切り戻し剪定とは
切り戻しとは、伸びすぎた枝や茎を切り取って、株を短くし植物の姿(樹形)を整える方法の一つです。 一般的なガーデニングでは、鉢や室内、花壇、庭のスペースなどに合わせた高さや横幅の範囲内で育てますが、植物を育てているうちに枝や茎が無差別に伸びて、樹形が崩れたり風通しが悪くなって、最終的には害虫や病気にかかって枯れてしまう可能性が高くなります。 中にはいくら放っておいても樹形が整っている種類もありますが、このような植物は稀です。
切り戻しは何のためにするのか?
切り戻す草花は、春から秋まで長く咲く種類や、草姿が乱れたものです。 時期は、植物の種類や株の状態によって異なりますが、夏の前、あるいは夏のあとが目安です。また、根詰まりを起こした株の植え替えをする時にも、地下部に合わせて地上部の茎葉を切り戻しするとよいでしょう。 夏越しのための切り戻しの方法(わき芽を確認して切る) インパチェンスを例に、夏越しのための切り戻しの手順を解説します。暑さが苦手な種類や、春に購入して育てている株は、夏までにすでに草姿が乱れ始め、株が老化しているので、夏に一気に弱りやすくなります。そこで、7月ごろに草丈の1/3~1/2ぐらいの位置で切り、風通しをよくして夏を乗り越えさせます。涼しくなり始める8月下旬ごろにもう一度、暑さで傷んだ部分があれば軽く切りそろえて形を整えると、秋からいっそう美しく開花します。
わき芽を出して花数を増やす
植物はそのまま育てているとわき芽を伸ばさずに上へと伸びていきます。そのまま放っておくと花が先端に咲くだけで花付きが少なくなってしまいます。そこでつるの先を切り、わき芽を出すことで花の数を増やすことができます。
風通しを良くする
園芸植物は日本以外の地域から取り入れられたものが多く、本来の性質と日本の気候が合わない場合もあります。特に夏の高温多湿の気候には耐えられない植物が多いので、梅雨前や夏に切り戻しを行い、風通しを良くして夏越ししやすくしてあげましょう。
小さくまとめる
わき芽を出すことと似ているのですが、上へ伸びる先を切っていくと、それ以上株は大きくなりません。切り戻しや摘心をすることで、枝や葉の生長を抑えて小さくまとめることができるのです。 小さくまとめることで、あまり大きく育つと管理が難しいからという理由と、背が高くなることで、茎が弱り強風に吹かれたときに倒れる植物もあるので、倒木の予防もあります。
切り戻し剪定の時期やタイミングは?
花が少なくなってきたり形が乱れ始めた時
切り戻し剪定を行うタイミングは、花が少なくなってきたり、形が乱れ始めた時などです。 切り戻しを行う際は思い切って全部の枝を鉢の周りに沿う形で大胆に切ることが大切です。 鉢の外周りに沿って行うのが目安です。 この時株元に葉が残っていることを必ず確認しましょう。もし葉がない状況で切り戻すと分枝するわき芽がないため、枯れてしまうことがあるので注意しましょう。 切り戻さなくても花は咲き続けますが、花数が少なくなり次第に花を楽しめる期間も短くなってしまいます。 切り戻した花は切り花としても楽しめますので、切り戻しの際はもったいないと思わず大胆におこないましょう。
切り戻しは晴れた午前中に行うのがおすすめ
切り戻しを行う際は、切り口が乾燥しやすい良く晴れた午前中に行うのがおすすめです。 切り口が湿っていると病害虫の被害にあいやすくなり、そこから枯れてしまいます。
切り戻しのタイミングはこの3つ
1.花が咲き終わったあと 切り戻しは花が終わったあと、すぐに花のすぐ下で切り落とすか、株元から花を切り落とすようにします。咲き終わった後の花も養分を必要とするため、残しておくと新芽や新しい花が咲く際の邪魔になってしまいます。 できるだけ早く切り落とすことでわき芽が出てボリューム感も増やせます。 2.休眠期から目覚める前 一度、思い切って短く切り落とし、再生を図る場合に行うやり方もあります。株分けして弱ったり、古い枝や弱った枝が多い場合に行いますが、翌年は枝を生長させるためだけの年にし、翌々年に花が咲くのを待ちましょう。 植物によっては、休眠期が夏だったり冬だったりと異なりますが、多くは冬に休眠期を迎えることが多いです。 1年草などは、毎年植える植物を除き、毎年花が咲く多年草や宿根草、樹木などの多くは、休眠期になると生長が止まり葉や葉っぱが落ちて、枝だけの状態になります。 このような状態になった場合は、鉢植えの場合ですと、株元から15㎝、30cm、1mと植物によって一定の短さですべて切り取ります。 花が咲きにくくなった古い枝や弱った枝は枝を一掃します。休眠期が終わると徐々に植物が生長を始めるようになり、新たに枝を伸ばし、花を咲かせることができます。 3.不要な枝が育ってきたとき 他の枝や茎の生長が邪魔になってくると風通しが悪くなり樹形もみだします。休眠期以外の期間であれば、不要な枝が伸びてきたのを見つけたら適宜切り取り、樹形を保つようにしましょう。
切り戻し剪定の方法や手順について
やり方と手順は以下の通り
切り戻しのやり方と枝を切る場所ですが、基本は枝元と枝の途中で切ります。枝の途中で切る場合は、新芽のすぐ上を切り取るようにします。新芽とは、枝の途中で少し膨らんでいる部分で、次の枝が伸びてくる場所のことです。 そこで、切り戻しの対象に不要枝の種類についてご紹介します。
1.徒長した枝
徒長とは他の枝よりも生長が長く、勢いよく突き出た枝のことをいいます。枝元から切っても構いませんが、全体の枝数が少ないときは1/3ほどの長さに切るのがいいでしょう。
2.ひこばえ
これは株元から出てくる細い枝のことで、見つけしだい株元から切り取るようにします。
3.内向枝(逆さ枝・返り枝)
幹の方へ向かって伸びる内側に向いた枝を内向・逆さ枝と呼びます。株の美観を損ねるほど、葉っぱを持っていると他の枝の生長の邪魔にもなるので枝元から切り取るようにします。
4.車枝
同じ位置から複数の枝が車輪のように伸びている枝を車枝と呼び、これを残していると、日当たりや風通しに影響することがあるので1~2本だけ残して切り取るようにします。
5.立枝、下り枝
真上や真下に向かって生えている枝で、樹形を見出し、景観を損なうことが多いため枝元から切り取ります。
6.胴吹き枝
一番太い幹から生えている細い枝で、突然生えてくることもあるので、「幹吹き」とも呼びます。胴吹き枝よりも上部分は、弱っているときに発生することもあるので、弱っていないか観察しましょう。枝は枝元から切り取るようにしましょう。
7.絡み枝
交差している枝です。どちらかを残してもう一方を枝元から切り取るようにします。
8.平行枝
平行に伸びている枝で、生長の妨げになるので、一本だけ残して枝元から切り取ります。
9.ふところ枝
生長するにつれていずれ枯れる枝ですが、枝の内部から出てくる小枝のことで、全体的に枝数が少ない場合は切り取らなくても問題ないですが、茂っているようであれば枝元から切り取るようにします。
切り戻しの際の注意点
切り戻しは、清潔なハサミやナイフを使うこと、また先にもお伝えしましたように、切り口が乾燥しやすいように、晴れた日の午前中におこなうことをおすすめします。 不潔なハサミを使うと切り口から殺菌が入るのを手助けし、切り戻し後に枯らせてしまう可能性も高くなります。 切り口を清潔に保てるように、癒合剤を塗っておくと安心です。 またより清潔に行うためにも手袋をつけて作業するようにします。手袋をつけることで、枝で指を切ったり切り口の樹液がついたりして肌がかぶれたりするのを防ぎます。
切り戻しをマスターして植物をより元気に育てよう
切り戻しは、植物の手入れの基本作業です。切り戻しを行う際は時期やタイミング、切り取る枝の場所や長さを植物によって変えることも大事です。 不要枝をすべて切り取ってしまうと、見た目が貧相になってしまうので、植物によって切り戻し量を調整する必要があります。 切り戻しはガーデニングの楽しみの一つでもありますので、ぜひマスターしていただきたいものです。