生水を飲むということ
結論から言いますと、生水をそのまま飲用に供することは大変危険です。一見して清潔に見える沢水でも、精密検査を行えば一般細菌や大腸菌類、はては嫌気性芽包菌やクリプトスポリジウムなどの、普段は耳にしないような訳のわからない連中が潜んでいる可能性があります。また、北海道においてはエキノコックス症のリスクもあります。 私たちが普段の飲料水によって、そのような危険な病原菌や微生物による食中毒を起こさないのは、日本の高度な浄水技術と、厳格な水道水質基準のおかげです。
飲むことができる生水もある
水道水やミネラルウォーター以外の水がすべて危険かといえば、決してそんなことはありません。昔から地域で飲まれている湧き水や、水場として紹介されているような所は比較的安全といえます。それでも一度に大量に摂取すると、体調を崩す人もいるので、可能であれば煮沸して飲むなどの一手間を加えましょう。
登山における携帯浄水器のメリット
どうして登山に携帯浄水器が便利なのか？「必要な分の飲料水を持っていけばよいのでは？」「途中で飲料水が足りなくなるのは登山計画が甘い」と考える人も多いでしょう。ところが、携帯浄水器は必ずしも、飲料水が尽きたときの非常用というわけではありません。
登山に水は必要だけど…
水1リットルはキログラム、これは小学生でも知っている常識ですよね。登山装備における水の重量割合は、とても無視できないレベルになります。軽量化を至上命題としてきた登山装備の世界において、飲料水の重量は、それが物理法則である限り軽くすることはできないのです。もちろん、長時間の登山になればなるほど、必要な飲料水は増えます。冬山登山なら雪を溶かして飲料水にすることもできますが、夏山登山では基本的に必要分の飲料水を持っていくことになります。
携帯浄水器で荷物を軽量化！登山をもっと楽にしよう！
そこでおすすめしたいのが携帯浄水器です。携帯浄水器のメリットは、非常時の飲料水確保だけではありません。例えば飲料水を全く持っていかなかったとしても、川や湧き水があればいくらでも飲み水を確保できることです。そして、携帯浄水器自体はかなりコンパクトなので、それだけ携行する飲料水を減らして、荷物を軽くすることができるというわけです。しかも、浄水器なら普通は飲むことができなそうな泥水でも濾過することができます。 また、登山やアウトドア以外に、近年多発している自然災害など、非常時の飲料水確保にも有効で、人気が高まっています。
登山におすすめ！携帯浄水器8選！
MSR ミニワークスEX
過酷な登山にも耐えられる携帯浄水器
軽量でコンパクトな携帯用浄水器です。耐久性に優れたセラミックフィルターを採用しており、能力が落ちてきても、工具を使わず分解することが可能で、フィルターカートリッジを清掃すれば能力が回復します。別売りでメンテナンスキットやウォータータンクもラインナップされており、オプションが豊富なのも魅力です。 動力は手動ポンプなので、どんな状況でも使用することができます。登山やアウトドアだけではなく、非常時の備えとしてもおすすめです。 MSR（Mountain Safety Research）はアメリカの登山用品メーカーで、クライミング用品の安産性と信頼性の研究のために設立されました。特にテントは救助活動や厳しい環境下での登山に使用されており、高い信頼性を誇ります。浄水器においては、社内に微生物研究施設を持っており、そこで培ったノウハウを生かして浄水器の開発をしています。その製品は国際救助隊やアメリカ軍での使用実績もあります。
MSR TRAIL SHOT マイクロフィルター
MSR｜浄水器 TRAILSHOT トレイルショット マイクロフィルター 31385
出典:Amazon〈製品詳細〉 サイズ：14×6.3センチ/重量：145.8グラム/フィルター素材：中空糸膜 フィルター穴サイズ：0.2ミクロン/フィルター寿命：2,000リットル/流量：1リットル/分
軽装登山向け超コンパクトな携帯浄水器
こちらもMSRの製品ですが、このタイプの本体は、ポンプとフィルターがコンパクトに一体化した構造になっており、本体を握るだけでろ過することができます。池や川から直接ポンプで吸ってろ過することができるので、浄水しながら直接飲むこともできます。また、ハイドレーションタンクに接続すれば、水を持ち歩きながらろ過することもできます。 非常にコンパクトで軽量な製品なので、通常の登山のほかに、トレイルランニングのような軽装の登山におすすめです。
KATADYN（カタダイン）コンビ
スイス生まれの高性能携帯浄水器
スイスの浄水器専門メーカーである、KATADYNの高性能携帯浄水器です。製品名が示すとおり、セラミックフィルターと活性炭フィルター、2つのフィルターを内蔵しています。2つのフィルターはそれぞれ違う役割を持っており、セラミックフィルターは大腸菌類やバクテリアなどの微生物をろ過します。活性炭フィルターは水の色や臭い、化学物質などを吸着する働きがあります。 KATADYNの浄水器は非常に高性能なフィルターを備えており、ドイツの製品テストで最高評価を獲得しており、NATO軍やアメリカ陸軍でも採用実績のあるモデルです。また、KATADYNのセラミックフィルターは他社製品に比べて寿命が長く、簡単なメンテナンスをすれば最大で50,000リットルもの水を浄水できます。また、フィルターは乾燥状態でも長期保存が可能なので、災害時の備えにもおすすめです。
カタダイン スター コンビ(携帯用浄水器) 12256
〈商品詳細〉 サイズ：27×6センチ/重量：580グラム/フィルター素材：セラミック、活性炭 フィルター穴サイズ：0.2ミクロン/フィルター寿命：最大50,000リットル 流量：1リットル/分
Life Straw（ライフストロー） パーソナル
ストローみたいに直接飲むだけ！誰でも簡単に使える浄水器
少し前に日本でも話題になった携帯浄水器です。使い方は至って簡単で、その名のとおりストローのように水を直接飲むようにして使用します。ライフストローの内部は中空糸膜という中が空洞になっている糸状のフィルターが入っており、水を中空糸膜に通してろ過されます。使用後のメンテナンスも簡単で、ストローに息を吹き込むだけでフィルターの詰まりを予防します ライフストローは軽量、コンパクトで登山やアウトドアにも気軽に持っていくことができます。また、長期保管も可能なので、災害時の備えとしてもおすすめです。もしものときにも、おもむろに「ライフストロー！」の掛け声とともに取り出せば、気分は22世紀のネコ型ロボットです。
Seychelle（セイシェル）携帯浄水ボトル
登山のほかにも便利な浄水器
アメリカの浄水器メーカーSeychellのボトル型携帯浄水器です。ボトルのキャップにフィルターが付いているだけのシンプルな構造ですが、独自の活性炭フィルターを採用しており、高いろ過能力を持っています。大腸菌類はもちろん、水銀などの重金属類、放射性セシウムも99パーセントろ過することができます。使い方も簡単で、本体ボトルに浄水したい水をいれて、あとはそのままキャップに付いているフィルターを通して飲むだけです。フィルターの寿命は380リットルと少々心もとないですが、交換用のフィルターも売られているので安心です。また、フィルターは未使用状態ならば約15年間保存できるので、非常時の備えにもおすすめです。
Platypus（プラティパス）グラビティワークス4.0フィルターシステム
水を入れて吊るすだけ！手間いらずな携帯浄水器
こちらはハイドレーションシステムでお馴染みの、Platypusの自然流下式の携帯浄水器です。重力を利用して、上から下に水を流すだけで飲料水を作ることができます。フィルターは中空糸膜ですが、オプションで活性炭フィルターも販売されています。4リットルの水を2分半ほどでろ過することができるので、水を大量に使うキャンプなどのアウトドアにもおすすめです。また、ろ過水用のパックは、ハイドレーションのパックとしても使えるようになっています。
アーバンテック スーパーデリオス
安心の日本製！コンパクトだけどすごい浄水器
スーパーデリオスは日本製の携帯浄水器です。マヨネーズ容器のようなシンプルな構造ですが、キャップ部分に高性能なフィルターを内蔵しており、コンパクトながら中空糸膜と活性炭、２つのフィルターを備えています。ボトルは柔軟性のある素材なので、小さく折りたたむこともできます。使い方も簡単で、水を入れてボトルを握るだけなので、登山のほかに非常時の備えとしてもおすすめです。また、交換用フィルターも販売されているので、ボトルは繰り返し使えて経済的です。シンプルな構造ゆえに低価格なのも魅力です。
水道機工 マクセス・セイフティー
登山には持っていけないけれど…移動式超高性能浄水装置
これぞ最強の携帯用（？）浄水装置！これ1台で都会の川でもプールの水でも、どんな水でもあっという間に飲料水に変えることができます。その浄水能力は、なんと1時間に１トンもの飲料水を作り出します。フィルターには人工透析でも使われている限外ろ過膜という中空糸膜が使われており、ほとんどの病原菌を除去することができます。また、水道水の滅菌に使われている次亜塩素酸ナトリウムの注入装置も備えており、病原菌を念入りに滅菌します。一応移動式ですが、重量が約160キロもあり、登山に持っていくのは事実上不可能であることと、作動に100ボルト電源が必要なので、アウトドアにおいては別途発電機が必要なことです。とはいえ、ろ過能力は折り紙付きなので、資金に余裕のある人は、多人数でのキャンプ用や、非常時の備えとして検討してみてはいかがでしょうか。
〈商品詳細〉 サイズ：約1.2×0.6×1.6メートル/重量：約160キログラム フィルター素材：中空糸膜/流量：1,000リットル/時
まとめ
一口に携帯浄水器といっても、その大きさや能力も様々です。今回紹介したほかにも、様々な製品があるので、登山だけではなく非常時の備えとして、お気に入りの浄水器を見つけてみてはいかがでしょうか。