真夏の悪夢!忍び寄る吸血鬼「山ヒル(ヤマビル)」の恐怖!
夏休みのアウトドアと言えば、キャンプや登山。新緑の中、汗を流すのは気持ちがいいものです。 近年のアウトドアブームによって、山歩きを楽しむ人の数も増えていますよね。
山には危険もいっぱい…
とはいえ、相手は「自然」。山をナメてはいけません。山には危険があふれているんです。甘く見るとケガや感染症、最悪の場合は命に関わることもあるんです。
夏の山で想定されるリスクにはこんなものがあります。 ・天候の急変 ・クマ ・ヘビ ・スズメバチ ・蚊やアブ ・鉄砲水 ・滑落 そして、今回取り上げる「山ヒル(ヤマビル)」です。
夏山に入る際は事前の準備が重要
自然の脅威から身を守るためには、事前の準備が何より大切です。 想定されるリスクと、それに対する予防策・緊急時の処置や対処法を身に付け、必要物品をそろえておく必要があります。 というわけで、今回は「山ヒル(ヤマビル)」の生息域や生態、噛まれたときの対処法から噛まれないための対策までを伝授です。
山ヒル(ヤマビル)の生態と生息域
ヒルというと、水辺の生き物という認識を持っている人が大半ではないでしょうか? ところが、いるんですよ、山の中にも。 その名も「山ヒル」。実にストレートなネーミングですね。地域によってはヤマビルと濁った呼び方をされることもあります。 まずは山ヒルについての基礎知識を頭に入れておきましょう。
山ヒル(ヤマビル)の生態
それではまず、山ヒルの基本的な生態からです。 山ヒルは他のヒルとは違って陸地に生息しています。 乾燥に弱いため、湿潤な場所を好み、普段は葉の裏や苔のある岩陰などに潜んでじっとしているのです。 山ヒルは、動物の発する熱や二酸化炭素などを感知することが可能で、ターゲットが近くにいることがわかると活動を始めます。
寿命はおよそ2~3年程度。 雌雄同体で春~秋にかけて繁殖を繰り返します。 冬を迎えると冬眠状態になり越冬です。 活発に活動できるのはおよそ20℃~30℃程度の気温下です。そのため、夏では早朝や夕方~夜間が特に注意が必要な時間帯となります。
山ヒル(ヤマビル)の生息域
山ヒルは北海道を除くほぼ日本全域に生息しています。 特に湿度の高い山間部や渓流沿いを好みますが、近年では公園や住宅地などでも生息と活動が確認されています。 雨天時や雨上がりなどに特に活発に動き回り、吸血被害にあう確率が高くなるのが特徴です。
山ヒル(ヤマビル)の外見的特徴と大きさ
山ヒル(ヤマビル)がどんな姿なのかを知らなければ何も始まりません。 外見的な特徴や大きさ、動き方についてまとめました。
山ヒルの外見
山ヒルの外見的な特徴を説明します。 赤褐色~黒色で、円筒刑をしています。 最大の特徴は、背中に3本の黒い線が入っていることです。 体ほ先端部がやや太く膨らんでおり、そこに吸盤と口を持っています。
山ヒルの大きさ
山ヒルの体は非常に伸縮性があり、それを利用してターゲットを探したり移動したりします。 また、吸血すると、その分だけ大きく膨らみます。 体長は2~5㎝程度。体を伸ばした状態では、倍近くの長さになります。
山ヒルの動き
山ヒルは思ったよりもずっと速く移動することが出来ます。 平均的な速度は分速1m程度。尺取り虫のように地面を這って動きます。 吸盤を利用しながら移動するため、高いところもなんのその。 多少の衝撃ではふるい落とされることもありません。
地面から足元を這いあがってくることもあれば、頭上の木から降ってくることもありますし、肩や首付近の葉や枝から体を伸ばしてくっついてくることもあります。 上下前後左右、すべてから迫りくるのが山ヒルなのです。
山ヒル(ヤマビル)の吸血方法は?毒はあるの?~
吸血生物の中には毒を持つものも少なくありません。 山ヒルはどうなのでしょうか? 山ヒルの吸血方法と毒の有無を調べました。
山ヒルの吸血方法
ターゲットを見つけると、山ヒルは素早くターゲットまで移動を開始します。 吸盤を利用して皮膚に張り付き、吸盤の中にある歯で皮膚を切り裂きます。そして傷口から流れてくる血液をなめとるように吸っていくのです。
吸血行動は長いと数時間程度続きます。基本的に山ヒルがお腹いっぱいになるまでは自発的にターゲットから離れることはありません。
山ヒルに毒はある?
吸血生物の中には、毒を持つものも存在しますね。山ヒルはどうなのでしょう? 山ヒル自体は毒を持っていません。 だからと言って油断は禁物。 感染症などの媒介となることがあるからです。 山ヒルは、人間だけでなく他の動物もターゲットとします。人がいなければ、その地に生息する他の動物の血液を吸って生きているのです。
動物のなかには病原菌やウィルスを持っているものも少なくありません。山ヒルの吸血行為によって、動物の持つ菌やウィルスが山ヒルに移行します。そして人間に山ヒルが噛みついた時、それらが私たちの体内に入り込むのです。
山ヒル(ヤマビル)に噛まれた!5つの症状とは?
あらゆるところから私たちを狙う山ヒル。 山ヒルに噛まれたときにはどのような症状が現れるのでしょうか?
症状1:無痛
山ヒルは、皮膚を切り裂いて流血させます。想像すると結構痛そうですよね。 ところが、山ヒルに噛まれてもすぐに気が付く人はほとんどいません。
痛くないのは麻酔成分を注入するから
山ヒルは、噛みつくときに口から麻酔成分を注入します。 これにより、皮膚が傷ついても痛みを感じることがありません。 また、皮膚の感覚も鈍くなるため、山ヒルが肌に張り付いていることにも気づきにくいのです。 血を吸って大きくなった山ヒルの存在が目に入り、初めて山ヒルに噛まれたことがわかるケースが大半です。
症状2:血が止まらない
山ヒルに噛まれたことに気が付くもう一つの要素は、出血です。 衣服が血だらけになっていたり、違和感を感じて首筋を触ると手が血でべっとり… そんな真夏にピッタリのホラー体験をさせてくれるのが山ヒルです。 イヤですね…… 山ヒルの噛み口はわずか数ミリ。 にもかかわらず、どうしてこんなに出血してしまうのでしょう?
血が止まらないのは血液凝固を防ぐ成分を注入するから
人間の体には、流血を止める仕組みが備わっています。専門的言うと「血液凝固因子」と言います。この働きによって、出血しても血が止まるのです。 ところが山ヒルはこの血液凝固因子の働きを阻害する成分を体内に持っています。 そして、噛みついた時に麻酔成分と一緒に傷口に注入するのです。
この成分は「ヒルジン」と呼ばれています。 ヒルジンの作用によって、山ヒルが体を離れた後でも流血がとまることはありません。適切な処置を行わなければ、数時間近くは出血が続くことになります。
症状3:特徴的な傷口
山ヒルの吸盤にある口にはギザギザの歯がついています。それによって皮膚に噛みつき出血させるのです。 山ヒルの歯の並びはアルファベットのYの字に似ています。 そのため、山ヒルによりできる噛み口も数ミリ程度のYの字のような形になります。 何に刺された(噛まれた)かを見極めるための大きな特徴になりますね。
症状4:アレルギー反応
人間の体には免疫という仕組みが備わっています。体の外から侵入してきた異物を攻撃してやっつけるのです。 こうすることで病気から身を守っているのですね。 ところが、この免疫が暴走してしまうことがあります。これがアレルギーです。 人によっては、山ヒルに噛まれたときに注入される成分に対してアレルギーを起こすことがあります。
具体的なアレルギー症状
山ヒルによって引き起こされるアレルギー反応は人によって様々です。 代表的な例を紹介します。
・かゆみ ・赤く腫れる ・痛み ・蕁麻疹 ・湿疹 噛み口にこのような症状が現れたら、抗ヒスタミン剤が配合されている薬を使用するか、皮膚科を受診しましょう。 特にアレルギー体質の人は要注意です!速やかに処置を行い、アレルギーのリスクを減らしましょう。
症状5:感染症
山ヒル自体に毒はありません。 しかし、「毒はある?」のところで述べたとおり、噛み口から病原体が入り込むことがあります。 基本的にはこれらの病原体は発症するほど強いものではありません。ところが、免疫力が弱まっている場合などでは症状が現れることもあるのです。
感染の心配はほとんどいらないけれど…
対策としては、噛み口に対する消毒などの処置を行うことです。すぐに正しい対応をとればほとんど心配はいりません。 とはいっても、念のため、山ヒルに噛まれてから数日間は感染症の兆候(発熱や消化器症状など)がないか注意してください。
どうする?山ヒル(ヤマビル)に噛まれたときの対処法5つ
山ヒルへの防護対策が十分ではなく、噛まれてしまった場合、どのような処置を行えばよいのでしょう? 優先度が高い順に対処法を紹介します。
対処法1:体から離す
なにはともあれ、体から山ヒルを離すことが最優先です。山ヒルがくっついたままでは消毒や止血などの処置が行えませんから。 しかし、山ヒルの吸着力は結構強く、ちょっと引っ張ったくらいでは離れません。それに、無理やり引きはがすと皮膚をさらに傷つける事にもつながります。
山ヒルの離し方
山ヒルに対して有効なアイテムがあるんです。 それは食塩! 山ヒルはとにかく乾燥が苦手。食塩をかけることで強制的に脱水状態にさせるのです。 力尽きた山ヒルが自然に体から離れるのを待ちましょう。 そのほかにも ・アルコール ・酢 ・火(ライターなど) ・防虫スプレー なども有効です。
普通の食卓塩で十分です! ガンガン振りかけましょう!
対処法2:傷口を絞る
山ヒルに噛まれたところは、麻酔成分や血液凝固を妨げる成分が入り込んでいます。 できるだけ早くこれらの成分を体の外に出す必要があります。 そのためには、噛み口をギューッと絞りましょう。血液と一緒に体の外に排出させることが出来ます。 その際、ポイズンリムーバーがあると便利です。
ポイズンリムーバー以外で絞る際の注意点
傷口を絞る際には、いくつか気を付けなければいけないポイントがあります。 ・口で吸わない:口の粘膜から成分が再吸収されてしまう ・素手で行わない:手に傷があると、そこから成分が再吸収されてしまう ・すぐに流水で洗う:成分を残さないため
対処法3:流水で洗う
傷口を絞ったら、すぐに流水で洗い流します。 できれば絞るのと同時に行うのが理想。最低でも数分以上は行いたいものです。 その際は、水が流れるのにまかせ、噛み口をこすったりしないように。山ヒルの成分が広がってしまう可能性があるからです。
対処法4:傷口の消毒と処置
感染予防のために、傷口の消毒を行います。 できればアルコール、なければ応急処置として食塩でも代用可能。 ただし、食塩は炎症を悪化させる場合もありますから、あくまでも緊急的な手段だと思ってください。 その後、かゆみ止めなどを塗っておくと安心です。
対処法5:止血
山ヒルに噛まれた場合、簡単に出血は止まりません。 絆創膏やハンカチ、タオルなどをキツめにまいて圧迫しましょう。 止血の基本は圧迫です。
念のため医療機関を受診して!
血液は最大の感染源です。 目立った症状がなくても必ず医療機関を受診してください。 その際は、山ヒルに噛まれたこととその日時を医師に申告しましょう。
駆除も忘れずに!山ヒル(ヤマビル)の撃退法!
にっくき山ヒル。これ以上被害者を出すわけにはいきません。 とりあえず血液を吸った山ヒルは動きが多少鈍くなっています。 手早く傷口の消毒や処置を完了させたら、最終ミッションです。
山ヒル駆除の方法
山ヒルは見かけたらその場で抹殺。 これが基本です。 そのための有効なアイテムが、やはり「食塩」。お手軽なのに万能選手ですね。 食塩をかける際、中途半端では息の根を止めることはできません。思い切ってたっぷり行きましょう。
他にも、 ・アルコールをかける ・酢をかける ・ライターで焼く(あぶる程度では十分ではありません) ・岩などですりつぶす(軽く踏みつけた程度では死にません) などでもOKです。
敵を寄せ付けるな!噛まれないための山ヒル(ヤマビル)対策は?
山ヒルの被害にあわないためには、自分の体に侵入させないことが何より大切! 山ヒルの生息域に入る際には防備は確実な体勢を整える必要があります。
山ヒルはわずかなスキをついて侵入してきます! 鉄壁の守りを!
対策1:服装
夏であっても、基本は長袖・長ズボンです。 そして長靴などで足首を覆います。 首筋にはタオルをしっかり巻いて、侵入口をできるだけふさぎます。 シャツなども恥ずかしがらずにズボンにINしましょう。
山中でオシャレを優先している方がよほど恥ずかしいことをお忘れなく! 帽子も必須。できるだけつばの広いものが適しています。 山歩きの大原則は、「できるだけ皮膚を露出させない」です。
対策2:食塩
塩には魔除けの力があるなんて言い伝えもありますが、食塩はまさに山ヒルという「悪魔」に対して万能の力を持っています。 振りかければ山ヒルを退治できます。 食塩水で服やタオルなどを濡らしておけば、文字通りの「魔除け」です。
そして緊急時には消毒薬の代わりにも。 おまけに脱水症状の軽減にも一役買ってくれます。 なにより、わざわざ買う必要もありません。 山に入る際には食塩をお忘れなく!
対策3:アルコール
食塩に次ぐ有能アイテムがアルコール。 消毒薬として使えるだけでなく、山ヒル退治にも有効です。 ただし、採血などで消毒用アルコールにかぶれたことがある人は、専用の消毒薬を準備しておきましょう。アルコール消毒で逆にアレルギーを起こす可能性があるからです。
対策4:虫よけ
アウトドアショップなどでは、山ヒル専用の虫よけが販売されています。 少々お値段が張りますが、山ヒルの嫌いな成分がてんこ盛り。 1本準備しておくのもいいかもしれませんね。
山ヒル(ヤマビル)に噛まれたときは慌てず冷静に処置を!
山ヒルの被害にあったときは、とにかくパニックになりがちです。 ですが一番大切なのは落ち着くこと。 山ヒル自体に毒はありませんし、失血死することもありません。 冷静にひとつずつ処置を行っていけば心配いりません。 まずは心を落ち着けましょう。
山ヒルの悪夢は現実に起こります…