はじめに
アジサイの魅力は、小さな花(実際は萼)がよりあつまって、手まりほどの大きさになる華やかな姿。 そして咲き始めの黄緑から、紫、青、水色、あるいはピンクへと、にじむように、移り変わる色です。 色ごとに花言葉が違い、ポジティブとネガティブの両方の意味があるので、プレゼントやセレモニーの際には注意が必要な花と言われてきました。 一つ一つご紹介していきます。
アジサイの花言葉(1/5)。白
「寛容」 アジサイの花の色の中でも、白花には、青やピンクに変化するための色素をもちません。 そのため、「どんなでも受け入れる、心の広さ」という意味の「寛容」という花言葉を持ったのでしょう。 また、英語では 「純潔」 「優美」 「裕福」 「自慢する」 という意味もあります。気高いイメージがありますね。
アジサイの花言葉(2/5)。ピンク
「元気な女性」 「強い愛情」 英語では、 「ロマンス」 「心のこもった感情」 「愛情」 「結婚」 アジサイの花の色は、土壌が酸性かアルカリ性かで決まります。酸性だと青に。アルカリ性だとピンクに色づきます。ヨーロッパではアルカリ性の土壌が多いため、ピンクのアジサイがよくみられるそうです。
アジサイの花言葉(3/5)。青、青紫
「無情」 「高慢」 「あなたは美しいが冷淡だ」 「辛抱強い愛情」 青、青紫は、酸性の土壌の日本でよく見られる色ですね。 青という色の冷たい印象からでしょうか。ネガティブな花言葉になっていますね。 「辛抱強い愛情」は、花期の長さから連想されています。
英語では、上記のほかにも 「ロマンティックな申し出を断る」 「許しを求める」 「後悔を表現する」 という意味もあります。 その由来として、日本のものとされる伝説があります。 「ときの帝が寵愛した乙女がいた。しかし、帝は仕事に忙しく、彼女をほったらかしてしまった。そのお詫びとして、アジサイの花束を乙女に贈った」というもの。 しかし、日本の伝説にそのようなエピソードを見つけることはできませんでした。伝播の過程で他の国の話が混ざったのかもしれないと思うと、面白いですね。
アジサイの花言葉(4/5)。ガクアジサイ
「謙虚」 日本の原種、ガクアジサイ。 中心に小さなつぼみが集まっています。その周囲を花(実際は萼)がぐるりと囲む様を、額縁のようだということで、ガクアジサイと名づけられました。 たしかに、控えめで、かわいらしい花といえますね。 今では八重咲きの品種も作出されています。コンペイトウという品種です。
アジサイの花言葉(5/5)。花姿
「一家団欒」 「家族の結びつき」 「辛抱強い愛情」 小さな花が寄り集まって咲く、その姿から家族の結束を連想しています。 この花言葉は、最近になって広まったものです。
プレゼントやセレモニーには、この色がおすすめ!
白花は結婚式にぴったりです。 ピンクと組み合わせれば、かわいらしく愛情豊かに。 青と組み合わせれば、花嫁に必要な「サムシング・ブルー」の要件を満たす素敵なブーケになります。 ジューン・ブライドは、アジサイがもっとも花盛りを迎える頃です。 ピンクの花は、母の日のプレゼントに。 お母様にはいつまでも元気でいてほしいですし、丁度花期を迎える頃です。 青や青紫の花も、結婚記念日に相応しいですね。 アジサイはぜひ鉢植えでプレゼントしましょう。育てやすく、花を長い間楽しめます。 花屋さんで切花として売っていることは少ないですが、もしもあなたのガーデンに咲いているのならば、ブーケをつくっても素敵です。大きな葉も一役買って、ほんの3枝ほどですばらしいボリュームのブーケになります。
アジサイ/科名・属名
アジサイ科アジサイ属。
アジサイ/和名・英名
和名はアジサイ。 英名はHydrangea(ハイドランジア)。
アジサイ/原産地
原産地は日本です。
アジサイ/花名由来
語源ははっきりしていません。 最も有力なのは、「藍色が集まったもの」という意味の「集真藍(あづ・さ・あい)」が訛ったものであるという説です。 日本最古の歌集である万葉集にアジサイを詠んだ歌が二句あり、「味狭藍」「安治佐為」という字が当てられています。 今使われている「紫陽花」の字は、中国でおそらくライラックを示した言葉が、平安時代に間違って日本に紹介されたためとされています。たしかに、ライラックは明るい紫色ですね。
英名のハイドランジアとは、ギリシャ語で水の器を意味します。 アジサイの根が水をよく吸収することから名づけられました。
アジサイ/花言葉由来
ヴィクトリア期イギリスでのアジサイ
花言葉、という文化自体はヨーロッパのものです。特に19世紀のイギリス(ヴィクトリア期)に本が発行されるなど、大変なブームが起きました。 また、当時はジャポニズムもブームとなりました。日本の文化が広められたのです。浮世絵や日本画だけではなく、園芸大国日本のアジサイもその頃に西欧に伝えられました。 アジサイは東洋のバラとして歓迎され、品種改良を重ねて日本に逆輸入されました。それが今親しんでいる手まり咲きの品種の多くです。 アメリカアジサイ「アナベル」は西洋のものだとご存知でも、今ある多くのアジサイが「西洋アジサイ」に分類されるという事実は驚きですね。 ヴィクトリア期の人々は、貞淑を重んじたのでしょう。華やかで、色の移ろうアジサイを、「移り気」なものと捉えたようです。独身の女性のいる家の庭にはアジサイを植えるべきではない、女性のイメージが悪くなって婚期を逃してしまう、などといわれたそうです。
日本でのアジサイ。実は冷遇されていた
一方で日本では、長年注目されることのない花でした。 8世紀の万葉集にも、たったの2句があるのみです。 平安時代には和歌に詠われることが増えましたが、4枚の花びらを「よひら」と呼ぶのが「宵(よひ)」に通ずるとして、アジサイの美しさを詠うというよりは、「宵」を導く演出として用いられました。 安土桃山時代には、狩野永徳により描かれました。 江戸時代には、絵に描かれることも増え、川柳や俳句に多くとりあげられています。 大正時代になって海外で品種改良されたアジサイが輸入されましたが、大いに注目されるようになったのは、なんと第二次大戦後のことでした。 今ではどこにいっても見ることのできるアジサイですが、こんなに愛されるようになったのはつい最近のこととは驚きですね。
アジサイ/誕生花
6月3日 7月13日(ガクアジサイのみ)
アジサイ/開花時期
5~7月が開花時期です。 日本では梅雨の頃です。 海外では梅雨がありませんので、からりとした初夏の頃に咲きます。 雨露に濡れて咲く姿、というイメージは日本だけのものということになりますね。
また、秋色アジサイというものもあります。 秋になっても枯れかかった花を刈り取らずにおいておき、色あせたり、ドライフラワーのようになったものをそう呼んでいました。 最近では、より美しく退色する品種が作出され、それらを秋色アジサイとよんでいます。 西安 クリムゾン フェアリーアイ カメレオン などです。 セピアがかった深い色に、アジサイの新しい魅力を感じます。
四季咲きのアジサイも存在しています! 霧島の恵みという品種です。 花期は3~7月、9~11月と冬まで楽しめます。
アジサイ/その他
アジサイを詠んだ句をご紹介
アジサイを詠んだ句を3つご紹介します。 (1)万葉集 「あぢさゐの 八重咲くごとく 八つ代にを いませわが背子 みつつ偲はむ」 橘 諸兄 アジサイが幾重にも群がって咲くように変わりなく、いつまでもお健やかでいてください。私はこの花を見るたびにあなたを思い出しましょう。 この句では、アジサイは繁栄の象徴として詠われています。 (2)古今和歌六帖 「あかねさす 昼はこちたし あじさゐの 花のよひらに 蓬ひ見てしがな」 詠み人知らず 昼は人目が多く噂がうるさいので、人目の少ない宵に会いたいものです アジサイの4枚の花びらを「よひら」とし、「宵(よひ)」を導いていますね。きっと恋人に贈った歌なのでしょう。 (3)松尾芭蕉 「紫陽花や 帷子時の 薄浅黄」 自分の着ている帷子(一重の浴衣のようなもの)の薄い藍色と、アジサイの色とが似ている。アジサイは夏に向かって色をだんだんと濃くして行くのに、自分の着物はだんだん白っぽくなっていく。 通り過ぎる一瞬を句にしています。
おわりに
いかがでしたか? アジサイの色と花言葉をご紹介するうちに、歴史探索に至りました。 古来より、日本人と関わりのあるアジサイですが、現在ほど愛される時代はありませんでした。 秋色アジサイのように、新しい色調を愛でる動きも出てきており、アジサイと私たちとの関わりが今もなお変化しているのを感じます。 花言葉が、皆さんとアジサイの関わりをより良いものにしますように!