かいわれ大根は、再生栽培できますか?
細長い茎に、小さな二葉を広げる「かいわれ大根」。ぎゅうぎゅうに詰まっている様子をよく見ると、とても可愛らしいものです。 上の部分を切り落とした後に「まだ生えてくるんじゃないか」と、再生栽培を試みた経験はありませんか?
普段は、わき役でお料理を引き立ててくれますが、今回は「主役」になってもらってじっくり考えてみましょう。
かいわれ大根の再生栽培は不可能に近い?
結論から言うと、残念なことにかいわれ大根の再生栽培は不可能に近いです。 理由は、種に蓄えられている養分だけで育っていることが関係します。一般に、成長したものが市販で出回っているかいわれ大根は、その種と水だけから養分を吸い尽くし、成長しきった状態のものだからです。
かいわれ大根の成長点は二葉のすぐ上の方にありますので、切るとそこで成長はストップされてしまいます。 こういった理由からも、再生栽培での収穫は期待できません。 (成長点とは、これから葉や花びらが生まれてくる場所を指しています)
かいわれ大根を再生栽培してみたい!
いずれは捨ててしまうから実験的にチャレンジされる時には、少し上の方でカットして様子を見てみるのも良いでしょう。残っている種から「もしかしたら」発芽するかもしれません。
可能なら、小さな植木鉢に植物用の土を入れて育て、そこに根付けば、土からの養分も補強されますので成長の確率はアップします。
しかし、市販の成長しきったかいわれ大根は種も小さく、出回る時点で養分を使い切っています。 発芽する率はとても低く、残っていた種が発芽しても、元気の良いかいわれ大根の収穫は望めないため、再生栽培はおすすめできません。
スプラウトって何?
「スプラウト」という総称でよく見かける、植物が成長する前の小さな芽のような野菜があります。 英語で「芽生え」のことを「The action of sprouting」と言いますが、スプラウトは、野菜が「芽生えた状態」と捉えることが出来ます。
かいわれ大根もスプラウトです。 言ってみれば「野菜の赤ちゃん」で、ブロッコリー、レッドキャベツ、豆苗、蕎麦など、店頭には多くの種類が並んでいます。
かいわれ大根(スプラウト)の栄養価
「野菜の赤ちゃん」であるスプラウトは、成長した野菜に比べても栄養価が高いことで知られています。 これから大きな野菜に育っていくための十分な養分を一粒の種に、小さな芽に、ギュッと蓄えているためです。 どんな栄養が、含まれているのでしょうか。
・ビタミンB1=糖質の代謝を助け、疲労回復に役立つ。 ・ビタミンB2=皮膚や粘膜の機能維持や成長に役立ちます。 ・ビタミンK=カルシウムを骨に取り込む働きがあり、骨粗鬆症の治療薬としても使用されています。
・ビタミンC=抗酸化作用。ストレスを和らげ、免疫力を高めます。 ・ビタミンE=強い抗酸化作用によって、血行の促進、血管や細胞、皮膚の老化を防ぎます。
・ビタミンB6=ホルモンのバランスを整える働きがあり、皮膚や粘膜の健康を維持して、アレルギー症状を緩和し ます。 ・ナイアシン=脳神経を正常に働かせるのに役立ちます。
・パントテン酸=動脈硬化予防。ストレスを和らげます。 ・葉酸=細胞の生産や再生、赤血球の形成を助けます。妊婦の方にも欠かせない栄養素です。
・カルシウムやリン、マグネシウム=骨や歯の形成に不可欠です。体内酵素の働きを高めて、血液の循環を正常に保ちます。 ・カリウム=疲労回復や利尿作用、高血圧の予防に役立ちます。
・メラトニン=抗酸化作用。睡眠の質や生活リズムを改善します。 ・βカロテン=抗酸化作用。ダメージを受けた細胞を修復し、動脈硬化やガンの発生を抑えます。 ・鉄=貧血予防。酸素と栄養を細胞に届けるヘモグロビンにとっては必要不可欠です。
・イソチオシアネート=かいわれ大根の辛み成分で、がん予防効果が期待されます。 ・ジアスターゼ(アミラーゼ)=消化促進酵素です。加熱すると壊れやすいので生食をおすすめします。 ・オキシダーゼ=たんぱく質と脂質の消化を促進します。これも過熱に弱いので生食をおすすめします。
かいわれ大根を種から育てましょう
かいわれ大根の再生栽培は、なかなか難しいので「種から」育てる水耕栽培をご紹介します。 撒くまでにひと手間が必要ですが、撒いてからは成長は早いので、収穫の日まで毎日観察することが楽しく感じられます。
かいわれ大根の育て方|ポイント①
かいわれ大根を種から育てるポイントを10項目でお伝えします。
水耕栽培する最適な気温は?
一年中、出回っているかいわれ大根ですが、ご家庭で種から育てるとなると季節や気温も大切です。 栽培に適した気温は「20℃~25℃」ですので、春や秋に始められると良いでしょう。
20℃を下回ると発芽に時間がかかったり、25℃を超えると水や種を腐らせたりする原因になってしまいます。 こういった理由から、特に真夏や真冬は避けた方が良いといえます。
かいわれ大根の育て方|ポイント②
店頭で売られている水耕栽培の野菜は、根の部分にスポンジが付いていることがあります。 スポンジは根も絡みやすく、水の含み・水はけ共に良いので管理しやすい点でも、おすすめの苗床です。
水耕栽培で必要なものは?
水耕栽培は、種以外はご家庭にある物を使って、簡単に始めることが出来ます。 ・かいわれ大根の種 ・容器(ペットボトル、プチトマトなどが入っていたプラ容器、コップ、トレーなど)
・苗床になるもの(スポンジ、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、脱脂綿など) ・水 ・ザル状のもの(水を交換する時に、種を載せたスポンジなどの水を切るのに使います)
ペットボトルは、簡単でお世話するのにも便利なので水耕栽培に向いています。 ①ペットボトルを半分に切る ②キャップの付いていた上半分を逆さにし、飲み口の大きさにはまるほどに切ったスポンジを飲み口部分にはめ込む
④下半分の中に水を入れる(上半分の飲み口にセットしたスポンジの下が、ぎりぎりに付くくらいの位置まで) ④下半分に、逆さにしたままの上半分を重ねてセットする
かいわれ大根の育て方|ポイント③
種はどんなものを選ぶの?
ホームセンターや、スーパーマーケット、園芸店などにある「スプラウト専用の種」を使用してください。 インターネットや、雑貨屋さんでも購入できる「かいわれ大根の栽培キット」を一度購入して使用されるのも便利です。 後に、かいわれ大根やスプラウトを育てるときに、種だけを用意すれば、何度も水耕栽培が楽しめます。
水耕栽培する前に種にしておくこと
かいわれ大根の種が手に入ったら、さっそく水耕栽培の準備をしましょう!
スプラウト専用の種として、袋などに入っている種は「休眠状態」にありますので、起こしてあげる作業が必要です。 コップなどの容器に水を注ぎ、種を漬けます。こうすることで種が休眠から目を覚まし、発芽しようと動き始めます。
最後に、ガーゼや、穴をあけたラップ、アルミホイルで蓋をして「6時間くらい」放置しておきます。 長くおくと腐れの原因になるので気を付けましょう。目安は「一昼夜」です。
かいわれ大根の育て方|ポイント④
発芽するまでの管理は?
水に漬けていたかいわれ大根の種を、取り出します。 トレーなどの容器に、湿らせたスポンジや、折りたたんだキッチンペーパーなどを敷いてから、種をその上に均等に並べます。この時に、種が重ならないように注意してください。
・「大きく膨らんでいる種」を選ぶこともポイントです。 その上から、日光を避けるためにアルミホイルで蓋をします。ちょうど良いサイズの箱などあれば、それをかぶせても良いでしょう。
かいわれ大根の種は「暗発芽種子」や「嫌光性種子」と呼ばれていて、ある一定時間以上を暗い場所で過ごさせることで、発芽を始めます。 この理由から、種を発芽させる際には、日光を避けることが大切です。
容器にアルミホイルなどで蓋をした後は、できるだけ日光の届かない暗い場所で管理しましょう。 気になっても、蓋を開けるのは我慢です。2~3日ほど経ってから蓋を開けるようにしましょう。
かいわれ大根の育て方|ポイント⑤
2~3日経ってから、容器の蓋を開けた後は、かいわれ大根の水耕栽培のスタートです。 ここから、収穫できるようになるまでの期間は「ほぼ一週間」です。 短い間ですが、成長の過程をしっかり見守りましょう。
水耕栽培、水やりの方法は?
蓋を取ってからは、種が載っているスポンジなどの苗床が、乾いてしまわないように管理していきます。 水やりをする前に、容器の中の古い水は捨てて、スポンジなど苗床の水も出来るだけ更新するように心がけます。
容器からスポンジなどの苗床を、そっと外して「ザル状のもの」に置いておくと水を切るときに便利です。
水は、毎日交換しましょう。
種から、数ミリほどの芽と根が出てきていると、嬉しくなります。 水やりは、種が流れてしまわないように気を付けながら、上から洗い流す気持ちで行います。
苗床にスポンジを使っていれば、キッチンペーパーや脱脂綿に比べて、水はけも良いので、この作業が楽にできるでしょう。
ポイント②でご紹介したペットボトルを使用されている方は、種の載っている上半分をゆっくり外して、種が落ちないように静かに水をかけます。この時に、下半分に入っている水も交換します。
かいわれ大根の育て方|ポイント⑥
水耕栽培に最適な置き場所は?
発芽するまでの種は日光を避けていましたが、芽が伸びて5~6cmほどになれば、日光が必要になってきます。 室内の風通しが良く、柔らかな日光が注ぐ場所が最適です。室温にも注意しましょう。
かいわれ大根の育て方|ポイント⑦
水耕栽培で失敗を防ぐ工夫
成長する途中で、管理が不十分だと、水や、かいわれ大根が腐ってしまうことがあります。 こうした失敗を防ぐ為にも「風通し」を良くしておくのは大切です。 プラスチック製のかごの中に、排水溝用のストッキングタイプのネットを張るなどして容器に工夫することもできます。
水耕栽培ではありませんが、種を水に漬けた後に鉢植えにすることで、しっかりと根が張り、育てやすくなります。水はけの良い土に植えて、水は表面が乾いてからあげるようにします。
かいわれ大根の育て方|ポイント⑧
カビ発生?種の周りに白いふわふわが!
発芽や発根を始めたころに、苗床に白くてふわふわしたものが目立つことがあります。 初めて気付いたときには、カビのように見えて驚かれるかもしれませんが、大丈夫です。 これは、「根毛」といって、根から生えている産毛のようなものです。植物は、この根毛から水や養分を吸って成長しているのです。
上の写真のように、大半の植物には太くなった根の中間あたりから、ふわふわとした根毛が生えています。 とても繊細なので、かいわれ大根が収穫できるようになるまでは、なるべく触らないようにして観察しましょう。 苗床から異臭がしたり、黒ずんできている場合は、本物のカビや腐れの可能性があります。
かいわれ大根の育て方|ポイント⑨
日光浴は必要なの?
二葉を付けると、そこから光合成が始まりますので、昼間は日光にあてましょう。 戸外などで直射日光にあてると、苗床のスポンジなどが乾いたり、かいわれ大根自体が日焼けして弱ってしまいます。
そうならなくても、日光に必要以上にあたり過ぎたかいわれ大根は、えぐみや辛味が強く出る傾向もあります。 天気の良い日の午前中など、少しの間であれば、庭やベランダの直射日光を避けられる場所で日光浴させてあげても良いでしょう。
かいわれ大根の育て方|ポイント⑩
収穫できるようになったら
発芽して1週間が経つ頃には、収穫が出来るほどに成長しています。 必要な時に、必要な量だけを収穫できるのも、かいわれ大根を自家栽培したメリットといえます。
収穫できたかいわれ大根は、和・洋・中どんな料理にも、いろどりと栄養を与えてくれます。 種から収穫に至るまで、大事に見守ってきたかいわれ大根は、一味も二味も違うものです。
リボベジ(再生栽培)にも挑戦しよう!
リボベジって何?
最初に「かいわれ大根の再生栽培」についてお話ししましたが、一度食べられる部分を、切り取った残りの野菜の芯などから、また芽が出てくることがあります。 ・「再び生まれる」、英語で「Reborn(リボーン・生まれ変わる)」ということから、 「リボーン・ベジタブル」となり、略称して「リボベジ」と言われています。
昔からこういった光景は良くありましたが、節約できて収穫の喜びも味わえる「リボベジ」として、現在も多くの方から脚光をあびています。
リボベジの育て方を知りたい!
料理の際に、残った野菜の芯の部分を捨てずに取っておきます。「リボベジ」を行う場合は、根元部分を多めに残しておくことがポイントです。
リボベジ(再生栽培)できる野菜
・豆苗 ・ねぎ(小ねぎも含む) ・水菜 ・小松菜 ・チンゲン菜 ・大根 ・人参 など
キャベツやレタスも、成長点が残っていれば再生します。
葉物野菜の他にも「えのきだけ」まで再生することもあります。
葉物野菜の育て方(水耕栽培)
これまでお話ししてきた「かいわれ大根の水耕栽培の方法」は、葉物野菜で「リボベジ(再生栽培)」する際にも役に立ちます。 この場合も、野菜が水に浸かり腐ってしまわないように、水に当たる部分は、根元ギリギリの辺りを保てるように工夫が必要です。
野菜に対して、容器が大きいときは、つまようじや串をさして固定する方法もあります。 風通し良く、柔らかな日の当たる場所に置き、それぞれの野菜の適温に気を付けながら育てます。 毎日、水を換えることも忘れないで下さい。
容器を工夫しておしゃれなインテリアにも!
根が生えて、野菜の状態が安定すれば、容器をお好みのものに代えておしゃれな「インテリア」のように育てることもできます。
ジャガイモや、サツマイモなどは、実を収穫することは出来ませんが、葉がワイルドに育つので「インテリア」向きと言えます。 あなたも、種から育てる「かいわれ大根(スプラウト)」や「リボベジ」で、育てること、おうちの中で収穫できる喜びを、じっくり味わってみませんか。