登山時に現在地を紙の地図で確認するときの罠
普段、登山をされるときはどうやって自分の現在地を特定していますか? 多くの方が地図とコンパスを使い、目立つ山や建物を利用して現在地を割り出しているのではないでしょうか。 しかしこの方法、天候不良になった瞬間に自分の位置が分からなくなるというリスクが常に付きまとっています。 また、たとえ天候が良い場合でも、コンパスの正置や磁北線の書き込みなど、普段し慣れない作業に苦労したり、頑張った割に精度が高くない……ということもあるのではないでしょうか。
登山時こそ! 迷った時に頼れるスマホのGPS
ガスで周りが真っ白……というような、視界が悪い状況でも現在地を割り出すのに便利なのがGPSです。 このGPS、登山に限らず、普段の街歩きでも利用したことがある方もいると思います。 GPSとはGlobal Positioning Systemの頭文字で、人工衛星を利用した測位システムのことを言います。空の上から自分の位置を座標として特定してくれるのが特徴で、座標は緯度と経度を組み合わせて表現されます。 屋外の障害物が少ない場所では誤差1mほどの高精度で現在地を特定できるのが特徴です。
スマホのGPSがすごいワケ
GPSはスマホ(iPhone、Android、BlackBerry等)に入っている以外に、カーナビやGPSを取得する専用の道具GPSロガー、最近ではデジタルカメラにも組み込まれています。 しかしこれらのGPS、同じように見えて大きな違いがあるんです。 それは、スマホのGPSは他の機器と違い、携帯電話の通信回線を補助的に利用して現在地を割り出しているという特徴があるということです。 スマホは各基地局を経由して通信を繋いでいます。この最寄りの基地局の情報を利用して、より早く高精度で現在地を割り出せるようにしているのがスマホのGPSなんです。 そのため、GPSロガーなどのGPS単体の機器では現在地取得に10分もしくはそれ以上かかるところ、スマホのGPSでは数秒、遅くとも1分以内に現在地を取得できるというメリットがあります。
登山用GPSスマホアプリを選ぶポイント
いくらスマホにGPS機能が搭載されているとしても、それ単体では意味を成しません。そこで、GPS情報を活用するためにアプリの存在が必要となります。 そんなスマホアプリ、機能や操作性などの異なるものが多くリリースされています。しかし、登山時に使用する場合に検討するべきポイントがあります。 それが、バッテリーの問題です。 基本的にスマホは緊急時の連絡用ツールです。そのため、バッテリーをいかに長持ちさせるかが重要な課題となってきます。 たとえ精度良好で便利だったとしても、アプリ自体が動作にバッテリーを多く使うとなると、安心して山では使えません。 また、登山中に地図をダウンロードするのはかなりバッテリーを消費する上、電波状態が悪い場合に地図を見られないのは痛手となるため、オフラインで地図が表示されるのがベストです。 バッテリー消費についてはスマホとアプリの相性の問題もあるため、スマホにアプリを何種類か入れてみて、自分のスマホと相性の良いアプリを選ぶのがおすすめです。
スマホのバッテリー消費対策は機内モードで
通信機器である特性上、スマホは常に電波を探している状態です。この電波を探すという動作、実はとてもバッテリーを食っています。 先日、スマホを4時間ロッカー(電波が入りづらい場所)に入れておいたのですが、機内モードにした場合としない場合とでバッテリーの減りが15%違いました。 山は特に基地局が少なく電波が入りづらい場合が多々あると思います。そのため、登山時は普段よりも多めにバッテリーが消費されると考えた方が良いでしょう。 そんな山でのバッテリー対策で有用なのが、機内モードの存在です。機内モードにしておけばスマホは電波を探すことをしません。そのため、スマホが電波を探すために稼動する分のバッテリーを温存することが出来ます。 なお、オフラインにしておいてもGPSはきちんと作動します。もっとも、基地局の情報を利用せずに現在地を取得するためきちんとした精度での現在地割り出しには時間がかかります。 いったん現在地が特定できてしまえばその後の精度はオンラインの場合と同じ。そのため、最初の位置特定さえクリアしてしまえばオフラインでの利用で問題ありません。 この初回位置特定にかかる時間への対処法としては、登山開始前にいったんオンライン状態で現在地を取得してからオフラインに切り替えるのがおすすめです。 機内モードの設定方法は機種によって違います。iPhoneはホーム画面の設定から、Androidはアプリメニューの設定からできる場合が多いようなのでご自身の端末で確認してみてください。
登山時に使えるGPSアプリ9選
今回はスマホアプリの中から、登山時におすすめのアプリをご紹介します。 なお、筆者はAndroidユーザーのためAndroidアプリが中心になりますが、iPhone版アプリについてもご紹介するのでご安心ください。
イチオシ登山用スマホアプリ「ジオグラフィカ」
AndroidとiPhone、両方に対応している「ジオグラフィカ」。標準地図のみならず航空写真や火山基本図なども搭載されており、かなり優秀な地図アプリです。 硬派な表示が好みの方には間違いなくおすすめできるアプリだと言えます。
ヒントが多くてわかりやすい
ジオグラフィカの特徴はヒントが多く掲載されていて、操作方法がわかりやすいことにあります。また、メニュー表示も見やすく、直感的に操作ができるようになっています。
登山ルート確認に便利! 多彩な地図メニュー
それだけでなく、地図の種類も豊富。目的に合わせて地図を使い分けたり、重畳的に利用することでルートの確認をより正確に行うことが可能となっています。
オフラインで利用可能
また、地図はあらかじめ保存しておくのがおすすめです。これによりオフライン(機内モード)にした状態でも地図とGPS情報を確認することが出来ます。
登山の醍醐味?!高度確認&経路確認機能
右側の上から5つめの足跡マークを利用すれば、移動経路の記録を残すことが出来ます。歩いてきた道が赤色の線で表示されるので、随時確認するもよし、下山後にゆっくり確認するもよしと、様々な楽しみ方が可能です。 さらに、GPSの座標をもとに地図と連携して高度の表示もしてくれるので、高めの山に登った際は画面のスクリーンショットをとってSNSで周りに報告するというのも面白いです。ちなみに精度はプラスマイナス4mとなかなかの精度をもっています。
登山初心者に優しい「山とも」
「山とも」はAndroidのみ対応です。「山とも」をインストールすると「山ともGO!」も同時にインストールされるようになっています。 「山とも」は下山後の山歩きルートの整理に使用するアプリで、「山ともGO!」は登山計画をたてる場合と、実際に登山しているときのルートログに使用するアプリです。
登山前の下界での準備
山ともは、事前のルート登録によって登山中道を外れた場合にアラームを鳴らすことが出来たり、登山中に撮った写真について撮影時間データとGPS情報を関連させて表示してくれるなど、登山初心者におすすめできるアプリです。 もっとも登山特化アプリであることから、利用できる範囲がいわゆる登山エリアに限られているので、普段の街歩きには不向きなので注意してください。
道外れアラーム
事前に登山計画をたてて「山ともGO!」に保存しておくことで、登山開始後、道から外れた場合にアラームを鳴らすことが出来ます。 どの程度道から外れたらアラームを鳴らすのかなど、アラームについての設定が細かくできるのが特徴です。方向音痴の方は設定しておくと安心です。 もっとも、GPSの精度の限界(現在地のブレ)があるため、あまりに厳密にアラーム機能を設定するとアラームが鳴り続けることになります。ゆとりをもたせて設定しておくのがおすすめです。
スマホならでは! 下界の人への緊急通知
オンライン(機内モードオフ)の場合に限られますが、ログ記録画面の「緊急」ボタンを長押しすることで、その時点のGPS情報を事前に登録したメールアドレス先に送信することが可能です。 メール送信は山ともアプリの配信元が行ってくれるため、自分でメールの作成をしなくていいというメリットがあります。もっとも、こういった緊急送信を使用しないで下山できるのが一番なのですが……。
登山後にログを見る楽しみ
登山中に表示される画像は上のようなものですが、これを登山後に見ることも可能です。 なお、今回、登山中に複数のアプリの動作確認をしていた関係で、休憩中しかGPSを起動していませんでした。しかし、このアプリではGPS情報と取得時間に基づいて位置情報を繋いで経路を示してくれます。 直線でつなぐため高精度というわけにはいきませんがおおまかなルートの確認は可能です。
また、「山とも」では、単にルートだけでなく、登山中に撮った写真を時系列にまとめて表示してくれるのもおすすめできるポイントです。 GPS情報と一緒に関連付けされているため、どの場所でどんな写真を撮ったのかが一目瞭然なのが嬉しいところ。なお、表示したい画像を取捨選択することも可能です。
スマホへの負担が著しく低い「山旅ロガー」
「山旅ロガー」は「ロガー」の名がついている通り、GPS情報のログをとってひたすら記録し続けるという極めてシンプルなアプリです。起動までにかかる時間がとにかく早いのが特徴です。 Androidのみ対応です。
シンプルすぎる稼動画面
使い方は簡単。「測定開始」を押すだけです。iマークのオプションでログをとる頻度を変更することが出来ます。 アプリで見られる記録は高度のみで、地図に位置情報を反映させるには「地図ロイド」など別のアプリが必要です。そのため、登山中に使うというよりは下山後に経路を確認するのに利用するアプリだと考えた方が良いでしょう。
離脱アラームや電池アラームなどのオプション
他の地図アプリとの連携をすることで、事前に登録したルートと外れた場合に離脱アラームを鳴らすことが出来ます。また、バッテリーが減ってきたときにアラームを鳴らすこともできるので、バッテリーの減りが気になる方は利用するのもおすすめです。
バッテリーの使わなさは最優秀
「山旅ロガー」はとにかくシンプルなアプリであり、地図描写を行わないということもあって、バッテリーは全然減りません。 バッテリー切れは心配だけどせっかくの登山だから自分が登ったルートの記録は残したい、という場合に重宝するおすすめアプリです。
登山でも街歩きでも。「グーグルマップ」
iPhoneとAndroidの両方に対応している「グーグルマップ」。街歩きでも活躍するこのアプリは山でも活躍してくれます。
等高線が読めなくても安心の表示
街歩きの場合と異なり、標高に合わせて若干立体感のある表示をするグーグルマップ。実はピンチアウトすると等高線も表示されるんです。
国土地理院の地図よりも立体感をもった描写がされるため、直感的に山の構造を把握することが可能です。 等高線を読むのが苦手……という方には間違いなくおすすめできます。
航空写真で道の把握が可能
若干表示に時間はかかりますが、グーグルマップの航空写真の特徴はとにかく見やすいことにあります。 色彩がはっきりと表示されるため、建物の屋根の色や道の様子、どのあたりからザレ場になるのかなどを確認することが出来ます。
日本国内ではオンラインでないと動作しません
何かと優秀なグーグルマップですが、ルートのログをとる機能はありません。また、日本国内については地図を事前にダウンロードすることができないため、オンラインでないと地図が表示されないという欠点があります。 海外の場合は事前に地図をダウンロードしておくことができるので、国外で登山する場合の現在地把握には使いやすいアプリの一つです。
圧倒的シェアを誇る「山と高原地図」
登山時の地図と言えば「山と高原地図」。紙の地図は各エリア1000円ほどで販売されているため、使用したことがある方も多いのではないでしょうか。 ちなみに紙の地図は下のように所要時間や高原植物情報、登山ルートにおける注意情報などが詳しく書かれている便利なものとなっています。
下は同じ縮尺の国土地理院の地図。全然違います。
そんな「山と高原地図」がスマホでみられるアプリとしても登場しています。こちらはiPhone とAndroidの両方に対応しています。
地図は事前ダウンロード制(有料)
地図はオフラインで確認することが可能です。そのため、事前に時間のあるときにダウンロードしておくのがおすすめです。 ただし、各エリア500円での販売となっているため注意が必要です。 もっとも、有料であることのメリットもあります。それは、情報が毎年更新されるということです。特に泊まりがけで縦走するような場合には山小屋、避難小屋などの最新の情報が必要となってきます。 無料アプリではできない、きめ細やかで新しい情報はお金を出す価値があります。
コミュニティサイト連携「YAMAP」
「YAMAP」はアウトドアコミュニティサイトと連携している登山アプリです。iPhone とAndroidの両方に対応しています。
スマホのカメラ機能をフル活用! 写真関連付け機能
「YAMAP」はWEBサイト「YAMAP」に無料会員登録をすることで利用することが可能です。経路ログ機能や画像との関連付けがわかりやすいのが特徴です。 また、情報の共有をするのが他のアプリに比べて簡単なため、SNSなどを利用することが多い方におすすめです。
スマホとパソコンでもっと楽しめる
他のアプリと異なり地図を紙にプリントアウトすることが可能なほか、地図を事前ダウンロードしてオフラインで利用することが可能です。 WEBサイト「YAMAP」は掲示板などのコミュニティサービスがあるため、そこで情報交換をすることも可能となっています。また、他の人が撮った写真も見ることが出来ます。
クールなガジェットが特徴の「MyTrails」
「MyTrails」はAndroidアプリです。もっとも、iPhone用の同名のアプリが存在するようです。同じアプリかどうかは確認できていません。ご了承ください。
「MyTrails」は英語表記のアプリです。ですが、カラーリングや表示内容が日本のアプリと違ったクールさがあって面白いので紹介させていただきます。
現在地表記がスマホゲームっぽい
まず、現在地反映の精度は予想よりも正確です。進行方向が矢印ではなくライトで照らすような雰囲気で描写されるのがRPGっぽいです。
スマホのハイテク機器っぽさが出るデータ画面
そして、高度や速度表記のページがこちら。
この画面はトップ画面のメニュー部分から呼び出すことが出来ます。 高度や速度以外に、所要時間なども表示されます。基本は黄色で、ログが増えると過去のデータが紫色や青色で表示されるようになります。 この画面のスクリーンショットを撮ってSNSに投稿すればかなりカッコいいこと間違いなし。
登山と言うよりはルートが明確なトレイルラン・自転車向き
なおこのアプリ、駐車場について無駄に詳しいです。
しかし山小屋情報については情報が少ない(海外の地図は比較的しっかり描写されていました)ので注意が必要です。
GPSロガーとしての「Nike+ RUN CLUB」
Nikeのランニング用アプリ「Nike+ RUN CLUB」。iPhone とAndroidの両方に対応しています。 ランニング用アプリを登山に使うというのはあまりイメージがわかないかもしれませんが、普段の街走りだけで使うにはもったいない機能が色々とついているのでご紹介します。
色で見る速度変化
このアプリでは、高度や距離以外に、ペース(速度)の記録もされます。そして、速度に応じて緑色・黄色・赤色と異なる色で地図上に表示がされるんです。 そのため、時折アプリを確認することでペースの確認が直感的にできるという特徴があります。また、傾斜の変更がないのに速度が落ちている場合など、自覚のない疲労についても目で見てわかるため、休憩取得の目安とすることも可能です。
スマホに加えてwatchとの連携で心拍数が表示できる
「Nike+ RUN CLUB」は、Apple Watch Nike+(心拍計つきのスマートウォッチ)と連携することで心拍数の表示をすることが可能です。これにより、高度と速度と心拍数を同時に把握することが出来るため、高山病への対処が容易になります。
バッテリー消費は多め、でもログデータが魅力的
「Nike+ RUN CLUB」はグーグルマップを利用している関係上、バッテリー消費は多めです。もっとも、スマホをスリープ状態(画面が真っ黒の状態)にしていてもログを撮り続けてくれるため、随時地図を描写しない分バッテリーの減りを抑えることができます。 登山後のログデータは経路以外にGPS情報をもとにした気温や天気も表示されるため、絵日記感覚で記録をしておくことが可能です。また、ログデータをワンタッチでSNSに共有することが出来るのも魅力の一つです。
シンプルかつ高性能なiPhone用アプリ「やまやまGPS」
「やまやまGPS」はiPhoneのみ対応です。航空写真や普通の地図など、数種類の地図を使い分けることが可能となっています。 iPhoneアプリらしくタッチアンドスワイプで記録を取れるという特徴があり、操作画面がシンプルなので初めてでもわかりやすいです。 移動距離のみでなく、高度や平均速度も表示され、また、そのデータは折れ線グラフでみることも可能です。特に自転車乗りの方には使い勝手がよさそうなアプリとなっています。
お好みの登山アプリで快適・安全な登山を!
スマホの機能は年々磨かれ、バッテリー容量が増加されたり、GPSの精度向上が行われたりしてきています。 そのため、アプリの選択にあたってはカラーリングやボタンの配置、SNS共有機能など、自分の好みのものを選ぶのも大切です。 GPSアプリを取り入れることで、登山の時間がもっと安全で楽しい時間になれば幸いです。