家庭菜園のだいご味を知ることのできる桃
時期ごとの変化を楽しもう
桃は庭や家庭菜園で育てることができる楽しみの多い果樹です。その理由は、春には梅につづいてたくさんの白、桃色から赤色の花をつけます。
そしてさらに若葉の新緑、さらに初夏から夏には果実がみのり、秋には紅葉が見られます。木の姿にはしだれ桃など風情のある品種もあります。
初心者が知りたい 果実・花・姿で選べる桃の品種
栽培の目的で選べる品種
桃にはたくさんの品種があります。目的に応じて選ぶことができます。庭や菜園の規模に合わせておおまかな木の大きさを品種で選べます。品種によって成木の大きさが違いますから、その視点から苗木や品種を選ぶことができます。
初心者が知りたい 好みの品種を選ぶには
果実で桃を選びたいとき
充実した果実を得たいならば、白桃や水蜜桃の仲間には果実が大きく、しかも味や風味の優れたものがあります。しかも比較的に安価で苗木が入手できる品種があります。種苗会社などにはさらにさまざまな品種があります。
花で桃を選びたいとき
桃の花を中心に花木の庭木として考えるならば、ほうきのような形の木の姿の花桃の仲間があります。これは枝が上に伸びる性質があり、開いて水平になりにくくほうきのような樹形のまま保つことができます。
したがってコンパクトな庭にも合い、アクセントとなりおすすめです。花つきがよいものが多いです。しかも花色は白色、紅色、薄紅色から選べます。
枝ぶりで桃を選びたいとき
枝ぶりを中心に考えるならば、ふつうの枝の品種に加えて、和風の趣が得られる枝垂れの品種があります。庭に独特の風情を与えシンボルツリーにふさわしいといえます。
初心者が知りたい オススメの栽培しやすい桃はこれ!
生食できる品種から選ぶ
好みに合わせて数多くある品種から苗木を選ぶことができます。確実に実をつけたい場合には複数の品種を混合して植えることをおすすめします。そして家庭菜園で桃を植える場合には通常は生食する品種が前提になるでしょう。
栽培しやすく味のよいおすすめの桃とは
白桃の品種は果実が大きく芳香があり、肉質が柔らかで味のバランスがとれたものが多いです。比較的安価に苗木が入手できおすすめです。
初心者が知りたい 桃栽培の5つのポイント
桃栽培のポイントその1:栽培の環境
さて、桃を家庭菜園や庭で育てる場合にはいくつかポイントがあります。基本的に日本各地で作ることができますが温暖な気候を好むほうです。
開花期の低温はあまり好ましくありません。 福島県~山形県以北であまり栽培量が多くない理由はそこにあります。一方、冬の平均気温が10度を超える暖かい地域では、花がそろわないことがあり果実のなり方がよくないことがあります。
桃栽培のポイントその2:育てやすい株選び
地域により桃をよく育てている方にたずねるなど品種を選んだほうがよい場合があります。各地の園芸店やホームセンター、植木市などで売られている品種の中から選択するとよいでしょう。
さまざまな情報に接するようになれば、信頼のおける通販の種苗会社から取り寄せることもできます。この場合には品種が明らかなものを選びましょう。
桃栽培のポイントその3:桃の性質を知る
桃は日光を好みますが、幹にあまり強い光を当てることは好ましくありません。上の枝葉で幹に影ができるようにします。庭に植える場合、一番よい方角は南、つづいて東ですが、風通しがよく水はけのよいところを選択します。強風が多いところや過湿の場所は好みません。
桃栽培のポイントその4:意外と短命な桃
それから桃は寿命が短いことで知られています。およそ20~25年が寿命といわれています。その点もよく考慮に入れて選択します。果実が優れているわりには労力のかからない果実です。
丁寧に作りたい、虫がつかないきれいな肌の果実を得たいということであれば、袋がけをするときれいにできます。これがもっとも手間のかかる作業といえます。
桃栽培のポイントその5:桃の果実とは
開花から2~3か月で果実が成熟する点は利点といえます。キウイフルーツ(写真)などとくらべると成熟までの期間が短いので、果実の管理が楽なほうだといえます。
それから桃はほかの果樹とくらべると土地がそれほど肥沃である必要はありません。ただしあまりにやせ地ですと果実のつきが悪くなります。腐植質の多いやわらかでふかふかした土のほうが果実のつきがよく、木の寿命も長くなりやすいです。
初心者が知りたい 桃栽培の環境と時期
桃の栽培に適した土壌のpH
わりと酸性の土壌(pH5前後)でも育つことが知られています。したがって日本の多くの土地は酸性土壌ですから、pHの調整は5~6とし、それほど注意を払わなくてもよいといえます。花後の追肥として草木灰を加えるか、元肥に先立って苦土石灰を加えるとよいです。
桃の品種と果実の成熟時期
桃には早生、中生、晩生の品種があります。早生は6月~7月上旬(地域により違いがあります)にかけて果実が出回る品種です。開花は中間地で4月初旬から中旬です。
晩生の品種は8月~9月上旬に果実が成熟(地域差あり)します。開花は4月中旬が多いです。中生についての果実の成熟時期は、早生と晩生のちょうど中間程度です。
栽培樹と受粉樹の開花時期
品種によっては花粉が形成されない、受粉に適さない品種もあります。その点は注意が必要です。受粉樹を選ぶ際には開花の時期をそろえ、なるべくそばに混植することが望ましいです。
めしべは開花から5日程度は受粉が可能といわれています。また開花が早い花のほうが果実の生育がよいことが知られています。また受粉時期に寒波に合うと花粉管の伸長がよくないことが知られています。
初心者が知りたい 鉢植え栽培と地植え栽培
地植え栽培と鉢植え栽培のちがい
たくさんの果実を長い期間にわたって育てたいならば、やはり地植えがおすすめです。場所が限られていて移動の可能性があるならば鉢植えでもできます。
ただし鉢植えできるといっても果実を得たい場合には、その木の大きさが鉢の大きさで決まってしまいます。得られる果実の数は必然的に少なくなります。また土を入れ替えて植替えをする手間が必要になります。
1.桃の苗木の鉢植え栽培の準備と方法
鉢植え用の土。肥料の準備
桃を鉢植えする場合には水はけとともに水持ちのよい土を選びます。最近は果樹用の土として鉢植え用培養土が売られています。そうした市販品を使うことができます。
慣れないうちはこうしたものの中から品質のよいものを選ぶとよいでしょう。 慣れてきたら自分で土を買ってきてブレンドして作ることができます。
この場合には赤玉土を中心に腐葉土やパーライトなどの水はけと水持ちの性質を備えた土にブレンドします。さかずき1杯程度の有機質肥料をよく混ぜこんでおきます。
鉢植え用の植木鉢の用意
鉢は大きめの10号ほどのものを準備します。移動が考えられる場合には抱えやすい形状の鉢がよいでしょう。土が入りますとかなりの重量になりますから、基本的に移動はかなり大変と認識しておきます。
つねに植木鉢を台や安定した低めの棚などに載せて育てるようにするとより移動させやすいでしょう。
鉢植えの場合の土入れと苗木の植えつけ
上の写真はアボガドの仮植えの例ですが、桃の苗木の場合もごく一般的な植えつけ法でかまいません。鉢底には素焼きのかけらを置き、鉢底石をしきつめます。
そこへ上記の果樹栽培用の培養土もしくは自分でブレンドした土を入れ、苗を置きます。
接ぎ木苗の場合には接ぎ木部分が土に埋まらないように注意します。鉢の上のふちから約3センチぐらいまで土を足します。鉢底から水が出るほど十分に水やりをします。
鉢植えの桃の苗木の植えつけ後の管理方法
植えつけた苗は30~40センチほどの高さで切ります。これで脇芽の成長をうながします。したがって最初の年の春の花はほとんど咲きません。これから鉢の表面の土が乾いたら水やりをするようにします。
鉢植えの桃は観賞が主
果実をつけたい場合には根が生育できるスぺ-スがある程度必要になります。基本的に多くの果実は望めませんから、初めて栽培する場合には数個程度を観賞用とわりきって育てるとよいでしょう。
花は十分に楽しめます。また、2年ほどで根がいっぱいになってしまいますから植替えが必要になります。
2.桃の苗木の地植え栽培の準備と方法
失敗しにくい苗木の地植えの時期
地植えは苗木が休眠しているあいだが最適です。植えつけの時期は落葉した11月下旬~1月上旬がのぞましいです。このあいだでしたら木の傷みが少ないです。植えつけ時期を守ればうまく根付くことが多いです。
地植えの場所の選定
まずは地植えする場所を決めます。基本的に地植えの場合は移動できませんから、よく考えて場所を選択します。受粉樹とともにスペースを確保します。
両者のあいだは生育した場合に枝が触れ合わない程度です。木をどれほどの大きさに育てるかにもよりますが、最低限でも4メートルほどはあけるようにします。これで最低限の作業スペースが確保できます。
桃の苗木の地植えの方法
また苗木とくらべて大きめの穴を掘ります。直径1メートルほど、深さは60センチほど掘ります。穴には土にたい肥か腐葉土をバケツで3杯と有機質肥料2にぎりを混ぜたものを投入します。
8~9割がた埋めたら肥料分を含まない土をその上にかけて、高さを見ながら苗を置いてみます。有機質を多く入れますから時間がたつと分解して結構沈んでいきます。
桃の苗木の地植え:根と土の密着に注意
ほぼもとの地面の高さに苗の根元が来るぐらいの高さで植えつけます。鉢植え同様に、接ぎ木苗は接ぎ木部分が土に埋まらないように注意します。
周囲に溝を浅くつくり、水を十分入れつつ棒などでつつきながら、根の周囲に土が入るようにしていきます。この作業を水ぎめといいます。
水を流し入れつつ、その上に土を15センチほどの高さで山にします。わらなどをマルチして乾きにくくしておきます。
桃の苗木の地植え:植えつけ後の剪定などの管理
植え付けた苗は60センチほどの高さで切ります。苗が動かないように仮支柱を斜めに刺して苗と麻ひもで8の字に結びます。1年置いた翌春から主枝になる芽が枝として伸びてきます。そののち花が咲き、2~3年目ごろから果実の生育についても十分期待できます。
初心者が知りたい 剪定の5つのポイント
その1.幼木はのびのび育てて弱く剪定
桃の枝は幼木のあいだはよく伸びます。若木のあいだに主枝をつくっていきますから、しばらくは極力弱い剪定にとどめます。すると自然と桃らしく開張した樹形になってきます。3,4本の主枝が放射状に開く(開心自然形)ようになってきます。
その2.開心自然形に向けた剪定
開心自然形の樹形を尊重すると初心者でも無理なく仕立てられます。この樹形はどの主枝の葉にもまんべんなく日光が当たり、風通しもよく作業もしやすいです。
その3.枝をすかせる剪定
ただし放任したままにしておくと徒長した枝が生じたり、枝が込み合うところができてきます。これらの枝は生育にマイナスになりがちです。この場合には、葉に十分光が届くことを想像しながら冬場に剪定していきます。
その4.主要な幹に日光をあてない剪定
その際に注意したいのが太い幹に真上から光がじかに当たらないようにすることです。幹は直射日光に弱いので、上の枝葉の影で覆うようにします。主枝の先端部を切り詰める場合には、半分ほどの長さのところで外芽のすぐ上で切るようにします。
その5.主枝以外をおもに剪定
主幹から出てくる主枝以外の枝は、5~6枚目の葉で摘心します。木の内側に向いている枝はもとから切ります。そして主枝に養分を集中させて十分に太くするように心がけます。果実がなりはじめるとかなりの重量になります。それに耐えるための強度が必要だからです。
初心者が知りたい おいしい果実をならせる方法
桃は剪定で生じた中果枝で果実をならせる
最も理想的な結果枝は中果枝です。中果枝は30~40センチほどの長さで、これにはもっともよい果実がなります。それよりも長く徒長しがちな長果枝は剪定します。短果枝にもならせることはできますが、中果枝の果実のほうが葉が多くよい果実になります。
花後の収穫に向けた手入れの方法:摘果
鉢植え、地植えとも花が咲いたあとの手入れは大切です。花後にそのままにしているとたくさんの実がつきます。そのままにしておくといずれも大きくなろうとして実の栄養が分散してしまいます。そこで適切な時期に摘果をします。摘果は果実を横に倒すようにするとポロリと取れます。
摘果の具体的な方法
1つの果実あたりの葉の枚数(15~20枚)が多いほど果実の生育はよくなります。開花からしばらくたつゴールデンウィークごろに摘果を終えるようにします。生理的に落果する分もあります。
何度かに分けて摘果するのがポイント
したがってあまり多く摘果すると、そのあとに生理落果がおこることがあります。残った果実がピンポン玉程度になってきたら、きれいに果実を育てたい場合には桃用の袋で袋がけをします。
桃袋の場合には袋で果実を覆ったあと、中央のへこみをしっかり持ち上げて、針金を桃の果実の短い果梗ではなく、結果枝にしばりつけます。
初心者が知りたい 収穫の方法
桃の収穫の具体的なやり方
果実は大きなものでは400g程度まで生育します。袋のあいだから色づくのがわかります。十分熟した頃合いを見て手で軽くもって枝先のほうに撚ると収穫できます。
果実は熟したものから順番に収穫
果実上部の青みが消えて桃色から赤みが強くなり、果実が柔らかで芳香がすれば熟しています。袋の下部を破って色や香りを確かめてみます。ただし袋は完熟するまでかぶせたままにしておきます。
虫などが香りに誘われてあつまるからです。 鳥やアリも集まります。したがって熟したらただちに収穫するようにします。袋の針金などは枝をいためますから収穫後にきれいに取り除くようにします。そして下に示したようにお礼肥を与えます。
初心者が知りたい 収穫までの3回の施肥方法
肥料をやるタイミング
休眠がとける直前の1~2月までに元肥を与えます。枝先のあたりに同心円状に溝を掘り、そこへ油粕、たい肥、鶏糞などを土と混ぜながら入れます。
また花後に果実を充実させるために追肥として、有機質肥料、鶏糞、草木灰などを元肥の3分の1ほど入れます。また果実の収穫後にお礼肥として窒素肥料を中心に追肥の3分の1ほど与えます。
それぞれの肥料の目的
1つめの元肥は、その年の休眠が明ける前(1月末)までに与えます。休眠明けにただちに十分な養分として、生育に勢いをつけるためのものです。
2つめの花後の追肥は、果実の充実のために用いられます。したがってこのタイミングで与える必要があります。 3つめのお礼肥は翌年に向けて休眠までのあいだに、葉や根を充実させておくために必要です。芽の充実に用いられます。
初心者が知りたい よい果実の収穫に向けての時期ごとの世話
冬の時期:休眠中でも土を柔らかに保つ
幼木のうちはとくに根をよくそだてるため、土は柔らかに保ち、広く根が伸びるようにします。それには休眠時期を中心に元肥とともに腐葉土やたい肥をしっかりすき込みます。
土の上はあまり乾燥しすぎないように、乾燥する夏場などはわらや刈り草などでマルチするとよいです。腐葉土は与え過ぎということは基本的にありません。
1本の苗木に対してバケツ3~4杯与えてかまいません。したがって腐葉土を自分で作れるようになるといいです。
春~夏の時期:除草、マルチ
幼木のうちはまだ根の張りが十分でありません。そのため除草がたいせつです。カヤ、ドクダミ、ヨモギなど根が四方にのびるものは早めに完全にとりのぞきます。
根の浅いはこべなどはそのままでもかまいません。草が生えにくいように夏場は刈草やわらでマルチがおすすめです。
年間を通じた病害虫の注意点
冬の時期の害虫:カイガラムシ
病害虫に関しては注意を払います。冬の時期には枝に白っぽいカイガラムシがつくことがあります(写真の矢印の先)。手袋をした手やワイヤブラシでこするときれいにとれます。
前記の方法でおとしてから、マシン油乳剤などの薬剤を散布します。
カイガラムシのついた剪定枝などは早めに焼却や処分をします。なるべく休眠している時期に薬剤を散布します。
春の時期の害虫:アブラムシ
葉には4~6月ごろになるとアブラムシがつきやすくなります。アブラムシはウイルスを媒介して縮葉病など葉を変形させてうまく育たないようにしてしまいます。アブラムシの防除を早めに行います。
5月中旬時期(以降)の害虫:モモノゴマダラメイガ
袋の口がVの字にカットされているのは、桃の果実がなっている枝に袋の口をかけて針金でしばるからです。
クリによくつくガですが、桃にもきます。果実を内部まで侵します。5,6月ごろ桃の果実に産卵に訪れますから、それまでのうちに袋がけを済ませておきます。
害虫の被害を防ぐ方法:肥料の注意点
落果したものをそのままにしておかずに拾い集めて処分します。アブラムシの被害はチッソ肥料をやり過ぎた場合に起こりがちです。したがって桃だけでなく、周囲の作物などに窒素肥料を必要以上に与え過ぎないことです。
むしろ果実を充実させる目的で、元肥に溶リンや鶏糞などリン酸肥料に重点をおきます。
元肥には、有機質肥料に加えて溶リン(溶成りん肥)や発酵鶏糞などを加えて、ゆっくりとリン酸が効くようにして果実の充実を図ります。
まとめ
基本に忠実に栽培を
桃は上に示した基本的な技術をおこなうことで栽培できる果樹です。そしてコツがつかめればびっくりするほどおいしい桃を収穫できます。
まずは年間を通じて作業の段取りが順番に思い浮かぶようにしましょう。着実に手順をふめば甘く芳香たっぷりの桃がたくさんとれます。
素焼き鉢のほうが鉢の表面から根に空気がいきやすいです。