「潮汐」とは?
そもそも「潮汐」とは、端的に言ってしまえば、海水の水位が変動する現象のことで、一般的には、満潮や干潮に伴う潮の満ち引きとして知られています。潮汐は、主に海で発生する現象であると思いがちですが、実は、面積の広い大規模な湖沼でも潮汐による水位の変動が発生します。詳細については後述しますが、潮汐は海に住む生物の活動に大きな影響を及ぼすため、当然釣果と大きく関係する重要な要素となります。
潮汐が発生するメカニズムとは?
潮汐は、主に月が持つ引力によって発生する現象で、特に地球との距離が近い月の引力による影響を大きく受けます。地球が月から受ける引力によって、海水は月の方向に引き寄せられます。これによって、月に面した部分の海水面が上昇します。また、月と反対の海水も、地球の自転で発生する外側の方向への遠心力によって宇宙の側へ引き寄せられることで、海水面の上昇を引き起します。一方、月の引力や地球の自転による遠心力の影響を受けない海水は、月の方向、または月と反対の方向のいずれかに引き寄せられるため、海水面は下降します。これが、潮汐が発生するメカニズムです。
1日の潮汐周期とは?
海水の水位が上昇しきった状態のことを「満潮」、海水の水位が下降し切った状態のことを「干潮」と呼びます。また、満潮から干潮に至るまでの時間 (海水の水位が、少しずつ下降している時間)のことを「下げ潮」、干潮から満潮に至るまでの時間 (海水の水位が、少しずつ上昇している時間)のことを「上げ潮」と呼びます。地球の自転の速度は、1日に1回転ですから、1日の間には、月の引力、または自転による遠心力を受ける時間と受けない時間が、それぞれ2回ずつ訪れることになり、干潮と満潮は1日2回ずつ発生します (実際には、干潮時刻と次の干潮時刻との平均時差は12時間25分あるため、必ずしも干潮と満潮が1日2回ずつ発生するとは限らない)。
1ヵ月の潮汐周期とは?
前述の通り、潮汐は主に月が持つ引力によって発生します。とはいえ、引力の正式名称は「万有引力」で、その名の通り、宇宙にある全ての物質が持っている力です。当然、太陽も引力を持っているため、太陽の引力でも潮汐は発生します。ただし、太陽は地球までの距離が遠いため、太陽の引力が潮汐に与える影響は、月には及びません。満月や新月の期間には、太陽と月が地球に対して一直線に並ぶため、太陽の引力と月の引力とが合わさって、干満の差が大きくなります。これを「大潮」と呼びます。一方、半月の期間は、太陽の方向と月の方向が直角方向にあるため、月の引力が太陽の引力によって弱められてしまい、干満の差が小さくなります。これを「小潮」と呼びます。
このように基本的には、月齢によって海水に作用する引力の大きさ、つまり干満の差を知ることができます。月齢による干満の差の区分は、大潮と小潮の他にもあります。例えば、大潮と小潮の間の期間は、干満の差がある程度落ち着きます。これを「中潮」と呼びます。また、半月を1、2日ほど過ぎた小潮の末期の日には、干潮時刻と満潮時刻との時差が長くなり、潮の満ち引きが緩やかに起こります。これを「長潮」と呼びます。加えて、長潮の翌日は、満月、または新月の期間に向けて徐々に干満の差が大きくなっていきます。これを「若潮」と呼びます。月齢による干満の差の区分は、しっかりと頭に入れておくようにしましょう。
「潮汐表」とは?
「潮汐表」とは、潮汐の情報が表になったものです。「潮見表」や「潮位表」などとも呼ばれます。潮汐表は、釣具店で入手可能な紙でできた小冊子タイプの潮汐表、パソコンやスマートフォンなどのIT機器で閲覧が可能な、ウェブサイトのタイプの潮汐表、主にスマートフォンやタブレットにインストール可能な、専用アプリのタイプの潮汐表の3種類があります。小冊子タイプの潮汐表は、どんな場面でも瞬時に潮汐の情報を知ることができますが、釣り場に持参する場合は、水や汚れに弱いという難点があります。
ウェブサイトタイプの潮汐表の場合、IT機器が通信可能な環境であれば、どんな場面でも潮汐の情報を閲覧できたり、必要に応じて情報をExcelなどに移し、潮汐と釣果との関係の分析に役立てたりすることも可能な一方、通信圏外地域や充電不足などでIT機器が使用できないと、潮汐の情報の閲覧はできなくなってしまいます。この欠点は、専用アプリタイプの潮汐表でも同様ですが、気象情報を併せて閲覧できたり、各時刻ごとの水位の情報を細かく知ることができたりするなど、専用アプリならではの多機能性が魅力です。状況に応じて、ベストな手段で潮汐の情報を入手するようにしましょう。
《おすすめのウェブサイトタイプの潮汐表》
最もシンプルで使いやすい、ウェブサイトタイプの潮汐表です。満潮時刻や干潮時刻の情報、干満の差の区分の情報、満潮時刻や干潮時刻の水位参考値の情報など、釣りにおいて必要な基本的な情報を知ることができます。
※ 潮MieYellの詳細については、上の公式ウェブサイトをご覧ください。
満潮時刻や干潮時刻の情報、干満の差の区分の情報、満潮時刻や干潮時刻の水位参考値の情報などの、基本的な潮汐の情報の他に、太陽や月に関するより詳細な情報についても知ることができるため、潮汐と釣果との関係の分析などにも役立てやすい、筆者一押しのウェブサイトタイプの潮汐表です。
※ tide736.netの詳細については、上の公式ウェブサイトをご覧ください。
《おすすめの専用アプリタイプの潮汐表》
直感的な操作感覚がうれしい、専用アプリタイプの潮汐表です。バックグラウンド処理も行わず、動作も軽快なことなどから、多くのユーザーから高い評価を得ています。また、釣り場の天気や、その他の気圧や風などの釣りにおいて重要な気象情報も併せて見ることができます。
※ しおさい-潮見表/天気予報- (無料)の詳細やインストールについては、上のGoogle Playをご覧ください。
1日の潮汐周期と釣果との関係とは?
上の画像は、2017年9月7日の東京都芝浦地域の潮汐による水位変化を、「タイドグラフ」と呼ばれるグラフ上で表したものです。上の画像の濃い緑色で示した満潮時刻前後の時間帯や、薄い緑色で示した干潮時刻前後の時間帯は、水位の変化が緩やかになっているのがお分かり頂けるでしょう。一方、上の画像の黄色で示した上げ潮の時間帯や、赤色で示した下げ潮の時間帯は、水位の変化が急激になっているのがお分かり頂けるでしょう。基本的に魚は、上げ潮や下げ潮などの水位が時間と共に大きく変化する (潮が動く)時間帯に活性が上がり、積極的にエサの捕食活動を行う性質があります。ですから上げ潮や下げ潮は、釣りをするのにベストな時間帯だと言えます。
反対に、満潮時刻や干潮時刻の前後の時間帯は、水位の変化があまり起こらず、魚の活性が下がってしまうため、確実に釣果を得たい釣り人には向かない時間帯です。これが、1日の潮汐周期と釣果の基本的な関係です。とはいえ、これらの特性はターゲットや季節によって、若干異なることがあります。例えば、カニなどの甲殻類を好んで捕食する魚の場合、効果類は特に上げ潮の時間帯に活性が上がる傾向があるため、下げ潮よりも上げ潮の方がより捕食活動を活発に行います。また、魚たちの産卵の季節である春には、なるべく捕食者が近づきづらい水深の浅い場所に卵を産み付けようとする本能の影響で、満潮時刻前後の時間帯に釣果が伸びるケースもあります。
1ヵ月の潮汐周期と釣果との関係とは?
上の画像は、2017年8月27日 - 2017年9月30日の、東京都芝浦地域の潮汐による水位変化をタイドグラフで表したものです。上の画像のグラフの線の形状をよく見ると、波長が大きい日と小さい日とがあります。波長が大きい日は干満の差が激しいことを意味し、波長が小さい日は干満の差が穏やかであることを意味しています。大潮のような干満の差が激しい日は、上げ潮や下げ潮の時間帯に魚の活性が急激に上がり、釣果が伸びる傾向にある一方、満潮時刻や干潮時刻の前後の時間帯には、極端に水位の変化が緩やかになってしまい、魚の活性がいきなりガクンと落ち、今までの好釣果が嘘のようにパタッと釣れなくなってしまう傾向があります。
逆に、小潮のような干満の差が緩やかな日は、時間帯を問わず、1日を通して水位の変化が穏やかなので、極端な好釣果は期待できないものの、ある程度の釣果が終日続く傾向があります。魚の活性が上がっているピンポイントの時間帯で釣りを楽しむ場合は、短時間の釣りでも確実に釣果が期待できる大潮の日の下げ潮、または上げ潮の時間帯がおすすめです。また、遠征などで1日中釣りを楽しみたい場合は、水位の変動が大きくなく、1日中安定した釣果を期待できる小潮の日に釣行するのが良いでしょう。また、初めて訪れる釣り場で釣りをする場合や、初めての釣り方を試す場合は、最もバランスの取れている中潮の日だと、正確なデータを手に入れることができますよ。
3つのフィールド別に, 潮汐の影響を徹底検証!
潮汐と釣果との関係を考えるうえで重要なのが、フィールドの状況です。確かに前述の通り、水位が大きく変化する大潮の日の上げ潮や下げ潮の時間帯は、好釣果が大いに期待できるのですが、フィールドの状況によっては、特定の潮汐条件でないと釣りが成立しない場合や、魚の活性度以外の要素が釣果に大きな影響を及ぼす場合があります。ここでは、海釣りのフィールドとして想定される「堤防や港湾」、「砂浜」、「河口」の3つのフィールド別に、潮汐の影響を徹底検証していきたいと思います。
1.堤防や港湾での潮汐の影響とは?
堤防や港湾は、最も定石通りに潮汐の影響を受けるフィールドです。上げ潮や下げ潮の時間帯は釣果が伸びる傾向がありますし、反対に満潮時刻や干潮時刻の前後の時間帯は、釣果が伸びない傾向があります。とはいえ、堤防や港湾の場合は、水深との関係についても考慮に入れる必要が生じます。というのも、定水位 (満潮時刻の水位と干潮時刻の水位との平均)時の水深が4mを下回るような、水深の浅い堤防や港湾の場合、大潮や中潮などの比較的水位の変動が大きくなる日の下げ潮の時間帯は、水位の低下で水深が浅くなってしまい、魚の警戒心が高くなるなどの理由で、釣果が伸び悩むことがありますので、注意が必要です。
2.砂浜での潮汐の影響とは?
砂浜においても、基本的な潮汐の影響は同じなのですが、考慮に入れなければならないのが、砂浜独特の地形です。波打ち際の少し沖のエリアには、「ブレイクポイント」と呼ばれる、波の力で海底の砂がえぐり取られ、水深が深くなっている部分が点在しています。ブレイクポイントでは複雑に潮流が変化するので、小魚のエサとなるプランクトンが集まりやすく、結果的にヒラメなどのフィッシュイーターも寄ってくるため、砂浜の釣りでは狙い目となります。干潮時刻前後の時間帯は、波打ち際が沖に移動するため、沖にある規模の大きいブレイクポイントに仕掛けが届きやすくなるので、砂浜においては、必ずしも干潮時刻前後の時間帯が悪条件であるとは限りません。
3.河口での潮汐の影響とは?
河口での潮汐の影響も基本的には同じですが、河口の場合は、干満によって流れ込む淡水の量が変わるため、水位だけではなく、塩分濃度も変化します。通常シーバスやハゼなどの、淡水への耐性が高い海水魚以外は、塩分濃度が低い水域に近づくことが困難です。満潮時刻前後の時間帯は、大量の海水が川を逆流するため、より川の上流部まで海水魚がやってくるので、魚たちの捕食活動も活発になり、好釣果が望めるでしょう。一方で干潮時刻前後の時間帯は、大量の淡水が海に流れ込むため、海水魚がいる水域は狭くなるものの、今度はウグイやアユなどの、海水への耐性が高い淡水魚が海にやってくるので、フィッシュイーターたちの釣果が伸びるようになります。
釣果に関係する要素は, 潮汐だけではない
言うまでもありませんが、釣果に関係する要素は、潮汐だけではありません。そもそも海水の水位は、潮汐の影響以外にも、気圧の変化などの気象条件によっても変動します。また、降水や風による気象の変化によっても、海の環境は大きく変わり、釣果にも影響を及ぼします。また、気象条件以外でも、潮汐を考慮に入れない時間帯の変化や、周辺海域での工事などの外的要因によっても、釣果は変わってしまいます。ですから、安定した釣果を望むのであれば、潮汐による影響だけではなく、様々な気象条件や外的要因などを総合的に勘案して、釣行の計画を立てることが大切なのではないでしょうか。
潮汐表を理解するのが, 好釣果への近道!
いかがでしたか。潮汐によって生じる海水の水位変動は、釣果と密接に関係していることがお分かり頂けたのではないでしょうか。ですから、潮汐表に記載されている潮汐の情報を理解し、十分に活用することが、好釣果への近道なのです。
一部の釣り関連のメディアでは、潮汐を気象現象の一種として取り扱っているケースが散見されます。「気象」という単語は、大気の状態の変化と、大気の状態の変化に伴って発生する雨や風の発生などの気象現象を指します。詳細については後述しますが、潮汐は大気中で起こる気象要因によって発生する現象ではありませんので、この記事では気象として取り扱わないことに留意してください。