子どもの頃遊んだ「ひっつき虫」オナモミ。でも実は◌◌だった!?
ハリセンボンが膨らんだような形の「ひっつき虫」
子どもの頃、皆さんは「ひっつき虫」で遊んだ経験がありますか? 近所に藪や野原があった方は、もしかして、秋に緑色のハリセンボンが膨らんだような形の「ひっつき虫」で遊んだかもしれませんね。
ひょっとして見たことがないという方は「ひっつき虫」って何の虫?と思うかもしれません。「ひっつき虫」はゴボウやオナモミなど、服などにくっつく植物の実や種の総称をいいます。
ほとんどの素材の服にひっつきますので、友達とお互いの服になげて、ひっつけて遊んだ記憶がある方もいるかもしれません。 しかし我々がオナモミと思い込んでいた「ひっつき虫」が実は、オオオナモミの可能性が高いのです。 以下で見ていきましょう。
オナモミの特徴
ではオナモミの特徴について以下で見ていきます。
オナモミの子孫繁栄方法とは動物散布の付着型である
秋になると、植物は子孫を増やすために様々な方法で種子をまき散らそうとします。 下記に掲載しましたが、子孫反映のために、驚くべき方法で広がる工夫をしています。
【種子の様々なまき散らし方法】
★風に乗って運ばれる ①種子の一部が翼のように広がっていて枝から落ちるときに回転しながら飛びます。 イロハカエデ、マツ ②綿毛があり、風に乗ってと奥まで飛びます。 タンポポやススキの種子
★はじけて飛ぶ 実が熟した後に乾燥すると、刺激によってはじけ、中身の種子が飛び散ります。 カタバやスミレ、ホウセンカ
★鳥に食べられ運ばれ、糞として出される 実が鳥に食べられると種子は消化されずに糞として肛門からだされ、遠くまで子孫を広げます。 ヤドリギ、ナンテン
★転がって広がる 丸くて少し重量のある実は、落ちた後に少し木から離れたところで発芽します。 リスなどが食料として遠くに運び、残ったものが遠くで発芽します。 また、カケス(鳥)はドングリが好物で、丸呑みして運び、落ち葉の下に隠す習性がありそのうちいくつかは発芽します。 クヌギ、カシ
★動物の体にくっついて運ばれる べとべとした毛でひっつく ナメモミ 実の表面にあるいがのようなとげでひっつく オナモミ 実が下向きにつき、動物の体や人の衣服につきやすい イノコヅチ ですので、オナモミは、動物の体を利用して子孫繁栄をしているのですね!
オナモミの和名・英名、原産地など
ではオナモミの特徴について解説します。 ■和名・英名 オナモミ(葈耳、巻耳)学名:Xanthium strumarium ちなみに別名、雄生揉み(おなもみ)とも呼ばれます。 対して雌ナモミがあるのですが、両者は、同じキク科でもまったく属の違う植物です。 見た目のイメージから、雄、雌とつけられたと言われています。
共通点としては、両者とも生葉をもんで、虫刺されの箇所にぬると症状が緩和される薬草にされることです。 一説では、生葉を揉んで患部に貼る由来から生揉む(なもむ)とされたそうです。
■キク科の一年草 ■高さ50~100cm ■開花時期 8~10月 ■オナモミはアジア大陸原産。 日本へは古代にはいってきました。 ↓雌ナモミ(めなもみ)全く違う属ですが、名前の由来としてご参考ください
身近に実用化されているオナモミ
オナモミはマジックテープのヒントになった?
さて、カバンや靴など日常生活によく使われているマジックテープは、実はオナモミの仲間(ゴボウ)の実がヒントになって発明されたのです。
スイス人の発明家ジョルジュ・デ・メストラル(George de Mestral)が、1941年にアルプス登山の際、自分の服や飼い犬の毛についた「引っつき虫」がなかなかとれなかったという経験から、ヒントを得て、実用的なものに発展させたのです。 オナモミの存在が日常生活の役立つものへの発見へとつながったのです。
漢方にもオナモミが!?
オナモミは漢方で使われているのを知っていましたか? 果実は漢方で蒼耳子(そうじし)といいます。 ■漢方での主な効能 解熱、発汗、頭痛薬 また、その葉っぱを揉んで虫刺されで腫れた箇所に塗ると効用のある薬草です。 風邪・蓄膿症(ちくのうしょう)、神経病に薬用されています。
オナモミが絶滅危惧種!?
以上、オナモミについて見てきましたが、私たちが「ひっつき虫」と思い込んでいたオナモミが、実は、要注意外来生物であるオオオナモミ(外来種)だった可能性もあるのです。 実は、史前帰化植物であるオナモミが絶滅危惧種になっているのです。
環境省は「絶滅の危険が増大している種」=(絶滅危惧II類)と呼んでいます。 オナモミがII類として掲載されたのは、2007年の第3次レッドリストでした。 これは、約5年おきに見直されますが、2012年の第4次にも掲載されています。
オナモミとオオオナモミの見分け方
見分けが難しいオナモミとオオオナモミ。 どのようにして区別するのでしょうか?以下見ていきます。
オオオナモミとは?
■北アメリカ原産 ■和名:大葈耳 学名:Xanthium occidentale ■キク科オナモミ属の一年草 ■1929年に岡山県ではじめて見つかった。現在では各地に広く帰化している。 では以下でオナモミとオオオナモミの見分け方を詳しく解説します。
果包に違いがある?
果包の違いを細かく見ていきます。 【オナモミ】 果包 ■付き方 果包は少ない。互いに離れて着く。 ■大きさ 0.8~1.4×0.6~0.8(cm) ■色 熟すと黄緑、灰褐色 ■トゲ まばらに生え、長さ1~2(mm)
【オオオナモミ】 ■付き方 果包は接っしながらつく。 ■大きさ 1.8~2.5×1~1.8(cm)←オオオナモミということだけあり、オナモミより大きいのがわかります。 ■色 熟すと褐色←色も黄緑ではありません。 ■トゲ 密に生え、長さ3~6(mm)←トゲの長さに大きな差があります。
オナモミは毛が多く、棘が短いので、オオオナモミに比べて動物や人間の服にくっつきにくいので分散しにくいのが特徴です。 ↓下記、色の違いをご覧ください。上がオナモミ、下がオオオナモミです。
↓オナモミ。色が黄緑色ですね。
↓オオオナモミ。上のオナモミと比べるとずいぶん色が違います。
葉の形状や色が違う?
【オナモミ】 葉はやや大きく3から5裂し、葉緑のギザギザは尖らない。淡緑色で、成熟すると断面は三角形。 【オオオナモミ】 多くは3裂し、ギザギザは尖る。植物体が成熟すると、褐紫色になり、断面は五角形。
茎の見分け方は?
【オナモミ】 淡緑色 【オオオナモミ】 植物体が成熟すると、褐紫色になることが多い。
まとめ~大きな見分け方は、果包にあった
ここまで見てきましたが、大きな見分け方は、果包に大きな違いがありました。 オオオナモミは、オオ=大とつくことで、オナモミよりも、果包の大きさも、トゲの長さも全体的に大ぶりの印象があります。
オオオナモミはオナモミの約1.5~2倍の大きさで、成熟した果包は、オナモミが黄緑色に対して、オオオナモミは褐色なのですね。 ということは、私たちがオナモミと思い込んで遊んでいた「ひっつき虫」は、
オオオナモミだったのか!と本当の正体がここで判明されたかと思います。 滋賀県立大学の高倉耕一准教授(個体群生態学)によると、西日本では1960年代には姿を消したとみられ、その減り方も急だったそうです。
また、外来種が増えた結果、両者が近くにあると、互いに種が出来にくくなることがわかったそうです。 確かに最近みかけた「ひっつき虫」は、繊細な感じ出なく、厚かましいほど大ぶりだったかのような印象をうけました。
子どもの頃に遊んだ「ひっつき虫」は、もっと小ぶりで針も繊細な印象がありました。 最近見かけた「ひっつき虫」をてっきりオナモミだと思っていたものが、オオオナモミだと判明した今、少なからずショックを感じています。