クリスマスローズの土 12リットル
クリスマスローズとは?
花が少なくなる1月から4月頃まで、白・ピンク・赤・紫とひときわ目を引くクリスマスローズは、キンポウゲ科ヘレボルス属の多年草です。 ホームセンターなどの園芸店では、必ず見かける苗のひとつです。 15種類ほどの原種と交雑種全体を、日本では総称としてクリスマスローズと呼んでいます。 ただ、ヨーロッパではヘレボルス属の中でもニゲル種のみクリスマスローズというので、注意が必要です。 強い耐寒性があり、寒冷地でも外で越冬します。 耐暑性はやや弱いですが、本州でも木陰で管理すれば、十分暑い夏をやり過ごすことができます。 冬の園芸品種として、今や欠かせないアイテムのひとつとなっています。 鉢でも地植えでも元気に育ちます。 育て方も難しくありません。 今回は、押さえおきたいクリスマスローズの6つ基本情報を紹介します。
①クリスマスローズの原産地はどこ?
日本人好みの控えめな花を咲かせるクリスマスローズですが、原産地はヨーロッパから西アジアにまたがる地域となります。 明治時代にはすでに日本へやってきていましたが、当初は薬用植物として植えられていました。 ヨーロッパでは根や茎に含まれる毒成分を利用し、狩りなどを行っていたようです。 また、これらの成分は少量なら精神を安定させる作用があります。 下向きに咲く風情が茶花として趣があるということで、その後茶席で用いられるようになり、ニゲル種などに初雪おこし、オリエンタリスに寒シャクヤクという和名がつけられました。 後年イギリスで育種が進み、多様な種類の花が生み出され、育て方も確立、絶大な人気を得ていくこととなります。
クリスマスローズの名前の由来
ヘレボルス属の中でニゲル種が早咲きで、イギリスではクリスマスの頃に咲きます。 そこで、クリスマスの季節に咲くバラ、クリスマスローズと名付けられたようです。 園芸店や通販などでは、正しい呼び名であるヘレボルスとして苗が販売されていることも多いです。 ちなみに、ヘレボルスの由来は、ギリシャ語の「殺す」「食べ物」を合成した言葉と言われています。 ただ、日本ではクリスマスに咲くことはほとんどなく、本州などでは1~3月頃、北海道などの寒冷地では雪解け後の3~4月頃に開花します。
②クリスマスローズの花言葉
クリスマスローズにはいろんな種類があり、様々な色や形がありますが、花言葉は共通しています。 昔の人がクリスマスローズにこめた思いが溢れる花言葉を紹介します。
花言葉“私の不安を和らげて下さい”
“慰め”“いたわり”という花言葉もあります。 古代ギリシャで、クリスマスローズの成分を精神安定剤として使用していたことから生まれた花言葉のようです。
花言葉“私を忘れないで下さい”
同じような意味合いで、“追憶”という花言葉もあります。 中世ヨーロッパで、戦場へ赴く騎士に恋人がクリスマスローズを贈ったことに由来しています。
花言葉“中傷”
根や茎に毒があることにちなむ花言葉のようです。
③クリスマスローズの種類
ヘレボルス属の原種には、大別して有茎種と無茎種があります。 これらを人工的に交配して、多くの園芸品種が生み出されました。 形質が固定してないものが多く、ほとんどの交配種は一株ごとに微妙に異なるという特徴があります。
オリエンタリス系
無茎種同士の交配で生まれた品種の総称です。 ガーデンハイブリッド、ヘレボルス・ヒブリダスとも呼ばれます。 丈夫で育て方も難しくないことも特色と言えます。 最も交配が進んでおり、その多様性は、バラエティーに富んだ花色や花姿となって愛好家を喜ばせています。 以下に挙げる花色と花形での組み合わせで、いろんな種類のクリスマスローズを楽しめます。
花色
黒系:珍しい色合いです。 紫系:一番多いタイプのひとつ。人気です。 赤系:ピンクや紫に寄ることが多いので、本当の赤は貴重。 アプリコット系:新しい花色です。人気品種。 ピンク系:色幅が広く、個体も出回っています。 緑系:濃い緑は珍しい。 黄色系:非常に数が少ない色合いです。 白系:地色が白でピコティやスポットが多い。 バイカラー系:2色混じっているタイプ。
花形
シングル、セミダブル、ダブルの花形があります。 また、花弁の形が丸いものや尖ったものがあります。
有茎種間の交配種
有茎種の交配種は、近年次々と登場しています。 ニゲルコルス、ステルニー、バラーディアエ、エリックスミシーという種類があります。
原種系
地中海沿岸地方から西アジアにかけて、15種類の原種が確認されています。 クリスマスローズの名前の由来となったニゲルも、原種のひとつです。 また、オリエンタリス系の交配種は、オリエンタリス・アブシャシクスといいます。 やはり、無茎種と有茎種で分類することができます。 一部の原種の栽培は、気候が合わず育ちが悪いケースがあるようです。 原種により好む環境も異なるので、植え替えや植え付けの時は栽培に適した環境を整えましょう。
④鉢を使ったクリスマスローズの育て方
クリスマスローズは、鉢でも地植えでも栽培することができます。 植え替えなどのこまめな管理や、増やしたいと思っている人には、鉢栽培がおすすめです。 そこでまず、鉢での育て方を紹介します。
苗を選ぼう
好きな花色や花形を栽培したいのであれば、開花している苗を購入しましょう。 ラベルだけの花の付いていない苗は、もしかしたらイメージと違う花が咲くかもしれません。 1~4月にホームセンターや園芸店で購入できます。
鉢を選ぼう
深く根が伸びるので、深さのある鉢が向いています。 また、排水性も大事ですが、保水性も重要なポイントです。 双方を満たすのは難しいですが、どちらかを損なうと育て方も大変になってきます。 鉢の種類もたくさんありますが、素焼きだったら保水力のある土を、テラコッタ、プラスチックであれば排水性のある土と組み合わせて選びましょう。 また、テラコッタ、プラスチックは夏場に土中の温度が上がりやすいので、置く場所も気を付けなければなりません。
どんな土がいい?
先述したように、保水性と排水性を兼ね備えた土が理想です。 基本は、赤玉6、腐葉土3、軽石1です。 ただし、本州の都市部のような夏の暑さや湿度が高いところで栽培する場合、赤玉の割合を高めるなどをして、より水はけの良い土を作るといいでしょう。 原種の多くは石灰質の土地で見られるようですが、必ずしもアルカリ性の土である必要はないようです。
クリスマスローズ専用の土
クリスマスローズの土 12リットル
クリスマスローズ専用の土は、ホームセンターや通販などで簡単に手に入ります。 初めて栽培する人などは、気軽に使うことが出来ます。 種類も豊富です。
肥料は?
マグアンプ等の緩効性の肥料を、あらかじめ土にまぜておくといいでしょう。 窒素・リン酸・カリの割合が、10-15-10程度の物があっています。 あとは適宜、液肥で管理します。 ただ、気温が高くなる6月から9月にかけて、クリスマスローズは半休眠状態となり、あまり肥料を吸い上げません。 この時期に濃い肥料をあげてしまうと、肥料やけをおこしてしまうので、気をつけたいです。
クリスマスローズ専用の肥料
肥料もクリスマスローズ専用の商品が何種類も販売されています。 使用方法をしっかり確認して施肥するようにしましょう。
植え替えの季節
植え付け、植え替えに一番適した季節は、10月です。 生育適温の季節でもあり、開花まで十分根を張ることが出来ます。 ただ、北海道などの寒冷地では根付かない可能性があるので、9月頃あるいは4~5月が植え替えに丁度良い時期と言えます。
水やりはやりすぎない
どの季節も、基本は土の表面が乾いたらたっぷりやる、です。 湿度が高い時、高温の日が続く時は、水のやり方に注意が必要です。 乾きすぎもまずいですが、水のやりすぎには特に気をつけて下さい。
クリスマスローズの病気
病害虫対策は、罹患してからの対処だと大変なので、予防するのが基本です。 正しい育て方はもちろん、複数の殺菌剤、殺虫剤をローテーションして使用することで、予防効果が得られます。
灰かび病・立ち枯れ病
苗の風通しが悪いと発生しやすくなります。 殺菌剤はロブラール水和剤、ダコニール1000、マンネブダイセン水和剤が効果的です。
軟腐病
苗の水はけが悪いと発生しやすくなります。 ボルドーなどの銅水和剤が予防効果を持っています。
ウィルス病
黒い斑点が出たらブラックデス、葉がモザイク状になったらモザイク病を疑いましょう。 ただ、ウィルス病になったら、有効な対処方法がありません。 苗は破棄したほうが良いと思われます。 スリップスやアブラムシなどの害虫がウィルスを媒介している可能性が高いので、定期的に殺虫剤の散布をおすすめします。
クリスマスローズの害虫
害虫が発生する前に、オルトラン粒剤やベストガード粒剤を苗の土の上に撒いておくのもひとつの手です。 また、黄色の捕殺シートはアブラムシ、青い捕殺シートはスリップスを捕まえてくれます。 このようなものを、有効に活用しましょう。
ハマキムシ・ヨトウムシ・エカキムシ
そしゃく系の害虫です。 殺虫剤はオルトラン水和剤、スミチオン乳剤、アドマイヤー水和剤などが有効です。
アブラムシ・スリップス
吸汁性の害虫です。 殺虫剤はオルトラン水和剤、アドマイヤー水和剤、モスピラン液剤などが有効です。 ウィルス病を媒介するかもしれないので、つかないように気を付けましょう。
ハダニ
葉の裏に水をかけると、予防効果があります。 殺虫剤はダニ太郎、バロックフロアブルが効果的です。
⑤庭でのクリスマスローズの育て方
クリスマスローズの原生地は、夏の気温が低く、雨の少ない地域が多いです。 植え付け、植え替えする時は、夏の高温にさらされない涼しい場所を選びましょう。 土も、腐葉土やバーク堆肥などでしっかり土壌改良すれば、追肥の必要はありません。 育て方も簡単になります。 鉢と同じく、本州での植え替えは10月が適しています。 ただ植え替えの際、30~50㎝程度まで植え込む間隔を広く取るようにしたほうがいいでしょう。 夏に気温が上がり、地面がカラカラになってしまったら、涼しくなる夕方に水やりをしてあげましょう。
⑥クリスマスローズの増やし方
株分け
大きく育ったら、株分けをします。 こちらも10月前後を目途に作業したほうがいいでしょう。 一度にたくさんの株を増やすことはできませんが、確実に同じ系統のクリスマスローズを増やすことが出来ます。 また、複数年育てると、育て方が正しくても、鉢が窮屈になって根詰まりを起こしやすくなります。 そうなると、花付きが悪くなったり、生育不良にもなります。 ひどいときは、苗が根腐れを起こして枯れることもあります。 株を植え替えてあげることで、草勢を取り戻します。
鉢から株を出し、古い土を払います。 その時に、新芽を傷つけないように注意しましょう。 きれいなナイフやハサミを用い、根茎を切り分けます。 あまり小さく分けてしまうと、株の勢いを無くしてしまうかもしれません。 大きめに分けるようにしましょう。 大きめの鉢に植え替え、終了です。 水はけが悪くならないように、気を付けてあげて下さい。 植え替えてしばらくはなかなか水を吸い上げられないので、根付くまでの2週間程度は日陰で管理し、葉からの水分の蒸散を少なくなるようにしましょう。
交配・種採り
自分で交配して種を採る楽しみが、クリスマスローズにはあります。 長い期間交配を繰り返してきたハイブリッド種の苗から種を採ると、親株とは異なる花を咲かせます。 自然交配でも種は出来ますが、好きな種類を人工的に掛け合わせる交配は、クリスマスローズ栽培の醍醐味でもあります。
交配してみよう
開花時期である1月から3月が交配の季節です。 雄しべの花粉を雌しべに着けるという作業となります。 雄しべと雌しべの完熟に時差があるので、まず種を作りたい種類の花の雄しべを、花粉が出る前にピンセットなどで取り除いておきます。 虫による受粉を防ぐため、麦茶パックのような不織布をかぶせます。 交配したい花の花粉が出てきたら、不織布を取ってこすりつけます。 また不織布をかぶせ、種の完熟を待ちます。 種が出来たら飛び散るので、袋をかぶせたままにして、採種します。
種の保存方法
種の発芽条件のひとつとして、22度前後の湿度がある環境で8週間以上おく、という要件があります。 そのため、採った種は乾かすことなく、温度が一定の場所に置かなければなりません。 ベンレート水和剤やダコニール1000などの殺菌剤につけ、種を不織布に入れたまま、庭に埋めておいてもいいですし、赤玉土を入れた鉢の中に入れておく方法も大丈夫です。 いずれにしても、定期的に湿度をチェックしたほうがいいでしょう。
種まきをしよう
10月になったら赤玉土に種を撒いて、1㎝程度覆土します。 この時も、土や種が乾燥しないように注意が必要です。 発芽して苗が大きくなってきたら、ポットなり鉢なり大きいサイズの入れ物に植え替えていきます。 育て方は、変わりません。
クリスマスローズを楽しもう
ヨーロッパ原産でありながら、和風の庭に似合う花はなかなかありません。 さらに、イングリッシュガーデンにも違和感がないのがクリスマスローズです。 他の草花が育ちにくい半日陰を好み、グランドカバーとしても使えます。 貴重なガーデニング素材として、栽培に挑戦してみてはいかがでしょう。