クレソンとは?
ヨーロッパ原産で、アブラナ科の多年草です。 明治時代に在留外国人向けの野菜として日本に入ってきたのですが、その旺盛な繁殖力で野生化し、全国で見かけられるようになりました。 現在は、ヨーロッパ、日本以外にも北アメリカ・南アメリカ・アジア・オセアニアにも分布しています。 オランダガラシ、ミズガラシ、ウォータークレス、てい藶(れき)とも呼ばれます。 ハーブの一種として分類されていることも多いです。
クレソンの栄養と効能
スーパーフードとも呼ばれるクレソンですが、どのような栄養素を含んでいるのでしょう。 まず、特に多いのがβカロテンです。 抗発ガン作用があり、動脈硬化や心臓病を予防する効能、体の酸化の防止、悪玉コレストロールの減少効果があると言われています。 体内でビタミンAに変わるのですが、これには老化や紫外線ダメージの軽減、皮膚や粘膜の生成を助ける働きがあります。 さらに、ビタミンC、Kなどの多種類のビタミンが豊富です。 他にも、高血圧に効くカリウム、骨の生成に欠かせないカルシウムや亜鉛、貧血防止になる鉄分など、体に必須な栄養を持ち合わせています。 また、シニグリンという辛み成分には抗菌作用や食欲増進、利尿作用、血行促進などの効果が見込まれます。
なぜクレソンの栽培は初心者向き?
生育旺盛なクレソン
家庭菜園の初心者が育てる野菜として最適な理由として、まず旺盛な繁殖力があげられます。 もちろん、土や肥料などの適した生育環境を整えることが前提条件ですが、15~20℃前後の温度帯を外さなければ、まず育ってくれます。 難しい栽培方法はありません。 多少雑な育て方をしても大丈夫です。 清流で育つイメージがあるクレソンですが、実は泥水でも育つ頑強さを持ち合わせているのです。 そして、一度収穫した茎からも脇芽が伸びて、何回も収穫することができます。
収穫までの期間
種から育てても、2カ月もあれば収穫を始められます。 この栽培期間の短さも、野菜の育て方を知らない家庭菜園初心者には魅力です。 購入した苗からだと、約1か月で収穫することが出来るでしょう。 また、栽培期間が短いと、病害虫対策も少なくて済みます。
日本中で栽培されるクレソン
家庭菜園だけでなく、お店の野菜売り場でもよくクレソンを見かけます。 スーパーなどで販売されているクレソンの多くは、自生しているものではなく、栽培されたものです。 一番生産量が多いのは山梨県で、全体の4割を占めています。 以下は栃木県、沖縄県、大分県と続くのですが、9位に北海道が入っています。 文字通り、北海道から沖縄まで幅広い地域で栽培が可能であるということが、クレソンが育て方も確立され、栽培しやすい植物だということを証明しています。
栽培に適した環境
では、どのような環境がクレソンに適しているのでしょうか。 生育旺盛とはいえ、丈夫に育てないとすぐに病気や虫にやられてしまいます。 まず、温度です。 適温は15~20℃ですが、寒さは5℃まで、暑さは25℃まで大丈夫です。 強い日差しはあまり必要ではないので、特に暑い季節は直射日光から守ってあげましょう。 温度によって大きく育て方が変わることはありません。 水生植物でもあるので、たくさんの水が必要です。 ただ、土から上は風通しの良い空間があることが大切ですし、出来れば水はけの良い土のほうが良い根が育ちます。 家庭菜園だと屋内で育てることも多いですが、強い日差しが要らないクレソンは、家の中で育てるのに向いている野菜と言えます。
クレソン栽培を始める前に準備するもの
プランター
栽培しやすい野菜なので、これでなくてはならないというものはありません。 お好みで、自分の趣味に合ったものをお使い下さい。 玄関先で育てる時はおしゃれなものでもいいですし、人目につかない場所であれば、底に小さな穴を空けて水はけを良くした発泡スチロールの箱を使うという方法もあります。 育て方も変わりません。
種・苗
種と苗は、ホームセンターや通販などで簡単に手に入ります。 「ウォータークレス」と表記されているものも多いですが、同じクレソンです。 もし、種を余してしまった場合、冷蔵庫などの温度変化の少ない暗い場所に密閉して保存しておけば、あまり発芽率が下がることなく1~2年は使うことが出来ます。
土
特にこだわりません。 市販されている培養土で十分です。 野菜用、ハーブ用など、最初から肥料が混ぜてある土であれば、生育中の施肥は少なくて済むはずです。 酸性の土では育ちが悪くなるので、やはりpHが調整されている市販の土がおすすめです。 室内であれば、ハイドロボールを使う方法もあります。 土よりも虫の発生が少ない利点があります。 ただ、畑や花壇の土をそのままプランターに使用するのは重くて水はけが悪く、初心者にはおすすめ出来ません。 根を伸ばしやすい土というのは、団粒構造の空気を含んだ土です。 根が伸びないと、葉も育ちません。 健康に育たないと、病害虫の被害にあうこともあります。
クレソンの育て方
種まき
発芽適温は地温20℃前後です。 本州では4~5月と9月、寒冷地では5~7月あたりが一番発芽に向いた季節です。 もちろん、屋内でこの条件を満たせれば、年中発芽させることは可能です。 バラまきが一番簡単な育て方です。 種が細かいので、スジまきかバラまきをした後、軽く土をかぶせます。 大事なのは、まいた種を乾かさないことです。 事前に種を水に浸す方法もありますが、いずれにしても発芽に必要なのは高い湿度です。 5~10日で発芽します。
間引き
発芽したら、間引きします。 5㎝間隔程度の隙間を作りましょう。 大きく育てたい方は、10~15㎝でもOKです。 育て方で間引きの仕方を変えるといいでしょう。 株が混みあうと、虫や病気発生の原因となります。 風通しの良い日影が育ちやすい場所です。 そして、間引きした苗は、もちろん食べれます。 クレソンのスプラウトも栄養価の高い野菜のひとつです。
肥料
育っていくうちに葉色が薄いと感じたり、下葉が黄色くなってきたりしたら、肥料が足りていない可能性があります。 その時は、追肥をあげましょう。 まず、液肥が即効性があるのでおすすめです。 肥料の効果を長持ちさせたいならば、置き肥を使ってみましょう。 窒素、リン酸、カリが等分に含まれている一般的な固形肥料で大丈夫です。 ただ、肥料不足が原因でなく、高温や日照不足、病害虫などで苗が弱っている可能性があります。 一度に濃い栄養を大量にあげると、さらに株を弱めてしまうかもしれないので、追肥は少しずつ様子を見ながらあげ、状況にあった育て方を見つけて下さい。 また、化学肥料を使いたくない方は、事前に土に有機肥料を混ぜておくといいでしょう。
収穫
大きく育ったところで、家庭菜園初心者にとってお待ちかねの収穫です。 食べごろは人それぞれですが、15~20㎝までの柔らかな新芽がおいしく食べられます。 小さくてもたくさんの栄養を含んだスプラウトやベビーリーフとして、サラダなどの料理に使うことが出来ます。 生育旺盛なので、脇芽から新芽が次から次へと出てきます。 育て方に間違いがなければ途切れることなく収穫することができます。
自分で増やせるクレソン栽培の楽しさ
クレソンは、一度株が手に入れば家庭菜園でも増やすことができます。 何度も収穫していくうちに茎が老化して硬くなったりするので、増やすことで新しい株を作り出し、栄養豊富な若い茎を食べることが出来ます。 それでは、その方法を紹介します。
挿し木
まず、挿し木の方法です。 生育温度15~20℃であれば、水に挿しても土に挿しても根は生えてきます。 3~4節で切り取り、水挿しであれば、1~2節が水につかるくらい浸します。 水はこまめに取り替えるましょう。虫の発生を防ぎます。 土に挿すのも同様で、1~2節が土に埋まっていればOKです。 葉から水分が蒸散してしまうと挿し穂がしおれてしまうので、暑い季節は挿し木に不向きです。 発根するまでは日陰で管理しましょう。
株分け
株分けの方法です。 プランターや鉢いっぱいになった株を抜き取り、ハサミや手で切り分けます。 古い土を払い、新しい土に入れ替えることで、元気な新芽が勢いよく生えてきます。 クレソンは繁殖力の強い植物なので、多少根が引きちぎれても問題ありません。 どんどん新しい根が伸びてきます。
採種
種を採る方法です。 収穫の終わった株に花を咲かせましょう。 花が終わったら、種が出来ます。 秋に採種し、冬の間冷蔵庫などの冷暗所に保管しておけば、春に種をまくことが出来ます。
クレソン栽培の注意点
花を咲かせない
花が咲くまで育てると、茎が硬くなってしまいます。 先端を摘んで、脇芽を伸ばして収穫しましょう。
強い日差しを当てない
クレソンは強い日差しが苦手です。 25℃以上になると株が弱ってしうので、夏は日陰で育てましょう。 ただ、光合成が出来る光の強さは必要なので、冬などは窓辺の明るい場所などに置くのがいいです。
水切れを起こさない
クレソンは水生生物ということもあり、多くの水を必要とします。 特に、限られた土しかないプランターを使った栽培では、水やりを欠かさないようにしましょう。
クレソン栽培に気をつけたい害虫と対策
アブラナ科につく虫は、クレソンにも被害を与えます。 初期段階で見つけて、すぐに捕殺出来ればいいのですが、なかなかままならないものです。 予防という意味では、黄色の粘着式捕殺シートは、ハモグリバエやコナジラミに有効です。 さらにここでは、家庭菜園でつく虫の主だったものの農薬による対策を紹介します。
アブラムシ
植物の栄養を吸い、草勢を弱らせます。 また、そこから病気を誘発したりします。 繁殖力が強いので、発生したら厄介な害虫です。 クレソンが登録のある農薬は、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶剤、モスピラン顆粒水溶剤などです。
アオムシ
葉物野菜には必ず対策が必要な害虫です。 これには、有機農産物にも使用できるゼンターリ顆粒水和剤が有効です。 天然微生物の農薬で、ヨトウムシやケムシ類にも効きます。
コナガ
蛾の幼虫が葉を食べます。 卵から成虫になるのが早いので、やはりこれも厄介な害虫です。 アオムシと同じく、ゼンターリ顆粒水和剤が効きます。 また、コナガにはクレソンで登録されている農薬があります。 スピノエース顆粒水和剤とプレバソンフレアブル5です。
ハダニ
葉の裏に寄生して汁を吸い、斑点やかすり傷をつけます。 ハダニには粘着くん液剤が効果的です。 これは主要成分が食用でんぷんで、化学殺虫成分を含みません。 粘着くん液剤は、アブラムシにも効きます。
クレソン栽培に気をつけたい病気と対策
クレソンは、それほど病気になることはありません。 ただ、風通しが良い状態で栽培することで、さらに病気を防げます。 葉が混みすぎないように気を付けましょう。
斑点病
クレソンの登録のある農薬には、アミスター20フロアブルがあります。
クレソンの水耕栽培
家庭で簡単に栽培できる育て方
水辺で育つクレソンは、水耕栽培にも向いています。 室内で家庭菜園するなら、なおのこと水耕栽培がいいでしょう。 方法も簡単です。 入れ物はプラスチックのパックでもコップでも、何でも大丈夫です。 そこ水に浸したキッチンペーパーやスポンジを入れ、種をバラまきするだけです。 あとは、液体肥料を使用して育てていきます。 注意点として、まずこまめに水を取り替えることがあげられます。 水分中に酸素が無くなれば、生育が悪くなることがあります。 また、葉を水に浸さないように気を付けましょう。 葉が腐ってしまいます。
栽培キット
家庭菜園初心者には、栽培キットも役に立ちます。 おしゃれなインテリアとして使えるものから、LEDを用いた本格的なものまで、幅広く販売されています。 すべて必要なものがそろっている栽培キットから始めると、失敗も少ないかもしれません。
寄せ植えも出来るクレソン栽培
ベビーリーフとしてクレソンを収穫することも出来るのですが、その時に他品種のハーブも一緒に育ててみてはいかがでしょう。 ミズナ、ケール、ルッコラ、スイスチャード、ビート、小松菜などの種を土を入れたプランターにまけば、簡単にベビーリーフの寄せ植えが完成します。 また、好きなハーブ苗を購入して寄せ植えを作る方法もあります。 さらに、他のハーブが持つ多くの栄養を同時に摂取出来るのは嬉しい限りです。
収穫したクレソンの楽しみ方
初めて家庭菜園で収穫したものを食べるのは、とてもうれしいものです。 多くの種類の栄養素を含むクレソンですから、生のままサラダで食べるのが一番です。 また、火を通すことで辛み成分が減り、食べやすくなります。 炒め物やあえ物もいいかもしれません。
最後に
店頭で売られているクレソンも、挿せば発根してきます。 わざわざ種や苗を買ってまでと考える人でも、スーパーで手に入れたクレソンからでも簡単に家庭菜園を始めることが出来ます。 健康に欠かせない幅広い栄養素を持つクレソンで、初めて野菜を育てる楽しみを味わってみるのはいかがでしょうか。