エバニュー|4本爪アイゼンバックル式 EBY013 軽アイゼン
グリベル G12・ニューマチック
アイゼンとは?
アイゼンとは、雪や氷の斜面を登ったり、下ったりする際に、滑り止めのために登山靴の底に装着する、登山道具のことです。
冬に登山する際には、アイゼンは、必要不可欠な道具です。 春や秋でも、標高の高い山に行く場合や、夏に雪渓などを歩行する際にアイゼンは必要になります。
冬の雪山登山の魅力
登山は春から秋に行くことが多いと思いますが、冬の山は全く違った表情を見せます。 春から秋は、木々の緑や紅葉が見られますが、冬には、それらが雪ですっぽり覆われ、真っ白になります。その景観は非常に美しいものです。
冬の雪山に登るには、色んな装備や登山技術が必要です。雪山を登る大変さと引きかえに、素晴らしい景色と、難しい雪山を制覇した達成感により、最高の気分を味わえます。 このように、雪山は、春から秋の登山にはない魅力があります。雪のない山しか登ったことがない方には、是非とも、雪山登山に挑戦してほしいものです。
雪山登山のリスク
しかし、一方で、雪山は多くの危険と隣り合わせです。雪山登山のリスクは以下のようなものがあります。 ・道迷い(登山道が雪でかき消されます) ・滑落 ・雪崩 ・凍傷/低体温症 これらの中で、雪山における事故原因として、比較的割合が高いのが滑落です。雪山では、積雪や凍った斜面で、本当に滑りやすいです。
雪山で滑落しないようにするためには、アイゼンが必要となります。雪山を登る際は、滑落が起きないようにするため、アイゼンを装着した状態での歩き方を訓練をし、技術を身に付けておく必要があります。
アイゼンが必要な山の標高と季節
地域にもよりますが、アイゼンが必要な山の標高と時期は、以下のイメージです。 ■1,000メートル未満の里山や低山 冬には簡易的なアイゼンが必要ですが、秋と春には、よほど寒い日でなければ必要ないでしょう。
■1,000~2,000メートル級の山 冬には本格的なアイゼンが必要です。一方、秋と春には簡易的なアイゼンで問題ないでしょう。
■2,000~3,000メートル級の本格的な雪山 秋から春にかけて、本格的にアイゼンが必要です。そのような山は、夏には、雪渓が残っていることもあり、そこでもアイゼンが必要です。
爪の本数や構造の違いによる、7種類のアイゼン、その選び方
アイゼンは、爪の数、構造の違いにより、多くの種類があります。 色んな種類のアイゼンを、ルート、標高、時期などによって、使い分けます。 以下に、大きく、軽アイゼンと本格的なアイゼンに分けて、計7種類のアイゼンを紹介します。 初心者の方は、あまりにたくさんの種類があって、選び方を迷うでしょう。 それぞれのタイプのアイゼンについて理解し、自分の行きたい山や目的にあった、アイゼンを用意しましょう。
軽アイゼン(4種類)
軽アイゼンは、主に、冬の里山や低山、秋と春の1,000~2,000m級の山で使います。ここでは、4種類の軽アイゼンを紹介します。
1. 4本爪アイゼン
4本の爪を持ったアイゼンで、靴の土踏まずの部分に装着します。軽くてコンパクトに収納できるので、いざというときに便利です。ただ、爪の数が少ない分、傾斜がきついところでは、あまり滑り止めの効果を発揮しないでしょう。 よって、冬に里山や低山へ登るとき、もしものために使う、という位置づけのアイゼンです。
エバニュー|4本爪アイゼンバックル式 EBY013 軽アイゼン
2. 6本爪アイゼン
6本爪アイゼンは、4本爪アイゼンに比べて接地面が多いため、氷や雪の斜面に対して、滑りにくくなります。夏の雪渓歩きや、冬の低山に使うといいでしょう。また、秋や春でも、もしかしたら雪があるかもしれないという山へ行く場合に、ザックにしのばせておくと、安心でしょう。 6本爪アイゼンは、本格的な冬山に登らない方でも、必ず持っておきたいベーシックなアイゼンとなります。
3. 8本爪アイゼン
ベーシックな、6本爪の軽アイゼンよりも、2本だけ爪が多い、8本爪アイゼンは、比較的急な雪の斜面にも対応できるので、6本爪よりもさらに安定感が増します。 6本爪よりも少し重くなることを許容すれば、より幅広い冬の低山で活用できるでしょう。
4. チェーンアイゼン
なだらかな斜面の低山では、チェーンアイゼンを使うこともおすすめです。 通常の軽アイゼンより爪が短いので、急な斜面では滑り止めの効果が少し弱いですが、装着が手軽で、靴下を履くような感覚で装着できます。 冬に、ちょっとした、なだらかな低山のハイクをしたいというときに、あると安心でしょう。
本格的なアイゼン(3種類)
本格的に冬の登山をする場合は、10~12本爪のアイゼンを使います。ここでは、3種類のアイゼンを紹介します。
5. 10本爪アイゼン
10本爪アイゼンは、本格的な雪山登山に対応します。前面に爪があるため、氷や雪の斜面で蹴りこむと、しっかり足を固定してくれます。 次に説明する12本爪アイゼンより、少しサイズが小さいので、足の小さい方や女性が使うとよいでしょう。
6. 12本爪アイゼン
12本爪 アイゼンは、10本爪アイゼンと同様、本格的な雪山登山に対応します。 10本爪に対して、2本爪が多いので、さらに安定感が増します。 本格的に雪山に取り組む場合、基本的に12本爪アイゼンをまず買うことをおすすめします。 どうしても足のサイズが小さすぎて、うまく装着できない場合は、10本爪アイゼンにしましょう。
7. アイスクライミング向けの縦爪アイゼン
雪山の登山用アイゼンは、平爪といって、爪が水平方向を向いています。先に紹介してきた2種類のアイゼンは、平爪タイプです。 それに対して、爪が縦に向いた縦爪アイゼンがあります。 爪が縦に向いていることで、垂直に近い氷壁でも、アイゼンが刺さりやすく、体が固定できるという特徴があります。
縦爪アイゼンは、アイスクライミングをする際に使います。アイスクライミングとは、急峻な氷の斜面を登っていくスポーツです。ほとんど垂直に近い氷の壁を登っていくスリルと恐怖感、登った時の達成感は、なんとも魅力的です。 ただし、アイスクライミングは、高度なクライミング技術、ロープや登攀具を使いこなす技術が必要で、登山初心者の方には、難しいでしょう。いずれ挑戦するためにも、夏の登山から、雪山、岩登り、そしてアイスクライミングと、徐々にステップアップしていきましょう。
アイゼンの爪の本数や構造による選び方まとめ
以上のように、アイゼンにはたくさんの種類があって、初心者の方は、最初どういう選び方をすればよいか、迷うでしょう。 以下に、行こうとする山による、アイゼンの使い分けと、初心者におすすめな選び方を説明します。
色んな種類のアイゼン、どう使い分ける?
アイゼンは基本的に、爪の本数によって、行く山や季節の目安があり、以下のように使い分けます。 ■1,000メートル未満の里山や低山 4~6本爪のアイゼンまたはチェースパイクで対応できるでしょう。 ■1,000~2,000メートル級の山 秋と春は、6~8本爪のアイゼンで良いでしょう。冬は、10~12本爪のアイゼンが必要です。 ■2,000~3,000メートル級の本格的な雪山 秋から春にかけて、10~12本爪のアイゼンが必要です。ただし、夏の雪渓は、4~8本爪のアイゼンで対応できるでしょう。
初心者におすすめの選び方
初心者の方におすすめしたい選び方は、まず、6本爪のアイゼンを買って、標高が低めの雪山をいくつか経験し、それから、10~12本爪のアイゼンを買って、本格的な冬の登山を始める、という流れです。 夏山しか登っていなかった人は、6本爪アイゼンを新たに用意することで、秋から春に、より多くの山に対応できるようになります。 そのような山で、すこしずつ、アイゼンの歩き方に慣れて、本格的な雪山に挑戦しようと思った時に、10~12本爪のアイゼンを買うとよいでしょう。 また、必要に応じて、4本爪、8本爪、チェーンスパイクなどのアイゼンを買い足せばいいでしょう。
3種類の装着方式によるアイゼンの選び方
アイゼンは、装着方式の違いによって、バンド式、ワンタッチ式、セミワンタッチ式の3種類のタイプがあります。それぞれ、手軽さ、靴から外れにくいこと、登山靴が対応した仕様か、などの観点によって、選び方が異なります。 以下に、3つの装着方式を説明します。それぞれの特徴と選び方を理解しておきましょう。
1. バンド式
バンド式は、アイゼンについた紐を登山靴に結び付けて固定します。4~8本爪のアイゼンは、基本的にこのタイプです。 このタイプだと、どのような登山靴に対しても装着可能です。
2. ワンタッチ式
ワンタッチ式は、10~12本爪アイゼンに多い装着方式です。かかとの金具で登山靴を固定し、それから紐を結びます。 雪山では、厳しい風雪の中、アイゼンをつける必要があるため、できるだけ簡単に装着できる、ワンタッチ式を使いたいものです。 ただし、このタイプの場合、装着できる登山靴とそうでない登山靴があります。靴の前後に専用のくぼみ(装着用の切れ込み)がある登山靴のみ装着できます。 本格的な雪山に挑戦したいなら、ワンタッチ式のアイゼンを使うことを想定し、登山靴を買う際にも、くぼみが入っているか、よく確認しましょう。
3. セミワンタッチ式
セミワンタッチ式も、10~12本爪アイゼンに多い装着方式です。ワンタッチ式では、登山靴の前後のくぼみに金具を固定しますが、セミワンタッチ式では、靴の後ろのくぼみだけに金具を固定します。 登山靴前側は自由度があるので、ワンタッチ式よりも外れにくいという特徴があります。
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セミワンタッチ式のアイゼンです。
アイゼンの装着方式による選び方まとめ
3種類のアイゼン装着方式を紹介しました。 軽アイゼンの場合は、自ずとバンド式となります。 10~12本爪アイゼンの場合は、ワンタッチ式かセミワンタッチ式のどちらかになります。選び方として、靴から外れにくく、装着の手軽さを考えると、どちらかというと、セミワンタッチ式の方がおすすめでしょう。
雪山でアイゼンを使った歩き方
アイゼンを装着した状態での歩き方は、慣れていないと、なかなか難しいです。足に重いアイゼンをつけて歩くと、バランスが取りにくいです。 アイゼンによる歩き方をしっかり訓練して、安全に雪山登山できるようにしましょう。
雪や氷で滑りやすい斜面の歩き方
アイゼンをつけた状態の歩き方は、地面に対して、靴が平行になるように、足踏みします。こうすることで、アイゼンの爪が、雪や氷の斜面にしっかり刺さり、体を安定させることができます。 傾斜があるところでも、斜面と平行になるよう、靴を斜めに傾けます。 このように、地面に対して平行に踏む歩き方を、フラットフッティングといいます。アイゼンによる歩き方は、フラットフッティングが基本となるので、ぜひマスターしましょう。
急な斜面の歩き方
ただし、あまりに傾斜が急な場合は、アイゼンの前爪を斜面に蹴りこみながら、歩行します。このような歩き方を、フロントポイントといいます。 フロントポイントによる歩き方は、雪が多くて傾斜がきつい、本格的な雪山で必要な技術になります。
パンツの裾やスパッツに、アイゼンを引っかけないようにしよう
アイゼンの爪は、自分のパンツの裾や、登山用スパッツによくひっかかりやすいので、歩き方に注意が必要です。 特に、10~12本爪アイゼンは、爪の長さが長いので、余計ひっかけやすいです。ひっかかると、パンツやスパッツが破れて、冬山の冷たい風が侵入してくる、なんて悲惨な状況になります。 そのような状況を避けるため、アイゼンによる歩き方は、ガニマタ気味にして、かつ、フラットフッティングを心がけましょう。
アイゼン装着のタイミング
アイゼンを装着するタイミングは、ルートが凍結している場合や、積雪した斜面が急になってきた場合です。少しでも、滑ると感じたら、面倒くさがらずに、すぐ装着しましょう。 逆に、氷や雪がないところでも、アイゼンを装着する方がいますが、それだと、アイゼンの爪を摩耗させたり、劣化させてしまうので、必要なときにだけ装着するようにしましょう。
アイゼンを持っていくべきか迷う時
秋や春は、行こうとしている山へ、アイゼンを持っていくべきか悩むことがあると思います。もしかしたら雪が積もっているかもしれないけど、行ってみないと分からない、という状況です。 アイゼンは金属製で、重量感があるので、あまり気軽には持ち出せません。しかし、山での滑落は、遭難や事故のもとになるので、微妙な場合でも、せめて4~6本爪アイゼンは持っていくようにしましょう。 またそういう時は、事前に、その時期に同じ山へ行った人がいないか、インターネットで探すと、結構ブログやHPから情報を得られるものです。その情報から、山の状態をイメージして、アイゼンを持っていくべきか検討するとよいでしょう。
まとめ
雪山登山は魅力的な一方、滑落事故のリスクがあります。滑落事故を減らすため、適切にアイゼンを選んで、使いこなす必要があることを説明しました。 そして、たくさん種類があるアイゼンの特徴、選び方を紹介しました。また、アイゼン装着状態での歩き方や、その他注意すべきことの説明をしました。 快適に雪山を楽しむために、適切にアイゼンを選び、訓練を積みながら、よりレベルの高い雪山登山を目指しましょう。
特に、晴れた青空と一面の銀世界の雪山は最高です。高い木々は雪がびっしりつき、モンスターと呼ばれる樹氷に変形し、それもまた、美しいです。