています。簡単には登れないトムラウシ山だからこそ、山頂には手つかずの大自然が広がっています。
2020年8月27日
shoko0109
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トムラウシ山とは?

「遥かなる山」トムラウシ山

「遥かなる山」という形容詞がピタリと当てはまる山、それがトムラウシ山です。どこから登っても片道6時間以上かかり、相当な体力が求められます。それほど奥深い山のため、山頂にはこの世のものとは思えないほど手つかずの大自然が残っています。

トムラウシ山は「神々の遊ぶ庭」

トムラウシ山では、古より大自然が残してくれた山野草や湖沼・熔岩石、そして野生動物たちに出会えます。地元では昔から「神々の遊ぶ庭=カムイミンタラ」として崇められてきた山なんですよ。

トムラウシ山はどこにあるの?

大雪山連峰トムラウシ山

トムラウシ山は、北海道のど真ん中にそびえる大雪山連峰のほぼ中央に鎮座します。大雪山連峰は広さ23万ヘクタール、神奈川県と同程度の面積があるのです。 トムラウシ山の北には旭岳、そこからぐるっと忠別岳、石狩岳、ニペソツ山、オプタテシケ山、十勝岳と周囲を2,000m級の山に囲まれています。それゆえ、どこから登るにしても人里から遠く「大雪の奥座敷」と呼ばれています。

雄大な大自然が広がるトムラウシ山

「北海道の屋根」とも呼ばれる大雪山連峰、北海道最高峰の旭岳2,291mを筆頭に広大な山脈で形成されています。トムラウシ山も標高2,141m、日本百名山にも選ばれています。

トムラウシ山が名峰と言われる理由

アルピニストは難関と言われる山ほど、攻略したがるものです。しかしトムラウシ山は難関なだけでなく、実に美しい山なのです。広大な大雪山連峰に囲まれた絶景、人間の域を超えた自然の懐の広さを感じます。

山頂に登ると大自然が作り出した日本庭園、トムラウシ庭園、そして黄金ヶ原など見事なお花畑に目を奪われます。トムラウシの語源は、アイヌ語で「花の多いところ」「水垢が多いところ」と言われ、ともにトムラウシ山の美しい自然を表しています。

トムラウシ山の歴史

火山が作り出した景観、トムラウシ山


大雪山連峰は1万年以上前に活動していた火山群で、お鉢カルデラが形成されています。トムラウシ山の山頂には、溶岩ドームや噴火口を今でも見ることができ、山麓の層雲峡や天人峡には火砕流で出来た柱状節理という独特の岸壁が見られます。 現在ではほとんどの山が火山活動を停止している大雪山連峰ですが、十勝岳だけは今も活発に活動を続けています。

永久凍土を持つ山、トムラウシ山

永久凍土って、北極や南極などの極圏でのみ見られると思っていませんか?実はこの永久凍土が、トムラウシ山に存在するのです。永久凍土とは、2冬と1夏以上凍り付いたまま溶けない土壌のこと。地表は凍っていない様に見えても、地中は凍り付いたままなのです。 この永久凍土、日本では大雪山系と富士山、そして北アルプスの立山だけで確認されています。「日本のツンドラ」とも言われる大雪山連峰、地質学的にも貴重なところなのですね。

トムラウシ山登山の遭難事故

夏山で低体温症?トムラウシ山

2009年7月、夏山登山にも関わらず低体温症で8人が犠牲になったトムラウシ山遭難事故。夏山史上最悪の事故と呼ばれる「トムラウシ山遭難事故」は、なぜ起きたのでしょうか?

夏と冬しかないトムラウシ山

夏でも雪渓の残るトムラウシ山には、冬と夏しかありません。基本的に1年のうち10ヶ月ほどが雪に閉ざされています。そのため真夏の8月であっても、最高気温はMAXでも12,3度までしか上がらず、最低気温は3度前後です。2,000m級の山とはいえ緯度が高いため、本州の3,000m級の山と同じです。 更にトムラウシ山は豪雨こそ少ないものの、雨がよく降ります。雨は霧と強風を伴い、体温・体力を奪います。また雨霧は視界がきかなくなり、道迷いの原因にもなります。

2009年トムラウシ山遭難事故の原因

2009年7月のトムラウシ山遭難事故発生当時は、天気の急変で台風並みの低気圧が近づき、ツアー登山者たちは暴風雨に晒されていました。このツアーが辿ったのは、旭岳から白雲岳、白雲岳避難小屋で一泊し忠別岳・五色岳を経由してヒサゴ沼避難小屋に一泊、そしてトムラウシ山に向かうコースでした。 大雪山系は山小屋がなく、あるのは避難小屋のみです。途中、水場もないため大量の水・食料・シュラフ等を抱えての登山です。このツアーではシェルパとしてネパールの方が一人随行されていたようですが、それでも登山者たちの荷物も相当な重さだったことでしょう。

レインウェアさえも通して吹き付ける雨風、その風速は20mもありました。最終日で疲労もたまっている上、ずぶ濡れで冷えた体の体温を暴風が奪い、体感温度は-10~20℃だったそうです。 ヒサゴ避難小屋からトムラウシ山方面に向かう道は、稜線歩きとなり暴風雨を避ける場所がなかったことも災いしました。ガイドの判断ミスも非難されましたが、そのガイド自身が錯乱状態に陥っていたようです。 トムラウシ山は人里から遠く離れているため、登頂には多くに時間がかかります。そのためトムラウシ山では2009年以前にも、夏山である7月に凍死するなどの事故が起きています。

トムラウシ山遭難事故から学ぶこと

トムラウシ山は、本州の北アルプス登山以上の防寒対策が大切です。地図・コンパスなど登山基本道具は当たり前ですが、加えて最低1日4リットル以上の水・食料、更にツエルト・非常食・GPSなど緊急時の用意も必須です。 そして何より大切なのは、天気が悪化したら引き返す勇気を持つことです。北海道の自然の脅威は、人間が敵うものではありません。自分の体力・状況をしっかり把握し、無理をしないようにしてください。

トムラウシ山の魅力

トムラウシ山の山野草


クモマユキノシタは、北海道のみで見られる高山植物です。中でも大雪山系で多く見られ、草丈10~40cmほどの可憐な花です。

エゾノツガザクラは、東北から北海道で見られる高山植物です。草丈は10~30cm、蝦夷地に咲くツガザクラということから、この名前が付きました。 他にもエゾノハクサンイチゲ、ダイセツトリカブト、エゾツツジ、ホソバウルップソウ、エゾコザクラなど、大雪山系で見られる花がたくさんあります。中には絶滅危惧種もあり、奥深い山だからこそ残っている貴重な高山植物たちです。

トムラウシ山の野生動物

トムラウシ山で是非逢いたい野生動物のひとつがエゾクロテンです。体長50cmほどの小さな体に、愛くるしく丸い目。エゾクロテンは北海道にのみ生息し、一時は絶滅が心配されましたが、最近はトムラウシ山から北で見かけられるようです。

こちらは、まるで野ネズミと間違えそうなほど小さなエゾナキウサギ。体長はわずか10~20cmで、ナキウサギの名前の通りに鳥のような甲高い声で「キィ」「ピィ」と良く鳴きます。こちらも生息地の激減で、絶滅危惧種に指定されています。

トムラウシ山の風景

トムラウシ山の最大の魅力は、そこに広がる風景です。お天気に恵まれれば、遠くまで見渡せる雄大な大雪山系、そして街の光が届かないため素晴らしい星空を見ることができます。目の前に広がる雲海、そして満天の星空、こんな景色が見られるのもトムラウシ山だからこそです。

朝になれば、朝日とともに雲間に漂う大雪山連峰の山脈が幻想的に広がります。まるで桃源郷に迷い込んだような錯覚を起こすほど、トムラウシ山には美しい自然があります。

トムラウシ山を登るための最低日数

トムラウシ山登山は最低でも4日必要

トムラウシ山登山は、本州から行く場合は最低でも4日かかります。1日目は移動日でトムラウシ山麓の温泉に宿泊し、2日目に早朝より登山開始です。最短距離のトムラウシ温泉登山口からでも片道6時間以上、相当の健脚者でもかなりハードです。 無理をせずに山頂近くの南沼キャンプ地でテント泊をするか、ヒサゴ沼まで行き避難小屋に泊まる方が無難です。そして3日目下山も6時間程度はかかりますので、そのまま温泉泊し翌朝帰宅になります。

トムラウシ山登山は、ツアー参加がベスト

滅多に登れないトムラウシ山に登山するのなら、ゆっくり自然散策もしてみたいですね。そのためトムラウシ山登山ツアーなどで一番人気は、旭岳方面からの縦走コースです。 このコースは遭難事故が起きたツアーと同じで、白雲岳避難小屋・ヒサゴ沼避難小屋に宿泊し、その後トムラウシ温泉に下山する2泊3日のコースです。そのため前後含めると最低でも5日かかります。夏の大雪山系は混み合うために、避難小屋も満杯の可能性がありますので、予備テントを用意しておいた方が良いでしょう。 慣れない超ロングコースのトムラウシ山登山、できたらプロのガイドさんが案内してくださるツアーがベストです。

トムラウシ山の登山ルート


トムラウシ山最短登山コースはトムラウシ温泉から

トムラウシ山への最短コース登山口は、トムラウシ温泉です。トムラウシ温泉登山口より約1時間でカムイ天上、そこから約3時間で前トム平、更に2時間でトムラウシ山山頂です。ヒサゴ沼避難小屋は、ロックガーデン・ヒサゴのコルを経由して更に3時間かかります。 登山上級者でも疲労困憊してしまう山ですので、できるだけ日帰りは避けましょう。ちなみにトムラウシ温泉は、新千歳空港からJRで新得駅まで1時間40分、更にトムラウシ温泉行の拓殖バスで1時間半、合計3時間半かかります。

一番人気登山ツアーは、旭岳からの縦走コース

トムラウシ山登山ツアーで一番人気は、旭岳温泉から登る2泊3日コースです。旭岳温泉に前泊し旭岳ロープウェイで標高1,600mまで登り登山開始です。 1日目は旭岳・間宮岳・北海岳とアップダウンを繰り返しながら、約6時間尾根歩きを楽しんで白雲岳避難小屋泊。2日目は忠別沼・忠別岳・五色岳と6時間半高低差のある稜線歩きを楽しみながらヒサゴ沼避難所小屋泊。 3日目の最終日は、トムラウシ山・前トム平・カムイ天上とトムラウシ最大の自然を楽しみながら約7時間で下山。お天気さえ良ければ最高の稜線歩きが楽しめる、まさに大雪山系縦走の登山ツアーですね。

トムラウシ山登山下山後の楽しみは温泉

トムラウシ山登山口、トムラウシ温泉

下山後の一番の楽しみと言えば、やはり温泉でしょう。大雪山系は火山地帯ゆえに温泉も豊富にありますが、トムラウシ山登山で一番のおすすめは、トムラウシ温泉でしょう。 登山口より約8kmのところにある国民宿舎東大雪荘は、秘湯料理も楽しめる公営旅館です。日帰り温泉も利用できますが、疲れた体をゆっくり癒すにはもってこいの宿です。国民宿舎のため、予約は6ヶ月前から受付しています。個人で申し込む場合は、お早めに予約してください。

国民宿舎東大雪荘

大雪山系縦走ルートの登山口・旭岳温泉

大雪山系縦走コースの登山口として人気なのが、旭岳温泉です。旭岳温泉は旭川空港からバスで約1時間、ロープウェイ山麓駅そばの旭岳ビジターセンターには公共駐車場も3ヶ所あります。 登山前泊として利用したい旭岳温泉には、ロープウェイ山麓駅から1kmの範囲に9軒の山荘・ホテルがあり日帰り温泉も利用できます。これから登る過酷な超ロングコースのために、ゆっくりと体を癒して登山に備えてください。

旭岳温泉街にある源泉かけ流しの宿 旭岳温泉での宿泊は大雪山白樺荘
旭岳温泉は大雪山国立公園内の旭岳の中腹に位置する温泉街。旭岳温泉街にある、源泉かけ流しの宿(ユースホステル)大雪山白樺荘は旭岳の四季折々の風景を間近に見ることができます。

トムラウシ山を安全に楽しみましょう

トムラウシ山は山を愛する方全てを魅了して止まない山ですが、軽い気持ちでは登れない山です。トムラウシ山登山を計画する時は、天気図をしっかりチェックし体調の把握、長期登山の準備を怠らないようにしてください。 そして天気の急変に備えて、避難コースや避難場所の確保もしておくことが大切です。何より無理をせず、天気が悪化した場合は、命のための撤退という勇気ある行動をしてください。 トムラウシ山登山の成否は登る人の体力・技量のみならず、天気が大きく左右することを忘れないでくださいね。