栽培がたのしいかぼちゃ
かぼちゃは育苗から収穫まで成功しやすい野菜です。種まき、苗の栽培、マルチなどの株の世話、実の収穫に至る育て方に難しさがありません。しかも大きな実がとれるので満足感が得られやすいです。 初心者の方からベテランの方までさまざまなレベルでいろいろな作り方できます。
かぼちゃの特徴
中南米の地域が原産地とされています。したがって暖かいところでよく育ちます。代表的な緑黄色野菜で、ビタミンが豊富です。真夏をのぞけば比較的長期間保存できます。 肥料を吸収する力があり、やせた土地でもつくれます。種子は大きく直まきしても発芽が容易です。水やりは畑や庭の場合ですと種まき時だけでじゅうぶんです。株はすぐに大きく育ちます。
かぼちゃの種類
おもなかぼちゃの種類には西洋かぼちゃ、日本かぼちゃ、ペポかぼちゃがあります。その他に黒だねかぼちゃなどがありますがあまり見かけません。 ふつうにスーパーで見かけるのはは西洋かぼちゃです。つるりとして扁平な形でほくほくした味わいです。「えびすかぼちゃ」や「栗かぼちゃ」などの品種が知られています。 一方、皮に深い溝がありごつごつしたかぼちゃがあります。日本かぼちゃです。ねっとりした味わいで「鹿ケ谷かぼちゃ」や「島かぼちゃ」などの品種があります。 その両者をかけ合わせた品種があります。皮の色は一般的な「えびす」などの緑色のほかに、「黒皮」など濃緑色、オレンジ色の「打木赤皮栗」、黄色や縞のめだつものなどさまざまです。 そのほかにペポかぼちゃとよばれる種のかぼちゃがあります。「そうめんかぼちゃ」や「ズッキーニ」はこのなかまです。やはりいろいろな形があります。
かぼちゃ栽培の時期と場所
3月中旬以降に種まきをして7,8月に収穫する栽培法が一般的です。暖かい地方では夏から秋に栽培する育て方があります。秋以降に栽培すると冬至かぼちゃが得られます。 日本では春から夏にかけての気候はどの地域でもかぼちゃの栽培にとくに支障はありません。 かぼちゃは場所を選ばない野菜です。基本的にどんな土地でもある程度作ることが容易です。むしろ肥えた土地では葉ばかりが茂り、実がつきにくいつるボケが起こりやすくなります。しいてあげれば水が適度にあり、乾燥しすぎない場所のほうがうどんこ病にかかりにくいです。
かぼちゃの立体栽培による育て方
かぼちゃの栽培は場所をとるので、支柱をたててそれにつるを誘引して栽培する立体栽培を行うことがあります。 大きな「えびすかぼちゃ」などではあまり見かけませんが、「坊ちゃんかぼちゃ」などのミニサイズのかぼちゃなどではさかんにおこなわれる栽培法です。 立体的につるをまきつけていきますから、コンパクトに仕立てることが可能です。平面の栽培ではわらや刈草、ビニールマルチなどの覆いが必要になりますが、この立体栽培ではわずかな量で済みます。地面からつるがはなれていますから、泥はねで実や葉が汚れることがほとんどないためです。 立体栽培では実によく光があたりますし、葉に対して風通しがよくなりますので、病気などに対してもプラスにはたらきます。形状がよい実ができるのも利点のひとつです。 支柱を組まないで垣根やガレージの屋根などにつるを誘引して栽培する方法も立体栽培の一種といえます。葉に日がよく当たりますから良いかぼちゃができます。
一般的なかぼちゃの育て方
いよいよかぼちゃの栽培法を示します。いろいろな方法がありますがおもなものを紹介します。栽培する機会が多く親づるの摘心の必要がない西洋かぼちゃを例に示します。
栽培場所に鞍をつくる
栽培場所には種子をまく2週間前に苦土石灰をふたにぎりほどまき耕します。そして1週間後に深さ30センチ、直径60センチほどの穴を掘ります。 そこへ元肥として堆肥ふたにぎり、有機質肥料ひとにぎり、発酵鶏ふんひとにぎりを入れて穴を掘ったときに出た土の半分と混ぜ、埋めもどします。 その上に肥料を含まない掘ったときに出た土をのせて、周囲より5センチほど高く土を盛り「鞍」とします。「鞍」ができたら、土を1週間ほどなじませます。 「鞍」と「鞍」の間隔は1メートルはとるようにします。これがかぼちゃの株間になります。「鞍」の前面は最低でも3メートルほど空けておきます。ここへかぼちゃのつるを誘導します。このようにかぼちゃを平面でつくるにはスペースがいります。
かぼちゃ栽培の肥料
元肥については上の「栽培場所に鞍をつくる」で示した量でじゅうぶんです。元肥にはかぼちゃに与える肥料全体の約3分の1を与えます。 最初の実(一番果)がソフトボール大になってから以降に追肥のかたちで残り3分の1、さらに1番果の収穫時期が近づいた頃にもう一度追肥を与えます。それぞれのタイミングで肥料を3等分するつもりで与えます。
ホットキャップを用いた育て方
かぼちゃの種子は「鞍」に3粒ずつまきます。指で2センチほど穴をあけ種子をひとつぶずつ入れ土をかぶせます。軽く押さえて土に種子を密着させます。上に刈草などでマルチをし、水をしっかりかけます。 種まきの時期はまだ寒く保温のために透明のビニールでおおうホットキャップをかぶせます。種まき後に支柱をわたし、ビニールをかぶせて周囲に土をのせます。あたたかくなったら上を破ります。しばらく周囲をビニールで囲うことでウリハムシの襲来を予防できます。 株から本葉が1,2枚出た頃によい苗を残し、ほかの株をハサミで根元から切り取り1本とします。
ポット苗の育て方
かぼちゃはポット苗で発芽させて苗として畑、庭、プランターに定植することもできます。ポットに野菜用培養土もしくは赤玉土7、腐葉土3、有機質肥料少々を加えた土を入れます。かぼちゃの種子を2つ種まきし水をじゅうぶんかけ、明るい日かげにおきます。発芽したら日なたに出して土の表面が乾いたら水やりをします。 本葉がではじめたら徒長している元気のない苗を根元で切り、まびき1本にします。本葉が4枚ほど出たら定植します。元肥などは上の「栽培場所の準備」と同じです。
野菜プランターで栽培するとき
大きめの野菜プランターでミニカボチャを立体栽培でき、グリーンカーテンにもなります。土や種まき方法は上のポット苗の作り方と同じです。プランターの場合には底に鉢底石を入れると水や空気の流通がよくなります。 種子を離して2か所に2つぶずつまきます。庭や畑とちがいプランターの場合には水やりを欠かせません。株のつるが伸びはじめた頃、支柱を立ててあんどん仕立てにするとよいです。グリーンカーテンの場合には横にも支柱をはることで風対策をします。
トンネルによる早めの育て方
畑や庭でトンネルをつくり早い時期からつくりはじめると6,7月にはかぼちゃを収穫できます。それにはビニールの黒マルチとそのうえにU字パイプでトンネルをつくります。 上の「栽培場所に鞍をつくる」で示したように元肥を入れ、70cm幅の畝をつくり黒マルチで覆います。1、2週間おいてマルチの下の土の温度をあげ、肥料をなじませます。 種まきは上の「栽培場所に鞍をつくる」と同じです。上はU字パイプでビニールトンネルをかぶせ両端を土や留め具で押さえます。
トンネルによる温度を調節した育て方
トンネルは最初のうちは保温に努めますが、その後はトンネル内の温度が上がりすぎることがあるので、トンネルを開け閉めする必要があります。省力化のためにトンネル上部に小さな穴をあけて内部が暑くなりすぎないようにすると開閉作業をあまり行わずにすみます。 夜間や明け方の外気温がじゅうぶんになればトンネルの南側を開けつるを伸ばすようにします。南側をあける理由はときに吹く冷たい北風を入れないためです。
かぼちゃの育て方のくふう
かぼちゃの栽培の一般的な方法をマスターできたら、さらに育てやすくする工夫をしてみましょう。ここでいくつか紹介します。
風よけの栽培への利用
かぼちゃを栽培している畝の北側に、秋のうちに大麦を植えておいて北風をふせぐ方法があります。この方法の利点はあたたかくなってからかぼちゃのつるが伸び始めたら、麦を刈りそのままかぼちゃのつるの下に敷くマルチとして使うことができます。
グリーンマルチをいっしょに育てる栽培法
最初からグリーンマルチを準備して省力化できる方法があります。かぼちゃをまくと同時にかぼちゃのつるがのびる前面に、マルチ用の大麦(「てまいらず」)をあつめにまく方法です。 大麦が20~30センチほど伸びるころに、大麦の葉にかぼちゃのつるが巻きつき固定されます。大麦はそのままかぼちゃのマルチの役割を担います。大麦は梅雨前には枯れてしまいそのまま有機資材となり土にかえります。
かぼちゃの整枝
株のつるの伸びる先端を切りおとすことを摘芯といいます。西洋かぼちゃでは親づると子づるに実がつきますから親づるの摘芯は必要ありません。 つるが伸びるとわきから脇芽のつるが伸びます。西洋かぼちゃでは、親づるの5~8節目あたりに出る脇芽を2本だけ伸ばしそれ以外の脇芽を取りのぞきます。この作業を摘芽といいます。 残った2本が子づるになります。親づる1本と子づる2本の合計3本にそれぞれ実をならせます。当面は子づるには1こずつ、親づるには2こほどならせるとよいでしょう。親づるには10~18節目あたりに1~2個の実をならせます。20節目以降の実は取りのぞきます。
日本かぼちゃの摘芯
日本かぼちゃの場合には摘芯が必要です。西洋かぼちゃの場合とちがい日本かぼちゃの親づるに実がつかないからです。親づるの6節目で摘芯します。親づるを摘芯することで子づるが伸びはじめます。 このように親づるを摘芯したことで出てくる2,3,4節目の子づるをのばしていきます。この合計3本の子づるに実をつけるようにします。このように日本かぼちゃの親づるは摘芯が必要です。この点が西洋かぼちゃとのちがいです。 子づるから出てくる脇芽は摘芽します。子づるの8~12節目あたりによく実がなります。このあたりに1~2個ならせるとよいでしょう。
かぼちゃと敷きわらのマルチ
かぼちゃはつる植物です。そのつるの途中に実をつけます。葉もつるも地面に近いところに根をはりながら伸びていきます。地面のそばなので葉に土がつきやすく病気の原因になりがちです。 そこでつるが伸びる先へ敷きわらを敷いていきます。敷きわらはつるが伸びるにつれて足していけばよいです。 敷きわらの資材は稲わらや麦わらが使いよいです。もちろんカヤなどの刈草も適しています。こうした敷きわらをしっかり敷いて泥はねしないようにしますと、健全な生育を示します。水分の確保にもなります。
かぼちゃの人工授粉
早朝から8時ぐらいまでのうちに雌花(根元が丸く膨らんでいる)のめしべに、雄花の花粉をつける人工授粉をすると実のつきが確実になります。とくに最初の実は確実に受粉しておくとのちの実がよく育ちます。
かぼちゃの収穫
西洋かぼちゃでは受粉から40~45日ほど、日本かぼちゃでは30日前後で熟します。つぎつぎに実がつきますから、雌花が開花したら目印の棒を立てそこに受粉日もしくは収穫予定日を記入しておくとよいでしょう。 収穫のみきわめはつるに茶色のひびが入り、横にそのひびが広がるタイミングです。
ぺぽかぼちゃのスッキーニ
ズッキーニはつるの伸長がほとんどないペポかぼちゃです。摘心、摘芽は必要ありません。すぐに根元から出る雌花を生かして実を若どりしていきます。旺盛な生育を見せて実がすぐに大きくなりますから数日おきに収穫できるようになります。
かぼちゃの病害虫
かぼちゃは比較的強健な作物といえますが、いくつか病害虫がみられます。代表的なものを紹介します。
かぼちゃの病気
かぼちゃに出やすい病気としてはうどんこ病があげられます。乾燥がつづくと写真のように西洋かぼちゃはとくにやられやすくなります。あらかじめ薬剤で防除するか、見つけたらその葉を早めにとりのぞきます。
かぼちゃの害虫
また害虫としてはウリハムシによる葉の食害があげられます。写真の虫です。
ウリハムシの防ぎ方
ウリハムシの被害を軽減する簡単な方法があります。この写真のように袋をかぶせてしまえば、ウリハムシは横から飛んでくる習性があるのでなかに入れません。
まとめ
かぼちゃはポイントになる作業を確実にこなすと大きな実がわりと容易に育ちます。旺盛な生育をみせますので、数日はなれていると株の姿が大きく変わることに驚かされます。