オトリギソウとは
オトギリソウ。漢字では弟切草と書くこの花は、なんとなく名前を聞いたことはあっても、詳しくは知らない・・・。という方が多いのではないでしょうか。 1997年にはスーパーファミコンで「弟切草」というゲームタイトルにもなりました。名前から受けるイメージの通り、恐ろしげな演出のゲームでしたが、実際はどのような植物なのかを、今回はご紹介していきます。 きっと見る目が変わりますよ。
科名
オトギリソウ科オトギリソウ属の多年生植物。
学名
Hypericum erectum Hypericumはhyper多過の+ereike荒地 erectumは直立した、直立する という意味です。
花名由来
和名は、オトギリソウ(弟切草)または、タカノキズグスリ(鷹の傷薬)、チドメグサ(血止め草)です。 和漢三才図会(わかんさんさいずえ)という18世紀の書物に、由来が紹介されています。 平安時代に晴頼という鷹匠がいました。 薬草を用いて鷹の傷を治すことで有名でしたが、薬草の名は秘密にして決して口外することはありませんでした。しかしある日、人のよい弟がその薬草の名を他人に漏らしてしまったのです。これを知った晴頼は怒って、弟を切ってしまいました。 そのときに庭に栽培していた薬草に弟の血潮が飛び散り、その跡が葉に残っており、オトギリソウの名がついたとされています。葉をみるだけでは黒点ですが、生葉をすりつぶしてみると赤紫~赤褐色の汁が出て、伝説を知っていれば血のように思えます。
オトギリソウ/花言葉・開花時期
花言葉
「迷信」「敵意」「秘密」「恨み」
由来
「秘密」「恨み」の花言葉は、兄が弟を斬り殺したという伝説に由来します。 「迷信」は、ヨーロッパに自生するオトギリソウの仲間、セイヨウオトギリ(セントジョンズワート/St.jhons wort)が魔よけに使われたことに由来します。 「敵意」は、ヨーロッパの伝説が元になっています。 サロメがヘロデ王の誕生日に舞を舞い、その褒美にヨハネの首を求めました。切り落とされたヨハネの首からふりかかった血で、葉に赤い斑点ができました。サロメがむけるヨハネへの敵意が花言葉になりました。
誕生花
6月24日 セイヨウオトギリ/セントジョンズワート/St.jhons wort 11月19日 オトギリソウ
開花時期
7月~8月
オトギリソウ/育て方・栽培方法
難易度
かんたんです。 もともと日本に自生している山野草なので、環境があえばほうっておいても生育します。
時期
花 期:7~8月 収穫:9~10月 種まき:2~3月 植え付け:5~6月 挿し木:4~6月 株分け:2~3月、9~10月
植え付け
5~6月に行います。苗が出回るのも、この頃です。 酸性の土を好むので市販の山野草用培養土を使うか、赤玉土7~8:川砂2~3か、7:鹿沼土3の割合で混ぜた土を使います。 日向~半日陰の風通しの良いところを好みます。
種まき
秋につく赤い実の中に入っているたくさんの細かい種は、こぼれ種で自然と増えていきます。 採取して育てるときは、すぐにまくか、乾燥させて2~3月まで保管しておきましょう。 実から種を取り出し、ばらまきにします。土が乾燥しないように水やりをして管理し、本葉が2~3枚になるまで生長したら、鉢か地面に移植します。
水やり
鉢植えは、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。 冬には地上部が枯れてしまいますが、時々水をやって乾燥しきらないように気を付けましょう。多年草なので、根が生きていれば、翌年には芽を出します。
肥料
春になったら、根元に緩効性化成肥料を置きます。
増やし方
株分け、または種で増やします。
場所
日向~半日陰を好みます。 夏のきびしい直射日光のときは、半日陰に鉢を移動させます。
植え替え
鉢植えは、根が鉢いっぱいになったら植え替えをします。3~4月が適期です。
収穫
切り傷や打撲といった外用に用いるにあたっては、生葉を適宜収穫します。 また、生薬として利用するには、8~10月の果実が成熟するころに地際から全草を刈り採り、その後は天日で干すなどしてしっかりと乾燥させます。
オトギリソウ/特徴
高さ20〜60cmにまで生育し、夏に小さな黄色い一日花をたくさん咲かせます。花の大きさは2センチほど、花びらは5枚です。 向かい合って生える細長い楕円形の葉を裏側から透かすと、表面に褐色の油点が見られます。これはヒペリシンという光作用性物質で、これを摂取した後に日光に当たると皮膚炎や浮腫を生じることがあります。
オトギリソウ/品種・原種
原産地
日本、中国、朝鮮半島
分布域
7月~8月
オトギリソウの効果・効能
花が結実した頃に全草をとって乾燥したものを、生薬の小連翹(しょうれんぎょう)と呼びます。 古くから民間療法に利用されてきました。現在でも販売されています。 外用・内服の両方に用いることができます。
購入の際の注意
*セントジョンズワートはオトギリソウの近縁ですが有効成分、効能が違いますので、混同しないよう注意が必要です。
効果・効能
名前(チドメグサ)のとおり止血作用のほか、鎮痛、鎮静、収斂、抗菌、月経不順の改善、抗鬱、血糖値抑制、ガン予防などの効能があります。 有効成分はセレン、タンニン、ヒペリシンです。 ヒペリシンは光作用性物質で、摂取した後に日光に当たると皮膚炎や浮腫(むくみ)を生じることがあるので使用の後には注意が必要です。
外用薬としての用い方
外用薬として用いるには、次のようにします。 ・生葉を適宜収穫して新鮮な葉からしぼり汁を取り、傷に塗布。 ・乾燥させたオトギリソウを煎じたもの(水300mlに大さじ1を加え、30分程度煮出す)をガーゼやコットンなどに浸して傷に湿布する。 止血、鎮痛、鎮静、収斂、抗菌作用がありますので、切り傷のほか、虫刺され、あせも、日焼けにも利用できます。
内服薬としての用い方
内服薬としては、煎じ薬とします。 ・オトギリソウを刻み、水300mlに小さじ1/2~1を加えて、煎じながら約半量まで煮詰めまて服用する。 月経不順や鎮痛剤としての効果が期待できます。 しかし煎じずに、ハトムギ茶などとブレンドして日ごろ気軽に飲むお茶として楽しむことでも、抗鬱、血糖値抑制、ガン予防といった効果を期待できますね。
オトギリソウ酒
オトギリソウを焼酎に漬け込んでおくことで、使いやすくなります。 《材料》 生の茎葉約200~300g(乾燥100~200) 35度ホワイトリカー1.8l 《作り方》 清潔なボトルに材料をを漬け込み、冷暗所に3~6ヶ月保存します。 以上です! 赤褐色の常備薬の完成です。外用にも、内服にもできますよ。
オトギリソウと俳句
オトギリソウは、初秋の季語として、俳句に詠まれてきました。初秋は陰暦での7月、新暦(現在)でも8月にあたります。 弟切草、おとぎりさう、おとぎりす、などです。現代の俳句を3句、ご紹介します。 弟切草 摘まず山路を 急ぎけり 宮平静子 山道の ぬたばのごとし 弟切草 上原富子 弟切草 摘めば鳴き過ぐ 山の鳥 青柳志解樹 いずれも、山野でオトギリソウを見かけた一瞬の印象を描いています。晩夏~初秋の緑の中に、明るい黄色い花が揺れている風景が見えるようですね。
まとめ
いかがでしたか? オトギリソウは身近な草むらなどに自然と生えている植物です。それが、こんなにもすごい力を秘めていました。名前の物騒さばかりが印象に残りましたが、効能にも注目ですね! 黄色い花だけでなく、赤い実も大変かわいらしく、室内に生けても素敵です。 夏に黄色い野の花を見つけたら、よ~く見つめてみましょう。オトギリソウかもしれませんよ! 皆さんのガーデニングライフが、一層豊かになりますように!