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アイゼンとは?初心者のための「アイゼン」基本知識ガイド!

雪山登山は、夏山では得ることのできない魅力があります。一方で、氷と雪の斜面ですべって、滑落事故を起こす危険性があります。滑落しないよう、安全かつ快適に登山するために、アイゼンが必要になります。本記事は、アイゼンの種類、選び方および歩き方についてまとめました。
更新: 2018年10月27日
anntena
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アイゼンとは?

アイゼンとは、雪や氷の斜面を登ったり、下ったりする際に、滑り止めのために登山靴の底に装着する、登山道具のことです。

冬に登山する際には、アイゼンは、必要不可欠な道具です。 春や秋でも、標高の高い山に行く場合や、夏に雪渓などを歩行する際にアイゼンは必要になります。

冬の雪山登山の魅力

登山は春から秋に行くことが多いと思いますが、冬の山は全く違った表情を見せます。 春から秋は、木々の緑や紅葉が見られますが、冬には、それらが雪ですっぽり覆われ、真っ白になります。その景観は非常に美しいものです。

特に、晴れた青空と一面の銀世界の雪山は最高です。高い木々は雪がびっしりつき、モンスターと呼ばれる樹氷に変形し、それもまた、美しいです。

冬の雪山に登るには、色んな装備や登山技術が必要です。雪山を登る大変さと引きかえに、素晴らしい景色と、難しい雪山を制覇した達成感により、最高の気分を味わえます。 このように、雪山は、春から秋の登山にはない魅力があります。雪のない山しか登ったことがない方には、是非とも、雪山登山に挑戦してほしいものです。

雪山登山のリスク

しかし、一方で、雪山は多くの危険と隣り合わせです。雪山登山のリスクは以下のようなものがあります。 ・道迷い(登山道が雪でかき消されます) ・滑落 ・雪崩 ・凍傷/低体温症 これらの中で、雪山における事故原因として、比較的割合が高いのが滑落です。雪山では、積雪や凍った斜面で、本当に滑りやすいです。

雪山で滑落しないようにするためには、アイゼンが必要となります。雪山を登る際は、滑落が起きないようにするため、アイゼンを装着した状態での歩き方を訓練をし、技術を身に付けておく必要があります。

アイゼンが必要な山の標高と季節

地域にもよりますが、アイゼンが必要な山の標高と時期は、以下のイメージです。 ■1,000メートル未満の里山や低山 冬には簡易的なアイゼンが必要ですが、秋と春には、よほど寒い日でなければ必要ないでしょう。

■1,000~2,000メートル級の山 冬には本格的なアイゼンが必要です。一方、秋と春には簡易的なアイゼンで問題ないでしょう。

■2,000~3,000メートル級の本格的な雪山 秋から春にかけて、本格的にアイゼンが必要です。そのような山は、夏には、雪渓が残っていることもあり、そこでもアイゼンが必要です。

爪の本数や構造の違いによる、7種類のアイゼン、その選び方

アイゼンは、爪の数、構造の違いにより、多くの種類があります。 色んな種類のアイゼンを、ルート、標高、時期などによって、使い分けます。 以下に、大きく、軽アイゼンと本格的なアイゼンに分けて、計7種類のアイゼンを紹介します。 初心者の方は、あまりにたくさんの種類があって、選び方を迷うでしょう。 それぞれのタイプのアイゼンについて理解し、自分の行きたい山や目的にあった、アイゼンを用意しましょう。


軽アイゼン(4種類)

軽アイゼンは、主に、冬の里山や低山、秋と春の1,000~2,000m級の山で使います。ここでは、4種類の軽アイゼンを紹介します。

1. 4本爪アイゼン

4本の爪を持ったアイゼンで、靴の土踏まずの部分に装着します。軽くてコンパクトに収納できるので、いざというときに便利です。ただ、爪の数が少ない分、傾斜がきついところでは、あまり滑り止めの効果を発揮しないでしょう。 よって、冬に里山や低山へ登るとき、もしものために使う、という位置づけのアイゼンです。

エバニュー|4本爪アイゼンバックル式 EBY013 軽アイゼン

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2. 6本爪アイゼン

6本爪アイゼンは、4本爪アイゼンに比べて接地面が多いため、氷や雪の斜面に対して、滑りにくくなります。夏の雪渓歩きや、冬の低山に使うといいでしょう。また、秋や春でも、もしかしたら雪があるかもしれないという山へ行く場合に、ザックにしのばせておくと、安心でしょう。 6本爪アイゼンは、本格的な冬山に登らない方でも、必ず持っておきたいベーシックなアイゼンとなります。

6本爪アイゼンです。

3. 8本爪アイゼン

ベーシックな、6本爪の軽アイゼンよりも、2本だけ爪が多い、8本爪アイゼンは、比較的急な雪の斜面にも対応できるので、6本爪よりもさらに安定感が増します。 6本爪よりも少し重くなることを許容すれば、より幅広い冬の低山で活用できるでしょう。

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8本爪アイゼンです。

4. チェーンアイゼン

なだらかな斜面の低山では、チェーンアイゼンを使うこともおすすめです。 通常の軽アイゼンより爪が短いので、急な斜面では滑り止めの効果が少し弱いですが、装着が手軽で、靴下を履くような感覚で装着できます。 冬に、ちょっとした、なだらかな低山のハイクをしたいというときに、あると安心でしょう。

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チェーンアイゼン(チェーンスパイク)です。

本格的なアイゼン(3種類)

本格的に冬の登山をする場合は、10~12本爪のアイゼンを使います。ここでは、3種類のアイゼンを紹介します。

5. 10本爪アイゼン

10本爪アイゼンは、本格的な雪山登山に対応します。前面に爪があるため、氷や雪の斜面で蹴りこむと、しっかり足を固定してくれます。 次に説明する12本爪アイゼンより、少しサイズが小さいので、足の小さい方や女性が使うとよいでしょう。

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10本爪アイゼンです。

6. 12本爪アイゼン

12本爪 アイゼンは、10本爪アイゼンと同様、本格的な雪山登山に対応します。 10本爪に対して、2本爪が多いので、さらに安定感が増します。 本格的に雪山に取り組む場合、基本的に12本爪アイゼンをまず買うことをおすすめします。 どうしても足のサイズが小さすぎて、うまく装着できない場合は、10本爪アイゼンにしましょう。

12本爪アイゼンです。

7. アイスクライミング向けの縦爪アイゼン

雪山の登山用アイゼンは、平爪といって、爪が水平方向を向いています。先に紹介してきた2種類のアイゼンは、平爪タイプです。 それに対して、爪が縦に向いた縦爪アイゼンがあります。 爪が縦に向いていることで、垂直に近い氷壁でも、アイゼンが刺さりやすく、体が固定できるという特徴があります。

縦爪アイゼンです。先端の爪が縦に向いているのが分かると思います。


縦爪アイゼンは、アイスクライミングをする際に使います。アイスクライミングとは、急峻な氷の斜面を登っていくスポーツです。ほとんど垂直に近い氷の壁を登っていくスリルと恐怖感、登った時の達成感は、なんとも魅力的です。 ただし、アイスクライミングは、高度なクライミング技術、ロープや登攀具を使いこなす技術が必要で、登山初心者の方には、難しいでしょう。いずれ挑戦するためにも、夏の登山から、雪山、岩登り、そしてアイスクライミングと、徐々にステップアップしていきましょう。

アイゼンの爪の本数や構造による選び方まとめ

以上のように、アイゼンにはたくさんの種類があって、初心者の方は、最初どういう選び方をすればよいか、迷うでしょう。 以下に、行こうとする山による、アイゼンの使い分けと、初心者におすすめな選び方を説明します。

色んな種類のアイゼン、どう使い分ける?

アイゼンは基本的に、爪の本数によって、行く山や季節の目安があり、以下のように使い分けます。 ■1,000メートル未満の里山や低山 4~6本爪のアイゼンまたはチェースパイクで対応できるでしょう。 ■1,000~2,000メートル級の山 秋と春は、6~8本爪のアイゼンで良いでしょう。冬は、10~12本爪のアイゼンが必要です。 ■2,000~3,000メートル級の本格的な雪山 秋から春にかけて、10~12本爪のアイゼンが必要です。ただし、夏の雪渓は、4~8本爪のアイゼンで対応できるでしょう。

初心者におすすめの選び方

初心者の方におすすめしたい選び方は、まず、6本爪のアイゼンを買って、標高が低めの雪山をいくつか経験し、それから、10~12本爪のアイゼンを買って、本格的な冬の登山を始める、という流れです。 夏山しか登っていなかった人は、6本爪アイゼンを新たに用意することで、秋から春に、より多くの山に対応できるようになります。 そのような山で、すこしずつ、アイゼンの歩き方に慣れて、本格的な雪山に挑戦しようと思った時に、10~12本爪のアイゼンを買うとよいでしょう。 また、必要に応じて、4本爪、8本爪、チェーンスパイクなどのアイゼンを買い足せばいいでしょう。

3種類の装着方式によるアイゼンの選び方

アイゼンは、装着方式の違いによって、バンド式、ワンタッチ式、セミワンタッチ式の3種類のタイプがあります。それぞれ、手軽さ、靴から外れにくいこと、登山靴が対応した仕様か、などの観点によって、選び方が異なります。 以下に、3つの装着方式を説明します。それぞれの特徴と選び方を理解しておきましょう。

1. バンド式

バンド式は、アイゼンについた紐を登山靴に結び付けて固定します。4~8本爪のアイゼンは、基本的にこのタイプです。 このタイプだと、どのような登山靴に対しても装着可能です。

バンド式の6本爪アイゼンです。

2. ワンタッチ式

ワンタッチ式は、10~12本爪アイゼンに多い装着方式です。かかとの金具で登山靴を固定し、それから紐を結びます。 雪山では、厳しい風雪の中、アイゼンをつける必要があるため、できるだけ簡単に装着できる、ワンタッチ式を使いたいものです。 ただし、このタイプの場合、装着できる登山靴とそうでない登山靴があります。靴の前後に専用のくぼみ(装着用の切れ込み)がある登山靴のみ装着できます。 本格的な雪山に挑戦したいなら、ワンタッチ式のアイゼンを使うことを想定し、登山靴を買う際にも、くぼみが入っているか、よく確認しましょう。

ワンタッチ式の12本爪アイゼンです。

登山靴前面のくぼみに金具が固定されていることが分かると思います。ワンタッチアイゼンを装着するには、このような靴を選ぶ必要があります。

靴の後ろ面のくぼみにも、アイゼンが固定されています。ワンタッチアイゼンには、靴に前後ともくぼみが必要になります。

3. セミワンタッチ式

セミワンタッチ式も、10~12本爪アイゼンに多い装着方式です。ワンタッチ式では、登山靴の前後のくぼみに金具を固定しますが、セミワンタッチ式では、靴の後ろのくぼみだけに金具を固定します。 登山靴前側は自由度があるので、ワンタッチ式よりも外れにくいという特徴があります。

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セミワンタッチ式のアイゼンです。

アイゼンの装着方式による選び方まとめ

3種類のアイゼン装着方式を紹介しました。 軽アイゼンの場合は、自ずとバンド式となります。 10~12本爪アイゼンの場合は、ワンタッチ式かセミワンタッチ式のどちらかになります。選び方として、靴から外れにくく、装着の手軽さを考えると、どちらかというと、セミワンタッチ式の方がおすすめでしょう。


雪山でアイゼンを使った歩き方

アイゼンを装着した状態での歩き方は、慣れていないと、なかなか難しいです。足に重いアイゼンをつけて歩くと、バランスが取りにくいです。 アイゼンによる歩き方をしっかり訓練して、安全に雪山登山できるようにしましょう。

雪や氷で滑りやすい斜面の歩き方

アイゼンをつけた状態の歩き方は、地面に対して、靴が平行になるように、足踏みします。こうすることで、アイゼンの爪が、雪や氷の斜面にしっかり刺さり、体を安定させることができます。 傾斜があるところでも、斜面と平行になるよう、靴を斜めに傾けます。 このように、地面に対して平行に踏む歩き方を、フラットフッティングといいます。アイゼンによる歩き方は、フラットフッティングが基本となるので、ぜひマスターしましょう。

出典: http://www.yamakei-online.com/beginners/step08_2.php

急な斜面の歩き方

ただし、あまりに傾斜が急な場合は、アイゼンの前爪を斜面に蹴りこみながら、歩行します。このような歩き方を、フロントポイントといいます。 フロントポイントによる歩き方は、雪が多くて傾斜がきつい、本格的な雪山で必要な技術になります。

出典: http://www.yamakei-online.com/beginners/step08_2.php

パンツの裾やスパッツに、アイゼンを引っかけないようにしよう

アイゼンの爪は、自分のパンツの裾や、登山用スパッツによくひっかかりやすいので、歩き方に注意が必要です。 特に、10~12本爪アイゼンは、爪の長さが長いので、余計ひっかけやすいです。ひっかかると、パンツやスパッツが破れて、冬山の冷たい風が侵入してくる、なんて悲惨な状況になります。 そのような状況を避けるため、アイゼンによる歩き方は、ガニマタ気味にして、かつ、フラットフッティングを心がけましょう。

アイゼンをひっかけて、少し破けた冬山用スパッツです。黒い生地が破けているのが分かると思います。

アイゼン装着のタイミング

アイゼンを装着するタイミングは、ルートが凍結している場合や、積雪した斜面が急になってきた場合です。少しでも、滑ると感じたら、面倒くさがらずに、すぐ装着しましょう。 逆に、氷や雪がないところでも、アイゼンを装着する方がいますが、それだと、アイゼンの爪を摩耗させたり、劣化させてしまうので、必要なときにだけ装着するようにしましょう。

また、足首くらいまで埋まるくらい、積雪が多い場合は、アイゼンを装着したままだと、靴の裏に団子といって、雪のかたまりがくっついてしまいます。こうなると足が重くなって、かなり歩きにくいです。 積雪が多い場合は、雪に足が埋まるのを和らげるため、わかんやスノーシューを装着しましょう。

アイゼンを持っていくべきか迷う時

秋や春は、行こうとしている山へ、アイゼンを持っていくべきか悩むことがあると思います。もしかしたら雪が積もっているかもしれないけど、行ってみないと分からない、という状況です。 アイゼンは金属製で、重量感があるので、あまり気軽には持ち出せません。しかし、山での滑落は、遭難や事故のもとになるので、微妙な場合でも、せめて4~6本爪アイゼンは持っていくようにしましょう。 またそういう時は、事前に、その時期に同じ山へ行った人がいないか、インターネットで探すと、結構ブログやHPから情報を得られるものです。その情報から、山の状態をイメージして、アイゼンを持っていくべきか検討するとよいでしょう。

まとめ

雪山登山は魅力的な一方、滑落事故のリスクがあります。滑落事故を減らすため、適切にアイゼンを選んで、使いこなす必要があることを説明しました。 そして、たくさん種類があるアイゼンの特徴、選び方を紹介しました。また、アイゼン装着状態での歩き方や、その他注意すべきことの説明をしました。 快適に雪山を楽しむために、適切にアイゼンを選び、訓練を積みながら、よりレベルの高い雪山登山を目指しましょう。