天気と釣り
いつから人類は釣りを始めたのか？ 10万年前には、釣りを始めていたという 可能性も高いそうです。 そんな長い歴史を持つ「釣り」だが、 今も、おそらく昔も常に大量に魚がとれる訳 ではありません。 だからこそ、人々は、なぜ釣れないのか？ 何が影響しているのかを考え、 考えることを楽しみ、現在にも趣味として 釣りが残っているのかもしれない。 釣りにおいて、最も影響があると考えられる 一つが、『天気』です。
天気は釣りに影響するのか？
魚は生き物であり、自然の中で、食物連鎖を 通じてエネルギーを補給し生きています。
その食物連鎖上では、魚に捕食される 生き物、小魚や甲殻類、海藻や昆虫などが おり、そしてそれらの生き物に捕食される 動物プランクトンや植物プランクトンが います。
これら多種多様な生き物たちの食う食われる の複雑な関係の中で、釣りで釣られる魚が 存在しています。
天気の影響がもたらす変化は、その食物連鎖 上のある生き物に影響すれば、おのずと魚に 影響を与えます。
天気は複雑に変化する
そして、その変化がもたらす機構はとても 複雑なので、解明するのが困難です。 しかし、釣り人は、釣りを通して、天気と 魚の関係を考えます。
その答え探しを楽しみとし、 自分なりの答えを持っています。 はたして、このページでどれほど天気と魚の 関係を明らかに出来るのか、出来ないのか。 おそらく、表面的なものでしかないのかも 知れません。
しかし、このページにたどり着いた釣り人は 少なからず、天気による釣りへの影響を 考え、その答えを求めているものだと 思います。
これから紹介する私なりの『天気と釣り』の 関係性が、釣り人みなさまの釣りの楽しみの 一つになればとても幸いです。
リンク：人類はいつ釣りを始めたのか？
【雨の影響】
雨は、魚に餌や酸素をもたらします。 一方、雨が強いと、強い流れをもたらし、 魚が活動できません。 雨と釣りの関係について考えていきましょう！
ー①陸水が流れ込むー
沿岸海域や、川、湖で釣りにおいて、 雨による影響で一番大きいのは陸水の 流入だと思います。
雨が降ることで起こる、 陸水の流入によって、 さまざまな物質が川を通して湖や海に 供給されます。
例えば、昆虫などの餌、川に生息する小魚や 昆虫類、栄養塩、そして酸素など。
その雨の影響によって、魚は活発になったり 逆に動かなくなったりします。
その活性の違いは、魚によって 『流れが速すぎて魚が泳げない』 『濁りを嫌い、活性が下がる』 『濁りを好み、活性が高まる』 といった要因の大小によります。
つまり、 天気の悪化（雨）によって、魚の活性は変わる。 しかし、活性が高くなるか低くなるかは魚種 によって変わる。
その濁りの嗜好性については、下のトピック で紹介していきます。 しかし、一般的には、雨は餌の供給へと繋が るとなるので 魚にとってはプラスに働くことが多いです。
ー②塩分濃度が変化するー
これは、川に接岸する沿岸海域や海水の表層 に限った話です。
塩分濃度と魚の関係は、魚の塩分の補給や 排出の仕組みに関係しています。
海水魚は、簡単に言うと、塩分を排出する事 に、エネルギーを使っています。 そして、塩分は、海水中から自動的に 吸収されます。 （川や湖に生息する淡水魚は、ずっと塩分の 低い環境に生息し、海水魚とは逆の機構が 働いています。）
ということは、塩分濃度が低くなると、 水中からの塩分の吸収が出来なくなるので、 魚もストレスを感じ、その塩分濃度の低い 海域から逃げてしまうと考えられます。
しかし、どれほどのストレスを感じるのかは 魚種によっても全く異なってきます。
スズキなどの、河口域～川まで上ってくる魚 は雨による塩分濃度の変化にストレスを ほかの魚に比べ、感じにくく、 逆に 河川、河口域で釣れない沖合の魚などは、 塩分濃度の変化に弱い可能性が高いです。
実際に、激しくない雨の場合、シーバスの 活性は高まると考えられています。 狙う魚種について、雨による塩分濃度の変化 に対するストレスが、どれほどなのか？ 魚の生活環や、生息域について調べると、 ある程度予測できると思います。
稚魚の時に、海へ行くのか川へ残るのか？ 幼魚の時に河口に接岸するのか、沖合へ出るのか？ など、生物の一生を知ると、 その生物の塩分濃度の変化への ストレス耐性が予測できると思います。
つまり、天気が悪化すると、 塩分濃度の変化に対するストレスに 強い魚は活性が上がり釣りやすくなる と考えられます。
ー③水中に濁りをもたらすー
魚と濁りは、あらゆる釣りにおいて、 話題になっていることだと思います。
濁りは、釣りの仕掛けや人影を 見えづらくし、魚に余計な警戒心を 与えずに釣りをすることが出来ます。
例えば、ブラックバスやシーバス、クロダイ キスなど、さまざまな魚で、雨によって 濁りが出ると、活性が上がると言われています。 逆に、ほとんどの海水魚は程度によりますが 濁りを嫌う場合が多いです。
そして、川に生息する魚、ヤマメやイワナ、 鮎は、笹濁りという絶妙な濁りの時に よく釣れ、濁りすぎるとよくないと言われて います。
つまり、 天気が荒れて、ある程度の濁りが出ると、魚の警戒心を解くので釣りやすくなる。
なので、濁りすぎるとよくないです。 適度に雨が降り、若干濁りが入る程度が好ましいです。
【風の影響】
天気の影響、雨の次は風です。 風によっても、海は様々な影響を 受けています。 これら風によって引き起こされる 釣りへの影響を考えていきます。
ー①水面が波立つー
風によって水面が波立つと、表層の水面の 角度がばらばらになり、海水中から 地上が見えづらくなります。
もしも、水面に波がない時には、下の図の ように、角度が頭上から48.5°で魚は 地上が見えなくなります。
なので、人から足元の魚が見える時は、 魚も人が見えている場合が多く、 足元から離れた場合に、魚からは地上が 見えなくなります。
なので、波が立った時というのは、魚が 地上を把握しづらくなる分、釣り人にとって 有効になります。
しかし、人からも水中が見えないので、 サイトフィッシングには不利に働きます。
つまり、 『天気があれると、釣りやすくもなり、釣りにくくもなる』 という二面性をもった答えが、波が釣りに与える答えになります。
しかし、止水域である湖の場合、水面が波立 つと、その波立ったところから、酸素の供給 がされ、その影響は、止水域では、とても 重要な酸素の供給源となると思います。 ですので、湖などでは、総合的にプラスの 影響が大きいのかなと思われます。
ー②流れが発生するー
風速がある程度強い風が吹くと、 海水と風との摩擦により、潮流ができます。
海洋学において、この風による流れのことを エクマン吹送流、エクマン輸送と呼ばれて います。
エクマン輸送が釣りに影響するのか？
この潮流は、風速が大きいと、その影響も大きくなり、魚の回遊などの活動に影響を 及ぼします。 下の論文は、 イカの漁について調べられた論文です。 エクマン輸送が、イカ漁にも影響しているかも という結果が出ています。
また、風によってもたらされる水中の変化に、 水温を下げたり、風が吹き、波が立つ事で 水中に酸素を供給すると考えられています。
釣りにおいては、一般的に、風が吹いた方が 釣れるといわれています。
しかし、風は釣りの天敵であり、仕掛けの 操作の障害になります。
なので、好影響を与える風が吹く場所でも 釣りが出来るように、さまざまなウキや糸が 開発されているのではないでしょうか？
ー③釣りが出来る風速ー
風速○○mというのは、イメージしずらい ので、参考程度に、どの風速が、どれくらい 人に影響するかを風速別に書いていきます。
ほとんど風がない状態。 釣りにおいては、波が立たず、鏡のような 水面になっている。
向かい風だと、釣りが少し難しくなる風の強さ 竿先を水面につけ、ラインが浮かぶものだと 釣りが不自由なく出来る。
向かい風では、釣りは厳しい。 だが、頑張れば釣りは可能。 表面には、風による流れができ、 仕掛けも流しづらくなる。
向かい風では釣りが出来ない。 風裏のポイントを探すしかない。 外洋が荒れていると、ベイトとなる魚が 内湾に逃げてくるので、意外に釣れることが ある。 しかし、安全な場所が確保できなければ、 釣りは止めましょう！
【気圧の影響】
気圧の変化も、天気に大きな影響を及ぼし 生物の活動にも影響が出ます。 人間でいえば、気圧が低くなると、頭痛が したり、関節が痛くなったりと、身近に 経験していると思います。 では、魚には、どのような影響を及ぼすのか？ 見ていきましょう！
ー①溶存酸素量が変化するー
水中に含まれる酸素の量は、大気に比べ、 非常に少ない。
また、川や潮流のある海に比べ、湖や閉鎖性 の海域では、溶存酸素が少なくなる傾向が ある。
魚は、この少ない酸素で生きていかなければ ならず、溶存酸素の変化に大きく影響 されます。
高度が高い場所では、空気の密度が低いため 大気に含まれる酸素の量が、減ります。
なので、水中の酸素濃度の変化は、 人間でいうと、標高の違いによる 影響と似ていると言えます。
酸素が少ない時、川の流れが緩い場所や湖 などでみられる、魚が鼻を水面から出して いる状態では、魚は釣れません。
例えば、生き餌を生かすときに、酸素ポンプが ないと、ものの数十分で全滅してしまいます それほど溶存酸素は魚にとって重要なのです。 では、気圧と溶存酸素には、どのような関係 があるのでしょうか？
気圧が高くなると、水中に溶ける空気の量が 増えます。
なので、気圧が高くなると、魚の活性が 高くなる？と思われますが、 しかし！実際に言われているのは、 気圧の低い時、つまり低気圧の時に 魚が釣れる！ということです。
それは、気圧の変化がもたらすのは、 水に溶け込む酸素の量だけでなく、 天気の悪化による風速の変化、 風による波、波による酸素の供給、雨が降り、 陸水が流れ込むなど、さまざまな影響を 引き起こします。
なので、気圧が上がると、溶存酸素が増える 分、釣りに好影響を与えるが、そのほかの ファクターを含めた全体で考えてみると 気圧が下がった時のほうが、釣りには好影響 なのでしょう。
ー②天気が崩れ、風、雨をもたらすー
気圧がある場所とある場所で異なると、 気圧差により風が吹きます。
気圧の高いところから、低いところへ、 気圧傾度力が働き、風が吹きます。 風の影響により、波がたち、風速によっては エクマン輸送により潮流が出来たりします。
ちなみに、エクマン輸送は、表層では風向き の右⇒45°、深くなればなるほど、潮流が 右90°近いずいていきます。
そういった影響によって、川、海、湖などに 好影響を与えると考えられます。
また、風向きに対し、右側に曲がるので、 釣りをしている方向に対し、左側からの風が 吹いている時には、岸に向かって流れが できるのでチャンス！
ー③魚や生き物の浮力に影響するー
気圧が下がると、川、湖、海の密度が下がり、 魚や水生昆虫が浮いてくると言われています。
しかし、水深１mでの水圧が１気圧に等しい ので、魚は、もっと深いところにも生息しま すし、気圧の変化は±50hPa程度なので、 その影響の真意は怪しいです。
【水温の影響】
人が気温によって、外に出たくなかったり、 外へ出かけたくなったり影響されるように
魚も環境の温度→水温に影響されます。 そして、その影響は、魚の方は変温動物 なので、及ぼす影響が大きいです。 変温動物は、周りの環境から熱を もらっています。 カメの甲羅干しなども熱をもらうためです。
ー①躍層の発達ー
躍層とは、水中の環境が、大きく異なる 二つの層の間の層のことです。
この躍層は、主に、大気の温度が高い時に おきます。
水の密度は、暖かいと軽く、冷たいと重いの で、水面が暖められると、水面から近い ところの水の密度が軽く、たいして、深い 場所の水の密度が重くなるので、 密度差による水の対流が起こらなくなります。
なので、暑い日が続くと、 海底からの栄養の供給がないので まず植物プランク トンが減り、次に動物プランクトン・・・ という風に、最終的には魚が深い場所へ 逃げてしまいます。
なので、水温が高い日がずっと続いた日は あまり釣りにはよくないと言えます。 逆に、ある程度水温が高いだけでは、 躍層は発達しないので、魚の適温に近づき 活性が上がります。
水温の上昇や低下は、急激的なものや、 長い時期続くと、魚に悪影響を及ぼすと 考えられます。
ー②魚の活性の変化ー
魚には、周りの水温の適温というものがあります。 魚の魚種によって変わるので、シーバスでも 河川まで生息するマルスズキはほかのスズキ に比べ適温が広いそうです。
マルスズキは、完全な淡水の川から、 海水が流入する河口域まで広く生息しています。 なので、水温に対するストレス耐性も強いです。
一般的には、秋ごろや春ごろの気温と水温が 同じ時が釣りに最適だと思われます。 水温の変化には、魚は敏感に反応するので ターゲットとなる魚の適温を調べましょう。
魚種別の釣り魚の適温を知る
ターゲットとなる魚の適水温を知っておくと、 天気予報や、週間天気、海水温の予測などから、 釣りに適切な日なのかどうかを判断することが 出来ます。
↓のリンク先に、魚種別の適温が記載されて います。 参考にしてみて下さい。
天気の変化を読み取る
天気の状態というのは、変則的で、また 局所的な場合もあります。
過去に釣りに行った日の天気を知る
実際に釣りに行った日の天気や風向き、風速 を知るならば 気象庁の過去の天気のデータなどを 利用するといいと思います。
釣りに行った日の天気図を知る
また、天気図など、気圧の変化を知りたい ならば、下のサイトなどが有効です。
天気を自分で観測する
また、マニアックに天気を観測したい場合、 川などあまり水温などの情報がなく、 あまり天気からは予測できないならば 自分で観測する必要があります。
温度計や気圧計のついた時計、スマホなど 現在では天気を観測するうえで便利なものが 様々あり、そして、身近にあります。
ぜひ、自分なりの天気のデータと釣果、 釣り場の状況のデータを取り、自分なりの 天気と釣りの関係を模索してみましょう！ 釣りがより一層楽しくなり、また奥の深い 楽しみになります。
天気と釣りに関する動画
天気観測のグッズ
天気観測しながら釣りが出来る便利グッズ：時計
気圧計や温度計がついています。 また防水性能もあるので、 釣りでも安心です。
天気観測しながら釣りが出来る便利グッズ：計測器
気圧計や、温度計、コンパスの機能が ついている計測器です。 釣りのデータ集めに役立つ事間違いなし！
天気をよく知りたい：気象学の教科書
一般気象学第2版補訂版 [ 小倉義光 ]
出典:Amazon天気の変化と魚の関係を模索する：魚の生理学
魚類生理学
出典:Amazon魚の採餌行動／佐原雄二
出典:Amazon釣り、天気のデータをまとめるためのグッズ；メモ帳
コクヨ 測量野帳 レベル 白上質紙 40枚 セ-Y1
出典:Amazon
発見されている釣り針で、一番古いのは、 およそ２万年前の東南アジアの東ティモール で採取されたものらしい。